戻った俺がやり直す   作:独辛

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みなさんこんにちは、サブタイトルが休憩中に見た銀魂に大きく影響を受けている天チクです。

今話は前半と後半で話が大きく違います。

前半 口論

後半 ダイジェスト

前話同様に葉山に違和感を感じるかもしれません

ではどうぞ。



途中から空気の人物は気づいた時には既にフェードアウトしてるもの

「朝霧…。訂正してくれないか」

葉山にしては珍しく怒気を含ませながら発するその言葉。しかし俺にはどこ吹く風である。

いきなり出てきてなにをほざいてやがる。

「なにを…訂正しろって?」

俺は自分の言葉が絶対に正しいなんて言えはしない。けれど間違ってるとも思っていない。言いたいことは言ったし現にいままで怠慢していたのは先生だ。訂正するべき箇所などない。

「先生は俺たちのためにいままで一生懸命やってきてくれたんだぞ!? あんな酷い言葉言わなくたっていいだろう!」

俺の悪びれない態度に腹を立てたのかついに言葉を荒立てる。

だが、

「おい」

いまの俺も相当腹が立っているのだ。

「一生懸命ってなんだ?」

「だから、それはいままで俺達のために」

「『俺たちのため』? 寝言は寝て言え似非勇者。その俺たちの中には誰が入ってるんだよ。お前の言ってるの『俺たち』ってのはどこからどこまで指してるんだ? お前のさじ加減一つで決まる枠を、勝手に決めてんじゃねえよ」

いつだってグループの中心人物は公平に、平等に、みんなに不満がないように行動しようとする。でもそんなの理想論に過ぎない。誰かが報われれば誰かは不利益を負う。それなのに彼らはさも多数決で決まったことをみんなが納得した上で決めたことのように振る舞う。それと同じだ、いつだって自分の言葉が全員の言葉だと、代弁者だという思い上がりがさっきの言葉の発生源だ。

 

「そ、それは。でもだからと言ってあんな言葉を投げかけていい理由にはならない! それが朝霧の気持ちだとしても人に言っていいわけがない!」

葉山、それは反論として正しくない。

「その結果がこれだろ?」

そう、伝えないことは善ではない。

「なんだと?」

訝しげな顔でこちらを見つめる葉山の視線は険しい。

お前はわかっていない。ここまで事が深刻になったのは『言葉が足りなかった』からだということを。

「人に、物事を教えるのが教師だ。世の中の善悪の判断を教える。そのことをこの年頃に限らず教えれる方法なんて言葉か行動ぐらいしかない。

葉山、先生には足りなかったんだよ。思いを伝える言葉が、行動が、先生には足りなかったんだ」

 

俺は続ける。

 

「言葉を投げかけちゃダメ? 悪いことをしたら指摘するなんてそれこそ小学生でもしってるだろ。

人に言っていいわけがない? 言わなきゃ伝わらないだろ。小学3年生に表情から察しろなんていう方が難しい、気持ちを言葉に込めなきゃ、わかるわけないだろ」

 

「でも、だからってなにも泣くまで言う必要はなかったはずだ。仮に朝霧のいう事が正しかったとしても君ならもっと言葉を選べたはずだろ!?」

たしかに、葉山の言う通り言葉を和らげることはできたかもしれない。だけどな

 

「途中で生徒を放棄しようとした担任に、生徒が見切りをつけないわけねぇだろ」

甘ったれてんじゃねえ。ここまできたのは自業自得、先生の能力不足が問題だった。早めに手を打つことだってできたはずだ。事を大きくしたのは他でもない先生自身だ。

 

けれど葉山はうつむかない。いまだ俺の目を見て離そうとしない。

「それでも俺たちの担任は河原先生だ。いままで先生がこのクラスの為にやってきてくれたことが無くなるわけじゃない。悪いとこもあったのかもしれない、けれどそれだけじゃないはずだ。足りないとこばかりに目を向けてこれまでの事を否定するのは…間違っている」

俺は葉山を、葉山は俺を。決して逃さないという強い意志が視線を交えてぶつかり合う。

 

「責任を果たせない大人が、子供を導く資格なんてない。たとえいままでクラスに貢献しようとしていたとしてもそれは円滑に担任をやめるための言い訳作りにしか思えない」

「それは違う。どうして君はまっすぐに見れないんだ! 俺たちがいままでこのクラスでやってこれたのは少なからず河原先生がいたからじゃないか!」

それは正しくない。

「葉山、少し間違っているぞ」

「お前の言う通りまがいなりにもいままでクラスとして機能していたのは先生がいたからだ。だがそれは決して

『河原先生じゃなきゃだめだった』とは思えない」

「朝霧っ!」

「先生だったら誰でもよかったんだよ。ただいるだけなら誰にでもできる。教育者に求められる力は生徒からの信頼を確立し、個々の能力を伸ばそうとする高い教育意欲だ。生徒を素行で判断し、態度を変えるような人に当然信頼なんてないし意欲があるとも思えない。

この時点で先生が担任でなきゃならない理由どころか教育者としてふさわしいとも到底考えられるものじゃない」

感情が溢れてくる。一度吐きされたものを後から完全に戻すことなどできはしない、けれど言葉が次々と浮かんでくる。

 

だから退き際を誤った。

 

俺は、

 

先生に振り返りその言葉を吐いた。

 

「泣きながら生徒に辞退を訴えるくらいなら、初めから担任なんて名乗らないでくれませんか。正直、鬱陶しいです」

 

言ってから後悔した。今のは言わなくていいことだった、余計な一言。されど後悔など既に意味をなさない。言葉の暴力は物理より時として凶器になる。誰しもが使える凶器、それを俺は雪ノ下の一件で学んでいたはずだったのに!

 

「朝霧っっ!!!!」

憤怒の表情で俺の胸ぐらを掴みかかってくる葉山。

お互いに既に冷静な状態ではなく心の中では幾重にも重なる想いがあった。しかし2人はその激情とは裏腹に睨み合ったままその場を動かない。

 

しかしそれも唐突に終わりを迎える。

 

扉が勢いよく開かれたと同時に大きな声がクラスに反響した。

 

「なにを騒いでいる!! …! お前たちなにをしているんだ! 河原先生もなにを惚けているのですかっ。すぐに辞めさせましょう!」

騒ぎを聞きつけた隣のクラスの担任が俺と葉山を引き離す。

お互いの視線は依然として交わり続ける。

その視線は言外にこういってるかのようだった。

 

『お前(君)とはわかりあえない』

 

しかし、長い睨み合いも終わりを告げる。

「お前たちもいつまでも睨み合ってないで、なにがあったか話してくれないか? 河原先生も状況説明のほうお願いします」

 

その後その場では軽い事情聴取だけで終わり、放課後に呼び出された。

その後結果として残ったのは前世通りの担任交代と葉山との確執というものだ。後味が悪いなんてものじゃない。本来ならあのまま先生は泣きながら俺たちに担任を降りることを話して後日交代する予定だった。

しかし葉山と俺という2人のイレギュラーによって事は大きく変わり即日交代。次の日には別の先生がやってきた。

 

この一件で自分の精神的未熟さが大きく浮き彫りとなった。

たとえどんな力を持っていたとしても、様々な経験を積んできたとしても、感情を抑えられない人間はその力を十全に発揮できない。

やり直す力を得たはずが、やり直さなくていいところまで壊してしまう。一度きりのタイムリープはもう来ない。

 

もう少し心に余裕を持って過ごそう。

 

そう心に誓う一件だった。

 

 

 

冬も終わりに近づき寒さも徐々に和らぎ始めたこの頃。

 

長かった小学校生活も終わりを迎える。

 

卒業式の最中、代表挨拶をする雪ノ下雪乃を見てこれまでの出来事を思い返す。

担任交代後は特にあげる事はなく平穏に過ごした。

四年生進級時には男女の意識がつき始めたのかソワソワした落ち着かない空気が終始あり、それに伴ってある事件があったのだがそれは後々語るとしよう。

落ち着かない空気を残したまま進級した5年生時には綾ちゃんと雪ノ下、加えて葉山と同じクラスになった。両方とそれなりに親しくしていた俺と昔からアプローチをかけていた葉山でなんとも気まずい空気の中1年を過ごしたものだ。

そして6年時、どんな心境の変化があったのかは知らないが葉山が俺と次々と競うようになっていた。

勉強、スポーツ、裁縫、料理、様々な分野で俺に勝とうとしていたのを覚えている。結局はスペックの違いで俺が圧倒していたが彼の執念には並々ならぬものを感じた。

しかしそんな毎日も今日で終わる。

幼稚園時代から仲が良かった新平達とは学区が同じということもありまたも一緒の中学に入ることが決まっている。

葉山に関しては特に情報が入ってこなかったのでよくわからない。

雪ノ下に関しても同じだ。彼女との関係はとても不明瞭なもので知り合い以上友達未満であるが、秘密を共有していることからある種の信頼関係が出来上がっていた。かといってお互いのプライベートまで関わる事は稀であり今回の進学先も知らされていない。

 

良くも悪くもこの小学校生活ではいい経験を積むことができた。自分とは噛み合わない奴との遭遇も、2度とやり直せない失敗も、自分の弱さの発見も。今の俺を一段階上に上げるための糧になったと考えればなかなかいい思い出に見えてくる。

 

「卒業生退場」

 

各クラスの担任の合図で一斉に立ち上がり1人1人が堂々とレッドカーペットの上を歩いていく。

在校生の合間を通り過ぎ、保護者席を通る頃俺の父と母がカメラをこちらに向けているのが見えた。

やはり、支えてくれる。自分のことを見てくれる人というのは大きいものだ。些細なことでさえ嬉しく感じられるのだから。

 

人は孤独には勝てない。

 

いまも彼女が孤独なのか、はたまた俺は手を取ることができたのか、それは彼女しか知らないのだろう。

 

でも、俺に向けてくる家族の笑顔を見ていると思うのだ。

 

いつか彼女が心から笑顔をむけてくれる日が来てほしいと。そんな自分になりたいと。

 

 

卒業してから数日が経ち現在は春休み中盤。あの後まだ携帯も持っていない俺たちに連絡を取る手段などなく最後に言葉も交わさないまま終わってしまった。

また、道が交われば会える。そうでなければこれで終わり。ドライな考え方かもしれないがダラダラといつまでも考えていたって状況が変わるわけでもない。

次の舞台は中学。一気に大人へと上がる時期。そしてもっともトラウマが植え付けられる時期だと考えている。

葉山のようなイレギュラーがいないとも限らないし、それによって生じる弊害だってあるだろう。

前の俺なら不確定要素なんて不安の種としか考えなかったかもしれないが今の俺はそれすらも糧に変えようとしていた。

心境の変化なんて人によっては一瞬だ。他人にとってはどうしようもないことでも受け手が変わることによってイメージは大きく変わる。

 

雪ノ下雪乃が少しだけ俺に歩み寄ったように

 

葉山隼人が俺に対抗意識を燃やし始めたように

 

秋沢新平がヤンからホモに移り始めたように

 

俺も少しだけ変わったのかもしれない。

 

 

 

次の舞台はここ、総武東中学。

 




俺は葉山を、葉山は俺を。決して逃さないという強い意志が視線を交えてぶつかり合う。

新平「ぐぬぬぬぬ」

はい。というわけでいかがだったでしょうか。

後半一気に飛ばしてダイジェストみたいになりましたが詳しくは番外編としてその辺りも書くつもりなので今は置いておきましょう。


今回の話には作者の独自の価値観が入っているので人によっては嫌悪感が出たかもしれませんm(__)m

では感想、評価お願いします。また次回で。





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