久多良木夫妻の帝国漫遊記   作:椿リンカ

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オネスト大臣 横から殴るか 下から殴るか

オネスト「いわれのない暴力が私を襲っているんですが」


久多良木大地は大臣と大将軍と出会う

 

特殊警察イェーガーズにエスデス将軍が戻ってきてからというもの、帝都の現状は様変わりした。数日のうちにワイルドハントの活動停止が言い渡され、イェーガーズ預かりとなった。

それと同時に帝都での治安維持活動や民衆への声掛けなどをウェイブたちが再び行い、ようやくワイルドハントの暴虐に怯えた人々も日常を取り戻しつつあった。

 

ワイルドハントのメンバーも暴れまわることは無くなったが、それでもナイトレイドをおびき出すために計画を練っているとかなんとか。

ただ・・・その中に、チャンプの姿は無かったことを除けば、彼らも変わりない日々を送っているようだ。

 

・・・ただ、革命軍は確実に帝都へと向かってきていた。

 

 

 

久多良木大地はというと、それから二日に一度はエスデス将軍に呼び出され、ウェイブと共に組手の相手をすることになっていた。

大地としては体がなまることがないのは助かっているのだが、いかんせん、エスデスはあまり手を抜かない。そもそも、戦闘に特化した人間を相手にすること自体がかなり無謀である。

 

仮に大地が戦闘能力に特化した特殊な能力があるとか、肉体レベルを引き上げられていたら別だろうが・・・残念ながら彼は、普通の人間のままである。

 

「あんなに殺す気でやる組手があるか・・・はぁ・・・」

「はは、隊長はあまり手を抜かない人ですからね。それに・・・今は、革命軍が帝都に迫りつつありますし」

 

「・・・情勢はあまり良くないことは知っているが、自分の身ぐらいは守らねばな」

「・・・そうですね」

 

ウェイブと会話しつつ、身体をほぐし直していた大地。彼らのところへクロメが何かを持ってやってきた。

 

「陽子さんから、レモンのはちみつ漬けだって」

「おお!すっげー美味そう!」

「わざわざ届けに来てくれたのか。感謝する」

 

「・・・別に。任務がまだ入ってないからだもん」

 

大地の言葉にそっぽを向くクロメ。そんな彼女に苦笑しつつもウェイブと大地はレモンのはちみつ漬けを食べることにした。

 

・・・・・・が、どうやら誰かがやってきたようだ。

 

「へー、イェーガーズの田舎者がこんな中庭で何してんだよ」

 

・・・・・・大臣の息子、シュラである。

 

「・・・!」

「・・・」

 

「なんだよ、イェーガーズで世話になってるおっさんまでいるじゃねぇか」

 

どうやら陽子がいないせいか、かなり態度が大きくなっているようだ。

ウェイブと大地が彼を睨みつける間に、シュラはクロメに目を付けた。

 

「おっ・・・なんだよ、イェーガーズに上玉もいるじゃねぇか。ちゃんと見てなかったから分からなかったな」

 

そのままクロメの腕を掴み、シュラはまじまじと見つめた。

 

「・・・へぇ、薬漬けのやつか。そういうのは抱いたことがねぇな」

 

愉しそうに笑うシュラとは対照的に、クロメは何も答えない。ここで抵抗すればエスデス将軍にも迷惑がかかると思っているのだろう。

 

「本当に貴様は最低のクズだな」

 

大地が冷たくシュラに言い放つ。

 

「あぁん?てめぇなんざ卑怯な手でしか勝てない癖に俺の邪魔をするつもりか?」

 

そのままシュラは、クロメをどこかへ連れて行こうとするが、ウェイブがすかさず止め・・・シュラが彼の態度に激昂する前にウェイブがシュラの顔面を殴った。

 

「・・・隊長、ラン、すまない。でもっ・・・俺の仲間に、手ぇ出すんじゃねぇ!!」

 

 

 

「(・・・確かこれは、原作の漫画にあった描写と同じじゃないか)」

 

事の成り行きを見守りながら、大地は【アカメが斬る!】の原作内容を思い出していた。

だがこれは、エスデスが帰ってくる前に行われたイベントのはずである。

 

「(・・・・・・我々がいても、こういうイベントというのは起きるということか。ならばここでブドー大将軍が・・・)」

 

 

 

「何をしている」

 

威圧感を出して、シュラとウェイブの前にブドー大将軍が現れた。

 

・・・だが、そこにいたのはブドーだけでは無かった。

 

 

「おやおやぁ、シュラ。どうしましたか?」

 

 

・・・・・・オネスト大臣、その人である。

 

「親父!」

「・・・大臣」

 

「(ほぉ、ここでブドーだけではなく・・・・・・社会のゴミクズ、いや、オネスト大臣が来るとは。戦うことは無いと思いたいが・・・あの奇妙な皇拳寺の体術を相手にするのは不安しかないな)」

 

大地は静かに彼らのやり取りを見ていた。どうやらこのまま、中庭でシュラとウェイブが対決することになったらしい。クロメとブドー、そしてオネストもそれを見物することになったようだ。

 

「貴方が噂のイェーガーズに保護された人間ですか」

「・・・あぁ」

 

オネストに話しかけられ、大地は短く答えた。

 

「いやぁ、私の息子を2回も退けたとか」

「運が良かっただけだ。長引けばこちらが負けていた」

 

思ったことを、簡潔に、何も込めずに答えた。

 

「・・・・・・旅人だそうですねぇ、子供を探しているとか」

「あぁ」

 

そこで「あらぁー」と間延びした声が聞こえてきた。

 

途端に、シュラの顔が真っ青になる。

 

「クロメちゃんが帰ってこないから来てみたら、どうしたの?」

 

久多良木陽子がそこにやってきたのだ。

いつも通り、おっとりにこにこと笑っている。

 

「これには訳が・・・」

 

大地が陽子に説明する前に、「・・・綺麗ですね」と、大臣の言葉が聞こえた。

 

・・・嫌な予感に、大地が大臣のほうへと視線を向ける。

 

 

「これはこれは、思っていたよりも・・・私好みです」

 

 

オネスト大臣が、陽子のほうへと視線を向けていた。

 

 

 

「嘘だろオイ!!!!!!!!」

 

 

 

・・・・・・シュラの悲痛な叫びが中庭中に響いた




ご都合主義ルートなので「なんでやねん」と思うかもしれませんが、「こまけぇこたぁいいんだよ!」精神でどうぞ

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