アナザーストーリー〜トラウマの原因をぶち壊したら、その世界はどうなるか。 作:袖野 霧亜
美咲「許さない。ギルティ以外の選択肢はない」
霧亜「いや、たしかに2ヶ月近く投稿しなかったことに関しては謝らなくてはならない。あー! バイトが忙しいんじゃぁぁぁぁあああ!」
美咲「それで? また投稿は遅くなるの?」
霧亜「いんや、来月からかなり減らしてもらうから多分大丈夫。まぁ他の作品もあるからそれも並行してやっていくから2週に一回出せたら………いいよね」
美咲「願望なのね」
霧亜「実際これ3日かけて書いたし」
美咲「もっと激しく頑張りなさい」
霧亜「また倒れる一歩手前になるからヤダ」
美咲「なら早めに出しなさい」
霧亜「はーい。じゃあ雑談もそこそこに本編へどーぞ!」
「八幡、次はあそこに行こう」
「………あぁ」
「元気ないけどどうしたの八幡? 大丈夫? ハグする?」
「遠慮する」
「そう、なら行こう」
えー、私、比企谷八幡はただ今名も知らぬクラスメイト(?)に連れ回されております。さて、
ど う し て こ う な っ た。
いや待て落ち着け、素数だ。こういう時には素数を数えて落ち着くんだ。1、2、3、4、5………あれ? そもそも素数ってなんだっけ? 俺、数学、出来ない。あ、その前に算数すら怪しいところあったな。今後のためにも勉強しとかねぇとな。
「………なぁ」
「何? トイレ?」
「そうじゃなくて、なんでお前俺の名前知ってんだよ」
「前会った時に覚えた」
「いや、その時名乗った覚えもないんだけど」
「細かいことは気にすんなよ!」
「お前キャラブレしすぎじゃね? なんで物静かな感じからアホの子みたいなテンションに変わんだよ」
「私が話す時無意識にアニメやマンガのセリフがポロッと出ちゃう時はだいたいそんなもんだよ。それより八幡」
「なんだよ」
「さっきからお前って言ってるけどさ、もしかして───」
そう、先程からコイツのことは「お前」としか呼んでいない。しかしそれは仕方のないこと。なぜなら俺はコイツを知らないからな。だから『僕は悪くない』。
「私のこと妻だと勘違いしてる?」
何故そうなった。
てっきり名前を知らないことについて言及されるのだろうと心構えしていたため、予想の斜め上を飛び越えたものが飛んできてうっかりエラーをしてしまった。いや、これも俺は悪くないはずだ。てか今どきそんな呼び合いをしている夫婦っているもんなのか? いや、いないだろう。だが待て、もしかしたらコイツの親はそう呼び合っているという可能性もあるため一概にコイツが悪いとは限らなくなってきた。では何が悪いか? クラスメイトの名前を覚えていない俺が悪いことになる。よし、これで証明終了だ。結局俺が悪いことになるのかよ。
「違う」
「違うの!?」
「なんでそんなに驚いてんだよ」
「え、なんとなく?」
「さいですか」
「じゃあなんで私のことお前呼びするんだろ? 私の名前呼ぶの恥ずかしかったりする? 別に呼んでくれてもいいのよ? デート中だし」
「べ、べちゅに恥ずかしくなんてねぇし」
「あ、噛んだ。かわいい」
「うっせ。あとこれはデートじゃないだろ。ただの人避けかなんかだろ」
「君如きが人払いの魔法を使えるわけないでしょ?」
「ちょっと? たしかに俺は魔術師じゃないからその判断は妥当だが言い方辛辣すぎない?」
「あ、そっか。私の名前を知らなかったのか」
ぽんっ、と手を叩いて正解を導き出す。いや、無視しないでくれません? あとなんでまずその答えが最初に出てこないん? もしかして俺が知らないだけで学校のヤツはだいたい知ってるとか? うわっ、俺ってもしかして時代に取り残されてる? まぁボッチだからどうでもいいけど。
「まさか私を知らないとは思いもよらなかったよ。ほら、私、かわいい」
「なんで単語で切って話すんだよ。幼稚園生か」
「まぁそれはどうでもいい。私は三木美咲。気軽に美咲ちゃんって呼んでくれていいよ」
いや無理だろ。いきなりそんな下の名前で呼べるほど俺の肝は据わっていない。別にチキンとかそんなんじゃない。ただ一人の期間が長すぎて苗字すら呼べない自信がある。あれ、もしかしてコミュ障こじらせてない? 大丈夫か俺…………。
「つーか、なんで俺のこと八幡呼びしてんだよ」
「あ、嫌だった?」
「別にそういうわけじゃねぇけど」
「なら八幡でいいよね」
「いやだから」
「次何か反論しようとしたら女子トイレに連れ込んでメチャクチャにするよ?」
何をするつもりだよ何を。あ、もしかして女子トイレにコイツの仲間がいて俺を陥れるつもりなんだな? わかっている。俺を陥れるために色々してきたヤツは結構いたからな。ほとんど返り討ちにしたけど。どうやったかって? 元クラスメイトの人のやり方をパクっ、じゃなくてリスペクトさせてもらった。
「よし、じゃあ早く行こう。あともう少しで終わっちゃう」
「そうだな。俺はあっち行ってみるからお前はそっちを頼む」
「わかった。それじゃあ1秒後にここに集合ね」
「なんでだよ。それじゃあどこも回れねぇぞ」
「逆になんで別々に行こうとしているのかな?」
あらやだ、この子地味におこだわ。
「違うのか?」
「それだとデートじゃないじゃん」
「そもそもこれがデートなのか疑わしいけどな」
ていうか俺は一切デートするとは言ってないしな。
「………こうなったら奥の手を使うしかないか」
おや? なにやら不穏な空気が出てきたぞ? こういう時はだいたい逃げるが勝ちだな。よし、そうと決まればさっさとここから離脱を───
「…お願い八幡。私と一緒に文化祭まわろ?」
「───っはぁー。わかったよ」
いや、違うんですよ。こんな涙目で上目遣いとかされたら断れるわけない。逆に問おう。断れる人間がこの世に存在するのか、と。もし断るヤツいたらなかなかの精神力の持ち主か枯れ果てたヤツかそもそも女の子に興味ないヤツだな。俺のサイドエフェクトがそう言っている。そんなもの持ってるんけねぇけど。
「ふむ、やはり比企谷は御しやすいっと」
「ん? 今なんか言ったか?」
「別に何も?」
「御しやすいとか言ってた気がするんだが」
「なんで主人公補正の難聴属性ついてないの!」
それでキレられても困るんだが。それに俺は主人公と言うよりただのボッチAだからな。目もよければ耳もいいというわけだ。つまり俺はハイスペックボッチなのだ!
「まぁいいや。とりあえず行こう」
「へいよ」
こうして俺は三木とやらと文化祭散策へと向かうのだった。めでたしめでたし。
いやまぁ、特にめでたくもなんともないけどな。