デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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魔王と真剣勝負です!

魔王と真剣勝負です!

 

Side空

 

ついにこの日がやって来た。

魔王の一人、サーゼクス・ルシファーと戦う時が。

 

「負けられない戦いがここにある!」

 

「……いや、普通に考えて絶対に勝てないでしょ」

 

「そういうことは言わないでよ! もしかしたらワンチャンあるかもしれないんだよ!?」

 

七罪に否定されたが、こういうのは気持ちの問題で変わることもある。

 

一応、この日のために秘策も考えて来たしね!

 

「ま、精々足掻いてやりましょ」

 

「うん!」

 

「それでは行くとしましょうか。……見学者がかなりいるみたいだけど」

 

ティアマットが俺の後ろにいる皆を見て呆れていた。

 

「アハハ……皆に伝えたら見たいって言われちゃってさ……」

 

皆も魔王に興味があるのか、行きたいと言い出して断り切れずにつれてくことになったのだ。

 

「まあ、問題はないはずよ」

 

ティアマットが転移の魔方陣を展開して、俺達を転移させた。

 

 

 

 

 

転移が完了すると、何度目かの紫色の空が目に入った。

初めて来た皆は驚いたり、感嘆の声を上げたりと様々な反応だった。

大きなスタジアムに着くと、サーゼクスさんやメイドさんが出迎えてくれた。

 

「やあ、龍神君。待っていたよ」

 

「こんにちは、サーゼクスさん。今日はよろしくお願いします」

 

「ああ、こちらこそよろしく頼むよ。グレイフィア」

 

「はい、かしこまりました。龍神様以外はこちらの方へ付いて来て下さい」

 

名前を呼ぶだけで、グレイフィアさんはサーゼクスさんの言いたいことをすべて理解して、皆を応援席へと案内してくれた。

 

「それでは、我々も移動するとしようか」

 

サーゼクスさんが紅い魔方陣を展開して、別空間へと転移した。

 

「ここはレーティングゲームで使われる空間でね、本気でやってもよっぽどのことがない限りは、負けても医務室に転移されるだけだから安心してくれ」

 

「わかりました」

 

よかった~。これで滅びの魔力を受けても多少は大丈夫なわけか。

 

サーゼクスさんの配慮で命の危険はあまりないとわかって安心していると、グレイフィアさんのアナウンスが入った。

 

『どちらも用意はいいですか?』

 

俺達は黙って頷いた。

 

『これより魔王サーゼクスルシファー様対龍神空様の決闘を行います。それでは始めて下さい』

 

スタートの合図が出されると、サーゼクスさんが話し掛けてきた。

 

「龍神君、君の全力を私に見せてくれ」

 

「はい! 折紙! アルビオン! 行くよ!」

 

『了解』

 

『任せろ!』

 

二人が返事をすると同時に折紙の限定霊装と白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)禁手(バランス・ブレイカー)を纏った。いつもの白龍皇の(ディバイン・ディバイディング)月光神翼(・ルナティックフェザー)に加えて、不思議な色をしたヴェールを体に巻きつけている。

 

ッ! やっぱり二つの力が一緒だと負担が大きいな……。

 

何回か練習していたから多少は慣れたが、それでも相当な負担がある。

 

「ッ!? ……君は一体何者なんだい? (三つ目の神滅具(ロンギヌス)だと……?)」

 

俺の変化にサーゼクスさんは目を見開いていた。

 

「精霊……いや、龍精霊? そんな感じですかね?」

 

「疑問で返されても困るんだが……まあ、いい。掛かって来なさい」

 

そんなこと今まで考えたことなかったんですいません!

 

「〈絶滅天使(メタトロン)〉!」

 

俺が発顕させた天使はいくつもの細長い羽状のパーツで構成される王冠型の翼。組み合わせを変えることで攻撃方法が色々と変えられる。

 

「【光剣(カドゥール)】!」

 

俺が天使に指示を出すと、十機のドラグーンと共にサーゼクスさんに向かって無数の蒼白い光線を放った。最初は防御魔方陣で防ごうとしていたが、危険を感じたのか回避に専念していた。

光線が当たった地面には綺麗な穴が開いていた。

 

「……少々驚いたよ。今のを躱していなかったら間違いなく貫かれていただろうね」

 

今ので少々なのか……。流石は魔王ってことか……。

 

「今度はこちらの番だ」

 

サーゼクスさんが周りにいくつかの紅い魔力の塊を浮かべていた。

 

「あれが滅びの魔力……。躱しきれるかなぁ?」

 

『出来るだけこちらでもサポートはする』

 

『それに隙があれば「半減」や「反射」の力を使うといい』

 

「頼もしい限りだね」

 

折紙とアルビオンにはホントに感謝だな。

 

サーゼクスさんが魔力弾を撃ってきた。逃げようとすると当然の如く追尾してくる。

原作だとこの技を極めるために才能の大半を使ったとかなんとかってあった。

 

速さがそこまで無いってことは手加減されてるなぁ……。

 

「【天翼(アルマク)】!」

 

小さな羽が白龍皇の月光神翼に纏わりつき、より一層大きく綺麗な翼へと変わった。この変化によって、俺はさっきよりも速い高速移動で追尾弾を振り切り、サーゼクスさんに接近していった。

 

今がチャンス!

 

「せっやぁぁぁあああああああああああああああああああああッ!」

 

右のストレートを振り下ろしたが、左手で簡単に受け止められた。

 

「ガハッ!」

 

その上、右足で脇腹に蹴りを入れられた。

 

そう言えば、この人体術もすごいんだっけ。メッチャ強いなー……。でも――――

 

《DivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivide‼‼‼‼‼》

 

一度でも触れられればこっちの能力が使える!

 

「手で触れたのは悪手だったね……」

 

それでもサーゼクスさんの表情は変わらない。

魔王としてのプライドからか、それとも本当に余裕なのかは俺には分からない。

だが、そんなことを気にしている暇はない。俺は再び接近して格闘戦を挑んだ。

 

ッ! そろそろ魔力弾が来るか。

 

魔力弾が背後に迫っているのを感じた俺は、上昇して逃げた。

 

「【日輪(シェメッシュ)】!」

 

羽が円環状に組み合わさり幾千幾万もの光の粒子をバラまいた。

粒子と魔力弾がぶつかると、半減されていたおかげか相殺することが出来た。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

「素晴らしいね。だが、その力は消耗が激しいようだね」

 

息切れをし始めた俺はサーゼクスさんの言葉にその通りだと頷いた。

 

「なら、早めに終わらせよう。私は十分に楽しめたからね」

 

サーゼクスさんの呼吸は乱れてないことからかなり余裕なように見える。実際、力を無理やり合わせているだけの今の俺じゃ、相手にもなっていないのだ。

 

「……そうですか。でも、俺はまだとっておきがあるんで、それやって終わりにします」

 

乱れる息を整えて、深呼吸をした。

 

「――――〈神威霊装・一番(エヘイエー)〉ッ!」

 

周囲の空間が歪み、俺の体に絡みついて、純白の霊装の形となった。

背中にある白龍皇の月光神翼とドラグーン、純白のタキシードのような不思議な色をした霊装と無数の小さな羽。

これが俺のとっておき。霊装と神器(セイクリッド・ギア)の組み合わせ。

 

『時間は十秒が限界だ』

 

まだ二つの力を同時には上手くは使えず、現在体力も少ない俺にはこれが限界。

 

「りょーかい」

 

返事をすると、すぐさまカウントダウンが始まった。

 

「それが君の全力ならば、私もそれに応えよう」

 

紅い魔力がサーゼクスさんの体から溢れ、巨大な魔力弾を作り出した。

 

「――――滅殺の魔弾(ルイン・ザ・エクスティンクト)!」

 

俺はドラグーンと〈絶滅天使〉の羽を周囲に集めて一つに束ねた。

両手を前に突き出して、極大の白い砲撃を容赦なく撃ち放った。

 

「―――【白龍皇の月光砲冠(バニシング・ストライク・アーティリフ)】ッ!」

 

俺の砲撃とサーゼクスさんの紅い魔力がぶつかった。

しばらく小競り合いが続いていたが、それもすぐに変化した。

 

クソッ! 限界かッ!

 

徐々に俺の方が押され始めていた。

体力や魔力、霊力を大量に消費して使っているこのモードを維持する力が俺にはもう無い。そして、完全に競り負けたことが分かった時、霊装も神器も解除され、そこで意識を失った。

 

 

 

 

 

「……ッ……んぁ? ここは……?」

 

目を開けると、知らない天井が目に入った。

周りを見ようと起き上がろうとしたら、体中に激痛が走った。

 

「ウゴッ!?」

 

その痛みで自分が何をしていたのか思い出した。

 

「あー、俺負けたのかー」

 

『ああ、そうだ。空の体に限界が来て倒れたのだ』

 

『もう少し休んでおけ。今は体力も魔力もすっからかんだからな』

 

あのモードは消費がデカいから、少しでも慣れることがこの後の課題だな。十秒だけだったから筋肉痛だけで済んでよかったと思う。

 

「……そっか。わかった。ところで皆は?」

 

『空さんが倒れてから見に来たあと、魔王に呼ばれてどこかに行きました』

 

「俺どのくらい寝てた?」

 

『三時間程度だな。あの魔王が手加減してくれてたおかげだな』

 

「はぁ……やっぱりか~」

 

手加減されてたことを知って、少しショックを受けた。それは、まだまだ魔王相手に実力不足であることが分かったからだ。

俺がサーゼクスさんに手加減されていたことを知って凹んでいると、この部屋のドアがノックされた。

 

『龍神様、入っても構いませんか?』

 

声の主はグレイフィアさんだった。俺が目を覚ます頃合いを見計らってやって来たのだろう。

 

「はい、どうぞ。どうかしましたか?」

 

「そろそろお目覚めになられる頃かと思いまして」

 

グレイフィアさんを中に入れると、俺の様子を確認しに来たようだ。

 

「歩くことは出来ますか?」

 

「まあ、なんとか……」

 

動かすと痛いけどそこは我慢するしかない。

 

「それではこちらに付いて来て下さい。魔王様達がお呼びです」

 

魔王様“達”? サーゼクスさん以外にもか……。誰だろ? アジュカさんはいないって聞いてるけど……。

 

「わかりました」

 

覚束ない足取りで何とか付いて行き、サーゼクスさん達が待つ場所へと向かった。

 

 

 

 

 

部屋に入ると、サーゼクスさんと話している知らない男性二人と、どっかで見たことがある女の子四人が十香達やなのは達と楽しそうにしていた。

 

「中々有意義な時間でしたよ。彼は―――――おや、体はもう大丈夫なのかい?」

 

「歩くぐらいなら。ところでお話って何ですか?」

 

「ああ、それはね、君にお礼を言いたい方々がいるんだよ」

 

「お礼? 俺何かしました?」

 

そんなことしたっけ? と首を傾げていると、サーゼクスさんの近くにいた体の厳つい男性と細身の男性が俺の前に来た。

 

「お前が龍神空だな?」

 

体の厳つい男性が確かめる様に尋ねてきた。

 

「え、あ、はい」

 

ガタイの良さに気圧されたものの何とか返事をした。

 

「さっきの戦い見事だったよ」

 

今度は細身の男性から褒められた。

 

「あ、ありがとうございます」

 

結局何が言いたいんだ? この人達がさっきの戦いを観ていたことは分かったけど。

 

「お二方共、早く本題に入りませんか?」

 

「そうだね。それでは言わせてもらうよ」

 

「龍神空―――いや、龍神殿」

 

サーゼクスさんが二人に促してくれたのは良いけど……殿? ってどういうこと?

 

『娘を助けくれてありがとう!』

 

「娘? 助けた? 俺がですか? そもそもお二人はどちら様でしょうか?」

 

そんなことあったかな?

 

「あ、あれ? 僕達のこと知らない? これでもサーゼクスちゃん達と同じ魔王なんだけど……」

 

「え、お二人も魔王なんですか!?」

 

「いや、俺の場合は天界の神王だ」

 

「神王?」

 

聞きなれない単語に首を傾げてしまう。神王って名前からして相当重要な役職なのは想像が付く。

 

原作には居なかった人だよね? 

 

「それも知らねぇみてぇだな。まあ、いいか。俺は神王のユーストマだ」

 

「僕は魔王のフォーベシイだよ」

 

「俺は龍神空って言います。空で構いません。それで、娘というのはあの娘達でしょうか?」

 

なのは達と一緒にいる女の子達の方を向いて尋ねてみたら、当たりだった。

 

「ああ、そうだ。おーい! シア! こっちに来てくれ!」

 

「ネリネちゃんとリコリスちゃんもね!」

 

『はーい!』

 

呼ばれた三人は元気よく返事をすると、こちらにやって来た。

 

「あ、やっと会えたっス!」

 

「あの時はホントにありがとうございました」

 

「さっきの試合も観てたよ! 強いんだね、君!」

 

「は、はぁ……どうも……なのかな?」

 

初めて会う小豆色の少女と顔が瓜二つの青髪の少女二人にもいきなりお礼を言われて困惑していた。

 

「こらこら、三人共ちゃんと自己紹介をしないと」

 

「忘れてたっす! 私はリシアンサス! 長いからシアって呼んで下さいっす!」

 

小豆色の髪をした少女はシアっていう名前か。元気がいい子だね。

 

「……私はネリネです。よろしくお願いします」

 

蒼髪の女の子はフェイトみたいに人見知りかな?

 

「私はリコリス。リン―――ああ、ネリネちゃんのことなんだけど、私達姉妹なんだ。あ、シアちゃんとは従姉妹同士の関係だよ」

 

ネリネは赤い眼で、リコリスは紫の眼か。フェイトやアリシアと違って分かりやすいかも。

 

「俺は龍神空だよ。気軽に空って呼んでね。よろしく。でさぁ、俺が助けたってどいうこと?」

 

「ええッ!? 覚えてないんすか!?」

 

「……ごめん」

 

「私達が魔獣に襲われていた時のことです」

 

「魔獣? そう言えば前にそんなことがあったような……?」

 

記憶をたどるとそんなことがあった気がしなくもない。

 

「あ、ティアマットがその後に来たじゃん!」

 

リコリスが重要なことを思い出したように告げた。

 

ティアマット……? 

 

「あ! あの時の女の子達か! 思い出した!」

 

「……やっと思い出してもらえたっす」

 

呆れたように呟かれた。会ったのはほんのちょっととはいえ少し前のことを忘れられていてショックだったみたいだ。

 

「ごめんごめん。あの時はティアマットに夢中だったから。アハハ……」

 

「ま、何はともあれ改めて――――」

 

『助けてくれてありがとうございました!』

 

「いえいえ、女の子を護るのが男の子の役目です。お役に立てたのならそれだけで十分です」

 

「フフ、何だか昔話に出てくる騎士(ナイト)みたいですね」

 

ネリネが俺の行動を騎士に例えていた。

 

「そしたら、三人はお姫様(ヒロイン)ってことだよね?」

 

「それいいかも。それでその内恋に発展したりして……」

 

「ないない。俺なんかじゃお姫様達に全然釣り合わないよ」

 

周りには俺なんかじゃもったいないくらいの将来有望な少女がたくさんだ。

 

「そんなことないよ! 空君の戦う姿とってもカッコ良かったもん!」

 

「そ、そっか。ありがと。そう言われると嬉しいよ」

 

といった風に仲良く談笑していたら、フォーベシイさんが入って来た。

 

「空ちゃん、君にお礼がしたいんだけど何か欲しいものはないかい?」

 

「もちろん俺の方もさせてもらうぜ。何でも言ってくれ」

 

何でもって言われると困るんだよなぁ……。っていうかたまたま偶然助けただけだからそこまでしてもらう必要なんてないのに。

 

「じゃあ、娘さんを下さい」

 

なんて冗談を言ってみたら二人が固まった。あと殺気がすごい。主に十香達からの。

 

ふむ。これはやらかした感があるな。

 

「空様!? 何を言ってるんですか!?」

 

「そそそ、そうっす! いきなりどうしたの!?」

 

「もしかしてホントに恋しちゃったの!?」

 

三人共顔を真っ赤にしてかなり慌てていた。

 

「まっさかー。冗談に決まってんじゃん」

 

まずは誤解を解くことにした。このままでは俺の命が危ないと思う。

 

『え!?』

 

「さっきも言ったでしょ? 俺なんかじゃ釣り合わないって」

 

『そ、そうなんだ……』

 

ちょっとふざけ過ぎたかな? 

 

「……わかった。空ちゃんを婚約者とまでは行かないけど、婚約者候補にしようか」

 

「……そうだな。それで我慢してくれねぇか? 流石に知り合ったばかりだしな」

 

二人は何かを決めたのか、真面目な顔で言ってきた。

 

あれー? 俺、冗談だって言ったんだけどなー。おかしいなー。

 

「あ、あの、俺、冗談――――――」

 

「みなまで言うな空殿! 分かってる! 分かってるからな!」

 

「え?」

 

ごめんなさい。俺は何一つ分かってないんですけど……。

 

「うんうん! 僕にも分かるよ!」

 

「だから、何がですか!?」

 

二人して頷いているだけなので、俺にはさっぱり分からない。

 

「照れることはないんだよ? 僕達は君の気持ちは分かってるからね」

 

「ああ、そうだな。空殿は―――――」

 

「ネリネちゃんとリコリスちゃんに――――」

 

「うちのシアに―――――」

 

 

 

 

 

『惚れてるんだよ(な)!』

 

 

 

 

 

「……………………は?」

 

『……………………え?』

 

二人の息ピッタリの台詞に俺達は固まった。

 

「いやーうちのシアは天界で一番可愛いからなー。空殿が惚れるのも分かるぜ!」

 

「それを言うならネリネちゃん達だって冥界で一番可愛いからね! 惚れないはずがないよ!」

 

親バカなのか自分の娘達を自慢しながらも二人の会話はドンドン進んで行く。

 

「いや、だから――――」

 

「いいんだ! みなまで言うな! 俺達は全部分かってるからな!」

 

絶対に何も分かってないですよね!?

 

「俺は別に――――」

 

「惚れてないって言いたいんでしょ?」

 

「え、あ、そうです」

 

やっと分かってくれた……。さっきのは冗談だったのか。

 

「その年頃で理解するに少し難しいもんね。誰しも最初はそんなもんだよ」

 

「だが、俺達は全部お見通しだぜ! 空殿のシア達への熱い想いにな!」

 

やっぱり何も分かってないよ!

 

「いや、だから、俺は――――」

 

『みなまで言うな、みなまで言うな!』 

 

さっきからみなまで言うなって二人の中で流行ってるんですか!?

 

「さ、今から空ちゃんはネリネちゃん達の婚約者候補だよ」

 

「きっとシア達と仲良くなれると思うぜ!」

 

そう言い残して、二人は笑いながら部屋を出て行った。

 

「三人共ごめん! 俺の所為でこんなことになって……」

 

「き、気にしないで欲しいっす!」

 

「私達も最初は驚きましたが……」

 

「でも、お父さん達、勝手に決めちゃうなんて酷いよね~」

 

「ホントにごめん……」

 

俺があんなことを言わなければよかったと今更後悔しても遅いのだが。

 

「で、でも! 空君となら……その……いいかもってちょっと思ったりしなかったり……」

 

「それに、私達と同い年の男の子なんて今まで会ったことありませんしね」

 

「ま、別に無理することはないよ。気楽に仲良くしていこうよ♪」

 

「うん、ありがと。これから友達として仲良くしてくれると嬉しいな。あ、ところでさ。あの紅い髪の女の子って誰?」

 

見た感じからすると恐らくあの娘何だろうけど……。

 

「あの女の子はサーゼクス様の妹のリアスちゃんです! 今呼ぶっすね」

 

やっぱりか!

 

俺の予感が当たると、シアがリアスを連れて来た。

 

「どうしたの、シア? ああ、あなたがお兄様と戦ってた空ね?」

 

「どうして俺の名前――――ってなのは達から聞いたのか」

 

俺が戦ってる時になのは達と仲良くなったみたいだった。

 

「ええ、そうよ」

 

「ふーん」

 

「……なに? どうかしたの?」

 

俺がリアスを見つめていると怪訝そうな顔をしていた。

 

「あ、ごめん。ただ、可愛いなーって思ったぐらいだから。もちろんシア達も含めてね」

 

『か、可愛い!? やっぱり私達に……』

 

「……あなたって誑し? それとも天然?」

 

三人は顔を赤くして俯いてしまったが、リアスにはジト目で睨まれた。

 

「え!? 何で!?」

 

「だって、初対面の女の子に可愛いなんて普通言う?」

 

「……それもそっか」

 

実際にイリヤに言ったことがあるけどね……。こういうのって黒歴史になるんだろうか?

 

「そんなことよりも空。将来私の眷属にならない?」

 

「ヤダ」

 

「む、どうしてよ」

 

俺の答えが気に食わなかったのか、少しムスッとしていた。

 

「だって、なる理由がないもん。それに眷属って何?」

 

まあ、ホントは知ってるけど……。

 

「眷属っていうのはね、上級悪魔の主に仕える僕よ。それで眷属を集めてレーティングゲームに出て競い合うの。空は強いから活躍出来ると思うわ。どう? 眷属になってみたくなった?」

 

「全然」

 

それだけでなるか! そもそも悪魔になりたくないし。

 

「どうしてよ!」

 

「眷属になるってことは何かしらあるんでしょ? 例えば、眷属になる奴は悪魔になるとか」

 

「ええ、そうよ。眷属になって貰うには悪魔に転生しなきゃいけないの」

 

「だったら、尚更嫌だよ。俺は人間でいたいもん」

 

『すでに人間を辞めているがな。(そもそもこいつが人間かどうかも怪しい……)』

 

「(うるさい! 俺はれっきとした人間だわ!)」

 

「そんなのいいじゃない! 寿命だって1万年ぐらいになるのよ!」

 

「悪魔になったら本でよくあるみたいに光とか十字架とかダメそうじゃんか」

 

「それはそうだけど……」 

 

「1万年も生きる気ないし、初対面の人にそんなこと普通言う?」

 

さっきの意趣返しのつもりで言った。

 

「む~! いいじゃない! 私の眷属になりなさいよ!」

 

おう……こりゃ見事にキレてますね。我が儘だなぁ。

 

「絶対に嫌だね。そもそもどうやって俺を悪魔にするの? 君はその手段を知ってるの?」

 

この歳のリアスはまだ悪魔の駒(イーヴィル・ピース)持ってないはず。

 

「うッ……それは……」

 

案の定リアスは言葉に詰まっていた。俺の予想通り、駒は持っていないのだ。

 

「ということは出来ないって事でしょ?」

 

「だから将来よ! 私が眷属を作れるようになった時に、あなたが他の人に奪われたら嫌だから今のうちにキープしておくの!」

 

メッチャ我が儘だなー。サーゼクスさんやシア達も後ろで苦笑いしてるし。

 

「そっか。言いたいことは分かった」

 

「じゃあ、眷属に――――」

 

「だが断る」

 

「なッ!」

 

決まった……。今まで皆に途中で邪魔されてたから全然言えたことのないセリフが、今ようやく言えたよ! 使い方が若干怪しい気がしなくもないけど。

 

「そんな訳で諦めて」

 

『どんなわけだよ……』

 

「(細かいことはいいの!)」

 

九喇嘛に呆れられながらツッコまれた。

 

「諦めないわよ! あなたのこと絶対に眷属にしてやるんだから!」

 

俺のどこがいいんだか……。いや、確かにこの世代じゃ強い方になるのかもしれないけど、君には将来スケベだけど熱血で頑張り屋さんの主人公が眷属になってくれるよ。スケベだけど……。お、これが大事なことなので二回言いましたって奴だね!

 

どうでもいいことを考えつつ、リアス達から離れて十香達の方に行った。

 

「ごめん、負けちゃった」

 

「あまり気にするな! 空は良く頑張っていたと思うぞ!」

 

「……想像してたよりは良かったんじゃない?」

 

「とっても……カッコ良かったです……ッ!」

 

「これからもっと頑張れば勝てるはず」

 

「次はリベンジなのじゃ」

 

「あれだけやれれば十分であるぞ! まあ、我なら余裕で勝てたがな!」

 

「指摘。耶俱矢は空が戦ってる時に一番ビビってました」

 

「ハァ!? そ、そんなことないし! 超余裕だし!」

 

目がメッチャ泳いでるよ、耶俱矢。

 

「いい試合だったよー。漫画のネタになったよ」

 

「ハッ! これは落ち込んでるだーりんを慰めて好感度アップのチャンス!」

 

「大丈夫。上がらないから」

 

「お疲れ様。課題はまだまだあるけど十分な戦いだったわ。ただ――――」

 

「?」

 

「さっきの婚約者だのなんだのみたいな話はどういうことかしらァ?」

 

ヤバい! 皆さん怒ってらっしゃる!

 

「えーっと、あれはですね単なる冗談のつもりだったんですけど何故か本気だと勘違いされてしまったわけですのでどうか天使を出さないで下さい死んでしまいます」

 

綺麗なジャンピング土下座を決めて謝った。

 

『……チッ……』

 

今舌打ちした!? え、俺もう少しで死んでた!? 怖ッ!

 

恐怖のあまりなのは達の方に逃げた。

 

「家でじっくりやってあげるわ……。フフフ……」

 

この時、十香達が歪んだ笑顔をしていたことに気が付かなかった。

 

「あ、空君! 試合お疲れ様。戦ってみてどうだった?」

 

「いや~魔王って強いね~って感じだよ。まだまだ遠い存在」

 

「チートの空でもそう思うんだ……」

 

失礼な! 魔王の方がチートだよ!

 

「しかも今まで見たことない姿だったわね。アレは何?」

 

「神器と霊装を同時に使ったの。負担が半端ないけどね……」

 

「ホンマ無茶し過ぎやで」

 

「そうだね。でも、それだけ挑んでみたかったんだ」

 

「あんたは馬鹿なの? いや馬鹿だわ」

 

ヒドッ! 他の皆もうんうんと頷かないでよ!

 

「空君の無茶は今に始まったことじゃないの」

 

「それよりもさっきのシアちゃん達のことはどういうことなのかなぁ?」

 

「詳しく聞かせて欲しいから、ちょっとO☆HA☆NA☆SIしよっか」

 

皆の目からハイライトが消えて笑顔なのに怖い顔だった。

 

「……ちなみに拒否権は?」

 

『ある訳無いよ』

 

あかりとシグナムさん達以外から有罪の判決を下された。

 

「フッ……逃げるん―――――!?」

 

か、体が動かない! バインド!? いつの間に! 

 

「た、助けて! ザフィーラさん!」

 

「……ワン。〈……スマン。無理だ〉」

 

犬形態(本人曰く、狼)のザフィーラさんに見捨てられた。

 

「ティアマット助けて!」

 

自分の使い魔に助けを求めたが、

 

「諦めなさい♪」

 

とびっきりの笑顔であっさり見捨てられた。

 

こんな時はあの言葉を叫びましょう。それでは皆さんご一緒に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不幸だァーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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