デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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紅魔館の主です!

紅魔館の主です!

 

 

 

Sideフェイト

 

空がいなくなってすでに半日が経過。

皆それぞれの親族の下に年始の挨拶に行くために解散した。親族と言っても龍神家の人達にはいないので、そのまま帰宅だ。

家に帰ってから空がいない寂しさを紛らわすために外に出て遊ぶことにした。

 

「はぁ……」

 

それなのに、結局いなくなった空のことを考えると遊びに夢中になれず、何度目かわからない溜息が出る。

それと同時に自分がどのくらいあの少年のことを想っているのかもわかってしまう。

 

ま、空は鈍いから気が付いてないだろうけど……。

 

自分は自他共に認める人見知りだし、姉のアリシアと違って積極的なわけじゃない。それでも頑張って空に振り向いてもらえるように抱き着いたり、お風呂に突撃したり、ベッドに潜り込んだりしたが、どれも効果が見られない。ちょっと自分に自信が無くなってくる。

いっその事十香のように告白でもしてみようか、なんて考えることもあるがそこまでの勇気はまだない。

 

それもこれも全部空が鈍感なせいだよね。

 

そう思うとなんだか無性にムカムカしてきた。

誰か誘ってストレス発散のサンド―――じゃないじゃない。新技開発のモルモ―――でもない。まあ、なんでもいいや。とりあえずこの行き場のない憤りを今すぐにでもぶちまけるべきだ。

私は早速近くに居た美雷に声をかけたのだった。

 

もしも、女の子連れて帰ってきたら一発殴っても許されるよね?

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side空

 

フランとの再会を喜んだすぐあとジバニャン達を紹介した。

 

「この赤い猫がジバニャン。白い犬がコマさん。ニョロニョロしてるのがウィスパー。で、この子はフランドール・スカーレット。俺の友達」

 

「よろしくニャン!」

 

「ええ、こちらこそ。ジバニャン、抱き締めてもいい?」

 

「構わないニャン!」

 

「ウフフ、可愛い♪」

 

ジバニャンを両手で抱きかかえたフランが柔和な笑みを浮かべた。

 

「オレっちの可愛さがわかるとは、フランは中々お目が高いニャン」

 

「女の子は可愛いものに目がないの」

 

俺もフランに倣ってコマさんを抱きかかえた。

 

「可愛さならコマさんも負けてないよ!」

 

「て、照れるずら……」

 

恥ずかしそうに頭を掻く仕草がより可愛さを引き立ててる。

 

「あ、あの~、わたくしは……」

 

「お前は私が可愛がってやんよ。のけ者同士仲良くやろうぜ」

 

「ありがとうございます、魔理沙様!」

 

べつにのけ者にしたくてしていたわけじゃないのだが、見た目的にウィスパーを可愛いとおもうのはちょっと抵抗がある。まあ、結果的に二人が仲良くなったのならいい事だ。

 

「さーてと、ジバニャンの可愛さを堪能したから、空、この三か月であったこと全部教えて」

 

フランがジバニャンを抱きかかえて数分。堪能したと言いながらも未だに離す様子はなく、天蓋付きで何故か棺桶のある大きなベッドの上で寝そべりながら話を振って来た。俺も隣で寝っ転がってる。魔理沙は箒の上だ。

ちなみにその棺桶でフランが寝ているのだと知ったのはもう少し時間が経ってからだ。

 

「あったこと全部?」

 

そんなのを聞いて面白いのかわからない。かと言って聞かせられない話というわけじゃないので、包み隠さず話した。

(ギャルゲーで)彼女が出来たこと。過去の姿に戻ったこと。最強の存在に出会ったこと。最新のゲームで遊んだこと。兄妹を一緒にいられるようにしたこと。あとはクリスマスや正月を楽しんだこと。

 

「よくもまあそんな短い間に色々あるわね。あんたってやっぱり主人公体質ってやつ? これからも災難とか続くんじゃない? ここに来たのも何かに巻き込まれる前触れだったりして」

 

「縁起でもないこと言わないでくれないかなっ!」

 

フランの呆れた瞳の中には何かを悟った感じがしたのはきっと気のせいじゃないだろう。

 

……今のでフラグ建ったりしてないよね? あー、でもあの筋肉猫、イヤーな予感がするかも。

 

「でも、聞いてて楽しかったわ。そのうち空の世界に行ってみたいかも」

 

「来ればいいじゃんか」

 

紫さんに頼みさえすれば今からでも行けないこともないだろう。

 

「…………そうね、考えておくわ」

 

返事をするのにやや間があったことには気が付いたが、その理由はフランだけにしかわからない。

仲が良いとはいえ、無駄に詮索するのはガラじゃないので別の話に切り替えた。

 

「フランってお姉さんいるんだっけ? ここにいる?」

 

「ええ、今頃書斎で仕事か庭でお茶でもしてるんじゃない?」

 

「なら会いに行きたいんだけどいいかな?」

 

そもそも紅魔館四天王とかいう人達と戦っていたのだから、彼女の姉とも会うべきなのではないかと今更ながらに思い至った。

 

「私が案内します」

 

行こうと思った矢先、まるでタイミングを見計らったようにさっき戦ったメイド―――十六夜咲夜さんが現れた。

右も左もわからないこの広い紅魔館で案内の提案は願ってもないことだ。彼女の好意に甘えてついてゆくことにした。

 

「お嬢様、彼を連れてきました」

 

咲夜さんが止まったのは大きな扉の前。

ノックをしてから要件を伝えると扉越しに「入りなさい」という声が聞こえてきた。

声は若い少女のものだ。

咲夜さんがお嬢様と言っていたから、フランに似ていて少しばかり大人びた人物像を思い浮かべた。

扉が開けられ、大広間思わしき部屋に入る。

部屋の一番奥にある玉座に彼女は座っていた。その傍には彼女を左右から挟むように紅美鈴さんとパチュリーさんが立っていた。

彼女から溢れる吸血鬼独特のオーラというか雰囲気。

俺の想像通り、容姿はフランの姉ということもあってそっくり。歳が近いのかフランとの身長差はあまりないようだ。

髪の色は青みがかった銀髪。瞳の色は鮮血を連想させる真紅だ。

服装は(俺の世界では)時代遅れの貴族が着るような服と言ったところか。

 

「ようこそ、紅魔館へ。私はここの主―――レミリア・スカーレットよ。龍神空君、あなたのことは知ってるわ。四天王を倒すとは中々ね」

 

「…………」

 

視線は彼女に向けたままだが、内心では苦笑い。

中々だったのはそっちの三文芝居ですと言いたい。それに魔理沙(約一名)と戦ってません。

でも、相手は至ってシリアスな雰囲気なのでこちらからは何も言わずに沈黙を保つ。

 

「妹が随分お世話になったみたいね。そのことには礼を言うわ。……でもね―――」

 

一度目を閉じてからまた開く。

 

 

 

「私の妹を……フランを誑かすとはいい度胸してるじゃないッ! 今この場で血祭にしてやるわッ!」

 

 

 

レミリアの姿が玉座からブレた瞬間、紫色の槍で吹き飛ばされていた。咄嗟に魔力強化をした両手で交差してガード。だが、あの細腕からは考えられない威力に負けて壁を突き破り、外にはじき出された。

湖畔にある木にぶつかること数回。ようやく止まった。

 

()った……」

 

フランからレミリアの強さはある程度知っていたが見聞色の覇気でも見えないとかいくらなんでも強すぎやしないだろうか。

となると、戦ったあの三人も本来はもっと強いのではないかと思えて来る。

追撃を警戒したが、その様子はないようだ。

あの三人も動くかと考えたが主の戦いの邪魔はしない決まりなのか、俺に負けたから何もしないのかはわからないが、手練れの相手複数人に一人で戦えるか多少の不安はあったのでそこは助かった。

 

『このままだと勝てないぞ。どうする?』

 

レミリア相手にどう戦うか悩んでいると脳内に声が響く。

何度も会話したことのある相手だ。驚くことはこれといってない。

むしろ、これまで黙ってたことが不思議なくらいだとさえ思う。

 

神滅具(ロンギヌス)は今のお前じゃ相性悪いからな。どうせなら修行の成果を実戦で見せてみろよ』

 

彼の言ったこと以外に思いつきそうもない。

特に禁手(バランス・ブレイカー)は長引けば長引くほど体を蝕んでゆく。

 

やってみる。

 

『そうか。俺が教えた通りに頑張れよ』

 

そこで彼との会話を終えた。

 

「頑張りますか!」

 

一度深呼吸をして体から力を抜く。

目を閉じて、心を静める。どこまでも澄み渡る蒼穹のように。

彼から教わったことを思い返す。

自身に流れる魔力とは別の力を感じ取り、全身に満遍なく巡らせる。

力が十分に行き渡ってから目を開け、そっと呟くと木々がざわめきだす。

 

 

 

「―――龍神化」

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

Sideフラン

 

部屋にこもっていたら突然大きな爆発音が聞こえてきた。

私は魔理沙と顔を見合わせるなやいなや、速攻で部屋を飛び出した。

辿り着いた場所には美鈴、咲夜、パチュリー。そして槍を構えたお姉様がいた。

 

「お姉様? これは一体……?」

 

壊された壁についても含めて尋ねたが、お姉様は何も答えてくれないどころか目線は壊された壁に向けたままで合わせてくれない。

 

「お姉―――ッ!?」

 

『ッ!?』

 

もう一度お姉様を呼ぼうとして誰もが息を呑んだ。

ほんの一瞬、圧倒的な力を肌で感じたからだ。

でも、怖いとは不思議と思わなかった。なんとなくではあるが力の主は私の知る彼なのだと思う。

そして私の予想通り力の主が私達の前に正体を現した。

黒髪に蒼い水晶のような角が二本。蒼かったはずの瞳は青空を錯覚させる輝きを放っていた。

姿が変わってることに驚きはあったが知り合ってから散々見てきたので今更だ。

 

「―――空」

 

「ん? フラン」

 

どこかの誰かさんと違って、空は名前を呼べばきちんと反応を返してくれた。

槍を持ったお姉様。壊された壁。その壁から戻って来た空。それらから導き出される答えは一つ。二人の戦闘だ。

どんな経緯があったかは知らないがそれはあとで聞くとしよう。

 

「空、お姉様なんかやっつけちゃいなさい!」

 

「フラン!? そこは姉である私を応援でしょ!?」

 

「名前を呼んでも反応しないお姉様なんてしらなーい」

 

ようやく私の方に振り向いてくれたがもう遅い。今現在妹の心は姉よりも友人に向いてる。

 

「ねぇ、さっさと続きやろうよ。あの一撃で終わりなわけないよね?」

 

「フン、次は確実に殺してやるわ」

 

槍を再び構えたお姉様。対する空は魔剣と聖剣を作り出した。

 

好戦的なセリフを吐いた割に雰囲気は柔らかすぎやしないかしら?

 

空の雰囲気に違和感を覚えるがそんなことを聞く暇もなく、二人の戦いは再開した。

 

「さっき俺がフランを誑かしたとか言ってたけどフランとは友達だけど」

 

「そうね、()()()()ねッ! でも、あなたは近い将来あの子と今以上の関係になる! 絶対にッ!」

 

二人が武器を交えながら会話をしていた。

内容からして私が空に堕とされるということか。大方たまたま能力で見たのだろう。

 

空と恋人関係、か……。

 

少しだけ想像してみた。

二人で色んな場所にデートして、手を繋いで、恋人や夫婦になった人達がするというキスをしたり。

他にも幻想郷では知ることのできないようなことを彼は教えてくれるに違いない。

そう考えると空と恋人関係になることは決して悪い事ではないと思う。

 

「へぇー、そうなんだ」

 

でも、だからと言って()()私達には関係ない。

所詮はどこまでいっても未来のことだ。起こっていないことを言われたところで実感が湧かない。直面した時に悩めばいい。

 

……その時は未来の自分に全部任せよう。

 

「未来を見通す力でもあるの?」

 

「ええ、そんなところかしらねッ!」

 

口調には熱がこもっているが、お姉様の動きは至って冷静だ。

お姉様の能力は妹の私でもよく知らない。多分一番信頼されてる咲夜でさえも。これは私の推測なのだが、お姉様自身も使いこなせていない。もしくは意図的に発動できない能力なのではないかと考えてる。

 

「そいつは奇遇だね。実は、俺も少しだけ未来を見ることが出来るんだ」

 

空は手に握る剣を消して目を瞑る。

 

「―――宣言する。お前の攻撃は当たらない」

 

お姉様が無防備な空に隙アリと言わんばかりに攻撃してくるが、空は身体を半歩ズラして躱す。

 

「こぉんの―――ッ!」

 

「左からの薙ぎ払い、顔目掛けての三連突き、足払い、縦に振り下ろしからの返し」

 

空の宣言通りにお姉様が攻撃してくる。そして、それら全てを体裁きのみで躱し続けた。一度もかすりもせずにだ。

私の知る三か月前の空が挑んだのなら確実に負けると断言できたが、私が会えない間にお姉様と対等に戦えるほどに成長していた。

いや、対等どころかまだまだ余力を残してるようにも見える。

 

「ほらね。俺の言った通りになった」

 

「(これがフランの言ってた覇気とかいうやつ? 厄介な能力ね……!)」

 

接近戦では分が悪いと判断したのか、一度距離を取ったお姉様は膨大な魔力による物量で押し潰す作戦に出た。

 

「いくら未来が見えてても、逃げられないんじゃ意味がないわよね!」

 

流石に空でもこれだけ量は躱せないだろう。

なら、どう迎撃するのかと見ていたが突っ立ったまま動く素振りを全く見せない。

 

「空!?」

 

「大丈夫。いただきます」

 

限界まで開けた空の口に魔力弾がどんどん流れていく。

幻想郷でも中々お目にかかれないその光景に誰もが度肝を抜かれた。

 

「ごちそうさまでした」

 

見事に最後の一発まで食べ終えた。

吸い込んで自分の力にするのかと思ったが、私の予想は大きく外れた。

 

「お返し。―――息吹」

 

空がビー玉サイズの小さな玉を掌に作り出して、それに目掛けてフウっと息を吐くと一条の蒼い閃光が館の壁を突き破った。

だが、閃光はお姉様には当たることなく―――恐らく空がわざと当てなかったおかげで―――傷一つない。

私が悲しむと思ってのことだろう。

優しいともいえるし、甘いともいえる。それが彼の良いところと言うべきか。

 

「まだやる?」

 

「……負けでいいわ」

 

「そう」

 

敗北宣言を受け取った空はいつもの姿に戻っていた。

 

「じゃあ、改めて挨拶だね。俺は龍神空。フランの友達です」

 

さっきまで本気で殺されかかっていたはずの空が、何事もなかったようにしている様子にお姉様は完全に拍子抜けしていた。

 

「お姉様、空はそういうやつよ」

 

「……レミリア・スカーレット。フランの姉よ」

 

呆れを通り越して面白いと感じたようで小さく笑ったお姉様も自己紹介をした。

 

 

 

 

 

「よろしく、お・ね・え・さ・ま♪」

 

「やっぱり殺す!」

 

但し、二人の相性はそれほど良くなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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