本当ならこの話で合宿編が終わる予定だったのですがちょっと伸びることになりました。
今回のはちょっと後半部分は残酷な発言があると思いますが申し訳ございませんがご了承ください。
俺がアルテールスに渡って1年後、日本は解散総選挙を行って自由党の政権が崩壊し民社党の連立政権が誕生した。当時日本はユニオンマネーによってマスコミ界・芸能界が乗っ取られ、そいつらの画策により自由党は選挙に敗れ・・・・民社党連立政権が設立。
事の発端は俺が国際銃火器ライセンスを取得してリズの特務近衛兵になって1年後のことだった。
「日本陸軍の大西大将から電話!?」
あの日も執務室でいつもの始末書を整理していたところ突然日本陸軍を統括する参謀総長である大西大将からの突然の電話。
しかも正式な電話ではなくアルテールス大使館にひそかに設置された極秘回線系だった。
「もしもしお電話変わりました朝霧です」
「はじめまして朝霧さん。私は日本皇国陸軍参謀総長の大西圭吾と申します」
「ご尊名はかねがね伺っております。本日はどのようなご用件で」
「実はあなたに頼みたいことがありまして」
「頼みたいこと?」
大西大将から聞かされた日本国内の現状は悲惨なモノばかりだった。
政策もユニオン寄りで、国防省の軍事機密をも密かに流したり、ユニオンのための補助金政策といった国民のためというよりユニオンのための政治を行っていた。
更に芸能界を使ってユニオン政府高官の接待といった枕営業も行っているなど非道ともいえる行動も平然と行っている挙句テロ組織にもつながっているという情報を耳にする。
「私の父は今どうなっていますか?」
「あなたの父上である朝霧悠介二等海佐はここ数年、辺境地にいっており現在硫黄島航空基地隊に勤務しています。」
「この時期に硫黄島って完全に左遷ですよね?」
「はい。ここ数年は離島基地司令など現場から離れております。本来なら彼に頼みたいのですが生憎彼も政府に目を付けられ思うように動けずにいます」
父さんは予めこのことを予感していて万が一に備えて俺をアルテールスよこしたのはこれが理由かもしれない。
「しかし大西閣下、どうしてそのような話を私に?」
「この極秘回線は万が一に備えてアルテールス大使館と近衛師団本部直通回線の故、日本人で信頼且つ自由に行動できる人はあなたしかいないわけです」
確かに御神師匠は協定に基づいて派遣されている。
そのため政府が戻ってこいと言われたときにいなかったら不審に思われかねない。
「わかりました。このことはしかる筋の人に必ずお伝えします」
「ありがとうございます」
僅か20分足らずの会談だったが内容は驚くモノばかりだった。
俺はこの話をすぐにリズに伝え、国王陛下へ進言してくださった。
「それは由々しき事態だな」
「はい」
陛下もリズも今の日本を憂いいる。
「国防大臣に伝えてくれ。今空いている原子力潜水艦を使える状態にして」
「ありがとうございます」
「セフィリア・C・エストレイン陸軍大佐を指揮官に特別部隊を編成。悠斗君、ウィリアム君、クラエス君にも加わってもらいます」
「よろしいのですか?」
「はっきり言って国軍の正規兵を導入するわけにはいかないのが現状です」
確かに俺たちが今からやることは外交問題に発展しかねない
「私の私財で集めることは出来ませんかね?」
「リズ!?」
「つまりリズは自分の私財を使って私兵団を設立する気だな」
「はい。無論所属者はアルテールス国民と同じ地位を与えますので、批准している『傭兵の募集、使用、資金供与及び訓練を禁止する条約』で禁止されている傭兵ではありません」
特にリズの破天荒は諸外国でも有名な話でそれを救出する特別部隊といっておけば一応諸外国らには説明できる。しかも同じ欧州圏内に事実上の傭兵部隊もある国もあるのでなおさら万が一ばれても批判はかわせる。
「よろしい。リズはそのまま計画準備しなさい。私は行政府に言ってくる」
「分かりました」
最終的にはリズや自分たちのツテでかき集め20名が集まり特別部隊を編制。
国王陛下も勅名もあってかすぐに準備が整いセフィリア大佐を指揮官とする特別上陸部隊の編成を乗せた2隻の原子力潜水艦で目標地に向かった。
この作戦は完全秘密裏に行うため目的地までは原子力潜水艦の最大特性である無限の航続距離を生かし完全潜航及び最大戦速で向かった。
「まもなく目的地50マイル前になる。至急発令所に来てくれとさ」
「杉並か」
以前、リズが麻薬組織を火達磨したときに居合わせた武器ライセンスの持ち主でその時助けた縁で共に行動していた。
「・・・・すまんな」
「確かに危険な仕事でもありますが。主やリズの頼みでもあるし、それに以前の借りも返せていなかったら」
元々根なし草だった杉並だけど以前助けたのが縁で俺の事を主と呼んでいる。
ちょっと照れくさいけど。
発令所に行くとセフィリア大佐と運航幹部が既に集まっていた。
「しかし本当に地図に載っていないな」
最新版の電子海図と照らし合わせても島がある座標には載っていなかった。
「国土地理院も連立政権が抑えている。彼らに都合の悪い島はあえて乗せてないかもね」
「ここまで徹底するとは鬼が出るか蛇が出るか」
「よし!ブリーフィングを行います」
メンバーが全員集まりセフィリア大佐に一声で始まった事前ブリーフィング。
「事前情報ではこの無人島には日本の現与党の大物政治家が所有する島で数々のユニオン関係者が集まっています。今目的は可能な限り証拠収集であり、戦闘は控えることであります」
事前に大西大将から送られた島の地形と建物の構図と地対空ミサイル装置の配置そして最新版の衛星画像を元に話が進められた。
「それにしてもよく手に入れましたね」
「ああ、大西大将曰くこのデータを手に入れるために関わった人は自分の首と引き換えたらしい」
「そこまでですか」
当時の日本は酷いというのを通り越していた。
異議を唱えようものならマスコミ総出でバッシングを行いありもしない報道でその人の人生を狂わす。
この作戦の成功させるのがせめてもの手向け。
「意外なのは地対空ミサイルが数機もあるという事だ」
ユニオンが絡んでいることから相当の武器があるとは思っていたけどいきなり予想を超える。
「それにこの建物の構造物・・・・これ対空レーダーじゃないか!?」
「これでは4連装地対艦ミサイルもあってもおかしくはないぞ!できればこれを無効化にしたいがそんなことをしたら俺たちの存在が露見するし・・・」
「ソーナー、何か反応ない?」
「今の所パッシブ反応なし」
単信音が発信されていないことを確認した艦長は小型特殊潜航艇の発進準備を下令した。
「セフィリア大佐!朝霧悠斗、杉並両名はこれより先行偵察に行って参ります」
「気を付けて下さい」
俺と杉並率いる隊がドライ・デッキ・シェルター(艦首に設置た)から小型特殊潜航艇を使って先行で上陸した
俺は上陸地点で橋頭保を築きつつ周囲の警戒を行い、その間にピストン輸送を行い人員移送。
「済まない。待たせた」
「中の様子はどうだった」
先行上陸してすぐに杉並が施設の先行偵察を行って捜索が終わって戻ってきた。
「・・・・・・・」
「どうした?」
「・・・・とりあえずこの動画を見てくれ」
杉並が中で撮影した映像を戦術データリンクシステムで隊員全員に標準装備してある多機能モニターに表示した。無論、艦内にも見える仕組みになっている。
大西大将から芸能界を使ってユニオン政府高官の接待といった枕営業も行っているという情報を聞いていたが、俺がそこで見たものは正直悲惨という言葉もかわいいと思えてしまう。
彼女らは自分の夢を叶える為に日々努力している。
だけど当時のマスコミは完全にユニオンに乗っ取られそれらの為にいいように扱われていた。
その夢を餌に糞汚い大人がいいように扱われている彼女らを見てもはや我慢の限界だった。
「こ、こちらA1・・・・お、応答せよ」
『こちらOQ、どうぞ』
あの時の俺は完全にブチ切れた。
「今作戦を・・・囚われている彼女らの救出およびこの島の人員の完全排除を要請」
とどのつまり殲滅戦だ。
もうこの島の関係者全員を肉塊にする事しか頭になかった。
『分かりました。では悠斗と何人かで敵を引き付けて下さい』
「いえ。全員を救助するには多くの人手がいります。囮は私一人で」
『ダメです』
「このまま黙って見ちょというんか!!」
『なら私の小隊で遠距離狙撃を援護します』
俺とセフィリア大佐との話は平行線をたどっていた処にクラエスの提案。
「クラエス」
「それなら大丈夫でしょう」
『・・・・・分かりました。悠斗それでいいですか?』
「ああ」
大佐の了解をもらってすぐに各隊は各々の配置についた。
俺とクラエスは施設入り口から500m地点で待機して入り口の様子をうかがっていた。
入り口には警戒としてアサルトライフルを持っていた男5人がいた。
持っているライフルも日本が正式採用しているモノではなく、旧ソ連製のAK-47らしきモノで、無論日本には一切出回っていない代物だ。
そして建物の構造物にも対空レーダが起動していた。
「それで作戦はどうするの?」
「無論、正面から派手に引き付ける。クラエスは後方300m地点から援護射撃」
「了解」
さらに200m近づき、定位置についた。
館入り口で警戒していた奴の間合いにすかさず入った。
「なんだ!おまえ!!」
「どけ!!」
一太刀
5人の男の急所を一切容赦の一太刀で切り付けて、手榴弾で扉を破壊した。
その爆発音を聞きつけて億からゾロゾロ武装した連中が出てきた。
「何者だ!!」
「・・・・・あんた等全員を地獄へ案内する水先案内人だ」
その言葉が殲滅戦の合図になった
俺とクラエスで敵の目を引き付けるため徹底的施設を破壊し、ウィルが率いる別動隊が被害者の少女を優先的救助した。その間杉並が可能な限り顧客情報やスポンサーの情報を集めていた。
俺がまず向かったのは通信施設とFCS(火器管制装置)、レーダー室の破壊だ。特にFCSを破壊せんことには後続艦が被害を受ける可能性がある。外部の通信を隔離する。無論予備で個人携帯が可能な衛星電話は原潜による妨害電波で使えなくした。
配電盤を破壊しなかったのは今杉並がパソコンやサーバーからデータを抜き取っている最中や
「被害者の少女たちは一人も残すことなく全員救助しろ!そしてそれらを食い物にした腐れ外道は一人残らず・・・!!」
そこから先は正に地獄絵図
この現場で初めて朝霧の剣技の真価が発揮された。
朝霧の剣術は所謂殺人剣術。
如何に人を効率よく多く殺すことを目的とした流派。
並外れた身体能力に加えれば通常の銃火器ぐらいでは押さえつけることはできない。
通ってきた道には血だるましかなく、硝煙や血の匂いが周りに充満して聞こえてくる声も悲鳴に似た怨嗟しかなかった。
あの島は狂気と殺気に包まれ、その中で俺はひたすら敵を殺し続けた。
「後30分で救出は完了します」
「わかった!!」
急に組み立てた作戦だったけど、何とか予定通りに進んでいた。
この時までは・・・・
「悠斗!!大変だ!第3小隊と連絡が途絶しました!」
「なんだと!!」
だけど敵の抵抗も凄まじくここで上陸部隊にも戦死者が出た。
「必ず戦友の遺体は持ち帰るぞ!ウィル!小隊を率いて第3小隊の援護に回れ!!」
「了解!」
敵の戦力を当初の予定より幾らか多めで装備も予想以上で一番驚いたのは旧ソ連製の装甲車と言った重火器も多数あった。
そして最後の人員と遺体を小型特殊潜航艇に収容してすぐさま撤退した。
「隊長撤退完了しました!!」
「QQへ。島からの全要員退去を確認!これより帰還する」
最後の人員を確認したのち小型特殊潜航艇に乗り込み島から脱出した。
脱出後、生存者がいないように完膚なきまで破壊するため5マイル先で待機していた原子力潜水艦からVLS16セル計112発の対地巡航ミサイルをもって島を徹底的に破壊し尽した。
後の衛星画像からその光景はもはや島の形を維持していなかった。
「お疲れ様です。それで状況報告お願いします」
「民間人53名を救出。死者3名重軽傷者11名」
「・・・・・そうですか」
予想以上被害が出て如何に俺が怒りに囚われていたことが分かった。
あの時冷静になっていたらと思うときもある。
「申し訳ございませんでした」
「いえ。戦闘を指示したのは私です。実際に悠斗が相当数敵を引き付けてくれたおかげでこの数字かもしれません」
「・・・・・・はい」
作戦終了後、救助した少女を乗せた原子力潜水艦は日本国内には戻らずなかった。国内は民社党の連立政権に傍若無人状態でこのまま素直に戻ったたら彼女たちに危険が伴う。
「どうする?流石にアルテールスまでつれて帰るには今の彼女達の精神は持ちません」
長い間拘束されていた彼女達はひどく衰弱していた。
原子力潜水艦の最大特性である無限の航続距離は今の最新技術を使えば理論上は1回就役したら廃艦になるまで一度も燃料補給はいらなくなるが、それを操る人までは耐えられない。厳しい訓練を積んだ原潜の乗組員ですら3か月が限界値と言われている
「パラオに行きましょう」
「パラオに?」
「パラオ領海内には前大戦から使っている秘密基地がある。そこへ退避した後にアルテールスへ護送しましょう」
パラオ領海内には前大戦開戦前より租借地として無人島を借りていた。
その無人島を使って当時の画期的な秘匿兵器の製造・整備補給基地を担っていた。
戦後でも租借地として継続していて、その島には通常の指揮系統ではない別系統の指揮に組み込まれている多弾頭を搭載した通常弾頭搭載の潜水艦発射弾道ミサイルを搭載した戦略原子力潜水艦を6隻配備している。おそらく今の政権すら知らされておらず寧ろ、血眼になって探していると思うが多分見つからないだろう。
「わかった。艦長、進路をパラオに向けて」
「了解。航海長、進路を・・・」
こうして救助した女の子53名を乗せた原潜はパラオ領海内にある秘密基地に向かった。