デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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サッカーやります!

サッカーやります!

 

Side空

 

朝早くに起きて、河原のサッカーコートがある場所に俺はいた。他にも昨日一緒にいたメンバーにヴァーリや士郎さんもいる。

 

「おはよう、空君、ヴァーリ君。今日は頼んだよ」

 

「出番があればですけどね」

 

「なくても問題ないけどな」

 

「そ、そうかもしれないね。ハハハ……」

 

士郎さんが監督をする少年サッカーチームの試合に出ないかと誘われていたのだが、俺達はあまり乗り気じゃなかった。

 

「お前ら! 今日の試合、我らが聖祥の美少女達に捧げるぞ!」

 

『おー!』

 

応援に来ているなのは達にいいところを見せようとチームの少年達がやる気十分だからだ。

 

「別にあんたらの応援に来たんじゃないんだけどね」

 

「確かにそうだけど、それは言っちゃダメだよ、アリサちゃん」

 

「すずかちゃんも酷いと思うよ……」

 

ベンチで会話するなのは達の声はプレイヤー達には届いてなくてよかったと思った。聞いたらやる気下がりそうだしな……。

 

「ところで相手は強いんですか?」

 

ゲーム開始の笛が鳴ってから士郎さんに聞いてみた。

 

「ああ、この辺りでは強豪チームと言われているよ」

 

「あいつら勝てるのか……?」

 

「そのための君達でもあるんだよ」

 

「そんなに期待されても困りますよ」

 

「練習試合だから負けても構わないさ」

 

なら、もし出ても多少は気楽にプレー出来るな。

 

「ダメよ! あんたは全力でやりなさい! そして私達に勝利を捧げなさい!」

 

俺の心を見透かしたようにアリサが無茶苦茶なことを言ってきた。

チームのメンバーに向けていた態度とは明らかに違う。

 

「えー!? あいつらは良くて俺はダメなの!?」

 

『ダメ!』

 

なんでさ!

 

「私は空君の頑張ってるところ見たいな♪」

 

「むぅ……わかったよ。俺も負けるのは嫌だし、全力でやるよ。でも、出れたらね」

 

「士郎さん! 空を出して下さい!」

 

「流石に始まったばかりでは無理だよ……」

 

アリサの我が儘に士郎さんは困っていた。

 

「落ち着きなよ、アリサ。士郎さんが困ってる」

 

「……分かったわよ。ごめんなさい、士郎さん」

 

士郎さんは「気にしてない」と言って試合しているプレイヤー達に指示を飛ばした。

試合の流れを見ると相手の方がシュートチャンスが多い。

キーパーがナイスプレーをしているが、点が入るのも時間の問題だろう。

それから気合が空回りして、プレイヤー達のスタミナの消費が激しい。

 

これはマズイな……。

 

そして俺が予感していた通り、ゴールを決められて前半を終了した。

皆にドリンクを配っていたら相手チームから笑い声が聞こえた。

 

「あいつら弱くね?」

 

「こっちは全然本気出して無いのにな!」

 

「手抜きでも勝てるぜ!」

 

どれもこっちのチームを馬鹿にした内容だった。

 

「あいつら!」

 

キレたアリサが相手チームに行こうとしたがなのは達に押さえつけられた。

 

「放しなさいよ! あいつらをぶっ飛ばさないと気が済まないわ!」

 

アリサが怒るのも無理ないか……。俺もムカついたし。

 

「士郎さん」

 

「ああ、後半から空君、ヴァーリ君をFW(フォワード)で出すよ。()()()()()()()()()でやってくれ」

 

どうやらムカついているのは士郎さんも同じようだ。

 

『はい』

 

ハーフタイムが終わり、メンバーを交代して俺とヴァーリがフィールドに立った。

 

「今更交代かよ?」

 

「でも、弱そうだな」

 

「サッカーできんのか?」

 

相手がまた俺達を馬鹿にしてきたが無視した。

 

「さてさて、俺達の戦争(サッカー)を始めようか」

 

後半戦を始める笛が鳴った。

相手ボールから始まってドリブルで攻めてきたが、ヴァーリが簡単に奪った。

 

「空!」

 

ヴァーリからパスをもらい今度はこっちから攻めた。

 

『空(君)! イケー!』

 

応援されたら頑張るしかないじゃん! 周りの男どもからの視線は痛くなったけど!

 

俺とヴァーリの二人がワンツーでドンドン抜き去り、ゴール前まで行った。

 

「ここは通さない!」

 

相手DF(ディフェンス)が止めに来たが、ボールを踵で上げて相手の後ろに落として抜いた。

 

残るはキーパー!

 

最後の砦―――GK(ゴールキーパー)が前に出てきたところで思いっきりシュート―――

と見せかけてループシュートであっさりキーパーの背中を越えてゴールに入った。

 

「ナイスシュートだ、空!」

 

「そっちもナイスパス!」

 

二人で拳をコツンと軽くぶつけて喜んだ。

ようやく周りの人達もゴールが決まったことに気付いて歓声が上がった。相手は点を入れられたことに驚いてたけど。

 

「すごいな! 二人共!」

 

「カッケー!」

 

「あんな動き見たことねぇよ!」

 

「俺達も負けていられないな!」

 

俺達のプレーで仲間が活気づいた。

 

「たかが一点だ! 取り返すぞ!」

 

『おー!』

 

点を入れられて向こうにもようやく火が付いたようだ。再び相手ボールから始まった。

 

「おい! こっちだ!」

 

「ああ! ―――なっ!?」

 

「よっと。ヴァーリ!」 

 

俺は相手のパスをカットして、ドリブルで二人抜いてヴァーリにパスした。

 

「空! 決めろ!」

 

ヴァーリはサイドから攻めると、中にセンタリングを上げた。

 

む、少し低いな……。

 

一旦、胸で止めて少し上に上げてからもう一度跳び、その場で体を後方宙返りの要領で回転させつつ、ボールを蹴った。要するにオーバーヘッドシュートだ。

蹴られたボールは地面をワンバウンドして、ゴールネットを揺らした。

 

「オーバーヘッドとは驚いたぞ」

 

「お前だってやろうと思えばできるだろ?」

 

さっきと同じように拳を合わせて、今度はなのは達がいるベンチに向かってピースした。

 

「さあ、まだまだ点取るぞ、ヴァーリ!」

 

「そうだな!」

 

Sideout

 

 

 

 

 

Sideアリサ

 

それからも空達の猛攻は続き、試合は終わった。結果は6-1という圧勝だった。

空とヴァーリが3得点ずつ取ってハットトリックした。

これだけだと空とヴァーリが頑張ったようにしか聞こえないと思うけど、チームの皆も前半の空回りがなくなり、全力で互いのフォローやパス、ディフェンスをして頑張っていた。特にキーパーはホントにすごかった。

 

相手は負けて大分落ち込んでたわね。ハッ、いい気味だわ! それにしても……空はすごく楽しそうにサッカーをしていたわね。何て言うか、普段と違う一面、とでも言えばいいのかしら?

喜ぶときは全力で喜んで、悔しいときも全力悔しがって、なんだかいつも以上に表情が豊かだったわ。

オーバーヘッドを決めた後にこっちに向いてピースをしたときの年相応の満面の笑顔に私は、いや私だけじゃなく、空のことが好きな娘は見惚れてたと思うわ。

 

何だってあいつはあんなにカッコイイのかしらね!

 

はぁ……これからも空を好きになる娘が増えるんだろうな………。考えただけで頭が痛くなるわ。

って私はさっきからなに言ってんのよ!? 考えるのやめやめ!

 

Sideout

 

 

 

Side空

 

「皆、お疲れ様! よく頑張ったな! これから祝勝会を翠屋でしよう!」

 

『はい!』

 

俺達は片づけをして翠屋に向かった。

行く途中でなのは達に今日のプレーを褒められまくってかなり恥ずかしかった。

 

たまにはこういうのもいいな。

 

不思議と今までにないくらい楽しかったと今日のサッカーで感じた。

 

 

 

 

 

翠屋に着くとテーブルにたくさんの食事が乗っていた。

 

「早速食べたいところだが、誰かに一言貰おうか。誰がいいかな?」

 

『龍神以外いないです!』

 

「ハハハ! 満場一致でご指名だよ、空君!」

 

「俺ですか!?」

 

急な指名に驚いた。

 

「さあ、早く言わないと桃子の美味しい料理が冷めてしまうよ?」

 

料理を人質に取るとは……! 卑怯です! 士郎さん! それが大人のやり方なんですか!?

 

周りを見れば皆が俺を待っていた。

 

「……分かりましたよ。それでは僭越ながら一言言わせてもらいます。―――――――――――――――ご飯食うぞォォォッ!」

 

『おおー!』

 

『もっと真面目なこと言いなさい!』

 

なのは達はズッコケて文句を言ってたが皆はご飯を食べるのに忙しくて気が付いてない。

 

「ふぅ~いい仕事した~」

 

『どこが!?』

 

「そんなことないさ。な? ユーノ」

 

「キュ!〈僕に聞かないでよ!〉」

 

「ほら、ユーノもこう言ってることだし問題ない」

 

『絶対に言ってない!』

 

「キュキュ!〈言ってないよ!〉」

 

「まあまあ皆も食べようよ。美味しいよ?」

 

『食べる!』

 

なのは達も食事を始めて、あっという間に楽しい時間は過ぎて行った。

 

 

 

 

 

解散したあとの帰り道で俺達はキーパーとマネージャーの子が二人で帰っているのを目撃した。

 

「あれってチームの人だよね?」

 

「そうだね。あ、もしかして!」

 

「アリシア、もしかしなくてもアレよ」

 

? 何がアレなんだ?

 

事情を察したらしい女子だけで盛り上がり始めた。

 

「アレって何?」

 

「いや、俺にも分からない」

 

どうやらわかっているのは楽しそうに話す女子達だけのようだ。

 

「ねぇねぇ、付けてみない?」

 

「面白そうね!」

 

「ダメだよ! 邪魔しちゃ悪いよ!」

 

「そうだよ! 二人が可哀想だよ!」

 

ノリノリのアリシアとアリサをすずかとフェイトが止めに入った。

 

「すずか、フェイト、考えてみなさい。将来のための勉強になるんじゃない?」

 

『!? 皆行くよ!』

 

『変わり身早ッ!』

 

とまあ、なんだかんだ言って付けることにした俺達であった。

 

 

 

 

 

二人は公園の中の大きな木の下にいた。

キーパーの人が光輝く石をマネージャーに渡していた。

 

「なんでプレゼント? あ、誕生日だったとか?」

 

「それが妥当じゃないか?」

 

『はぁ……』

 

『なんで溜息!?』

 

その場の女子達に溜息を吐かれた。

 

「あんた達がいかに残念なのかが分かったわ」

 

「少しは勉強した方がいいと思うな……」

 

ええぇッ!? 酷い言われよう!

 

「ってあれってジュエルシードじゃん! 発動したら大変だよ!」

 

『!?』

 

アリシアの言葉で気付いたがすでに手遅れだった。

ジュエルシードが発動して、光を放ち二人を包んだ。

光が収まるとジュエルシードは大きな樹木に変化していた。

 

「ユーノは結界! 愛衣となのははアリサとすずかと明日奈を安全なところへ! ヴァーリと俺は街に広がらないように根っこの破壊! アリシアとフェイトで二人を探して!」

 

素早く指示を出して、体勢を整えた。

 

『分かった!』

 

「ってヴァーリのことつい入れちゃったけど大丈夫か?」

 

「ん? ああ、全然いいぞ」

 

「サンキュー!」

 

ヴァーリがいればやりやすい!

 

禁手化(バランス・ブレイク)!』

 

《Vanishing Dragon Balance Breaker‼》

 

『セットアップ!』

 

「今回はダブル白龍皇だ!」

 

白くなったバリアジャケットに宝玉が埋まった軽い白銀の装甲、形の変わった白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)に合計十機ほど浮かぶ白銀のドラグーン、髪は白くなり眼は宝玉と同じ青に染まった。それが俺の亜種の禁手(バランス・ブレイカー)だ。

名前は白龍皇の(ディバイン・ディバイディング)月光神翼(・ルナティックフェザー)

 

「その力の空とも戦ってみたな」

 

「それだったら今度やろうよ」

 

戦う約束をして、二人で樹木の根っこを破壊し始めた。

 

「大したことないな。これがジュエルシードの力なのか?」

 

『だが、油断はするなよ、ヴァーリ』

 

「そーゆこと。まあ、ヴァーリなら問題ないね。アリシアの援護も頼むよ」

 

「了解した」

 

《Half Dimension‼》

 

俺とヴァーリで半減する空間を広げて、猛スピード成長し続ける樹木の成長を縮めた。

 

「これで被害も抑えられるな」

 

まだ油断は出来ないけど、これで十分だろう。

 

「アリサちゃん達を安全なところに置いて来たよ」

 

アリサ達の移動が終わったなのはと愛衣がこっちに戻って来た。

 

「お疲れ。あとは二人を探さないと……」

 

フェイト達は探すのに手こずっている。

 

「それだったら私が魔法で探してみるね!」

 

「え? そんなこと出来るの?」

 

《出来ますが、時間と集中力が必要です》

 

「じゃあ、それまで俺が護るよ」

 

敵も小さくなってるから出来るでしょ。

 

「レイジングハート!」

 

《了解です》

 

桃色の魔方陣がなのはを中心に広がり、少しづつ形成されて行く。

その間、俺はなのはを樹木から護っていた。

 

《探索完了まで残り5……4……3……2……1……探索完了》

 

二人の探索が終わったことをレイジングハートが告げた。

 

「なのは、このまま封印しちゃって。〈フェイト、アリシアは退避〉」

 

「わかった!」

 

『〈了解!〉』

 

フェイトとアリシアが退避して、残りはなのはに任せた。

 

「封印には接近しないとダメだ!」

 

「大丈夫! レイジングハート!」

 

《Shooting mode》

 

なのはの呼びかけにレイジングハートの形が変わり、槍のようになった。

 

「ディバイン……バスター!」

 

《Divine Buster》

 

レイジングハートの前に桃色の魔法陣が展開され、そこに魔力が充填されいく。

一秒程で充填が終わり、即座に桃色の砲撃魔法を発射。樹木を跡形もなく消滅させた。

どうやら今の砲撃で封印が出来たみたいだ。

 

『…………』

 

それを見ていた誰もが開いた口が塞がらない状態だった。

正直言って、俺かヴァーリ一人でも封印出来た。街への被害を抜きにすればの話だが。

一応、なのはの力をつけるためにやらせたのだが、なのはがここまで出来るとは思ってもいなかった。

 

たった一撃……! これが主人公の力なのか!?

 

「す、すごいね……」

 

「えへへ~」

 

なのはは封印出来て嬉しそうにしていたが、俺の背中に冷汗が流れた。

 

もし、あの砲撃が自分に向けられたら防げる自身が無い……かも。

 

戦闘好きのヴァーリでも顔を青褪めさせていた。

 

「か、帰ろっか……」

 

『うん……』

 

「にゃ!? 皆のテンションが低い! な、なんで!?」

 

誰もなのはの所為とは言えず、トボトボ帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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