さて、本編。登場人物の描写が足りなかったなと反省しつつ更新です。
「課長ォー僕何分寝ていましたか?」
目の下にどす黒いクマを拵えた長身の男……高松が背もたれに背中を預けたまま天井を見上げる。彼の机の上には沢山の資料、飲みかけのお茶。それと煌々と光るPCが散らかっていた。
「知らんわ」
山崎も無精髭を伸ばし、髪はボサボサになっていた。彼がいつも掛けている眼鏡の奥にある二つの目はギラギラと光っており、はっきり言えばかなり危ない人状態になっていた。そんな状態でキーボードを叩く様子は正に鬼気迫るものがあった。
「現在地獄3時20分すっね」
「地獄てなんだよ?」
高松はしょうもないことを言いながら時計を見る。資源運用特別調査室の大体の部署は午前3時だと言うのに至る所で光が灯り、室員が駆けずり回っていた。彼ら、調整課員の約半分もまだ室内で作業を続けていた。
「ああぁ!やってられるか!少し息抜きしてくるわ」
山崎は叫び、立ち上がって部屋を出て行く。それを高松は虚ろな目で見送ってから彼の隣に座っている……いや、目を開けたまま寝ている男を見る。
「死ぬほど疲れているですかね」
「勝手に殺すな」
ボソッと高松が呟くと像を結んでなかった目がギロッと動き高松を見る。
「なんすか、守田先輩起きていたのですか?」
守田と呼ばれた彼は筋肉質な体を高松に向ける。
「いや、今起きた……資料室行ってくる」
「あー了解すっ」
肩を鳴らしながらガッチリした背が立ち上がり、調整課から出て行く。
「アレが武官じゃなくて文官なんすよねぇ」
山崎曰く、ゴリマッチョ。彼、
さて、なぜ彼ら
10分ぐらい経ち山崎が帰って来る。
「事務次官会議は今日の午後か……」
山崎は腰を落ち着けてからウンザリしたように呟く。彼が投げた視線の先にある総合政策部のホワイトボードには赤字で、しかもご丁寧にビックリマーク付きで記されていた。
普段から人員不足気味な資運室ではこういった時には室員が総出で通常業務と編成作業をせねば追いつかない事が毎度毎度と繰り返されている。もはやこの時期は部署なんて関係ない状態であった。もちろん雑務課……調整課には真っ先に仕事が回ってくる。因みに調整課には山崎を含め11人いるがほぼ全員が他課の応援へと回っている程である。
そして一見関係なさそうな研究部、調査部すら人員が駆り出されるレベルである。狂っているしか形容出来ないが色々な兼ね合い等々があり増員に至っていないのである。
今回の政策提出は『経済産業省設置法』の改正であり、資運室の権限強化に関するものである。勿論その他細々と政策あるがここでは割愛する。現在、資運室に強力な権限は無い。設立当初に比べて権限は強化されてはいるが未だに貧弱な組織ではあった。
現在、資運室には外部への調査権が認められている。今回の改正案では強制的な調査権の付与を目指すものであった。
「しかしなぁ、こんな法案、他省庁にとっては毒でしかないよな」
室内のLANに乗り込んだ山崎が提出書類に目を通す。簡単に言えば経済産業省が会計監査院と同等の力を持つことに繋がる可能性を大いに孕んでいる法案であった。勿論、他省庁からのバッシングは間違いなし。只でさえ資運室は他省庁からヘイトを集めやすい組織である。何となくと経産省の野心が見え隠れする法案であった。
高松はイマイチ何故大コケする様な法案を出すのか、自分達が苦労するのにこんな事をするのか少し文句を言いたくなるが勿論それは飲み込む。
事実、彼等は各省協議によって作られた
高松は悲壮的な心境で紙爆弾の処理を再開した。
再び調整課にタイプ音だけが響き、東の空が霞んできた頃に山崎がふと顔を上げて、キョロキョロと誰かを探す。
「ゴリマッチョ守田は何処に居る?」
自分の上司のネーミングセンスに独特な物を感じながら高松は霞みがかっていた脳を揺さぶり、答える。
「守田先輩は資料室行っています」
「ぬぁ、そうか」
それを聞いた山崎が内線の受話器を上げ、何処かへとコールをかける。
「資運室調整課、課長の山崎です。あぁはい。内の守田はいます?……あ、はいよろしくお願いします」
眠れない街、霞ヶ関に朝靄が立ち込み始め、朝の到来を知らせていた。
ちょっと次話を書いてから投稿と考えてましたので遅くなってしまいました。本当に不定期更新なのでご了承ください……
後、何これ?艦これ?官これ?の小説で申し訳なくなって来ます。こんな小説に付き合ってくださる寛大な読者の皆様に感謝です。
できるだけ今後は艦これ要素を出していきたいと思います……!(願望)