戻った俺がやり直す   作:独辛

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海行きたい。そして目の保養がしたいと思う天チクです。



ではどうぞ


後ろのアイツは超ウゼェ

 

 

ーーー小学校。

皆はここになにを思うだろう。初恋だろうか? それとも逆に失恋だろうか? もしくはかけがえのない友達を見つけた場所だろうか? ただただ退屈だった場所だろうか?

…俺はどれも当てはまらない。

俺にとってこの場所はトラウマ製造工場なのだから。

魔の小学生時代が始まる。

 

入学式も終わり割り当てられたクラスに移動する。みんな緊張しているのか誰も喋らない。この初日の雰囲気はやはり独特のものがある。

ちなみに幼稚園からの友達はこの「竹の子小学校」に3人入った。新平、戒、綾ちゃんだ。残念ながらゆうきとダダ君は学区の違いにより離れたけどいづれまた会いたい。

さて、現在の時点で前世と違う点は2つ。

1つ目はなぜか綾ちゃんに好かれているということだ。別になにかしたわけじゃないと思う。普通におしゃべりしておままごとにつきあったりしただけだ。特別なことなんてしていない。では顔か? と聞かれたら首を捻るだろう。なんせ俺は良くなったとはいえそれ以上のやつなんてたくさんいる。身近でいえば戒がその例に当てはまる。

まぁ、ここはあまり気にしても仕方ないだろう。

2つ目は新平だ。前世でも懐かれていたがそれは友達としてであり、こんなヤンな子だった覚えはない。いったいどうした、なにがあったと叫びたいレベルである。この年の頃から俺のシャツの匂いを嗅いで興奮するんだぜ? 上級者すぎるだろ。俺には扱いきれないよ。

 

以上の2つが前回とは違う相違点だ。他にも細かい違いはあるがやはり大きいのはこれだ。この違いが今後俺にとってどんな意味を持ってくるのかわからないが…今気にしてもしょうがないか。

気を取り直して席に座る。初めはやはり、あいうえお順というやつで俺は廊下側の一番前。出席番号1番だ。

まぁ、朝霧なんだし仕方ないよね。わかってたことだし。

そう、ここまでは何の問題もないのだ。問題があるのは俺ではなくその後ろ出席番号2番。

その名は【工藤 慧】 クラスに1人はいるであろうお調子者。勿論そういう役割がクラスを明るくするのは知っているし否定する気なんてない。ただそれは『遠巻きに見ている分』に限っての話だ。

話が見えてきただろうか? そうです巻き込まれるんです。

なんせ出席番号1,2。授業中にペアを組まされることなんて珍しくない。お調子者というのは大抵じっとしていられないので目の前にいる俺にしつこく話しかけてくるし挙げ句の果てに無視すると理不尽に怒り出す。

はっきり言おう。俺はこいつが…

超嫌いだったんだよぉぉぉぉおおおおお!!!

何なんだよお前!! 止めろよこっちはお前に構って欲しくないんだよ。ニヤニヤしながら消しゴムのカス飛ばすな、鼻水垂らしながら近よるな、授業中不必要に話しかけてくるな、椅子の脚をガンガン蹴るな!

はぁはぁ。言いたいことなんてまだまだたくさんある。それぐらい俺はこの男のことが嫌いだ。しかも後に分かることだが家は近所にあり歩いて1分もかからない。

それがわかった時の絶望感ときたらもう…。あの時は幼いながらに神を恨んだね。

そんなこいつであるがなぜ俺にちょっかいを必要以上に出してきたか? それを考えた時にわかるのは俺の体型だ。前世の俺は俗に言うデブであったしふくよかな体つきをしておりお世辞にもカッコ良くはなかっただろう。オマケに体力は少なく鈍臭い。お調子者の慧にとっては格好の的だということを幼いながらに理解していたのだろう。

マラソン大会ではいつも最下位である俺に向かってヤジを飛ばす。ドッジボールでは顔面にボールをぶつけられる。まぁ、まだ学校内だけならそれも良かったかもしれない。ただこいつの被害は家まで及んだ。家から1分。この近い距離。あいつが来ないわけがなかった。

いきなりきて家に上がり込み俺の部屋に侵入。勝手にゲームをやり始める。ジュースの差し入れを持ってきた母さんにはなぜかしっかり挨拶をする慧。なにお前この歳でごまのすりかた覚えてんだよっ! と言いたくなるほど憎たらしかった。

こうして俺の小学校生活1年目は闇に飲まれていく。だがそれはあのままだったらの話だ。

 

今の俺は違う!! 体型はスリムでありその中にしっかりと筋肉が詰まっている。それもそうだろう自我が芽生えてすぐに負担のかからないトレーニングを毎日やっていたんだ。並の小学生に負けるような体じゃない。

そしてプラスαで顔がいい。←ここ重要。女の子というものは極めて単純な生き物だ。なんせ『カッコいいものの味方』なんだから。醜い奴がいじめられていても助けてなんかくれない。だがイケメンがいじめられてると不思議と女子が加勢してくれるのだ。不思議なこともあるだろう? でもこれはれっきとした事実だ。だからこそこいつは俺に容易に手は出せない。初めはそれがわからないだろうが徐々に理解するだろうさ。

 

自己紹介が始まる。勿論最初は俺からだ。1番初めということもあるのか誰もよそ見することなく俺を見てくる。

「朝霧 秋水だ。よろしく」

小学1年生とは思えない堂々とした挨拶。内容は完結であるが威圧感は伝わった筈だ。そのせいか担任の先生は口をパクパク開けているし。心なしか後ろの慧も驚いているように見える。

回復した先生が次の人へ挨拶を促す。勿論相手は慧だ。

「おれ!おれ工藤慧!!みんなよろしくしてやってもいいぞ!」

だれがお前となんか仲良くするか帰れこの坊主頭。お前は1度寺に修行僧として修練を積んでこい。そしてそのまま帰らないまである。

あ、言い忘れてたが戒と新平は違うクラスだ。これはあらかじめ知っていたので大した驚きはなかった。ただ去り際の新平の顔にはゾッとしたけど…

徐々に順番は回っていき綾ちゃんの番になる。

「こ、小日向綾でちゅ。よ、よろしくおねがいしましゅ!…あぅ」

いまのでこのクラスの男子の半分が綾ちゃんの魅力にやられたな。幼いながらになんて魔性の女よ。まったく恐ろしい子ッ!

「好きなひとはいますかっ!」

さっそく慧が質問する。こいつもやられた内の1人というわけか…

「え、え、え」

戸惑いながらもチラリと目線を向けてくる綾ちゃん。

だがそこは小学1年生。気付ける人なんていない、慧なんておれのこと好き? なんて恥ずかしいこと聞いてるし。会った瞬間にテメェみてぇなの好きになるやついるかボケ。

「はいはい。質問は後にしましょう。次の人お願いね」

ざわめいていたクラスを先生が鎮める。でもそこは慧クオリティその程度じゃ止まらない。

「なぁあや〜。おれのことすき〜?」

「こら、慧君。早く席に戻って。綾ちゃんも困ってるでしょう?」

それでも言うことを聞かず擦寄る慧。何度も何度もしつこく尋ねていき、なんとか好きと言ってもらおうとするのが見ていてわかる。だが流石の綾ちゃんも我慢の限界がきたのか一言。

「きらい」

その言葉はやけに教室に響いた。たった3文字の言葉。たった3文字ではあるが慧の心をえぐるには十分すぎた。

「ひ、ひぐぅ。ぇえ…ぴきゃぁぁぁぁああ!!」

号泣する慧。ザマァ!!!!! 泣き喚けこの負け組野郎が!! なにがぴきゃぁぁぁぁああだカス!テメェは妖怪かなんかかよ(爆笑)

…内心めちゃくちゃ嘲笑ってる俺はもしかして性格悪いんだろうか?

 

ハプニングもあったが全員の自己紹介も終わり次は学校でのルールやら教科書の配布がされる。…1つ1つ名前書くのって怠いよね。

それも終わってようやく帰れる時間となった。だいたいの学校は入学式といったら早く帰れるイメージがあるのではないだろうか。ここも例に漏れず午前中だけで終わりだ。

おそらく保護者説明会が終わって校門前で俺を待っているであろう両親のところに行こうと立ち上がる。

すると目の前に綾ちゃんがいた。

「あ、あのね。いっ…いっしょにいこ?」

…ぴきゃぁぁぁぁああ!! ハッ!俺も妖怪になりかかっていた。恐ろしい女だ…綾ちゃん。

そんなバカなことを考える程度には可愛かった。

黙っていた俺を見て不安になったのか目尻に涙がたまっている。慌てて了承の旨を伝えると花が咲いたように笑ってくれた。

だが、ここですんなりいかないのがこの魔の小学生時代である。

「あや〜。こっちとかえろうよ!」

はいでました慧! 工藤慧! テメェは転生チートオリ主でも天然系イケメンキャラでもなんでもないんだから黙ってお家に帰りなさい。そんなことが言えたらどれだけ楽だろう。まぁ、言っても意味わからんと思うが。

「いや!しゅすい君とかえる!」

いや〜。嬉しいこと言ってくれるね。でもね綾ちゃん、俺の名前しゅうすいだから。しゅすいじゃないから。

「おい!お前!」

はいでましたぁ〜。定番台詞『おいお前』。矛先を変えるためによく使われますねぇ。大方綾ちゃんには強くでれないため俺にいちゃもんつけようとしたんだろうがはっきり言ってめんどくさい。

なのでこうする。

「綾ちゃんいこう」

パッと手を取り走り出す俺。

やだ俺イケメン…。

「えへへ〜」

ニヤけている綾ちゃんはやはり可愛かった。

後ろから何か騒いでる音が聞こえたが今の俺たちには大して気にならなかった。

 

玄関で靴を履き替える。その為には1度手を離さなくてはいけない。その時の綾ちゃんの顔が悲しみに染まっていたので履き換えた後にまた手を繋いであげたら二ヘラ〜っと笑っていた。

玄関をでると人人人。参列していた親たちがこぞって自分の子供を待っているのか身長が低い俺たちではなかなか自分の親を見つけられない。

そんな時後ろから声が。

「綾〜。こっちよ〜」

特徴的な間延びした声が俺たちに向けられている。すぐに綾ちゃんは反応を見せた。

「あ!ママ!」

だが駆け寄りたくても手は離したくないのか俺とママを交互に見てくる綾ちゃん。

仕方ない。そう思って綾ちゃんに笑顔を向けながらママを指差す。綾ちゃんも意図をわかってくれたのか途端に困り顔から笑顔になった。

「ママ!パパ!あのねしゅすい君だよ!」

要領を得ない言葉であるが、そこは親。しっかりと意図を組みとり俺に挨拶してきた。

「あらあら。初めまして綾の母親の翠です。気軽にお姉さんって呼んでね?」

最後はウインクしながら決めてくるとはなかなかユニークな人らしい。外見はとても若く一児の母とは思えない。

隣にいた男性に目を向けるとこちらもまた挨拶してくれた。

「綾の父親の永だ。綾の友達なのかな? これからもよろしく頼んだよ」

微笑ましそうに繋がれた手を見ながら頭を撫でてくれた。

いつまでも舐られたままでは男がすたる。別に子供なんだからと言われればそれまでだがパーフェクトヒューマンを目指す俺はしっかりと挨拶もこなしたい。

「初めまして綾ちゃんと仲良くさせていただいております。朝霧秋水です。よろしくお願いします」

…ポカーンとしているご両親。それも仕方ないか娘と同い年の少年が見た目に似つかわしくない言葉を使いながら挨拶したのだ。大抵ビビる。

それでも翠さんは笑顔で見てきてくれた。

「あらあら、ずいぶんしっかりとしているのねぇ。これなら綾も安心ね」

「うん!!」

そう言って2人で笑いあっている。永さんもそんな2人を見てかだんだんと笑顔になっていった。

せっかくなのでと綾ちゃんとツーショットを撮ったり、ご家族の皆さんと一緒に撮ったりなど。いい記念になるようなイベントもこなし、満足しながら綾ちゃん一家は帰っていった。

 

その後ぐるぐると親を探していたら丁度誰かの親? と話しているのが見えた。

「あら、おかえり秋水。どうだった新しい学校は。友達できた?」

「まぁね。楽しかったよ」

「ふふふ。よかったわね」

親子でコミュニケーションをとっていると先ほど母さんと話していた人がこちらに視線を向けてくる。

「この子が朝霧さんの息子さんかしら? ずいぶん逞しい顔つきねぇ。将来有望そうだわ!」

「ええ〜。そうですか? いつも家ではちゃらんぽらんなんですけど…」

失礼な。休む時に休んでいるだけだ。何が悪い(えへん)

2人で会話を始めてしまったので母さんの裾を引く。

クイクイ

「ん?なぁに。ああ、さっきそこで知り合ったのよ。あんたと同じクラスに息子さんがいるんですって。そうだ! 工藤慧君って名前なんだけど知ってる?」

…そうだ思い出した。この隣の人。あいつの母親だわ。高校卒業してから1度も会ってなかったからすっかり忘れてた。

この母親、文子さんはなかなかに強者である。親はヤクザの組長であった工藤組のお嬢として生まれ、なかなかに苦労した若者時代を過ごす。その後運命の人と呼べる人を見つけたが既に既婚者で妻子持ち。だが、そこで諦める彼女ではなかった。アタックによるアタックで最後には略奪婚まで漕ぎ着ける。若い頃から苦労した彼女は地元でも1番の高級スナックのママをしておりかなりの貯金があった。そのお金で相手側、つまり別れさせた女の子供達の面倒まで見始める。凄まじく剛毅な人である。その後もいろいろあったようだがなんとか仲良くやっているというまさに剛の者である。

やはりこの親にしてあの息子だと思うと納得してしまう。生来の押しの強さというものがそっくりなのだ。

 

その後慧が合流して一悶着あったのだが面倒なので割愛しよう。

小学校入学という輝かしい記念日ということで家族で写真を撮った。

これからの学校生活。まだまだ不安はあるが楽しくやっていけそうだとその写真を見ながら思った。

 

 





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