果たして完結できるのだろうかと疑問に思うこの頃。
全力勝負です!
Side空
「……ん……」
目を開けるといつもの見慣れた自分の部屋の天井が目に入った。時計を見れば、いつもよりちょっと早めの時間に起きていた。大きな欠伸をしてからベッドから起き上がると、体に違和感を感じた。
……いつもより体が軽い?
ああ、そう言えば昨日、イグラース倒して……倒して……どうなったんだ?
未来さんと一緒に倒したことは覚えている。でもその後にどうなったのかの記憶が無い。そもそもどうやって帰って来たのかも覚えてないのだ。
あ、ドライグ達なら知ってるかな?
「昨日、俺に何があったか分かる?」
『お前の腕にスタンドを目覚めさせる矢が刺さった。そして気を失った。……覚えていないのか?』
ドライグが答えてくれたが全く身に覚えがない。
「うーん……ま、いっか。体に問題はなさそうだし」
『だ、だが、今のお前は……』
アルビオンが心配そうな声を上げるが異常は無い。それどころかいつもよりも体の調子がいいのだ。過去一番といってもいいくらいに。
「大丈夫だって。さ、ご飯作る……前にまずは顔洗わないと」
自分の部屋を出て、洗面所に向かう。
冷たい水が夏の暑さを和らげてくれて気持ちいい。
今度、海かプールに皆で行ってみよう、なんてこと洗いながら思った。
「夏場に水を浴びると気持ちいいね」
顔を洗うのが終わり、タオルで吹き終わった顔を鏡で見て、俺は目を見開いた。
「……………………え?」
自分の眼がおかしくなったのかと思い、もう一度顔を洗い鏡を見る。
しかし、問題はなかった。いつもの自分の顔がそこにはあった。
気のせい……だよね? 俺の髪が
でも、違和感が―――――
《マスター、大丈夫ですか?》
「へ? あ、うん、大丈夫大丈夫! いつも通り――――ッ!?」
《マスター!》
水を一杯飲もうとしてコップを握った瞬間に割れた。自分では軽く握ったつもりだったのにそんなに力が入ってしまったのだろうか?
《マスター、お怪我はありませんか?》
「う、うん、無いよ。あーあ、やっちゃった……。片付けないと……」
はぁ、と溜め息を吐きながら割れたコップを片付けた。
それからも俺の災難は続いた。
朝ご飯を作るためにフライパンを使おうとしたら取っ手の部分が歪んでしまった。
軽くぶつかっただけなのにその部分が凹んだ。
他にも色々あったのだが、どれも同じように壊してしまうことがほとんどだった。
「さっきから五月蝿いわよ。一体誰がこんなこと……空? あなた何して……というか目が覚めたのね!?」
俺が食器や家をボロボロにしている音が聞こえて目が覚めたのか、琴里がキッチンに入って来た。そして、俺をみるなり駆け付けて体の至る所をまさぐってきた。
「え、ちょ! 琴里!?」
「ど、どこもおかしい所はないわね。良かったわ……」
俺に異常が無いことを確認すると、琴里は心の底から安堵したかのように息を吐いた。
「それにしてもこれは一体……?」
「えーっと、何か俺が触ったら簡単に壊れちゃって……それで――――」
「あーッ! ソラ! 起きたのだな! 本当に心配したんだぞ!」
琴里に、何があったかを説明しようとしたところで起きてきた皆がぞろぞろとやって来た。
「お、おはようございます。あ、そうだ。朝ご飯なんだけどさ、リニスに今日は頼んでもいい?」
「え? ええ、それぐらい構いませんよ。というか空がいつ起きるか分かりませんでしたから、元からそうするつもりでした」
「そっか。それじゃあ頼んだ」
朝ご飯はリニスに任せてリビングで寛ぐことにした。
「いただきます」
『いただきます』
朝ご飯が出来たので席に着き、手を合わせ食膳の挨拶を済ませて箸を――――
「……あ」
パキッと小さな音がした手元に目を向ければ――――――箸が折れていた。
「その箸って最近買ったばっかじゃなかった?」
「不良品でしょうか?」
「疑問。それよりもこの家が荒れているように見えるのは気のせいでしょうか?」
「あ、それ私も思ったし。それにさっきまでうるさい音まで聞こえたんだけど」
「そうですね。キッチンのゴミ箱に多くの割れた食器がありました。それが関係しているのでは?」
「あー……その、実は―――――」
家の中が荒れている原因が自分にあることを皆に話した。
「――――で、今朝の騒動は空が原因ってことね」
「うん。自分でもよく分かってないんだけど……ドライグ達は俺に何か変化あるように感じる?」
『分からん。……ただ』
「ただ?」
ドライグの言葉には続きがあった。
『お前の心の中に扉が現れた。開けようとしたんだが俺達では弾かれてしまった』
心の中に扉? 何でそんなものが突然……。あとで見に行かないと。
「でも、それ以上に参ったなぁ。これじゃあまともにご飯が食べられないよ……」
「それならば私が食べさせてあげる。口を開けて」
「え? 何言って―――ムグッ!?」
『ッ!?』
俺が話してる途中で折紙が、フォークで刺したベーコンを口の中に突っ込んできた。
いきなりのことで驚いたが、何とかベーコンを食べることが出来た。
「はい、次。口を―――――」
「待て! 折紙だけズルいぞ!」
「そ、そうです……ッ!」
「むくも食べさせてみたいのじゃ」
「私もです! あ、七罪ちゃんでもオッケーですよー。口移しで」
「絶対に嫌よ!」
他にも俺に食べさせたいと言ってくる者がたくさん出てきた。
「はいはい、落ち着いて。皆の気持ちは分かるわ。一回ずつで交代しましょう」
「俺に拒否権は?」
「この状況でそれ言う? というかあるとでも?」
ですよねー。分かってたけど聞いてみただけってやつだよ。
代わる代わる食べさせてもらうという恥ずかしい行動に耐えていたら、いつもより遅くに朝食が終わった。
その日のお昼頃、未来さんから連絡が来た。
『やあ、空君。目が覚めてよかったよ』
「その節はどうもお世話になりました。それでご用件は?」
『実はね、もうじきこの世界から出ていこうかなって思うんだ』
……そっか、未来さんはもう行っちゃうのか。
『――――それで最後に君と勝負がしたいんだ』
未来さんからの決闘の申し込みを受けて指定された場所に向かった。指定された場所は海鳴市の公園。誰かが結界を張っているのか人気が全くない。到着するとすでに未来さんはいて、なのは達が少し離れた所に立っていた。
「お待たせしました。未来さん」
「ああ。さあ、始めよ――――」
「おい、
「……急にネタぶっ込んできたね。まあいい、その
『戦いに集いしデュエリスト達が!』
『モンスターと地を蹴り、宙を舞い!』
『フィールド内を駆け巡る!』
『見よ! これぞデュエルの最強進化形!』
『アクション……デュエ―――ヘブッ!?』
最後まで言い切る前に止められた。未来さんはイフに、俺は琴里にはたかれていた。
「とっとと始めなさい!」
「……はぁーい」
さてと、ふざけるのはここまでにしてと……どうしようかね?
未来さんがこの世界からいなくなるから最後に戦ってくれと言われて即OKを出したあとに後悔した。もし時間を戻せるなら、戦う日を今日でいいと言った自分を殴ってやりたい。
今の状態の俺が戦えばどうなるか分かったもんじゃない。
もう一度言うけど、どうしようかね?
「それではこれより試合を行います! 始め!」
審判役のリニスが手を振り下ろし開始の合図を出した。それと同時に未来さんはミサイルと機関銃を撃ち込んできた。
……あれ? イフの攻撃ってこんなに遅かった? ―――――これなら
そう思って手を動かすと自分に当たりそうな銃弾を簡単に掴めた。熱いはずの銃弾からは何故か全然熱さを感じない。遅れてやって来たミサイルは掴んだ銃弾をぶつけて爆破させた。
『…………は?』
誰もが目を見開いていた。未来さんも口を開けて呆けていたので、その隙に近づいて蹴った。
「………………………え?」
今度は俺が驚く番だった。未来さんがいなくなったのだ。
どこに行ったのかを周りを見回していると結界が何かとぶつかる音がした。
Sideout
Side十香
「まさか、空……未来を結界の端まで吹き飛ばしたってこと!?」
私達の中でいち早く気付いた耶俱矢の発言に誰もが驚愕した。
「ほ、ホンマに……?」
「この結界内に何かが入った様子は無いし、方角的にも未来君がぶつかったと考えていいはずよ」
「しかし、空はどうやって門矢を飛ばしたのだ? 見たところ
「……え、シグナム、今何て言ったの?」
「む? だから魔力を感じ……は?」
シグナムも自分で言っていて気が付いたようだ。空は魔力を一切使わなかった。要するにただの蹴り……いや、それは恐らくないだろう、と首を横に振る。私にも空の動きはほとんど見えなかったが、一瞬だけ魔力でも霊力でも、ましてや龍の力ですらない力を感じた。私達が知らない力を空は使ったと考えていいだろう。そして、その力の正体は恐らく空の前世の力のはずだ。
昨日門矢未来から聞いた話では空が矢に触れたと言っていた。それが引き金になったとみるべきか。
「〈ねえ、空の髪が一瞬だけ金色に染まらなかった?〉」
「〈同意。夕弦もそのように見えました〉」
「〈私も見えた〉」
「〈やっぱりあの矢は神様の……〉」
「〈空の記憶を戻すため、と考えていいでしょうね〉」
「〈これからどうなるのかな?〉」
「〈それは……空さん次第では?〉」
『〈よしのんも四糸乃の意見に同じかなー。空君のこれからを見守るしかよしのん達にはできないからねー〉』
私達精霊の中だけで霊力による会話を行った。会話からも分かるように、私達が空に出来ることは悔しいことに少ない。
……やはり、運命は変えられぬものなのだろうか?
Sideout
Side空
皆に話し声が聞こえて未来さんはすごく遠くに吹き飛んだことが分かった。
あれ? 俺ってこんなに力あった? いや、確かにさ、いつもより体が軽い感じはしてたよ? でもここまでなるか? いくら未来さんが魔力持ってなくてもスタープラチナが反応出来ないほど吹き飛ぶ――――――イ゛ッ!?
いきなり足に激痛が走ったことに顔を顰める。
未来さんに何かされた? ううん、そんな感じはなかった。じゃあ、何で……? クソッ! ワケが分かんないよ! 自分の体なのに自分の体じゃないみたいだ! 何だよ! 何なんだよ! …………って、今はそんなこと考えてる場合じゃない。
今すぐにでも叫んでしまいたいが、今は戦闘中だと言うことを思い出し、一旦深呼吸をする。その後に足に治癒魔法と
何時かは過去と向き合わなきゃいけない時が来るかもしれない。でもそれは今じゃない。今はこの戦いに集中するべきなんだ。
自分の中で切り替えてからその場で集中する。未来さんを倒す方法を考える。今の自分に出来る最善の手を使って。
Sideout
Side未来
開始早々僕は吹き飛ばされた。正直に言って何をされたかさっぱりだ。迅い。ただただ迅かった。しかも、それはスタープラチナの動体視力をもってしても捉えることは不可能だった。
これが空君の本気? だとしたら相当不味い子にケンカ売っちゃったなぁ。
これでは勝負になるかも怪しいな、と思ったら、僕の前に突如灰色のオーロラが現れた。
灰色のオーロラ? まさか!
「ふーん、暇潰しに来てみれば酷い様だな」
「お前は……!」
オーロラの中から出てきた人物は僕がボロボロなのを見て鼻で笑った。
「ま、それも当然か。あの子供はお前よりも戦い慣れてる。強くなるための努力を怠っては来なかった。その点お前はどうだ? ジョジョの第四部の世界に転生して一年も経ってない。前世で普通の人生を歩んできた奴が、高々物真似が出来る力で勝てるとでも思ったか? 不老不死だからって勝負に負けないとでも思ってたか?」
イフが
「イフを馬鹿にするな!」
「何言ってんだ? 別にそこのマシュマロには何も言ってないだろ。俺はそいつに頼りきりのお前に言ってんだよ。どうして漫画が描ける? 岸部露伴をそいつが真似たからだ。他のスタンドが使えるのは? そいつが真似したからだ。全部お前の力じゃない。何一つとしてお前の才能でも何でもない。お前は何一つとして努力をしていない存在なんだよ。それであの子供に勝つ? ―――――無理だ、絶対に」
「そんなのやってみなくちゃ――――」
「やってみなくても分かるから言ってんだよ」
コイツ! いつのまに僕の前に!?
10m以上は離れていたはずなのに気が付けば頭を掴まれていた。
「はぁ……出来損ないの
男はどこからどう見ても悲しそうな表情なんて微塵もしていなかった。
それに――――
「お、弟ってどういうことだ!?」
「複雑な事情があんだよ。今はいい。……それよりも、盗み聞きは感心しないな――――龍神空」
Sideout
Side空
未来さんを倒す方法を考えていたが、未来さんが一向にやってこないことを怪訝に思い、吹き飛んだ方に行ってみることにした。
ん、誰?
未来さんを見つけると、未来さんの前に知らない人がいた。ここからでは聞き取れないが何かシリアスな内容を話しているのだろうと雰囲気から感じ取った。
……しばらく見守るか。
そう思って隠れていたら――――
「複雑な事情があんだよ。今はいい。……それよりも、盗み聞きは感心しないな――――龍神空」
バレバレでした。
「えーっと、盗み聞きはしてないです。この距離じゃ聞こえませんでしたから」
「そうか。……そういえば、こいつと決闘の最中だったな。邪魔して悪かった。――――門矢未来、これをやる。それで少しは成長しろよ。時が来たらまたお前の前に来てやる」
「余計なお世話だ」
何て言いつつも男性が渡してきたカードをちゃっかり貰うんですね。
用は済んだのか、男性は灰色のオーロラの中に入って消えてしまった。
「未来さんのパワーアップイベントも終わったことだし再開と行きましょうか」
「待たせてすまないね」
互いに向き合い戦闘準備を整える。
「さあ、俺達の
軽く作品批判みたいになってる気がしないでもないです。
エイリアンマンさんごめんなさい!