戻った俺がやり直す   作:独辛

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みんな持ってる黒歴史…俺もやり直したいなぁ。




ではどうぞ


白いアイツ

気がついたら体が縮んでしまっていた。

 

何を言ってるのか俺もわからないから安心しろ。 ちなみにコナンみたく薬を飲まされたわけじゃない。風呂に入ってたらこうなったんだ。

わっぷ!

どうやら俺はいま身体を洗われているらしいさっきから顔面に容赦なく水が襲いかかってくる。もうちょっと丁寧に洗えやコラ。

誰やねんこんな雑な洗い方してる奴は!

そう思い睨みつけるとあらま!その見覚えのある顔は…おかあちゃまでした〜!!

 

ってなんでだよ!ここはあれじゃないの? テンプレで金髪美人のお母様って奴じゃないの? 見た目は全然お姉さんに見えるとかそういう奴じゃないの? ねぇ、誰か教えて…。

なんで、なんで俺の母ちゃんなんだぁぁああ!

いやまぁ全然嬉しいんですけどね。え? さっきまでと反応が違う? 何言ってんだよいきなり知らない人に身体を弄られるなんて嫌に決まってんだろ。それならまだ母ちゃんの方がマシだ、なんたって赤子だ洗われて当然だ。これがさっき言った金髪美人だったら羞恥心で死ねるけど自分の母親じゃあねぇ…。

あ、洗い終わった。

わっぷ! だから優しくして!? もっと包み込むような感じで顔を拭いて! 荒々しすぎるわ!!

顔面に訪れる脅威に耐えながら俺は一つの結論を出していた…これ転生やない、逆行や。

 

あの日から数年が流れた。時が経つの早いというがその通りであり俺もいまは立派な幼稚園児で4歳だ。タケノコ保育園の梅組に入っている。

 

ここまで過ごしてわかったことは3つ。まずは大きく前世と食い違う部分ははないということ。いまの俺は自分での行動決定権は無いに等しい。まぁ当然だな幼稚園児だし。

あまり記憶には残ってないが前世も同じ幼稚園だった筈である。

2つ目は俺の変化についてだ。ここに来る前の前世の俺とは明らかに顔が違っていた。いや、なんていうか俺なんだけど俺なんだけど俺じゃないみたいな?説明すんのも難しいが親の特徴受け継ぎつつも前とは違ってパーツのバランスがよくなっているんだ。これは俺にとってかなりハッピーなことだった。

3つ目は俺の能力。え? お前能力なんてあったの? なんて思ってるかも知れないが…マジだ。あの後諦めきれなかった俺は2年の歳月をかけて見つけだした。しかも複数。現在確認できている能力は4つ。

 

・絶対記憶能力

・1度見たものをコピーする能力

・天才的頭脳

・空想具現化

ちょっと最後のだけ頭逝ってる能力ではあるが勿論制限がある。文字通りこの能力、空想を具現化できる。例えば『ああ、今日体育だりぃ、雨でも降らねぇかなー』って考えながら使うと雨が降る。勿論みんな大好き厨二病の真似事だって簡単だ。だが、時間だけは操れない。それが逆行してきた俺への弊害なのかは判らないが失敗したらやり直せないのは変わりがない。例え空想が現実になる力があったとしても過去にはもう戻れない。

 

それでも初めはこの能力に喜んださ。ヤベェこれで勝つる。そう思ってた。いやまぁいまでもわりと思ってるけど。

でもさやっぱり美味しい話にはウラがあるもんでこの能力。使うとちょー疲れるんだわ。あれだよアレ、わかりやすく言えば中学の時によくやるシャトルラン。あれ全力で走ったような疲労感が襲いかかってくんの。…まぁどこかの錬金術士みたいに身体の一部もってくとかじゃなくて良かったし、リスクとしてはぜんぜん軽いからいいけど。

でもまぁ俺も決めたことがある。この能力は確かに凄い。それこそ世界征服だって大金持ちだって一瞬だ。でも思ったんだ。今俺が生きてんのは両親が頑張ってくれてるおかげだ。汗水たらして働いた金で食っていけてる。それを俺が苦労もせずにパッとやっちまったら…なんか嫌だろ?勿論俺の力なんだから好きに使おうが文句は言えないかも知れない。

これでも前世は20歳だったんだ。働く辛さはわかるし、働いてない時の喪失感もあのどこまでも堕落しそうな感情も知ってる。まぁだからこそって奴でなるべくこの能力に頼らないように生きたいと決意したんだ。上3つはオートだから仕方ねぇが最後だけはしっかりと判断して使う。それが幼いまでもしっかりと決めた俺自身のルールだ。

 

ここまで長ったらしい俺理論を述べてたがじゃあ、お前は前世みたくただ毎日を消化していく日々を過ごすのか? そう聞かれたら答えは勿論Noだ。やりたいことなんてそれこそ腐るほどある。やり直したいことだってある。見返したい奴だっている。

幸いにも俺には能力だってあるし中身は20過ぎの成人だ。それこそこの時期からの身体の鍛え方なんてのもある程度知ってるし、知識だって多い。その分他の分野に力を注げる。ようは俺は他の奴らよりアドバンテージがでかいんだ。

だったらやるしかないだろ?

……

決めたぜ俺の信条は「出来ないことをやろう」

ちょっと意味不明かもしれないがあれだよ、安心なんとかさんのと同じだ。

どうせならパーフェクトヒューマン狙ってやる。

 

そんな決意を秘めた2x00年、4月11日の昼だった。

 

 

カッコよく? 決めた翌日。さっそく俺はタケノコ保育園へと向かう。勿論送迎はバス! …と言いたいとこだが生憎と家から近いので親に自転車で送ってもらっている。

さて、俺はここで前世に思い馳せる。実は俺こと【朝霧 秋水】は…え? ああ、読み方はしゅうすい、だ。それで続きだが俺はタケノコ保育園を中退している。保育園を中退…なんかおかしい気がするがいいだろう。俺は覚えてないが、当時はすごかったようで帰ってきてはもう行きたくない!と訴えていたようだ。

じゃあなにが嫌だったか? 勿論母はそれを調べた。結果はこうだ。

 

『献立に乗ってないのに毎日マカロニサラダがでてくる】

 

は? そんだけ? え、うまくね。むしろ天国。そう思う人もいるかもしれない。だがよく考えてくれ。毎日毎日同じものを食べる辛さは皆知っているだろう。それを我慢症のない幼子が食べるんだぜ? 無理に決まってんだろ。

今日は唐揚げだぁ! でも隣にはマカロニサラダ。

お!今日はカレーライス。でも隣にはマカロニサラダ。

きたぁ!今日はデザートがある! でも隣にはマカロニサラダ。

そんな毎日を送っていた俺はいつしかマカロニサラダに恐怖を覚えるようになっていったんだ。通称【白いアイツ】

なんせ残そうもんならタッパーに入れてもち帰らされるんだぜ? 帰って親に見せる時には蓋にべっとりと着いた【白いアイツ】。俺は泣き出したよ、だって無理だもん。アイツには勝てなかったさ。

それで俺を心配した母ちゃんが幼稚園に移してくれたわけだ。

 

そんな因縁があるこのタケノコ保育園。俺の目の前にそびえ立つそいつは僅かに邪気を放っていなくもない。そんな気がする。…たぶん、きっと、メイビー。

 

いつもと同じように過ごして昼になる。そう、昼だ。目の前には白いお椀に入ったクリームシチュー。でも隣にはマカロニサラダ。

思わずゴクリと喉を鳴らす。

今にも逃げ出したくなるそれを抑えて食べる。あ、ヤバい吐きそう。もう無理、僕もう頑張ったよね。

過去のトラウマなんて簡単に消えやしないし、元から克服しようとも思わない。決意した翌日に何言ってんだと思うかも知れないが知りませーん。ぼくまだ3歳。

故に行動をおこす。隣に座るのは太郎くん。マカロニサラダが嫌いなのか先に食べようと一生懸命食べている。恐らく後で好物のクリームシチューでその後味を無くそうとしているのだろう。

なかなかの頭脳プレーだな太郎くん。だが甘い!!

俺は連日テレビでやっていたマジシャンの手品よろし高速で腕を動かし太郎くんの器にマカロニサラダを移す。

「え、え、え」

当然さっきまで残り僅かだったマカロニサラダが復活してしているのだ。実に恐ろしいことだろう。

キョロキョロと見渡しながらも涙を飲んで食べる太郎くん。だが最後には泣き出してしまい残ったマカロニサラダはタッパーと共に太郎くんのカバンへ。

太郎くん、君の犠牲は無駄にはしないよ。

心の中で熱く思い次の行動に移る。

毎日毎日、マカロニサラダ出しやがって。俺はまだまだ残っている鍋の中に溢れているマカロニサラダを見る。

先生たちは優雅にサンドイッチですかぁ?ふざけんじゃねぇ!!アイツの怖さ…味わうがいい!!

 

テレビでジェット機の試運転をしていた、あのスピードなら誰にも見られはしない。そして俺には手品師の器用さがある。これはいける!!

 

へっ、豪勢にベーコンレタスとは恐れ入るぜ。だが残念。

貴様の口に運ばれるのは肉汁溢れるベーコンではない。白くねっとりとした…アイツだよっ!!

イィヤァァァァァアア!!?

 

何度も何度も口の中に入れる。サンドイッチが口に運ばれる瞬間中身はマカロニサラダ。

口直しにパックジュースを飲んでも口の中はマカロニサラダ。

しまいには口を開けるだけで中にはマカロニサラダ。

 

先生はトイレへダッシュした。

まったくザマァないね。これで太郎くんも報われるってもんだよ。

スッキリした気持ちで家に帰る。そして一言。

「お、おがあざんっ、あ、あの保育園にもう、いぎだぐない!」

翌日、俺の幼稚園行きが決まった。

 

 




いかがでしたでしょうか。


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