ハイスクールD×D ~復活のG~   作:さすらいの旅人

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今回は幕間みたいなものなので、いつもより短いです。

それではどうぞ!


第八.五話

 リアスから祐斗を借りる許可を貰ったので、俺はイッセーと祐斗を連れて夜の散歩をしようと――

 

「良いのか? 木場に黙って俺達だけで動いて」

 

「アイツは俺の光を受けてまともに戦えない状態だ。今夜は大人しくしてもらう」

 

 ――せずに、今回はイッセーだけを連れて夜の散歩をしている。

 

 祐斗には『明日から行動を開始するから、今日はゆっくり休んでおくように』と言っておいた。まぁ祐斗の事だから俺の忠告を無視して独断でエクスカリバーを破壊しようと思うだろうが、今日はそれを行う事が出来ないと断言出来る。

 

 ゼノヴィアとイリナの決闘をやる際、祐斗を強制退場させる為に俺が体内に光のオーラを送り込んだから、アイツは今日一日まともに戦えない状態だ。一応動けるまでには回復してるが、それでも今は神器(セイクリッド・ギア)を展開させる事は出来ないからな。

 

 たとえ身体に鞭を打って動いたところで、エクスカリバーに対抗出来る手段が無ければ意味が無い。無手でエクスカリバーを破壊しようなんて愚行をやるほど、祐斗はそこまでバカじゃない筈だ。

 

「もし兄貴の忠告を無視して動いたらどうすんだ?」

 

「そうさせないよう、祐斗にコッソリと強制転移の札を仕込んでおいた。転移先はリアスの部屋だ。そしてそこに待機してるリアスには、勝手な行動をした祐斗にお仕置きするよう頼んである」

 

 リアスのお仕置き内容は『お尻叩き』だそうだ。多分リアスの事だから魔力を込めたお尻叩きをやりそうな気がする。

 

「……随分と用心深い事で。それだけ木場を死なせたくないって事なんだろうが」

 

「アイツが死んだら周囲の奴等が悲しむからな。お前だってそうだろ?」

 

「………まぁ、一応仲間だからな」

 

 素っ気無い返答をしながら答えるイッセーに、俺は笑みを浮かべる。

 

 何だかんだ言って、イッセーも祐斗の事を大事な仲間として見ているようで何よりだ。

 

「祐斗を仲間だと思ってるなら、いっそのことお前も“祐斗”って名前で呼んだらどうだ? 多分アイツの事だから喜ぶと思うぞ?」

 

「っ! じょ、冗談じゃねぇ! 女の子ならまだしも、何で男相手に名前で呼ばなきゃなんねぇんだよ! 気持ち悪いだろうが!」

 

 さっきまでとは一変して、鳥肌が立ったように拒否反応を示すイッセー。

 

「何もそこまで言わなくてもいいと思うんだが。もし祐斗が聞いたらショック受けると思うぞ」

 

「あのイケメンがそんなタマかよ! 大体、俺はただでさえ松田と元浜が流した噂の所為で、学校の女子達から『俺と木場がデキてる』って悍ましいホモ疑惑をかけられてんだぞ! そんな状況で俺が名前で呼んだら拍車に掛かるだろうが!」

 

 そう言われればそうだったな。

 

 ったくアイツ等め。余計な事をしなければイッセーが祐斗と仲の良い友人になれたのに。

 

 でもまぁ、噂を真に受ける女子達もどうかと思うがな。前から思ってるんだが、最近の女子達はどうして男の同性愛とかを好むんだろうか。

 

 普通に考えて同性愛は周囲から嫌悪されるものなんだが、何故それを容易に受け入れられるんだ? これは人間に転生した聖書の神(わたし)でも未だに分からないよ。

 

「とにかく俺は木場を名前で呼ぶなんて事は絶対にしないからな!」

 

「はいはい、分かった分かった。……じゃあ話を戻そう。取り敢えず今日は潜伏してる堕天使のアジトを調査して――」

 

「堕天使なんかより、私の事を調査して欲しいわね」

 

「「っ!」」

 

 俺とイッセーの会話に第三者と思わしき声が割って入ってきた。聞き覚えのある声だと思いながらイッセーと一緒に振り向く。

 

「はぁい、イッセーくんにダーリン。エリーで~す、歳は十七歳で~す♪」

 

 ……おいおい。

 

「テメェは……!」

 

「またお前か」

 

 やはりと言うべきか、そこには誰もが魅了するような容姿をした銀髪の美女――エリーがいた。ついでにさっきの戯言は聞かなかった事にする。

 

 以前に堕天使レイナーレを殺した後に俺達の前から姿を消したにも拘らず、再びまた(あい)(まみ)えるとはな。

 

 イッセーはイッセーでエリーを見た途端に憎しみを込めた目で睨んでいる。普段女好きのイッセーがこうするのは、レイナーレがアーシアの神器(セイクリッド・ギア)を奪う計画に加担したからだ。

 

 自分が大切にしてるアーシアを殺しかけた奴が美女でも話は別ってところか。尤も、それは俺にも言える事だが。

 

「あらあら、兄弟揃って怖い顔しちゃって。特にダーリンにそんな顔されたらショックね。ちょっと傷付くわ」

 

「お前がそんな繊細な訳がないだろう。で? 姿を現したって事は、またどこかの組織に加担して俺達にちょっかいを掛けに来たと思って良いのか?」

 

「ウフフ、流石はダーリン。私の事を分かっているようね♪」

 

「先日あったレイナーレの件でお前の性格を思い出したからな」

 

 やはりコイツは何か目的があって俺達の前に現れたようだ。それはまだ分からないが、取り敢えずエリーが現れた以上は警戒しておく必要があるな。

 

「まさかとは思うが、お前が此処に来たのは堕天使コカビエルと手を組んでるからじゃないだろうな?」

 

 念の為に当たって欲しくない事を問うと――

 

「いくらダーリンでもその質問は……正解~♪ レイナーレのおバカさんに続いて、今度は幹部のコカビエルに加担して、フリード君と一緒に神父狩りをしてま~す♪」

 

「答えんのかよ!」

 

 最初は答えないような言い方をするエリーだったが、途端にアッサリ白状した。それを聞いたイッセーが思わず突っ込んでる。

 

 ってか、今さっき聞き捨てならない事を言わなかったか? コイツがはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)のフリードと一緒に神父狩りだと? 一体コイツは本当に何の目的で動いているんだ?

 

「解せないな。悪魔であるお前が何故堕天使に手を貸しているんだ? それとも前みたく別の目的もあるとか?」

 

「う~ん……本当は答えてあげたいんだけど、流石にそこまでは無理ね。でも、愛するダーリンが私の夫になってくれるなら答えてあげても――」

 

「お断りだ」

 

 いくらエリーが求愛しても、俺には最初からその気はない。相手が悪魔とかサキュバスだからではなく、俺はこの女自体が嫌いだ。

 

 今は俺の妹分になってるアーシアをコイツが殺しかけた事を考えるだけで、『終末の光』を使ってでも滅したいほどに。

 

「んもう、相変わらずつれないわね~。まぁ、そんなダーリンも私は愛してるけど」

 

「答える気がないなら、力付くで聞かせてもらおうか。イッセー、二人掛りでコイツを即行かつ全力で斃すぞ」

 

「おう!」

 

 俺とイッセーは即座に身体中からそれぞれ金と赤のオーラを発させる。

 

「あらあら。イッセー君だけじゃなく、ダーリンもこの前戦った時よりまたオーラが上がってるわね。いくら私でもこれはちょっとやばそう」

 

 そう言ってるエリーだが、とても焦っている様子は見受けられなかった。寧ろ楽しそうな表情をしている。

 

 コイツは享楽主義者でもあるが、俺やイッセーと同じくバトルマニアでもある。恐らく俺とイッセーと戦う事を考えて、面白い戦いになりそうだと思ってるに違いない。

 

「本当ならこのままダーリン達と戦いたいところだけど、今日は挨拶に来ただけだから退かせてもらうわ」

 

「「逃がすかよ!!」」

 

 俺とイッセーが超スピードで接近してパンチで攻撃するも、反応したエリーは姿を消した。

 

「消えた!? あの女、何処行きやがった! 魔力も感じねぇぞ!」

 

「……ちっ。どうやら俺達が攻撃する事を見計らって、即行で転移出来るよう事前に施していたか」

 

 エリーの魔力が感じない理由は二つある。魔力が感知出来ない場所にいるか、もしくはエリー自身が魔力を消しているかのどっちかだ。因みにアイツは俺みたくオーラのコントロールが出来るから、自身の魔力をゼロにする事は造作もない。

 

 

 ――そんなに慌てないで、ダーリン。今度会った時にはちゃんと戦うから――

 

 

「「っ!」」

 

 何処からかエリーの声が聞こえたが、周囲を見渡しても肝心のアイツがいなかった。魔力を探っても感じられない始末だ。

 

 

 ――ああ、そうそう。帰る前に良い事を教えといてあげるわ。『白い龍(バニシング・ドラゴン)』は既に目覚めてるから、近い内会う事になるわよ。赤龍帝のイッセー君、今のままじゃ彼にまだ勝てないから気をつけてね――

 

 

「なっ!?」

 

「チッ。思っていた以上に早かったな」

 

 エリーからの情報にイッセーは驚くも、俺は舌打ちをした。

 

 俺達を惑わせる為の虚言かもしれないが、アイツが俺に対して嘘は言わないから恐らく本当だろう。

 

 まさかコカビエル以上に面倒な奴が近い内にイッセーと会う事になるとは……。どうやら修行の難易度を更に上げる必要がありそうだ。

 

 そして『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の情報を最後に、もうエリーの声は聞こえなかった。




久しぶりのオリ主の宿敵、エリーの登場でした。

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