アナザーストーリー〜トラウマの原因をぶち壊したら、その世界はどうなるか。 作:袖野 霧亜
「んー、満々満足っと」
現在地はここ、俺のお気に入りの屋上の扉の前にいる。自分のクラスから出てから数時間、ずっと三木に連れ回され続けた俺は疲労困憊状態だ。かなりキツい。肉体的にもキツいがなにより一番キツいかったのは精神面だ。何? 周りからの視線が槍のように突き刺さってくるんですけど。刺し穿つ死棘の槍ゲイボルグとか受けてた気分だったわ。いや、あんなの何発もくらってたら俺死ぬけど。なんなら一回目の刺突を受ける前に死ねるまである。あ、あと腹もだいぶキツい。コイツ色んな食べ物買うくせに3分の1食べて俺に押し付けて来るからかなり腹が膨れている。肉体も精神も内臓もやられるとかどんなデー、ゲフンゲフン。まぁ、その、なんだ? 男女の付き合いだよ。晩飯入るかな?
「………そうかよ」
あまり元気が残っていないため小さな声で反応した。いや、あのそんな何か言った? みたいな顔しないで? もう何度も言い直したくないくらい疲れてるの。
「いやぁ、ありがとうねぇ。1人でいると複数人からお誘いがありそうだったから助かったよ」
「………人気ありそうだもんな、お前」
「ふっふっふー。実際に人気あるからね、私は」
「………とりあえず今日はもういいか? 早く家に帰りたいんだが」
もうクタクタなんですよね。普段から運動どころか動くことがあまりないからしんどいし。
「何言ってるのさ。まだ文化祭は終わりじゃないぜ?」
「どうせ俺の存在を認識されてなんか無いから途中で帰ってもバレんだろ。大丈夫だ、問題ない」
「なら私が先生にチクってしまおう。比企谷君が文化祭をサボタージュしましたーって」
「なんでだよ」
「無闇にフラグ建ててくるから成立させようとしているだけじゃないか。だから『僕は悪くない』」
どこの過負荷マイナスさんですかねぇ………。落ち着いて考えると、いやまぁ落ち着かなくてもわかるけど俺ってばもしかしてめっちゃ面倒臭いことに巻き込まれてはいませんかねぇ? 明日明後日は休日だから家でゴロゴロ出来るけど、もし、万が一噂が蔓延ってたらまた………。
「ま、今日のお礼としてそのメガネをプレゼントしよう。大事に扱っておくれ」
「いやそれは悪い気もするから金は払う。いくらだ?」
「今プレゼントだと言ったばかりだろうに。お代はいらないよ」
「いやでもなぁ」
「今回の報酬だ。それとも何か? 貴様はゲームでも報酬を貰わない主義か?」
「………有難く頂戴いたします」
ヤバい何この娘。いきなり超高圧的っていうか殺し屋みたいになって怖いんですけど。あと怖い。
俺が受け取ることを了承するとさっきまでの殺気に近い何かが消し飛んでほんわかとした雰囲気を優しい笑みと共に出してきた。
「うん、それでいいの。最初から素直に受け取りなよね」
見蕩みとれてしまった。その笑顔に。数秒息が止まっていただろう。いや、息だけじゃない。瞬きすることも忘れて彼女を見つめてしまった。直ぐに正気に戻って顔を逸らすがおそらくコイツにはバレているだろう。しかし照れる気持ちはあるものの、悪い気はしなくもない。おかしいな、もしかしてルート入っちゃったか? いや待て落ち着け比企谷八幡! 俺に限ってそんなことはありえない! 早く来い伏線崩壊者フラグクラッシャー! お前の働きが今後の俺の運命を左右するぞ! ………なんか厨二っぽくて嫌だなこの二つ名。もうちょいマシなの無かった?
「あ、そういえば忘れていたことがあった」
「なんだ? 買い忘れたものとかあったのか?」
まさかまだ食いたいものがあるとか言わないだろうな? もうやめて! 俺の胃袋はもう限界なの!
「んーん、違う違う。あったとしてももうお金無いし」
「そこはまぁあったら出す、と言いたかったが今日は特に何か買う予定とか無かったから持って来てないんだ。スマン。で、何を忘れてたんだ?」
「えーっと、これはどうしようもないというかアレがアレな理由で………」
どうにも歯切れが悪く言いかねているが、まさか何かのイベントに出るはずだったのにそれをすっぽかしたとかか? いや、それなら放送が流れるか。折角の文化祭なのに放送委員の皆さんお疲れ様です!
「まぁとりあえず言ってみろよ。俺に出来ることならするからよ」
「そこで何でもって付けないところ、いいと思うよ。ならちょっと張り切っていこうか」
どういう事だ? と聞く前に大きな声で、扉の方に目掛けて言い放つ。
「そこの人達。私は怒ってないから素直に出てきなさい。ストーキングしてるのバレてるからね?」
「っ!?」
やっちまった! 普段の俺なら気付くはずなのにいつもより多い視線から目を背けすぎて認識出来なかった………! どうする? ストーキングされてたってことはここに来るまでの道のりから付けられてたってことだから………。あぁぁぁダメだ絶対なんか起こるし起きたら起きたで三木の評判も落ちる。それだけは避けなくてはならない。
ふと、昔のことを思い出した。あの時と同じことをすれば、何もかも収まるんじゃないか? と。
しかしこれは自己犠牲も甚だしい。ただでさえ今の俺の立ち位置は厳しい。今はまだ直接的な被害は被ってはいないがまたアレをしたらもう終わるな。しかし、もう手段を選ぶことは出来ない。分岐点は既に俺の目の前にある。しかも後ろにあったはずの道はどんどん崩れていってるときた。
そしてゆっくりと、着実に、俺の運命を決める時が迫る。
???「やぁやぁ。僕だよ」
美咲「やぁやぁ。私だよ」
???「いやぁ困ったことが起きたよ。もう過去に触れるところが出てきたんだけど、まだ出さなくてもいいよね? 今出すのは勿体ないというか、八折の方を見れば理解できるから出さなくてもいいって思ってるんだけど?」
美咲「まぁ欲しいっていう人がいるならコピペしてこっちにも載せれば?」
???「運営さんに怒られたりしないかな?」
美咲「怒られたら消せばいいだけ」
???「ま、そこら辺は俺らの役目じゃないからどうでもいいか」
美咲「そーそー、全部の主にやらせればいいのさ。どうせ主が全部やるんだから」
???「まぁそうだね。ところでなに? あのフラグクラッシャーって。どうしたの?」
美咲「主が高校生の頃本当に言われたことらしいよ? ヤバいウケる」
???「こらこら、折本が伝染ってるよ」
美咲「ま、とりあえず彼はたまにリアルで起きたことをネタにする事あるしね。9割方フィクションだけど」
???「それもそうだ。おっと、それじゃあそろそろ終わりにしようか。馬鹿みたいに長い後書きで台本形式なお喋りなんて今どき流行らないよ?」
美咲「それでもやるのが主」
???「違いない。それじゃあ───」
???・美咲「ご愛読、ありがとうございました。お気に入り登録、感想、投票してくれると嬉しいな☆」
???「やっぱりこれあざとくない?」
美咲「もう諦めた」