アナザーストーリー〜トラウマの原因をぶち壊したら、その世界はどうなるか。 作:袖野 霧亜
文化祭も特に(俺のあれこれを抜けば)何事も無く終わりを迎え、とうとう打ち上げ会場に着いてしまった。帰りたい気持ちでいっぱいなのだが明日からの俺の学校生活を守るためなので諦めよう。
しかしどうしたものか。端っこに座ることを許すような感じじゃなかったし、メガネかけた状態の俺は俺じゃないみたいだから俺だってバレる可能性大だし……。仕方ない、もうここまで来たらどうにでもなってしまえ。押してダメなら諦めろ、ってやつだ。人生何事も諦めが肝心だ。後は流れに身を委ねよう。
「あ、八幡。メガネは没収ね。どうせあってないようなもの、でしょう?」
「ん、おぉ。わかった。ほれ」
制服のポケットに仕舞っておいたメガネを取り出し三木に手渡す。三木の言うとおり確かにあってもどうせ意味ない。着けた状態で店に入ったとしても何かしらの理由で外すはめになったらあっという間に学校に広まってある事無い事振り撒かれてギリギリあった俺の立場が消失してしまう。再来年から小町も同じ学校になるから絶対に避けなくてはならない。俺のせいで小町に何かあったら壊れる自信がある。だから、それだけは全力で回避行動をとる。
「さぁー始まってしまいました! 八幡君によるチキチキ☆バレたら色んなものがアウトだよ! 皆にバレないように隠密ゲーム! いえーい!」
「ぶん殴るぞこんちくしょう」
割とマジメに俺のこれからの人生が関わってるからな? 遊び感覚でこんな事されたんじゃ堪らないんだけど?
「あ、うん。全力全開で冗談だから安心おし。絶対悪いようにしないことをかおりに誓うから」
「なんで折本なんだよとばっちりもいいところじゃなねぇか血も涙もないのか」
「いやぁ、かおりならなんとかしてくれそうかなーという押し付けを、ね? ついでに今回私達のデートを邪魔した罰」
「……デートではないだろ」
「あ、照れた。かんわいいぃぃぃ!」
「うっせ」
俺の照れ顔でかわいいとか頭おかしいんじゃねぇのか? いや、別に自虐ネタとかじゃなく純粋にキモいだろ、俺の照れ顔。
「じゃあそろそろ行くかぁね。皆中で待ってるだろうし」
「……おう」
若干胃の奥からこみ上げるものがあったが、それをなんとか押し込め店の中に入る。呼吸がいつもよりしにくくて足取りも不安定だ。今自分の顔を見たらとても負の感情で酷い面持ちになっているだろう。まぁ普段から酷い眼してるからそれが顔全体に広がっただけだって思えばそうでも───いや、さり気なく結構重めな自分で自分にディスりをいれてるわ。少し、ほんの少しだけ傷ついた。ホント、少しだけだからね?
「おまたせ」
『来たぞ! ひっとらえて奥に詰め込め!』
『『『応!』』』
「「へ?」」
打ち上げ会場の部屋に入るなりおそらくクラスメイトと思われるヤツの号令で複数人に囲まれそのまま脱出不可能な場所まで連れていかれる俺と三木。いやあのちょっと待ってもらっていいですかね? いきなり大勢の人に囲まれるとぼっちには大ダメージだから! 連れてかれる最中カーストトップの三木でさえ「あ、や、まっ」とかまともに言葉も発せられずにいたからね?
『ふぅ、とりあえずファーストミッションは完了だね。男子、そっちは任せた』
『よし任された。さぁ比企谷、俺達とお話といこうぜ?』
「おい三木! 今悪いようにされそうなんだが謀ったのか!?」
「し、知らない! ホントに!」
……嘘はまぁついてないみたいだな。ほら見てご覧? 今にも泣きそうよあの娘。じゃあ誰が──
『ぷっ、比企谷と美咲のテンパりっぷり面白すぎ、ウケる!』
『か、かおり! みんなにどんな説明したらこんなことになったの!?』
『え? とりあえず言われた通りに言っただけだよ? あとはあれよあれよと……』
『とにかくはーなーしーて! 八幡に酷いことしたらダメなんだからー!』
──よし、後で折本を絶対に許さないリストにぶち込むことにしよう。今は、
『さぁ比企谷。お話タイムだ。安心しろ、三木もあー言ってるし酷いことはしない。……比較的には』
今は、この状況の打破について考えることに集中しないといけないからな。
ていうか小さく比較的にって言ったよね? 酷いことされちゃうのか? そんなこと言って比較的じゃなく酷いことするつもりなんでしょ? エロ同人みたいに! ……おえ、気持ち悪い。
「……んで、話ってなんだ?」
『あー、まぁこの質問の答え次第で全部終わりなんだけど……』
「そのためだけに仰々しいマネしたのかよ……」
なんなのこのクラス。もしこれが三木関係のものだったらコイツらどんだけ三木のこと好きなんだよ。怖ぇよ。あと怖い。
『んで、三木のことなんだが……お前アイツとどんな関係なんだ?』
「はぁ……、なんなのお前ら三木のこと好きすぎない? もう崇拝レベルじゃないの?」
『まぁ……な。たしかにそう言われると否定出来ない。それで、どうなんだ?』
「別に何もねぇよ。実際アイツと喋ったの数日前だしな。そもそも存在自体を知ったのが最近───」
『…………嘘だ』
ガッと肩を掴まれ言葉を途中で遮られた挙句嘘つき呼ばわりですかそうですか。いや待て何で嘘だとか言うんだ。俺はこの世に生を受けた時から嘘なんて一つもついたことない。割と最近嘘ついた事ある気がするけどそれは気のせいだ。そうに決まっている。
「おい、最後まで言わせろよ。ついでに嘘じゃねぇよ」
『いや嘘だろ? クラスどころか学年全員が知ってるんだぞ? 噂ぐらいは知ってるだろ?』
「あー、まぁクラスに癒し系のマスコットキャラがいるって聞いたことはあるくらいだな。他は知らん」
『……も』
「も?」
『『『もったいない!!!』』』
「うおっ」
なんだよ、いきなり叫ぶなよ店迷惑だろ。叫びたいならカラオケ行ってこい。俺は行かないけど。
『予定変更だ。これから三木美咲がどういう人物か徹底的に教え込む時間にする』
「おい今から打ち上げするんじゃないのか」
『そんなものより今は最も重要なものがある!』
ダメだ。人の話を聞く気が無い。ていうか、
「ていうか、その教えるものとかどうせお前らが知ってる三木のことだろ。なら問題ない。今日1日振り回されてよくは知らないが多少はどういうやつか知ったつもりだし、それに俺は他人から聞かされた人物像ほど信用ならないものは無いからな」
あ、でも知ったつもりですらないかもな。だってアイツ個性がちぐはぐだし。アレだ、自分の好きなキャラの好きなところだけを抜き取って自分のものにしてる感じだからなかなか掴みにくいところがある。……まぁさっき別れされられた時は少しアイツの素が見れた気もしたが、やっぱり違う気がするし。なんというか、手のかかる男主人公の幼なじみ系ヒロインみたいな感じ。わかるかな? あ、わからない? そうですか……。
『────』
ん? どうしたんだこいつら急に黙って。
『『『──し』』』
「し?」
『『『師匠ぉぉぉぉぉぉおおおお!』』』
「うひぃ!?」
ちょっ、いきなり詰め寄らないでくれる!? ぼっちは心が弱いんですよ!? 変な声が出だじゃん!
いやそれより師匠って何ですか……。どういう状況なのこれ。ひっそりと隅っこ暮らしするつもりが大所帯で隅っこ暮らしし始めるとか意味がわからない。それ以上に師匠が意味わからないのだが……。
「あ、あにょ、少し離れてもらっちぇもいいでしゅか? ちきゃい……」
なんとか声を発せたもののそれは十分に舌が回らずに噛み噛みになった言葉だった。くっそ恥ずかしい…………!
『あ、あぁ悪い。興奮が抑えられなかった。いや、もう大丈夫。とりあえず聞きたいことは聞いて追加質問も布教、じゃなくてPR活動もしなくて大丈夫みたいだしな』
「あ、あぁそうでしゅか。じゃあ僕は少し疲れたからこれで……」
『え、いやまだ来たばっかだろ?』
「体もだけど、ここに来るまでと来てからの心労がかなりキツいんだよ……」
『そ、そうか。今日はごめんな?』
「いや、大丈夫だ。それじゃ」
若干震える足を手で支えつつなんとか帰路につく。途中「ま、待って私も一緒に──」という声が聞こえなくもなかったが、今はそんな余裕は無く、そのまま帰ることにした。あぁ、家に小町いるかな? 今の俺の状態を見たら心配するだろうからどこかの公園で休憩してから帰ろう。
その後、疲れのせいか思考回路がほぼ止まっていた俺はどこにも寄らずそのまま帰宅してしまい小町に心配をかけてしまった……らしい。なぜらしいなのかは察してくれ。
どうも皆さん、主の霧亜さんです。夏休みも終わりましたね。私は夏休みの間燃え尽きてました。何もしたくなく、ただそこで生きてるみたいな感じでした。
あ、いつもの寸劇みたいなのですが、どうにも長過ぎて本編と区別がつかない人もいたのでこうやって一人ずつやっていこうかなーとか思ってたり。前の寸劇のままでよければTwitterにでもDMでも直接リプでもして貰えたら嬉しいです。まぁ別に感想でもいいとは思うけど、あんまりそういうことしてると運営さんに目をつけられそうなので……。
まぁそんなわけでとりあえずこれで後書き終了! 遅れてごめんなさい! 新規さんはお気に入りに追加してくれたり元からしてくれてる人たちも感想くれると嬉しいなっ!