ラブライブ 未来へ受け継ぐ奇跡の物語   作:杉並3世

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どうも皆さんお久しぶりです。


やっと仕事が落ち着いて作業にかかることができましたよ。




28追いかけっこ?

8月某日、真夏の炎上天下の中、俺は秋葉原駅の電気街口で絵里と希を待っていた。

 

杉並のあの一言を言われてから数日が経つ。

 

穂乃果の考えた作詞の完成度は高く、これと母さんが残した最後の作詞を使ってラブライブ予備予選を通過して来るべき予選に向けて練習に励んでいたµ`s。

 

けど、意識をしないようにしているけど心のどこかで絵里との間に見えない壁ができてしまった。

しかも絵里が何故か機嫌が悪くて余計に拍車がかかった。

 

それを察知したのか希が練習の休養日に遊びに行こうと提案してきた。

 

本当にこういう時はありがたい。

 

「あ・・・・」

「よお・・・・絵里」

 

・・・・・・・・

 

 

ここ最近は一言二言で会話が終わってしまう

 

 

周りは真夏なのにここだけ極寒の気まずい空気が流れている

 

 

早く希来てくれないと思っていたら携帯に希から電話がかかってきた。

 

 

 

「希!今どこにいる?」

『ごめんちょっと行けそうにないや』

「何かあったの?」

『うん。ちょっと神主さんが腰を痛めてヘルプでバイトに出ないと』

「大丈夫なの?」

昔バスケット選手だった神主でも年には勝てず最近は腰を患っている。

 

『怪我自体は大したことはないのやけど、誰かか出ないと回らない』

「了解。神主さんによろしくと伝えて」

 

 

「希から?」

「何でも神主さんが腰を痛めて急遽ヘルプに出ないといけないみたいだ」

「大丈夫なの!?」

絵里もいつもµ`sの練習を見守っていた神主さんが心配になった。

俺は大したことはないと言って安心させた。

 

 

こうして絵里と2人っきりというシチュエーションが出来上がった。

いつも会っているはずなのに何ぜかドキドキする反面この間の杉並の言葉が胸に刺さる

 

「それにしてもよ。最近悠斗の様子おかしくない?」

「そ、そうか?」

「そうよ!」

 

「それ言ったら絵里もだよ」

「うっ!!」

本当にここ数日の機嫌の悪さに困惑していたが、今日の絵里はそんな感じは受け取れなかった。

 

「まあ・・・せっかくの休みだしめいいっぱい楽しもっか」

「そうね・・・今日一日楽しみましょう♪」

 

どうにか気まずさはなくなった事だし、この企画を提案した希に感謝しつつ秋葉原の街に歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

そのころ悠斗達より後方10メートル離れた路地にて・・・

「よし、まず第一段階成功だな!」

「ですね!」

希と水谷は路地に隠れて2人の動向をうかがっていた。

今回の件、実はこいつらが裏で糸を引いていた。

「それにしてもこの2人がな・・・」

「そうなんです。」

「さて、このまま追跡するぞ」

「ラジャ」

そのまま路地裏に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん?」

「悠斗?どうしたの?」

「いや・・・・・」

おかしいな?誰かに監視されているような気がしたのだけど・・・辺りを見回してもおかしい所もないし、変な気配もが殺気もない・・・気のせいかな?

「で・・・・どうする?」

「それじゃ、時計屋に寄ってもいいかな?」

「時計屋さん?」

 

「この時計を直してほしいのです」

彼女が持ってきたのは年代物の手巻き式懐中時計

「実はこの間誤って壊してしまったの」

だから機嫌が悪かったのかな?

「それだったらうってつけの店知っているよ」

「本当!?」

昔世話になった人が秋葉原で店を開いたと聞いたことがあった。

当時の記憶をたどりながら裏路地を進んでいくと看板とか出ていないが1つだけ場違いの壁色をした店がある。

 

間違いないと思うが些か不安ではあるが意を決して扉を開けると壁には大小の振子時計が複数飾っており、棚の中にはこれまた高そう・・・と言うより歴史を感じる食器類が並べてある。

 

どうやらここで間違いないようだ。目的の店である<機巧屋>だ。

店の奥には1人の女性が立っている。

「やあ・・・悠斗君久しぶりだね」

「ご無沙汰しております。羽黒さん」

店の奥にコーヒーカップを持っている女性が機巧屋の店主である羽黒沙織さん。

羽黒さんのおじいさんはアルテールス王家の御用達である独立時計師で本人も独立時計師の資格を持っている。

 

俺とは特務近衛兵として勤務してからの付き合いで彼女から懐中時計とか買っていた。

「君が訪ねてくるとはな。何か面倒ごとかな?」

「俺が訪ねる=面倒ごとという認識はやめていただけないでしょうか!!」

確かにリズの件で迷惑かけたと思うが個人で迷惑かけたことはないぞ!

 

 

・・・・・多分

 

 

「それは冗談として・・・今日はどんな要件なんだ?あいにく今日は掘り出し物はないぞ」

「いや・・・掘り出し物目当てじゃなく・・・・」

絵里が持ってきた懐中時計を見せた。

「どうでしょうか?」

「ぱっと見ただけではなんともいえんな。少し中をのぞいても大丈夫でしょうか?」

「大丈夫です」

絵里から許可をもらって、カウンターの奥にある作業部屋にお邪魔した

「コーヒーです」

 

 

羽黒さんは工具を使って懐中時計のカバーを外し、時計用ルーペを使って構造を見てみると外の外装は綺麗に細工してあるのに中は以外にも単純でシンプルな構造となっている

「もしかしてほかの店に行かれたとき店員は中まで覗いていませんよね?」

「!?そうです!!ほかの店に行っても扱っていないとかで」

「おそらくそれはこの外装のせいでしょう」

 

素人の俺が見ても高級店と思えるほどの丁寧な装飾だ

 

「それで、直りますか?」

「大丈夫です!一度分解掃除して注油したら動きますね」

 

 

しばらくして・・・・・

 

 

「これで大丈夫です。ただ経年劣化していますので定期的に作動油を指してください」

「ありがとうございます」

 

久しぶりの笑顔らしい笑顔。

 

やっぱ笑顔じゃなきゃだめだな。

 

「ちょっと悠斗君いいかしら」

「絵里・・・先にカウンターで待ってくれないかな?」

「分かったわ」

 

作業室には俺と羽黒さんだけ残った。

「悠斗君・・・彼女この時計どこで手に入れたのか聞いている」

「何でも彼女のおばあさんからくれたという話です・・・・何かありました?」

「いや・・・中身を覗いたら確認すればするほど外装と内装のギャップに驚かされるなあと思って」

 

羽黒さん曰く作られた年数はおそらく1900年代と推定され、所々にロシア語があることからロシア革命前後に作られたものだとわかる。

外装には手の込んだ細工、それこそ王家に使える細工師が施しているが内装は単純な手巻き式だが構造が頑丈で手入れさえ行えば一生使える品物だけど所々時計の機構から独立している部品も多く見られ素人が作ったのかそれともワザとなのかは定かではない。

「なるほどね」

「もし、由来が分かって差し支えないのなら教えれくれないかな?」

細工師として気にはなるとは思うけど絵里が了解したら教えるとだけ言って部屋を出た。

 

 

「お待たせ」

「早かったね」

「まあちょっとした世間b・・・!?」

ふと窓を覗くと一瞬だったが間違いないあの後ろ姿は希と水谷先輩だ!

何であいつら・・・・・・まさか!?

 

余りにも今日のタイミングが良すぎる

つまり俺たちが偶然2人だけでなく最初から仕組まれたことだったんだ!!

 

「・・・・絵里!店を出たら走るぞ!」

「え? どうしてですか?」

「希と水谷先輩が尾行していた」

「嘘!?」

「本当だ!さっき2人を確認した。丁度柱で死角になっていたおかげで気付かなかったけど」

 

あいつら!!

 

「あいつらに一泡吹かせる」

一緒に念入りに逃走経路を相談して、裏口からひっそりと抜け出し、一瞬の隙を見て絵里の手を引っ張って走り出した。

完全に虚を突かれて慌ててこっちを見る希と水谷先輩がいた。

「本当にいたんだ」

絵里は驚いたように内心呆れていた。

「このまま一気に巻くぞ」

「りょーかーい!」

裏路地に入って巻こうとしたが以外にしつこくなかなか巻けれない。

「流石防大生、この手も心得ているのか」

だけど俺にも特務近衛兵の意地がある!!

 

まだ現場に出ていない若造なんかには負けはしないけどこのままじゃいたちごっこだ。

 

「仕方がない」

裏路地にある更に細い路地の入り口に身を隠す。ここならなかなか見つかりにくく丁度いい場所だが、今俺達は抱き合うように隠れている状態。全力疾走したせいで息が首にかかってくすぐったい。そして何より抱き合っている状態なので服の上からも分かる大きなマシュマロみたいな胸に押されている。やばい!これはマジでやばい。状況的にも理性的にもマズイ。

 

 

「何とか巻いたかな?」

「そうみたいだな」

あの2人の気配は感じない。

 

諦めてくれたかな?というか諦めてくれ

 

 

「さて・・・次どこに行こうか?」

「そろそろご飯にしない?」

言われて見ればもう6時になっていた。

「そうだね」

あの逃走劇で体力より精神的にキていから腰を置きつきたい

 

 

 

この辺で俺たちが良く店と言えば・・・・・

「いらっしゃいませ。おや、お久しぶりですね」

 

『Secret Liqueur』

 

やっぱりここで食事するのが一番いい気がする。

 

「久しぶりっていう程ですか?まだ3週間しかたっていませんよ」

「3週間も売り上げを貢献するカモが来なったからですよ」

「ひどいよ」

 

親父と全く同じことを言っている気がする。

 

「あれ?結構来ているの?」

「まあ練習とかで夜が遅くなったときとか」

 

一人暮らしだと夜遅くなるともう飯作るのも面倒臭くなるし

「絢瀬さんもお久しぶりです」

「覚えていたのですか?」

「ええ、彼がこの店に来るたびにいつも話していましたので」

「マスター///」

「おっと口が滑りましたね」

こ、この人は!!

ある意味危険だな。

これ以上根掘り葉掘り言われる前に大量にご飯を注文して待っていたとき・・・・

「あのーこの時間って空いていますか?」

 

 

あれ?この声聞き覚えが

 

目線だけ入口の方を見ると

 

「透子さん!?天海透子さんではないですか!!」

「悠斗君!?久しぶり!」

「透子さん何時日本に来られたのですか!?」

「ついこの間よ。いや~久しぶりの日本っていいよね」

「この人は?」

 

「天海透子さん、俺が経済学の恩師で、いろいろ助けてもらった」

「初めまして天海透子。以前はアルテールスで経済顧問を務めていました」

「初めまして。朝霧君のクラスメイトの絢瀬絵里と申します」

 

一緒に食事をしつつ昔話に花を咲かせた

「へえ~」

「結構儲かったけどそれなりの損失も出たわ・・・やっぱ金で金を稼ぐのは難しかったよ」

「私も投資家といっても金融投機に走らずやる気や能力があっても資金が足りていない企業への支援する「あしながおじさん」的スタイルみたいだし」

 

絵里は俺たちの話を興味深く聞いていた。

 

 

「それで今回は日本にはどの様な」

 

 

 

「うん。ちょっと悠斗君に確認したいことがあって・・・ねえ、悠斗君はきちんと決算処理をして帰国したよね?」

「ええ、請求が来たものは全部処理は完了しました。これは咲夜さんにも確認済みです」

かつてリズが出した損害は3月を目処に処理が終わってから帰国した。

 

 

「そうだよね・・・・」

「なにかありました?」

「実は今年度に入って未決算分が出てきたの」

「未決算が?」

「とりあえずこの資料を見てくれない?」

透子さんが持ってきたタブレットを見て驚愕した。

「・・・・・・これ、俺も心当たりがないです」

「ねえ・・・報告漏れとかないよね?」

「いや・・・そもそも被害個所を全部見ているので流石にないと思います」

あのお姫様が関わった現場には全部足を運び被害状況から復興状況まで全部確認したが、リストに上がっている所はどれもこれも心当たりがまるでなかった。

「・・・・・・ちなみに透子さん、これ・・・総額どの位になりますか?」

「今の為替レートなら10億円はあるよ」

 

「じ、10億!?」

一般人の絵里からしたら途方もない数字

俺が特特務近衛兵務めていた2年間で10億円の被害が出たけどたった数日でここまでの被害が出るって!?

あのお姫様は一体何やらかした!!

 

「すみませんが一度大使館に問い合わせて下さいませんか?」

「ええ、もちろんだけど・・・・大丈夫悠斗君」

「・・・・・この顔を見て大丈夫といえますか?」

 

もう、あのお姫様の行動には呆れて言葉も出ない。

 

「悠斗大丈夫?私も力になる」

 

「ありがとう。絵里」

 

何だろう・・・何気ない一言だけど涙が出てくる・・・

 

 

「しかし10億か・・・・」

しばし食事をしていたがどうしてもこのワードが頭から離れない。

よくもまあ、短期間でここまでの被害を出したものだ。

 

怒りや呆れを通り越して感心する。

 

「そういえば合宿の時そのお姫様が出した損害は悠斗が払ったんよね?」

「あの時と今回とでは事情が違う」

「そうね」

確かに最終的には10億の被害額だけどそれは2年間のトータル数であって1件1件の額はそこまでも高額ではない

 

それでも数100万から1千万単位の損失だから決して安くもないがな

 

 

「だからあの時は透子さんに教えを請うたり資産を運用してもらって損害金を捻出した」

 

だけど今回のは本当にまずい。

あの10億だって2年間どうにかこうにかねん出できたお金であってもう一回同等の金額にするものなら一体何時かかる。

「大使には悪いけど今度ばかりはあいつにも泣いてもらおう」

「そうね・・・今回は差し押さえも視野に入れないとね」

2人して盛大な溜息

 

ウーロン茶が入っているグラスを一気に飲み干した

 

そして俺の記憶はそこで途切れた

 

 

 

絵里side

「大変ですね・・・・」

これで私の中の一つの疑問が解けた

 

一緒に生徒会の仕事をしていくにつれて出てきたもう一つの疑問

 

 

前々から生徒会の業務で見た悠斗の事務処理能力

 

それだけ破天荒な処理をしつくしているのなら納得できる

 

「あれ?私が頼んだウィスキーストレートは?」

 

「え?」

 

透子さんの前に置かれていたはずのコップがなくなっていた。

 

代わりウーロン茶を飲んでいるはずの悠斗の前には飲み物が入っているグラスが置かれていた。

 

 

「・・・・・・・ふう」

 

透子さんが頼んだのはロンググラスいっぱいのストレートのウィスキー

 

それを一気に全部飲んでしまった。

 

「あ、あの・・・悠斗君大丈夫?」

 

 

恐る恐る彼に聞いてみた。

店内が薄暗くて顔色の変化は分からないが変わっていない気はする。

 

 

「大丈夫マスターもう一杯ウィスキーのロックお願い」

「「「ダメダメダメ」」」

 

前言撤回

 

やっぱり酔いが回っていた

 

「いいだろう!もうあのバカと付き合うにはもうお酒が必要なんだよ!!」

「まあ、まあ落ち着いて」

「これが落ち着いていられるか!!10億だぞ!!もうあのバカに一体どけだけ・・・・」

今度は泣き上戸になった。

お酒は人を変えるっていうけどここまで変貌するものなのかな

 

「よし!!明日大使館に抗議してくる」

「待って待って!!」

 

今までのパターンからだとホントにカチコミしそう!

何とか悠斗を宥めている時透子さんがマスターに何か相談事していた。

 

「こうなったら仕方がない。マスター・・・・・って作れる?」

「そりゃ作れますが・・・大丈夫ですか?」

「この際四の五の言ってはいられないよ」

 

マスターは何かに観念したのかカクテル作りの準備を始めたが、選んでいるのは私でも知っているアルコールが強いお酒3つをシェーカーに入れて奇麗なフォームで振り始めた。

 

「はい。お待たせしました」

「お!?飲んだことのないカクテルだな」

悠斗は躊躇いもなくカクテルが入っているグラスを一気飲みして、顔を真っ赤にしてうつぶせのまま倒れた。

 

「ふう・・・静かになったか」

「何を飲ませたのですか?」

「これ?アースクェイクって言って、ドライジン、ウィスキー、アブサンっているアルコール度数40近くのお酒をシェイクして作った。」

マスター曰く、ドライ・ジンの辛みとアルコール度数(35度~40度)の高さから地球が揺れるような刺激があると言われている。

「しかもベースのウィスキーはカスクストレングスといいまして樽から直接ビン詰めした一切調整していないお酒で、アルコール度数が60を超えるものを使ったのです」

「それ!?飲ませて大丈夫なのですか?」

「普段の彼なら大丈夫だけど、久しぶりにお酒飲む人はきついだろうな」

アルコール60%なんて・・・・

「しかしビックリしました。まさか彼がここまで変貌するなんて」

「それだけ今回の事で頭来ているのさ・・・・全く殿下はいったい何をお考えなのか」

 

「それで・・・彼・・・どうするの?」

 

「「・・・・あ」」

マスターの一言で私たちは完全酔いつぶれた悠斗を見て、大人しくさせたことには成功したが今後の事を考えていなかった。

 


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