少女救いました!
Side空
………………………………………………………………ものすごく気まずい空気。どうすればいいんですか!? 誰か助けて下さい!!
「……………………」
顔真っ赤のフェイト。
「……………………」
超不機嫌そうな二亜。
「フェイトが……フェイトが……」
真っ白になったプレシアさん。
「みんなどうしたんだい?」
「色々あったんですよ。フフッ」
遠くで状況がよく分かってないアルフと微笑ましそうに見ているリニス。
『おお~! すごいもの見ちゃった!』
いつの間にかいたフェイトそっくりの浮いている少女が俺のそばにいた。
……え? 誰?
「……君、誰?」
俺以外は誰も彼女に気が付いてないみたいだった。
『私はアリシア! フェイトのお姉ちゃんだよ!』
「へぇ~、フェイトってお姉ちゃんいたんだね」
『まあ、死んでるけどね!』
…………………は? 今何て言った?
『だから~私死んでるんだってば!』
し、死んでる!? じゃあ、ゆゆゆ、幽霊!?
『Yes,I am!』
無駄に発音の良い英語で答えてくれた。
ハハハ、アリエナイアリエナイ。ユウレイナンテイルハズガナインダ。
『ホントだってば~。証拠見せてあげるよ。こっちに来て』
アリシアに言われて俺は付いて行くことにした。
っていうか、さっきから心の声読まないでよ!?
『気にしない気にしない~』
アリシアに付いて行くと大きな扉のある部屋に着いた。
「ここは?」
『この奥に私の体があるんだよ~』
アリシアは扉を開けずに素通り、俺は扉を開けて中に入って行った。中にはポッドに入ったアリシアらしき体があった。
「……マジだったのかよ」
『ほらね~。私の言った通りでしょ?』
「うん。だけど―――――余計に怖くなったわ!」
『え~! こんなに可愛い幽霊なのに?』
「確かに可愛いよッ! でもそれとこれとは別だよ!」
『えへへ~♪ 可愛いって言ってくれた~』
アリシアは空中で器用に体をよじらせていた。
ダメだ……何を言っても通じない気がする。
「で、君はどうしたいの?」
『え? どうもしないけど?』
「未練とかないの? プレシアさんと話したいとか、フェイトと遊びたいとか」
『……それは無理だよ。確かにしてみたいことはたくさんあるけど、死んでるからね。君以外には見えてないみたい。でもこうして話してるだけでも私は楽しいから!』
「そっか……俺にしか見えてないのか……」
まあ、幽霊なら仕方ない……ん? 幽霊? アリシア死んでるんだよね?
じゃあ、あれなら蘇らせることが出来るじゃん! ――――――
「ねぇ、もし生き返ることが出来るって言われたらどうする?」
『うーん、もしそうならぜひともそうしたいよ。でも誰かに迷惑なし、でならだよ』
そりゃそうだ。俺だって誰かに迷惑をかけてまでして蘇りたくなどない。
「じゃあ、俺が君を蘇らせてあげるよ」
『…………へ?』
アリシアのこいつ何言ってんの?っていう顔をスルーして、ポッドに近づいて、アリシアの体を取り出して寝かせ、そこら辺にあった布を体にかけて俺は幽世の聖杯を出した。
……流石に裸は可哀想だし、俺的にもちょっと……。
「幽世の聖杯、アリシアの魂をこの体に戻してくれ」
『ちょッ!?』
次の瞬間、幽世の聖杯が輝くとアリシアの体にアリシアの霊体が吸い込まれるようにして入って行った。
しばらくすると、アリシアはゆっくりと目を開けた。
「あ、あれ? 私……いきなり……」
「気分はどう? 初めてだったから変なところがあったら言ってね。すぐ治すから」
「あ、空! うーん……うん、何ともないよ!」
アリシアは体を軽く動かしたり、触ってみてどこにも異常が無いことを確認した。
ほっ、何とか成功したみたいだね。
「もう立てる? もし無理そうならおんぶくらいするけど」
アリシアは立とうとしたが、しばらく動かなかったため筋力が落ちていて立てそうになかった。
「無理みたいだからお姫様抱っこして~!」
「うんわかった。元気そうだから俺は要らないみたいだね」
「ひど~い! フェイトにキスしたんだからそれくらいいいじゃん!」
頬を膨らませて文句を言ってきた。
「あれは事故だから仕方がないでしょ!?」
せっかく人が忘れようとしていたのに……。
「はぁ……わかったよ。お姫様抱っこするよ」
「最初からそうすればいいんだよ♪」
「ハイハイ、しっかり掴まっててね」
「うん♪」
そう言って、皆がいるで部屋に戻って行った。
皆がいる部屋の近くまで戻った俺とアリシアは部屋の前で止まっていた。
「さてさてさーて、皆にどう説明すればいいのかな?」
「二人の愛の力で蘇った! なんてのはどう?」
「却下。そもそもアリシアとは初対面だからね?」
しかも愛の力ってなんだよ……。プレシアさんにまた攻撃されるんだけど。
「そこは前世からのつながりとか何とか言ってさあ」
「誰が信じるの? 証拠もないのに」
あ、一応俺転生してるか。記憶ほとんどないけど。
「なら、童話のお姫様みたいにキスで目覚めたとかは?」
「それはプレシアさんに殺されるから!」
「私たちの愛にはそれくらいの障害がつき物だよ! 乗り越えなきゃ!」
「誰と誰がいつ愛し合ったんですか!?」
「ヒドイ! 私とは遊びだったんだね! 最低!」
「何も始まってもないよね!?」
それからウソ泣き止めい。嘘だと分かってても結構効くんだから。
「あの頃のあなたはもういないんだね……別れよ? ……じゃあね」
「ちょっとー、勝手にどっか行かないでくれません?」
「じゃあ、残されたあの子はどうしたらいいの!?」
なんか大分エスカレートしてないかこの子の妄想……。
「あの子って誰だよ……。話が飛躍し過ぎて着いていけないんだけど……」
めんどくさくなった俺はアリシアをお姫様抱っこしたまま部屋に入った。
……まあ、なるようになるでしょ。
俺達が入った瞬間、誰もが目を大きくしていた。
「そ、空君、あなたがお姫様抱っこしている女の子は誰かしら?」
プレシアさんが震えた声で訪ねてきた。
それだけ俺が抱えてる少女が気になるのだろう。
「アリシア。本人からそう聞きましたよ」
「お母さん、久しぶり~!」
死んでた本人は気軽に挨拶した。
「ウソ……あ、アリシアが蘇った!?」
「で、でも、死んだはずじゃ……」
「そうだよッ! アリシアは死んでるはずじゃないのか!?」
「……空、あなたが何かしたんですか?」
誰もが驚く中、リニスは俺が何かしたんじゃないのかと怪しんでいた。
能力バラすのはちょっとなー……。
「あー、き、禁則事項です☆」
「うわーないわー」
アリシアに真顔で否定された。
分かってるよ! 似合ってないことくらい!
「〈少年、幽世の聖杯を使ったんだね〉」
二亜が念話で聞いて来た。俺が使った能力をすぐさま言い当てた。
「〈そうだよ〉」
「〈そう……。でもわかってると思うけど多用はしないでね。絶対に〉」
幽世の聖杯を使いすぎると幽霊が見えてしまうようになるが、今回初めて使ったので問題はないはず。
「〈わかってる〉」
「〈それと、原作ブレイクおめでと〉」
「〈え!? フェイト達ってなのはと同じ原作キャラだったの!?〉」
うそーん! そんなの聞いてませんよ!
「〈うん。しかもかなりシリアスな展開だったんだけど……〉」
「〈それって……マズイことしちゃった?〉」
「〈さあね。まあ、
「〈……そっか。なら、いっか! それにアリシアを蘇らせたことに後悔してないし!〉」
ハッピーエンドならいいじゃん! 誰もが笑っていられるなら!
「〈ハハハ、少年らしいよ〉」
そう言われてから、二亜との念話を終えた。
「とりあえず、アリシアを蘇らせることが出来たのは―――」
「私と空の愛の力だよ!」
「……余計なことは言わないでくれるかな、アリシア」
「今のはどういうことかしら!? フェイトだけでなく、アリシアにまで手を出していたのね! いいわ! 今度こそ殺してあげるわ!」
「ほらー! アリシアのせいで余計な誤解を生んだじゃんッ!」
プレシアさんがまた雷を放ってきたので、アリシアを抱えながら躱し続けた。
「てへッ☆」
アリシアは舌を可愛く出して自分の頭をコツンと叩いた。
こいつは~! ……でも、少しだけ可愛いと思ったのは内緒の方向で。
「リニスさん! プレシアさん止めて!」
「わかってますよ。プレシア! 今すぐやめないとあなたの黒歴史をばらしますよ!」
「え!? そ、それだけはやめてちょうだい!」
リニスの脅しにすぐに攻撃をやめたプレシアさん。
主の方が使い魔に頭が上がらないって……。
黒歴史ってのも気になるな。二亜の天使で調べてみようかな?
ようやく落ち着いたので、アリシアについて聞かされた。
どうやら昔の実験の事故でアリシアが巻き込まれ、そのまま亡くなってしまったらしい。
しかもプレシアさんもその実験の影響で不治の病になってしまったのだ。しかし、プレシアさんはその時の後悔から、アリシアを蘇らせたくて色々研究をしていて、その中の研究で生まれたのがフェイトというアリシアのクローンだった。
最初、実験が成功し、フェイトが生まれたときはアリシアの記憶を受け継いだだけの偽物だと思っていた。しかし、アリシアが生前に「妹が欲しい!」と言っていたのを思い出し、接する態度を改めたそうだ。
だが、フェイトはその事実を聞かせられて、プレシアさんとどう接したらいいかわからなくなってしまったらしい。
だから、家族の話題であんなに暗かったのか……。
「ふむふむ、そうだったんだ」
「……今のを聞いて、私のこと嫌いになったでしょ?」
フェイトはかなり暗い表情で聞いてきた。
その時、少しだけ胸がムカムカした。
原因を探ろうとしたがまずはフェイトの質問に答えなければ。
こういう時って何て言えばいいのかなー? 少なくとも嫌いになる要素はないけど。
「……えーっとさ、フェイトは俺と出会えてよかった?」
「それは……」
フェイトはどうなんだろと言う顔をしていた。
そこは嘘でもいいから肯定して欲しいとこなんだけど……まあいいや。
「俺は君と出会えてよかったって思ってるよ」
「……どうして? 私はクローンなんだよ?」
……なんだろう。また少しだけイラついた気がする
「別にクローンが何だっていうのさ。生まれ方が少し違うだけでじゃん。それにさフェイトはフェイトなんだよ」
「……?」
分からないという顔のフェイト。周りの皆もキョトンとしていた。
「あーだからさ、クローンであろうがなかろうが今君が俺の前にいてさ、生きているのに変わりはないってこと……なのか?」
「少年、格好悪いぞー」
段々言葉に詰まりだしたら、二亜が茶々を入れて来た。
自分でも何言ってるかだんだんわからなくなってきてるんだよ!
「う、うるさい! こういうの慣れてないの! ってまああれだよあれ。えーっと、フェイトがプレシアさんの娘でアリシアの妹ってこと! そんでアルフのご主人様! それで十分だよ! それでも足らないなら俺が君の友達で、は、初キスの相手!」
最後のは自分で言ってて恥ずかしい……。言わなきゃよかった……。
「空……」
フェイトもその時の事を思い出したのか顔が赤い。
「それにさ……フェイトは血の繋がりがあるだけマシじゃない?」
あれ? 俺、何を言って……。
「……え?」
「俺なんか二亜と血が繋がってないんだよ……」
やめろよ……そんなこと言うなよ……。
心に反して、口は動いたままだ。
「しかもさ、他にも家族はいるのに、誰とも繋がってないんだよ……」
ああ……そっか……。
フェイトの言葉にイラっとした理由がわかった。
俺は寂しかったんだ……血の繋がりって言うだけで。クローンでもフェイトには血が繋がっている人達がいる。俺にはそれがない。この世界のどこにも。
でも―――――
「でも、それでも! 皆は俺のことを家族だって笑顔で言ってくれたんだ!! だから! フェイトも自分がクローンだからとか言うなよ! 誰が何て言おうとお前だって大切な家族なんだよ!! ここにいる皆にとって!!」
気が付けば泣いていた。溢れる涙が抑えられないほどに。
背中に温もりを感じた。後ろから二亜に抱きしめられていた。
「だからッ! だからさ……ッ!」
「少年、もういいよ……。十分伝わったと思うよ……」
二亜も少しだけ泣いているのが声からわかった。
「……そう、だね……私は……母さん達の、家族だ……家族でいたい!」
フェイトの顔を見れば、大粒の涙が流れていた。
『フェイト……』
周りを見れば、プレシアさん達も泣いていた。
「……言いたいことそんだけ」
「ありがとね空君……」
「カッコ良かったよッ!」
「とても心に響きました」
「良い言葉だったよ♪」
「……ただ思ったことを言っただけだよ」
泣いたのが恥ずかしくてしばらく一人になりたかったから俺は部屋を出た。
「はぁ……」
外に出て座ると思わずため息が出た。
「しょーねん♪」
二亜が隣にやって来て座った。
「転生してさぁ、皆がいたから、記憶が無くても寂しくないと思ってたけど……案外、血の繋がりって大きいんだね……」
フェイトにどうしてあんなことを言ってしまったのか、原因はなんとなくわかっている。友達になったなのはとその家族達を見て、無意識に嫉妬していたんだと思う。
「それはそうだよ。私だってそう思う」
血の繋がり。それは大きなもので今の俺には無いモノだった。
「でも、それ以上に皆がいてすごく嬉しかった。幸せだった。出会って一年も経ってないのにこれでもか!っていうくらい毎日が楽しいんだ……」
「ハハハ、皆も同じこと思ってるよ」
「それは
二亜は違う、と首を振った。
「そんなの調べなくてもわかるよ。皆楽しそうに過ごしてるから」
「……そっか。それならいっか」
前世の俺の家族ってどんなだったかな? 今みたいに血の繋がった人がいなかったりして。記憶がほとんどないから今となっては知る余地もないが。
「そろそろ戻る?」
「うーん、もうちょいしたらで」
今頃、フェイト達は何かしてるんじゃないかな?
俺自身がまだ恥ずかしいからってこともあるんだけど。
「そっか。なら今のうちに甘えてもいいんだよ?」
少しニヤついた二亜が冗談めかして言ってきた。
「じゃあ甘える。膝枕して」
「えッ!?」
二亜は冗談のつもりだったらしいけど今の俺はそんなことは気にせず、倒れるように二亜の太ももに自分の頭を置いた。
「おやすみ」
それだけ言い残して目を閉じた。
原作ブレイクしちゃったー!!
ジュエルシードどうしよ!
そろそろ学校行こうかな……。
最後らへんがうまく出来てる気がしないです……。