デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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妖怪と戦います!

妖怪と戦います!

 

Side空

 

幻想郷に来てから一日が経過。

元いた世界に帰るまでは紅魔館にいてもいいと当主であるレミリアに許可を貰った。

今は借りてる部屋でフラン、ジバニャン、コマさん、ウィスパーと一緒に、龍神化の影響で疲れた体を癒すためにも寛いでいる。

 

「あ、そうそう。ウィスパーさ、フランに仕えてみない?」

 

「フラン様にですか?」

 

ウィスパーが俺に助けられて仕えたいと言っていたが、俺の世界だとジバニャンやコマさんはともかく、ウィスパーは明日奈がダメだ。もしかしたら他にもダメな子もいる可能性もある。

きっと俺の家に来るたびに閃光の突きが家に穴を開けていく。

それを考えると、妖怪が普通にいる世界であるこの幻想郷でなら、問題なく受け入れてもらえるだろう。

 

「う~ん、ですが……」

 

顎に手を当てて悩むそぶりを見せるウィスパー。

 

「もちろんウィスパーの意見は尊重する。俺でいいのなら、帰るときに連れてくさ」

 

「わかりました!」

 

もしも来ることになったら、明日奈の説得に骨が折れそうだ。

 

 

 

 

 

翌日、人間が住む里があると咲夜さんから聞いたので、散歩がてらに出かけてみることにした。

なんでも、「妖怪が人間を襲う」事が重要視されている幻想郷で、人間が命の危機をあまり感じずに生活できる数少ない地であるそうだ。

そう言った理由から妖怪であるフラン達は連れてきていない。

 

「ふーん、これが人里かぁ……」

 

コンクリートで舗装されていない道。

俺の世界の家よりもかなり昔の和式住宅。

それに比べて思ったよりもハイカラな服装がちらほらと見かけられた。

 

「これだと目立つかな」

 

黒いパーカーにジーパン、アザゼルさんに貰った能力を隠すペンダント。

明らかにこの幻想郷では目立つ服装であろう。

現に周りの人々からチラチラと見られている。

散歩よりも服の調達を先にした方が良さそうだ。

 

「服屋は……どれだろ?」

 

幻想郷の文字が読めないわけじゃないのだが、ぱっと見で服屋とわかるものが無い。

 

「あんた、どこから来たの?」

 

適当にぶらつきながら探そうとしたら、話しかけられた。

真っ直ぐな黒髪、茶色の瞳、肩と脇の露出をした巫女服姿の少女だ。

 

「この幻想郷とは別の場所です。異世界、とでも言えばいいですかね。いきなり連れてこられちゃって」

 

「外の世界……外来人ね。……いきなりってことはあいつの仕業か。うん、事情はわかったわ。私に付いて来なさい」

 

「え? どうして?」

 

「服、欲しいんでしょ?」

 

俺が服に困っていることを知って話しかけてきたわけか。

 

彼女と自己紹介をして森の入り口付近にあったお店に到着した。

瓦屋根の目立つ和風の一軒家だ。

 

「霖之助さんいる?」

 

「いるよ。今日は何の用だい?」

 

霊夢さんに名前を呼ばれた男性―――霖之助さん。

銀髪のショートボブにアホ毛。金色の瞳、眼鏡。

黒と青の左右非対称の洋服と和服の特徴を合わせたような服装だ。

 

「この子供に服作ってあげてよ。外の世界から来た外来人らしくて」

 

「わかった」

 

霖之助さんと呼ばれた男性が随分あっさりと了承してくれた。

 

「お代は? 俺お金持ってないですよ」

 

「大丈夫よ。ツケにしとくから」

 

あまり大丈夫な気はしないが、お金を持ってないのでここは彼女に感謝するべきか。

 

「完成したら呼ぶよ。それまで店の道具を見るなり、触るなりして時間を潰していてくれ」

 

「わかりました。お願いします!」

 

店に入った時に面白そうなものが色々店内にあることに気が付き、触りたくてうずうずしていた。それを分かった上で勧めてきたのだろう。

中にはガラクタにしか見えないものもあるが、興味をそそられる。

早速、俺の右側にあった棚に並べられた手鏡を手に取った。

 

「えっ? 十香?」

 

『空!?』

 

初めは自分の顔が鏡に映っていたはずなのに、キラリと光ると見慣れた十香の顔が映った。

 

『今どこで何をしているのだ!? 二亜の天使でもわからなくて皆心配しているんだぞ!』

 

「えっと、幻想郷っていう場所にいる。フランの住む世界なんだよ。それから……今は服を作ってもらってるところ」

 

『体は大事ないか!? 風邪とか病気になってないか!? 出会った女にフラグ建てたりしてないか!?』

 

「最後のはちょっとよくわかんないけど、すこぶる元気。そっちは元気にしてる?」

 

『空がいなくて皆元気どころではない! 私なんか昨日のご飯を五杯しかおかわりできなかったんだぞ!』

 

異常な量に聞こえるが()()()()()()少ない方だ。

 

『……いつ戻ってくるのだ?』

 

「ごめん。わかんないや」

 

紫さんに会うことが出来ればいいのだが、どう探せばいいのかわからない。

 

『むぅ……。いや、唸っていても仕方がない。出来るだけ早く戻ってくるのだぞ! いいな!? でないと私達から―――』

 

「あれ? と、十香!? ……消えちゃった」

 

十香に最後まで言わせることなく、俺の顔を映すだけのどこにでもある普通の鏡に戻った。

どうやら時間制限のある道具みたいだ。

もう一度十香と会話したいのだが、この道具の発動条件がわからない。

持ち帰りたい気持ちが無いわけではないのだが、お店の商品であるものを持ち出すわけにはいかない。買うためのお金もないので潔く諦めるべきだ。

 

十香の顔が見られただけでも良しとしよう。

 

そう自分に言い聞かせて手鏡を元あった場所に戻した。

それから約一時間、色んな道具を見ていると霖之助さんが俺を呼んだ。服が完成したみたいだ。

 

「これが君の服さ」

 

手渡されたものを早速着てみた。

黒い長袖のシャツの上に、フードの付いた青と白のツートンカラーの武道着のようなもの。下は足首辺りまであり、上に合わせた色合いでゆったりとしたもの。動きやすそうな黒い靴となっていた。

とても一時間で作れるとは思えない出来栄えだ。

 

「どうだい?」

 

「ピッタリです!」

 

最後に青いリストバンドと帯を締めるとなんだかいつにもまして気合が入った。

 

「へぇー、まあまあ似合ってるんじゃない?」

 

「えへへっ、ありがとうございます」

 

服を作っている間どこかに行っていた霊夢さんがいつの間にか戻ってきていた。

 

褒められて悪い気はしないよね。あとでフランにも見せよっと。

 

「霖之助さん、ありがとうございます。それから霊夢さんもここまで案内してくれてありがとうございました」

 

「気に入ってもらえて何よりさ」

 

「今回はただの気まぐれよ」

 

これで問題なく歩けるようになった。

 

「服は手に入ったわけだけど、お次はどうするの?」

 

香霖堂で服を手に入れて出たが、霊夢さんはまだ行動を共にするみたいだ。

 

「これで目立つことはないみたいなので、里の散策か他の場所にでも行こうかと。どこかいい場所ありますか?」

 

「そうね、それなら神社に来る? 博麗神社っていって、私そこで暮らしてるの」

 

博麗神社。名前を聞いただけでも霊夢さんと関りがあるのはわかる。

知らないところに一人で行くのと知ってる人が一緒にいるのでは大分違う。

彼女の提案に賛成して付いて行くことにした。

 

「距離があるから飛んでいくつもりだけど、空は飛べる?」

 

「飛べますよ」

 

「じゃあ、行くわよ!」

 

勢い良く飛び出した霊夢さんを追いかけるようにして、俺も黒い龍の翼を広げて飛びあがる。

霊夢さんの隣に並ぶと驚いた表情をしていた。

 

「―――っ! なるほどね……。あんたがあの力の正体ってわけね」

 

「あの力?」

 

「昨日、神様の力を感じたわ。この幻想郷では今までにないものよ」

 

龍神化の力が幻想郷中に伝わってしまったのか。

 

「このままだとヤバかったりします?」

 

「ううん、問題ないわ。幻想郷には神様はたくさんいるから今更知らない神様が増えたところで気になるわけがないもの。……あー、でも、人間に知られると信仰の対象になるかもね」

 

それを聞いて少しだけ安心した。

要は顔を人に知られなければいいということだ。

目立っていたのはさっきのみだからこのまま大人しくしていよう。

 

「ここが博麗神社よ」

 

数分かけて神社に到着。

山の中にあるせいで妖怪の気配が多々ある上に、通りにくい道。人が参拝に来るには不向きな立地だと思う。

ただ境内は綺麗に掃除されていて、幻想郷が一望できるという点では概ね高評価を得られるのではないだろうか。

 

「ここはどんな神様が祀られるんですか?」

 

「さあ?」

 

いや、さあ……って。巫女だというのにそれでいいのかな。

 

「ここの神様の知名度が低すぎて誰もわからないの。…………ねぇ、空ってさ、神様なわけじゃない?」

 

「らしいですね」

 

自分でも今一よくわかっていないが、彼曰く神様で間違いないそうだ。

 

「この神社の神様にならない?」

 

「それはダメです」

 

「えー? どうしてよー? いいじゃん!」

 

「だってこの神社にはもう神様がいるじゃないですか。それなのによそ者の俺が祀られたらその神様が可哀そうです。それに俺がいるべき場所はここじゃないですから」

 

「うわー、真面目ー。まあ、いいわ。気が向いたらいつでも歓迎してあげるわ」

 

「はーい。あ、そうだ。霊夢さんよりも前の博麗の巫女で善悪関係なしに妖怪を片っ端から封印するような人いました?」

 

「片っ端から封印した? ごめんなさい。先代の巫女については詳しくないの。神社が何回か焼けちゃって記録みたいなのは全くないから調べようもないわ」

 

元から望みは薄そうだったから落ち込んだりはしない。

知ったところでその先代の巫女に何かできるわけでも無い。

 

「今日はありがとうございました」

 

「ええ、精々感謝してこの神社の神様になってちょうだいね」

 

「それとこれとは話が別ですから!」

 

意外と俺を祀る気満々の霊夢さんとお別れする―――

 

『!』

 

はずだったが、禍々しい力が発せられた方向に二人同時にバッと振り返った。

 

「あっちの山の方からです」

 

「みたいね」

 

分厚い雲が空を覆っていく。

 

―――この感じ……間違いなくあいつだ!

 

出かける際に持ち歩いていた未開封のガシャポンの玉が妙に真剣な声音だ。

 

「……こっちに向かってきてる?」

 

「でも、その前に紅魔館や人里を通ります! 急いでいかないと!」

 

「ええ! かっ飛ばしていくわよ!」

 

龍の翼を広げて飛び立った。

 

Sideout

 

 

 

 

 

Sideフラン

 

な、なんなのこの力!

 

空に置いてかれたことを不満に思いながらふて寝をしていたら、紅魔館のどこかで爆砕音がした。

強力な力ではあるが空の龍神化したときとは正反対で禍々しくて気味が悪い。

 

「レミリア様のところに行きましょう!」

 

パニックになりかけた私はウィスパーの提案に頷いて、ジバニャンとコマさんを抱えてお姉様のところに向かった。

 

「お姉様! この力―――え……?」

 

目の前の光景に自分の目を疑った。

恐らく幻想郷で五本の指に入る実力を持つであろうお姉様が、青髪の青年の足元に倒れていた。

周りには咲夜や美鈴、パチュリーが一緒に倒れていたのがすぐにわかった。

怒りに任せて攻撃したところで私では敵わないとすぐに悟る。

 

「まだ他にもいたのか。なあ、そこのお前」

 

私に気が付いた青年がこちらに目を向けずに話しかけてきた。

 

「な、なによ」

 

「博麗の巫女がどこにいるか知っているか?」

 

博麗の巫女……霊夢のことね。こんなヤバそうなやつに教えてたまるもんですか。

 

「知らないわ」

 

「そうか。なら、お前も―――」

 

「お待ちください、カイラ様」

 

カイラと呼ばれた青年がこちらに手を翳すと不気味な力が手に集まる。だが、魔女のような格好した女性が遮った。

理由はわからないがとりあえず助かったみたいだ。

 

「なんだ?」

 

「そこの者には心に闇があります。利用してもよろしいでしょうか?」

 

「はぁ? 私の心に闇、ですって? 適当なこと抜かしてんじゃないわよ!」

 

青年程の実力が見られない女性なら勝てると判断し、炎の剣―――レーヴァテインで斬りかかる。

 

「ふふ、あなたは目を背けているだけ。―――さあ、堕ちなさい」

 

「うっさい!」

 

ごちゃごちゃ言っている間に女性を斬った。

 

消えた!?

 

しかし、斬った瞬間に靄のように消えてしまった。

 

「こちらですよ」

 

いつの間に……!

 

女性が音もなく背後に現れた。

何かしてくるかと身構えたが何もしてこない。

疑問に思いながらも斬るがまたも消えてしまう。

 

「あなたはすでに私の術中ですよ。さあ、自分を解き放ってしまいなさい」

 

「わけのわかんない事ばっか言って―――」

 

突如頭の中に流れ込んでくる声があった。

 

―――壊シマショ。

 

―――目ノ前ニアルモノ全テ。

 

―――アナタハ忘レテイルダケ。

 

「ちがう……! 違う違う! 私はそんなことしない! もうしないって決めたの!」

 

―――何モ違ワナイ。

 

―――アナタハ何モ変ワッテナイ。

 

―――サア、破壊シタイ衝動ニ身ヲ委ネテ。

 

―――アナタノ大切ナ人ヲ傷ツケタ奴を壊シマショウ。

 

その言葉を最後に私の意識は途絶えたのだった。

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side空

 

全速力で飛んで紅魔館に到着。

争った形跡があり、館の周囲にはたくさんの妖怪達がいた。

そこには門番である美鈴さんの姿はない。

 

「あんた達の目的はなに?」

 

「幻想郷の支配だ」

 

霊夢さんの質問にあの時の赤い猫が答えた。

 

「はぁ……呆れた。いいわ、全員ぶっ飛ばしてあげる!」

 

霊夢さんの砲撃を合図に戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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