デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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異変解決です!

異変解決です!

 

Side空

 

『うぐっ……!』

 

カイラから発せられるオーラがより凶悪になった途端に戦況は変わり始めた。

二対一という有利な状況にもかかわらず、俺達は押され始めたのだ。

たった今も蛇を模ったような黒いオーラを鞭のようにしならせた攻撃に吹き飛ばされたところだ。

 

「あれなに?」

 

「こっちが聞きてえよ。俺の知るカイラはあんなドス黒い不気味な力なんて持ってないはずだ。……つーか、いくらなんでも強化され過ぎじゃねえか?」

 

体勢を整え、カイラに視線を向けたまま金髪の青年にあの力について問いかける。

カイラと知り合いの金髪の青年にもわからないらしい。

 

「博麗の巫女でもいれば少しは楽になると思うんだが……」

 

「霊夢さんなら休んでるんじゃないかな? さっき結構な数と相手してもらってたから」

 

「マジかぁ……。なら空の煌龍神化ってので一気に無理か?」

 

「無理。あの形態は一日一回しかできない」

 

今の俺では完全に使いこなせているわけじゃない。

そもそもアレは属性に特化しただけで、俺の能力値は龍神化の時と大して変わらないのだ。

例えば煌龍神化なら火と光の二つの属性と言った風にだ。

 

「となると厳しい戦いは避けられないわけだな」

 

「元からそうでしょ」

 

二人で一斉に駆けて、凶悪なオーラを纏うカイラを倒しにかかった。

 

Sideout

 

 

 

 

 

Sideフラン

 

ここからそう遠くない場所から爆発音が聴こえる。空が戦ってるに違いない。

 

「フランは誰を探してるニャ?」

 

「あの女妖怪よ」

 

そう、探しているのは私に空を攻撃させたあの妖怪だ。

カイラを倒すのは空に任せておけば大丈夫だと思うけど、あいつだけは私自身でやらねば気が収まらない。

 

見つけ次第破壊し尽くしてやる!

 

「フ、フラン様、顔が怖いですよ?」

 

「……ごめんなさい」

 

ウィスパーに怖いと言われて謝る。

 

落ち着け、落ち着け私。えーっと、こういう時は確か……そう! 深呼吸よ! 空も気持ちを切り替えるときには良いって言ってたもの!

 

「スゥー…………ハァー…………」

 

……うん、少しだけ心が軽くなった気がする。

 

ここは旧地獄と呼ばれる場所で私が足を踏み入れたことのない地域だ。引きこもりだったから近くの人里にすら行ったことないけど。

土地勘のない場所で動き回っても体力と時間の無駄だから考えて探さないといけない。

今は空とカイラが戦ってる。

他には何も起こっていないということはあの妖怪はどこかで戦いを見てる、と考えるのが妥当か。

そうなると良く見える高い場所にいるのだろう。

周りをキョロキョロ見回していくつか眺めが良さそうな場所を見つけた。

 

「今から二手に分かれて行動よ。私とジバニャン、コマさんで東側。タマモとウィスパーで西側の高い場所にそれぞれ行って」

 

「えー!? タマモちゃんこれ以上はしんどくて無理ですー!」

 

「はいはい。そういうの良いから」

 

ムカつく返答だけど予想通りだ。……正直なところ殴ってやりたいけど我慢よ。タマモを動かすには……。

 

「私のお願いを聞いてくれたら空にタマモを労ってもらうよう頼んでおくわ」

 

「ご主人様が私を労う……ですか?」

 

「ええ。例えば……一日中甘やかしてくれるんじゃないかしらね?」

 

タマモの耳がピコピコ動く。

 

よし、食いついた。

 

「膝枕やあーんはもちろん―――」

 

「(……ゴクリ)」

 

「―――添い寝だってしてくれるんじゃないかなー?」

 

「やります! このタマモ、精一杯務めを果たさせていただきます!」

 

「そう、ありがと♪ じゃあ、そっちで見つけたら教えてね。妖怪はウィスパーが知ってるから」

 

「はい! 行きますよ、ウィスパーさん! あ、フランさんにはこれを。念じれば私が持っている札と通信が出来ます。では!」

 

私に一枚の札を渡すなり、ウィスパーのにょろにょろの部分を掴んで走り去ってゆくのを笑顔で見送った。

 

「フフ、チョロい」

 

『(メチャクチャ悪そうな顔してる……)』

 

「さあ、私達も行くわよ!」

 

 

 

 

 

 

『こちらタマモです。一つ目の高いところは見つかりませんでした』

 

「ん。引き続きお願い」

 

『はーい』

 

タマモから貰った札を使っての通信を切って私達も捜索を続ける。

私達の方ももうすぐ一つ目に辿り着く。

 

「……いないわね」

 

森を抜けて一つ目の高い場所に辿り着いたが、誰もいなかった。

いきなり見つかるなんて思ってない。焦らずに探そう。幸いなことに空達が戦ってる影響なのか、妖怪や怨霊の姿は見当たらない。

 

「タマモ。こっちもダメだった。次行くわ」

 

『了解しました』

 

二度目の通信を切って、また探し始める。

数分後にタマモから通信が入ったが、そちらはまたもダメ。私の方も二つ目もダメだ。

 

魔力か妖力みたいなものすら感じられないのよね。

 

空から教わったことだけど、人間なら魔力とか霊力、妖怪なら妖力といった風に『力』は誰もが持ってるのだそうだ。もちろん個人差はあるから、それが弱ければ弱いほど探すことは困難になる。

 

「そう言えば……」

 

「どうかしたニャ?」

 

「あの妖怪ってどんな雰囲気だっけ?」

 

「どんなって……どんなズラ?」

 

コマさんがわからなくて首を傾げた。

 

今思い出すとカイラがものすごい存在感を放っていたから、あいつには強そうという考えは浮かばなかったのよね。……で、私は斬りかかった。あいつはカイラより弱そうだから私でも勝てると思って。

会話もしたけどやはり強そうには思えなかった。なんというかここにはいないような……。……ここにはいない?

 

「あ、そうか!」

 

「なにか分かったズラ?」

 

「ええ、あいつの居場所よ! タマモ! すぐに合流よ!」

 

タマモと落ち合う場所を素早く決めて、通信を切った。

 

 

 

 

 

十分程後、タマモ達と無事合流できた。

 

「それでお探しの妖怪はどこに?」

 

「それはね……カイラの中よ!」

 

「……フラン様? 嘘を吐くならもう少しまともな嘘を吐いていただけません? 呪いますよ?」

 

「私は大真面目よ! いいから聞きなさい! 恐らくあいつは人の心に入る能力を持ってる。現に私はそれをやられたわ」

 

「確かにフランはあの妖怪と戦って変にニャったけど、いつ能力に掛かったニャ? 俺っちは全然わかんニャかったニャ」

 

「それにフラン様が変になった途端に我々の前から姿を消していましたからね。むむっ? だとすると……その妖怪はずっとフラン様の中にいた……? そう考えればフラン様の考えに辻褄が合います!」

 

「でしょ!?」

 

「なるほどなるほど。相手の心に入る。この場合は憑りつくですかね。その能力で心にちょっかいを掛けて暴れさせるわけですか。……ん? 暴れ、させる?」

 

タマモの最後の言葉に誰もが「ん?」となった。そして、すぐにハッとなって叫んだ。

 

『空(君/ご主人様)が危ない(ズラ)!』

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side空

 

『ぐあっ!』

 

カイラに攻撃を仕掛けようとしてまたしても鞭のようにしなる蛇に吹き飛ばされた。

今のでもう何度目になるかもわからない。

 

「はぁ……はぁ……! クソっ! 全然こっちの攻撃が通じねぇ!」

 

「しかもこっちはやられてばっか……」

 

金髪の青年が凶悪なオーラを纏うカイラを睨みつけて言うが、カイラは顔色一つ変えないで立っているだけだ。

最初のうちは何とか対応できていたが、徐々に攻撃の威力とスピードが上がってゆき、やられたい放題。こちらの攻撃がカイラに届いたのはもう数十分も前のことだった。

 

「剣、ごめんね」

 

身体を支えるための杖代わりにしていた刀状態の黒刃の狗神(ケイネス・リュカオン)こと(ケン)に謝る。

聖剣や魔剣ではまともに打ち合うことは難しかったので頼ったのだが、攻撃を防ぐたびに剣を傷つけてしまっていた。

 

「もうちょっとだけ付き合ってくれる?」

 

『もちろん。その代わりあとでいっぱい撫でて』―――不思議と剣からそんな声が聞こえた気がした。

 

この状況を打開するにはどう考えても彼の力がいる。

 

ねぇ、君も少しは助けてくれてもいいんじゃない?

 

『お前が頼らないから黙ってただけだ』

 

……本当はわかってるくせに。

 

『ああ、知ってる。なんせ自分のことだからな』

 

だったら最初から言ってよね。……どうせ、お前の修行だー、とでも言うんでしょ?

 

『その通り。でも流石にピンチだから助けるさ。でないと俺も死ぬからな』

 

知ってる。で? 俺はどうしたらいいの?

 

『あいつに一撃入れろ。それだけだ』

 

……は? 

 

『ただし、鍵を使ってだ』

 

鍵……? って、まさか。

 

『そのまさか』

 

でも、アレはまだ完全には習得出来てないよ。

 

『出すのは一瞬で良い』

 

一瞬。集中すればなんとかなりそうだ。と思ったが今の状態でカイラの攻撃を避け続けられる自信はあまりない。

隣の金髪の青年を見やる。

俺の攻撃を届かせるためにカイラの攻撃を彼一人に防いでもらうのは無理がある。人手がほしい。

 

「紫さーん!」

 

「はーい」

 

名前を天に向かって叫べば彼女はすぐ隣に現れた。

 

「霊夢さん呼んで! いや、霊夢さんじゃなくてもいいや! 誰か応援によこして!」

 

「そう言うと思って彼女達を呼んだわ」

 

紫さんが空間に裂け目を作ると中から次々に現れた。

フラン、ジバニャン、コマさん、ウィスパー、タマモ。そして霊夢さん達と一緒にいた獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)だ。

無理矢理空間移動させられて困惑してる中、周囲をしばらく見まわして俺と目が合った。

 

『空(君/ご主人様)!』

 

「あとは頑張ってね」

 

ウィンクをして紫さんはスキマの中に消えてしまった。

霊夢さんが来ないのは正直言って厳しいが、フラン達が来てくれるだけでも大分楽になったのは間違いない。

 

「応急処置程度ですが」

 

タマモがお札を使って癒してくれる。

痛みだけでなく魔力も少し回復してる気もする。

 

「皆にお願いがあるんだ」

 

「言ってみろ」

 

「カイラへ攻撃するための道を作って欲しい」

 

「空の願いが私の願いです」

 

「ワン!」

 

「あの蛇のオーラを引きつけろってわけね。いいわ。やってろうじゃない」

 

「一撃でも喰らえば一溜りもありませんね……。ご主人様の頼みとあらば断る理由はございませんが」

 

「それしか方法はなさそうだな」

 

「オレっちもやるニャン!」

 

「が、頑張るズラ!」

 

「わたくし非戦闘員なんですけど今回限定で頑張らせていただきますよ!」

 

仲間の全員が覚悟を決めてくれた。

これは一発で決めないといけないな。自分にそう言い聞かせて声を張り上げた。

 

「よし……行くぞっ!」

 

『おおっ!!』

 

「ジバニャンとコマさんはレグルスに乗って外からちょっかいかけて! 接近戦するなら一撃離脱!」

 

「任せるニャ!」

 

俺の指示に従ってレグルスが二体を背中に乗せるとカイラの左側に回り込んでゆく。

 

「ウィスパー、フランは反対側から! タマモは遠距離攻撃で二つのグループのサポート! それから……」

 

名前を呼ぼうとして未だに彼から名前を聞いていないことに気が付いた。

それを察した青年が不敵な笑みを浮かべて答えた。

 

「俺の名は、炎惺(エンセイ)。地獄の最高裁判長―――エンマ大王だ!」

 

『エンマ大王!?』

 

「驚くのも無理ねえけど、今は戦い優先だ」

 

「うん! 炎惺は俺と一緒に正面から行くよ!」

 

「任せな!」

 

俺と炎惺以外が散ったところで俺達も動き出した。

カイラが先に目を付けたのはレグルス達だ。

 

「これでも喰らえニャ!」

 

「行くズラ~!」

 

レグルスが蛇を巧みに躱し、ジバニャンとコマさんが青い火の玉で攻撃。

攻撃が効いてる様子は見受けられないがカイラの表情が鬱陶しそうな顔になっていた。

 

「こっちがガラ空きよ!」

 

反対側からはフランが魔力量にものを言わせて魔力弾を大量にぶつけていた。

レグルス達よりも厄介であると考え振り向くが、背後からレグルスの鋭い爪に引き裂かれる。

一撃離脱でカイラからの反撃が来る前には距離を摂っていた。

 

「ちょこまかと……!」

 

「こちらからも行っちゃいますよ~♪」

 

タマモが両手から数枚のお札を投げて蛇に張り付けると炎や氷、雷が札のあった場所から発せられた。

札の使い方は治癒だけでなく攻撃にも使用できるわけか。

 

「くっ……! まとめて―――」

 

あちこちから攻撃をされてイラついたカイラが広範囲に攻撃を繰り広げる―――よりも先に炎惺が割って入った。

 

「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!」

 

赤の斬撃がカイラを切り裂いた。

凶悪なオーラが鎧替わりになっているようで与えられたダメージは僅か。

だが、それで十分。

炎惺の背後から飛び出した俺がオーラの薄い場所に向けて手を伸ばす。

 

鍵よ、来い……!

 

頭の中でそう念じると伸ばした手に光が集まり形を作っていく。

やがて光は鍵の軸と歯に当たる剣身と、両脇にナックルガードの付いた柄、柄頭に龍の頭を模したストラップのようなキーチェーンを付けている。

鍵を握り締めるとカイラの胸に鍵穴が浮かんだ。

鍵穴に鍵を差し込んで回せばカチリと音を立て、俺は光と化して鍵穴に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

そこは暗い場所だった。まさしく一寸先は闇と言ったところか。

 

「あっちかな」

 

気配のある方へ歩いて行く。

道中、蛇と人間が合体したような兵士が道を阻むが大した力もなく、一撃で消えてゆく。

 

『お前、人間の血が混じってるんだって?』

 

突如、頭の中に流れ込む誰かの記憶。

その言葉を放った奴の目は完全に見下していた。

 

『人間と妖怪の共存? 出来るわけねぇだろ!』

 

足を進めるとまた流れ込んできた。

今のは夢を否定された瞬間だろうか。

 

『妖怪が人間の村になんのようだ! 帰れ!』

 

今度は人間から石を投げられて逃げる場面だった。

 

『あなたも弱いのね。ええ、私も同じ。だったら―――』

 

最後の記憶はそこで中途半端に途切れてしまった。

 

「ここか」

 

目の前に高さが10mはありそうな大きな扉があった。

人と異形の存在―――恐らく妖怪―――が手を繋いでいるのを青い蛇が輪となって囲んでいた。

大きな扉の見た目とは裏腹に押せば簡単に扉は開いた。

 

「……! カイラ!」

 

中には無数の蛇で雁字搦めに縛られたカイラがいた。

 

「お、前は……」

 

顔を上げたカイラは酷くやつれていた。声も覇気がない。

 

「大丈夫、ではなさそうだね」

 

「何しに、来た……?」

 

「助けに来た!」

 

彼の作戦だけど。

 

()をか……?」

 

私? 一人称俺じゃなかったけ?

 

まあ、些細なことは置いといて彼を助けないと。

 

鍵を振るって身体に絡みつく蛇を斬った。

 

「よっと」

 

倒れ込むカイラを支える。

すぐにでもルーン魔術での治療をしたいところだが今の彼は現実の彼じゃないがために効くことはない。

それに―――

 

「貴様……どうやってここに入って来た! ここはカイラの心の中だぞ!?」

 

入り口付近にどこからともなく現れた蛇が集まって人の形になった。

色落ちしたような白髪、ところどころに蛇の鱗がある青白い肌、血のような真っ赤な眼。

彼女から発せられる雰囲気はさっきまで戦っていたカイラのものと類似していた。

 

あのヒト、最後の記憶にいた妖怪だ。

 

『元凶はあいつで間違いない。ここからたたき出せ』

 

りょーかい。

 

「企業秘密なので質問には答えられない、ねッ!」

 

「は、放せッ!」

 

白髪の女性まで一気に詰め寄り、右手を龍の手に変化させて頭を鷲掴みした。

俺の手を外そうと必死にもがくがたとえ子供だとしても龍の握力を舐めてもらっては困る。

 

「こっから……出てけッ!」

 

入って来たところまで戻り、思いっきりぶん投げた。

後を追うようにして俺もカイラの精神世界から出ていった。

 

 

 

 

 

現実に戻るとカイラから先ほどまでの凶悪なオーラが全くなく、地面にボロボロの状態でうつ伏せに倒れていた。

ボロボロなのは俺達の攻撃と無理矢理強化されていた所為だと思う。決して責任を逃れようとしているわけではない。

 

「ご主人様~! お帰りなさいませ! ご無事で何よりです!」

 

いの一番に駆けつけてきたタマモを抱き留めた。

 

「こらタマモ! 空に馴れ馴れしく触ってんじゃないわよ!」

 

続いてフランがプンプン怒りながら俺からタマモを引き剥がそうとする。

 

「これくらいいいじゃありませんか! 私頑張ったんですから!」

 

駄々をこねるタマモが必死の抵抗で俺の身体により強くしがみつく。フランはその間に無理矢理割り込もうとするので腕やら足がガスガス当たる。

さっきまで戦闘していたばかりなので疲れた身体に着実にダメージが入っていく。

 

「あのお二人さん、君らが暴れると俺も巻き添え食らうんだけど……」

 

「そもそもフラン様がご主人様に甘えて良いって言ったんじゃありませんか!」

 

「誰も今すぐにとは言ってないわよ! 場を弁えなさい!」

 

聞いちゃいねぇ。

 

炎惺に助けてと視線で訴えかければやれやれと言いたげにこっちに来た。

 

「騒ぐのはその辺にしとけ。今は異変が完全に解決したのか―――」

 

『五月蝿い! 異変よりもこっち!』

 

「……すまん。俺には無理だ」

 

弱ッ! ヒトのこと言えた立場じゃないけど弱すぎやしないかなエンマ大王!?

 

もうこの際どうにでもなれと諦めかけたとき、思い出した。

 

白髪の妖怪はどこに行った!?

 

慌ててその姿を探す。だがどこにもいない。

どんなに逃げ足が速くてもカイラの精神世界を追い出された直後にフラン達の目に入らないはずがない。

フラン達が倒されたならわかるが今現在も元気だ。

 

「フラン、タマモ!」

 

「な、なに?」「はい!」

 

「白髪の妖怪を見なかった!?」

 

「それって私に空を襲わせた奴? 見てないわ」

 

「私もです」

 

二人も見ていないとなるとレグルス達に聞いても意味はなさそうだ。

 

魔力は……ダメだ。小さいのか隠すのが上手いのかわからないけど感知できない。

あれだけ不気味だったはずなのに……。

 

「ワン!」

 

「剣?」

 

足元まで寄って来た剣が何かを訴えかけるように吼えてまた離れていった。

フランとタマモに離れてもらい剣を追いかける。

剣が止まった場所には一匹の白蛇が苦しそうに動いていた。まるで何かから逃げるように。

僅かながらカイラから発せられた魔力と同じものを白蛇が出していた。

 

剣がわかったのは臭いか……!

 

「お前、カイラの中にいた妖怪だよね?」

 

「私に触るな!」

 

逃げられないように掴もうとしたら威嚇されたがこいつの身体は見るからに限界だ。大した脅威はない。

ヒトの心―――それも弱い部分がある奴に憑りついて好きなように利用する。大方、昔に弱い者いじめなり差別なりされてきたのだろう。

カイラも記憶を見た限りじゃ、半人半妖であるがために人間にも妖怪にも受け入れられることはなかった。そこが二人の似通った部分で互いに共感した。全て俺の勝手な憶測だけど。

カイラが白蛇を受け入れたのか、それとも白蛇にカイラが利用されたのかはわからないが、負の感情に押し負けた結果が幻想郷に攻め入ることになったのは事実。

 

「二人の罪を裁くのは俺よりも適任者がいることだし休憩しよーっと。炎惺、あとは任せたよ」

 

蛇を鷲掴みして炎惺に向けて放った。

 

「ああ。しかるべき処罰をこいつらに下す。それから休憩に入る前に博麗の巫女のとこに行って、異変が解決したことを伝えておけ」

 

「わかった」

 

フラン達を呼んで博麗神社に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 


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