久多良木夫妻の帝国漫遊記   作:椿リンカ

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今後の展開で大事な分岐選択に未だ迷ってます。後書きにて。


久多良木夫妻は邂逅する

 

西の王国と帝国は昔から領土争いで度々揉めていた。国と国同士の国境問題は、どこの世界でもある話で、単純に領土が欲しい以前に、国境付近には潤沢な資源があり、または歴史的な建造物や技術もある。

 

西の王国も、帝国内にある革命軍と取引するほどに領土返還のために戦っていたのだ。

 

・・・それを打ち破ったのが、帝国最強と名高いエスデス将軍である。

 

彼女は個人の戦闘能力や帝具の能力以前に、軍の指揮官としても有能だ。敵への慈悲は一切持ち合わせておらず、容赦のない作戦で相手を潰しにかかる。

 

渓谷まで追い込み、西の王国軍の兵士たちを焼き殺しながら、彼女は部下たちに声を掛けた。

 

「・・・想定よりも早く終わった。私はすぐに帝都へと帰還する・・・後は任せた。お前たちだけでも戦況維持は十分だろう」

 

自ら鍛え上げた部下たちを激励しながら、彼女は帰り支度を始めた。

 

戦は好きだが、彼女は特殊警察イェーガーズの隊長としても任務がある。イェーガーズの隊員も3名・・・

ナイトレイドが奇襲をかけるような存在ではないと知りつつも、これ以上の失態は彼女は避けたかった。

 

 

 

「・・・一体これは、どういった状況だ」

 

皇帝との謁見も簡単に済ませ、大臣に会うよりも先にイェーガーズ本部へと戻ってきたエスデス。

本部の外から、何か甘い香りが漂ってくる。

 

・・・彼女が本部の一室に入ると、隊員のほかに見知らぬ男女と殉職した隊員の妻子が本部にいた。

 

「エ、エスデス隊長!」

「隊長、戻られたんですね!」

「心配してました」

 

ウェイブやラン、クロメも嬉しそうに声をかけるが、エスデスは未だに状況が追い付いてない。

 

「あの・・・お邪魔しています」

「こんにちはー」

 

ボルスの妻子がエスデス将軍に声をかける。

彼らがなぜここにいるかは分からないが、まぁ、殉死した隊員の遺族だ。何かあったのかもしれない。

エスデスはここまでは理解できたが

 

「・・・お邪魔している」

「あらあら、エスデスさんも早く帰ってきたのね。一緒にホットケーキでも食べましょう?」

 

「貴様らは誰だ」

 

謎の男女に対しては理解ができなかったし、なぜここでホットケーキを焼いてるのかも理解ができない

 

「・・・ウェイブ、ラン、クロメ、今すぐ説明しろ」

 

 

 

 

かくかくしかじか、まるまるうまうま

 

そんなこんなでウェイブたちから事の顛末を聞いたエスデスは小さくため息を吐いた。

まさか自分が不在になっている間に、オネスト大臣の息子率いる秘密警察が好き勝手していたとは思ってもなかった。

 

「(弱ければ死ぬのが当たり前だ。ボルスが死んだのもそうだし、仮にそこの妻子が犠牲になったとしても、それはそちらが弱いからだ。きっと殺されていたとしても、それは仕方ないことだ)」

 

・・・エスデス将軍は、大変シビアで自分にも他人にも厳しい価値観の人間である。

 

自分がそれなりに狂人であり、世を生きる人間の倫理では生きられないと自覚している。正直、部下に対しても純粋な好意で接しているわけでもなく、あくまでも飴と鞭を使い分けることで能力を伸ばす方針だからだ。

 

 

だが、そんな彼女であっても、それなりには帝都は好きだし、人間は好きだ

 

 

自分の部下に対しても、それなりに情があるし、情けもある

 

 

「私がいない間に、そうなっていたとはな」

 

 

オネスト大臣のことは同盟相手としては、多少なりとも気が合うとエスデスは思っている。だからワイルドハントの隊員たちを殺すことも正直に言えば気が引ける。

 

・・・気が引けるのはほんの少しで、エスデスとしては戦ってもいいかな?と思うぐらいなのだが、大臣の息子が指揮する組織を正面から潰せば大問題だ。

 

シュラが世界各地を巡って、選りすぐった帝具使いなのだからそれなりに楽しく戦えるだろう。

しかしここは、組織としての活動を停止させるのが先だ。

 

「・・・まぁいい、私が帰ってきたからには好きにはさせん」

 

エスデスの言葉にウェイブやクロメも笑顔になり、ランもいつもの微笑みを浮かべている。ボルスの妻子も安堵した様子だ。

 

 

「お話は終わったかしら?はい、みんなどうぞ」

 

 

・・・そんな中で、テーブルに焼き立てのホットケーキを陽子が配っていく。

 

「・・・久多良木陽子、だったか」

「そうよ。初めまして、エスデスさん。主人共々お世話になってます」

 

陽子の挨拶が終わると、大地がエスデスの前へと移動して。膝をついた。

 

「初めまして。久多良木大地と申します。この度は隊長である貴方が不在の中、こちらで世話になっていました。隊員の判断に不愉快な思いをしているならば、それは先に頼んだこちらの責任です」

 

そうして彼は頭を下げる

 

「・・・大変感謝している。それと同時に本当に申し訳なかった」

「・・・頭を下げなくていい。結果的にこちらも隊員の遺族を殺されずに済んだ。それよりも武術のたしなみがあるそうだな」

 

エスデスは椅子に座ったまま大地に問いかけた。

 

「・・・故郷では警察組織に所属していた。だから嗜む程度だが」

 

「そうかそうか」

 

エスデスは愉しそうに笑みを浮かべた。

その笑みに、なぜかウェイブたちは嫌な予感がした。というか、いやな予感しかしなかった。

 

 

「私と模擬戦をやろうじゃないか」

 

 

・・・エスデス将軍の、悪い癖が発揮された。




久多良木夫妻の帝国漫遊記、いつもお読みくださってありがとうございます。

ある程度のプロットが完成していたのですが、「やっぱりこれはあかんのやないか・・・」と自問自答した結果、連載更新が遅れました。


【予定プロット:久多良木夫妻と罪業の子ルート】
オリキャラ一人追加、久多良木夫妻とオリキャラとシュラ、オネストなどがメインになる。
原作に一部沿いつつ、シュラと皇帝陛下の救済措置が追加
一部、ドロドロとした裏事情や近親相姦要素などのクソ重いルートになります。


【プロット変更:久多良木夫妻と原作沿い+救済ルート】
基本的に原作沿い、何人かのキャラは救済措置有り
ノリの赴くままでいいんだよゴルァ精神ルートなのでご都合主義多め


未だにどちらを連載すべきか迷っているので、今後も連載が遅れる可能性が高いです。申し訳ありません

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