デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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俺、キレます!

俺、キレます!

 

Side明日奈

 

私―――結城明日奈は気が付くと、薄暗い部屋で椅子に座っていた。

 

……あれ? ここどこだろう?

 

見覚えのない空間に戸惑っていました。

 

確か……さっきまでアリサちゃんとすずかちゃんとパーティーで会って話したのに……。

ッ! そうだ! 私達は黒い男の人達に無理やり車に押し込まれて、それで……。

 

そこからの記憶は無かった。気絶させられたのだろうと考えた。

 

アリサちゃん達はどこかな……。

 

立ち上がろうとして、何かに縛られていて動くことが出来なかった。

 

「アリサちゃん! すずかちゃん! いたら返事して!」

 

幸い声は出せたので、二人がそばにいるかを確認した。

 

「……ん? ……あれ? ここは……?」

 

「わ、私達攫われちゃったの……?」

 

二人の声が返ってきて、私は安心した。

 

「多分、そうだと思う……」

 

『明日奈(ちゃん)!』

 

暗くて姿は見えないが私の左辺りに二人は居るみたいだった。

 

「これからどうすればいいのかな?」

 

「私達がいなくなったことに気付いて、今頃探してるわよ!」

 

「そうだね。でも、どうして攫われたんだろう……」

 

「お金……だろうね。これでも私達はお嬢様ってわけだし」

 

「ま、それが妥当ね」

 

私達が呑気にしゃべっていたら、突然、扉を開く音がして光が差し込んだ。

 

「おやおや、お目覚めですか、お嬢様方」

 

見知らぬ男性が数人の黒服の男を連れて入って来た。

 

「あんた達が攫ったの!?」

 

「ええ、そうですよ。ああ、紹介が遅れました。私は横田と申します」

 

男性は横田と名乗って来た。

 

横田……? 今日のパーティーに参加していた人!

 

「……何が目的ですか?」

 

「そんなに睨まないで下さいよ。目的は彼女だけなので、用が済めばあなた方二人はすぐにでも解放しますよ」

 

横田さんが彼女と言って指をさしたのは、すずかちゃんだった。

 

すずかちゃんだけが目的……?

 

名指しされた瞬間、すずかちゃんの表情が強張っていた。

 

「どうしてすずかのことを狙うのよ!」

 

「ふむ……その様子ですと、彼女の正体をご存じないようですね。彼女は―――」

 

「やめて! それ以上言わないで!」

 

横田さんが何かを言いかけた所で、すずかちゃんの悲鳴が響いた。

だが、横田さんは気にすることなく、続きを言った。

 

「彼女は夜の一族という吸血鬼なんですよ」

 

……え、吸血鬼? すずかちゃんが?

 

頭が追い付いていない中横田さんは続けた。

 

「化け物が平気な顔して日常を過ごしている。なんて笑える話でしょうか。ハハハハハ!

どうです? お二方は幻滅したのでは? 今まであなた達を騙していたのですよ?」

 

「……い…………な……」

 

アリサちゃんが俯いて何かを言っている。

 

「おや? 何ですか? 怖くなりましたか?」

 

「関係無いって言ってんのよッ! この、ハゲッ!!」

 

そうだ……そんなの関係ない!

 

「そうです! すずかちゃんは私達の友達です!」

 

「アリサちゃん、明日奈ちゃん……」

 

アリサちゃんが思いっきり罵倒していた。それを聴いて横田さんは頬を引き攣らせていた。

 

「私はまだ二十代です! 禿げてません! ムカつくガキですね……!」

 

「横田さん、他の二人はこっちで貰っても?」

 

「ん? ああ、構わん。好きにしてくれ」

 

横田さんが許可を出すと、二人の男がアリサちゃんと私の方に一人ずつやってきた。

 

「なあ、俺、こっち貰っていいか。どうせ暇だし遊びてぇんだよ」

 

「お、いいね。そいじゃ俺はこっちの態度のデカい娘に教育してやるか。グヘヘ」

 

「何よ! 気安く近寄るんじゃないわよ!」

 

「やめて! 二人には何もしないで!」

 

アリサちゃんやすずかちゃんは相手を怒鳴りつけているが、私は怖くて声も出なかった。

男が手を伸ばしてきてもう駄目だと思って、目を閉じた。

 

……怖い……誰か…………誰か助けて………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――――――空君ッ! 助けてッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心の中で来るはずのないと分かっていながら、ふと頭に思い浮かんだ少年の名前を大声で叫んだ。

瞬間、強い風が吹いた。

 

あれ……?

 

私に向かって伸びてきていたはずの手は何時まで経ってもやってこなかった。

気になって目を開くと、二人の男がいつの間にか倒れていた。

 

「お、おい、お前! どっから入って来た!?」

 

横田さんが誰かに向かって叫んでいた。

その方に目を向けると―――。

 

「どこって、普通に正面からだよ」

 

橙色の髪に腕や足に拘束具を付けた男の子がいました。

 

この声、もしかして―――

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side空

 

三人を攫った車を追い掛けると、街の郊外にある港の倉庫に着いた。

 

「ここか。見張りがいるね……」

 

『提案。私達八舞の力で吹き飛ばしましょう』

 

『我が眷属の友に手を出すなど万死に値する!』

 

「ああ、俺達の戦争(デート)を始めようか」

 

魔剣と聖剣を創りだし、風を纏って見張りの男達が何かを叫ぶ前に気絶させていった。

 

「やっぱ、八舞は速いから速攻で倒しやすいね」

 

『当然よ。だが、我らの力はこの程度ではない』

 

『歓喜。そう言ってもらえて嬉しいです』

 

あとは中だけか……。

 

確認しようとしたところで、

 

「――――――――――――空君ッ! 助けてッ!」

 

「〈神威霊装・八番(エロヒム・ツァバオト)〉!」

 

明日奈の声を聴いた瞬間に霊装を纏い中に入って二人の男を全力で蹴り飛ばした。

 

「お、おい、お前! どっから入って来た!?」

 

いきなり現れたのにビックリしたのか腰を抜かした男が叫んでいた。

 

「どこって、普通に正面からだけど」

 

「嘘だ! 外には何人もの見張りがいたんだぞ!? お前みたいなガキに何が出来る!」

 

「……だから倒したってことじゃん。……ところで、あんたが誘拐犯のリーダー?」

 

「あ、ああ、そうだ! 私が命令した! この化け物を手に入れるためにな!」

 

立ち上がった男はすずかの髪を掴んで見せつけてきた。

すずかが化け物ね。出会った時から人間ではないと薄々そんな感じはしていた。

 

「…………」

 

でも、だからどうした。

 

「どうした!? こいつが化け物と知ってこグオォッ!?」

 

男が最後まで言い切る前に俺は腹を殴りつけて軽く吹っ飛ばした。

 

「……立てよ。死なないように手加減したんだからさ」

 

「ゴホッ、ゴホッ……ま、待ってくれ! と、取引をしないか!? 君に二人は返そう! だからそこの化け物と私のことは見逃してくれないか!? 頼む! もし不満なら金! 女! 名声! 何でも君に渡そう! だからどうか!」

 

呆れた……。自分が不利になると今度は命乞いか……。

 

「……わかった……なんて言うと思った? ……お前は俺を怒らせたんだ!」

 

俺を中心に風が吹き荒れ、一歩一歩男の下に近づいて行く。

 

「ヒィッ! だ、誰か助けてくれ!」

 

逃げる男が壁に寄り掛かった時、ポケットから何かが落ちた。

 

ッ! ジュエルシード!? しかも五つも!

 

慌てて回収しようとしたが遅かった。男の歪んだ願いを叶えてしまったのだ。

そしてジュエルシードの発動によって男の姿が人間から異形のものへと変わっていった。

 

『ナ、ナンダコレハ!? アハハハハハ! 力ガ! 力ガ溢レテクルゾォッ!』

 

肌はドス黒く、体は服を破り、腕や足は太く、3m近く巨大になった。

 

『怪物……だな』

 

「……ああ、そうだね」

 

化け物って言ったすずかよりもよっぽど化け物してるよ。

 

『死ネェッ! クソガキガァッ!』

 

もはや怪物としか言いようがない男が殴り掛かって来た。

 

「……鈍い」

 

『ガハッ!』

 

男の身長よりも高く跳んで躱し、頭に踵落としを入れて地面に叩き付けた。

 

『マ、マダダァッ!』

 

だが、すぐに立ち上がり俺に掴みかかってきた。

 

「……あんたに俺は捕まえられないよ」

 

腕を薙いで発生させた暴風が怪物をよろめかす。

そのまま腹に一撃入れて、怯んだところを回し蹴りで吹き飛ばした。

 

『クソッ! ナゼダ! ナゼ勝テナイ!? ……コウナッタラ! オイ小娘! 人質ニナッテモラウゾ!』

 

「い、痛い! 放して!」

 

男はすずかを掴み、倉庫の天井を突き破って逃げ出した。

 

「逃がすか!」

 

風を纏って空を飛んで追い掛けると、怪物の背中から歪な羽が生えて飛んでいた。

 

『空、全力でヤっちゃえ!』

 

『賛成。思いっきりヤっちゃってください』

 

「うん、これで終わりだ」

 

八舞の天使―――颶風騎士を発顕すると、左右の肩に無機質の翼が生え、腕を覆いつくす手甲が出現した。

二つの翼が合わさって、弓のような形状を形作った。

次いで、夕弦のペンデュラムが弓の弦となり、耶俱矢の巨大な槍が矢となって(つが)えられた。

最大まで引いた弓を飛んでいる男に向ける。

そして。

 

颶風騎士(ラファエル)――――――【天を駆ける者(エル・カナフ)】‼』

 

俺達の声が重なって、巨大な弓を打ち放った。

その瞬間、今までで一番強い風が辺りを襲った。

余波で海は荒れ、港に置いてあったドラム缶が宙を舞っていた。

絶対にして無敵の一点集中攻撃は男を意図も容易く打ち抜いた。

 

「すずかを助けに行かないと」

 

落下する男の腕から滑り落ちたすずかとついでに壊れなかったジュエルシードをキャッチした。

 

「あ……そ、ら……く……ん」

 

それだけ言ってすずかは気絶してしまった。

 

無事か……。それにしても手加減したとはいえ良く壊れなかったな、ジュエルシード。

 

丈夫なジュエルシードに思わず関心してしまった。

気絶したすずかを抱えて、明日奈達のいるところに戻った。

すずかを寝かせて、明日奈達のロープを外すと二人にいきなり抱き着かれた。

 

「ちょッ!?」

 

『い、いきなり空に抱き着くなんて!』

 

『請願。後で抱きしめて下さい。いえ、抱きしめます』

 

二人の行動にビックリしてたら、泣きじゃくる声が聞こえた。

 

「……怖かった……ずっと……怖かったよ……」

 

「……もう皆に会えないって……思った……」

 

ど、どうしたらいいの!?

 

明日奈はともかく、普段勝気なアリサがここまで弱ってる姿にかなり動揺する。

 

「え、えっと、よ、よしよし、もう大丈夫だよ。怖くな~い怖くな~い」

 

霊装を解いて、二人が泣き止むまで抱きしめて頭を撫で続けた。

二人が落ち着いてからしばらくすると、すずかの姉の忍さんや恭也さんを始めとして、皆の家族がやって来た。

ついでにジュエルシード反応もあったから魔導師組も来ていた。

 

「事件は解決しましたよ」

 

「空、お前がやったのか?」

 

「えっと、それは……」

 

恭也さんは俺の力のことを知っているからなんとなく察しがついたのだろう。

答えたいところだけど事情を知らない人がいるから話しづらい。

 

「今はすずか達が先よ。私達の家に行きましょう」

 

忍さんの指示で皆は月村家にお邪魔することになった。

 

精霊の力を使って疲れてるけど、帰れる雰囲気じゃない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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