それではどうぞ!
場所は変わり、俺達は球技大会の練習をしていた所にいる。
俺の隣には祐斗。そして俺達と対峙するかのように紫藤イリナとゼノヴィアがいる。
「では始めようか」
「リューセーくん、覚悟はいいかしら?」
イリナとゼノヴィアは白いローブを脱ぎ、黒い戦闘服姿となる。
次にゼノヴィアは巻いていた布を取り払って、『
続いて紫藤イリナは紐状にしていた『
何故このような状況になっているかについてだが、早い話、『悪魔に魅入られた異端者』である俺は二人と決闘する事となった。
もうついでに祐斗も俺が彼女達と決闘する事となったのを絶好の機会と思って、俺に加勢するように割り込んできた。
祐斗が参戦する事でリアスが止めに入ろうとするも、俺がリアスに『一先ず俺に任せてくれ』と言ったから、今は俺達から少し離れた所で見守っている。
「俺が戦うのは、この前の修行以来だな」
そう言いながら俺は軽い準備体操をする。
戦うとは言っても、この戦いはあくまで非公式による私的な決闘だ。当然非公式であるが故に、殺し合いに発展したらNGとなる。
ゼノヴィアが俺を断罪すると言ってたが、流石に殺す事まで考えてなかったようだ。自身の愚かさを分からせる為に叩きのめす位の断罪なんだと。何ともお優しい事で。
「ありがとうございます、リューセー先輩。こうして戦える機会を用意してくれて、僕は嬉しいです」
「………………」
俺に礼を言う祐斗だが、視線はエクスカリバーにずっと向けていたまま『
エクスカリバーに対する憎しみは理解出来る。しかし今のコイツはそれに囚われすぎて、今持ってる魔剣の造りがいまいちとなっていた。
まさか俺が修行で指摘した事を忘れている程まで酷いとは思わなかったよ。今の祐斗にイリナ達と戦わせてもアッサリと負けてしまうのが容易に想像出来る。
「祐斗、折角張り切っているところを悪いが、今回は俺一人で戦わせて貰うよ」
「なっ! それはどういう――」
ドンッ!
「がっ!」
俺の発言に祐斗がコッチを向いた瞬間、すぐに祐斗の首筋に手刀を当てて気絶させる。
あっと言う間に気絶した祐斗がうつ伏せになって倒れる光景に、イッセーを除く全員が唖然としていた。
「せ、先輩、何の、真似ですか……!?」
「おや? 気絶させたつもりなんだが、まだ意識はあったか。どうやら俺の修行で相当打たれ強くなったようだな。まぁ良い。取り敢えず大人しく見てろ」
「ふ、ふざけないでくだ……っ! ど、どうして、身体が……」
俺に文句を言いながら立ち上がろうとする祐斗だったが、自身の身体に力が入らない事に気付く。
「手刀で当てた瞬間、君の体内に光のオーラを送り込んでおいた。それによって今の君は途轍もない倦怠感に襲われていて、立つ事すら出来ない状態だ。悪魔にとって光は毒だからな」
「な、なぜ、こんな事を……」
まるで俺に裏切られたかのような目で見てくる祐斗。
そんな祐斗に俺は見下ろしながらこう言い放つ。
「生憎だが、今回は俺の戦いなんだ。それを君は自分の戦いのように勝手に出しゃばってきただけにすぎないよ。ついでに今の君が彼女達と戦ったところで負けるのが目に見えてる。修行ならまだしも、そんな分かりきった勝負をさせるほど、俺はお人好しじゃないんでね」
「そんなの、最後までやってみなければ……」
「はい、もうこれ以上の文句は受け付けませんのでっと」
そう言いながら俺は祐斗が着てるYシャツの襟首を掴んで持ち上げる。
「りゅ、リューセー先輩、何を……!」
「言ったろ? 大人しく見てろって。イッセー、コイツを頼む!」
「ええ~~……。俺、男なんか持ちたくねぇんだけど……」
リアス達と一緒に少し離れてるイッセーに声をかけるも、愚弟は凄く嫌そうな顔をしていた。
「ゴチャゴチャ言うな。ほら」
「うわっ!」
「あっ……ちっ。しょうがねぇ」
放物線を描くように祐斗を片手で放り投げると、イッセーは少し迷った顔をするも仕方ない感じで飛翔する。そして自分目掛けてくる祐斗を、お姫様抱っこをするようにキャッチする。
「い、イッセーくん……?」
「だぁ~! 何で俺がお前をお姫様抱っこしなけりゃいけねぇんだよ!」
呆ける祐斗を抱き止めたイッセーは一刻も早く離れようと、即行で地上に降りようとする。
それを見た俺はイッセーが着地した瞬間――
パシャッ!
「っ! おい兄貴! いま何を撮りやがった!?」
すぐに懐にある携帯を出してすぐにカメラモードで撮影した。撮ったのは言うまでも無く、イッセーが祐斗をお姫様抱っこしてるシーンだ。
写真を取られた事に気付いたイッセーは、すぐに祐斗を下ろした後、俺を見ながら怒鳴りつけてくる。
「いや~、お前と祐斗の仲睦まじいシーンを撮っただけだ」
「アレのどこが仲睦まじいんだバカ兄貴!! 消せ! 今すぐにその写真を消しやがれ! じゃないと学園の女子達に誤解されるだろうが!!」
「分かった分かった。後でちゃんと消すから」
憤慨してるイッセーを宥めるように言ってる俺は、持ってる携帯を一先ず懐に仕舞って、身体を再びイリナとゼノヴィアの方へと向ける。
「待たせて悪かったな。さぁ、相手をしよう。二人同時で掛かってくると良い」
「……正気か貴様? 聖剣を持った私たちを一人で相手をするなど、とても正気の沙汰ではないな」
「リューセーくん。いくら悪魔だからって、仲間に対して平然とあんなことをするのはどうかと思うわよ?」
俺の行動に疑問視するゼノヴィアとイリナ。
「生憎、俺は負ける戦いをさせるつもりはないんでね。今のアイツは聖剣を破壊する事しか頭に無いから、戦ってる最中にポカをやらかして負けるのが目に見えてる」
「ほう? 仲間の心情を察して敢えて強制的に退かせたのか。どうやらただのバカではないようだ」
意外そうな顔をしながら感心するゼノヴィア。
この
「だったら別の仲間を呼んだらどうだ? 例えば貴様の弟である兵藤一誠を。いかに異端者とは言え、我らを相手に一人でやるのは無謀にも程があるぞ」
…………はぁっ、やれやれ。
たかが未熟な聖剣使い程度の相手にそこまで気遣われるとは……思わずちょっと頭に来たよ。
「そんなフェアプレー精神はいらんから、さっさとかかって来い。教えてやるよ、力の差ってやつをな」
「……よく言った、異端者よ。ならば望みどおり、こちらから行かせてもらうぞ!」
そう言ってゼノヴィアはダッシュし、『
「はああああっ!」
「……遅っ」
余りにも遅い大振りな斬撃だったので、俺は呆れながら躱そうとすると――
「アーメンッ!」
「お?」
いつのまにか紫藤イリナが躱そうとする俺に日本刀の切っ先を突き出してきた。
俺は慌てる事無く二つの攻撃を避けて、一旦二人から距離を取ろうと後方へ跳躍移動する。
「逃げ足だけは速いようだな」
「でも咄嗟に躱すあの身のこなし、とてもただ者じゃないわ。リューセーくん、あなた一体何者なの?」
「いくら幼馴染でも、その質問には答えられないな」
俺は君達がいつも崇めてる聖書の神だよ、何て言ったらどんな反応をするかな?
「酷い! 昔は私が質問してきた時は先生みたく何でも答えてたのに! ああ、これは主の試練なんだわ! 久しぶりに帰って来た故郷の地で、懐かしのお友達が悪魔に魅入られた異端者となって変わり果ててしまった! 時間の流れは余りにも残酷だわ! ああ、主よ! どうかこの異端者に救いのお導きを!」
「………………」
異端者である
ってか、さっきからコイツ等の矛盾した発言を聞く度に思わず呆れるよ。君達が今相手してるのは
「あ~、すまない。イリナは一度スイッチが入ってしまうと、このような状態になってしまうんだ」
「コッチもコッチで、イリナが昔とは全然違う事に驚いたよ」
さり気なくイリナの行動に対して謝るゼノヴィアに、俺も同調するように言い返す。俺達、今戦闘中の筈だよな?
「全く。どいつもこいつも………最近の信徒は本当に相手を苛立たせるのが好きなんだな!」
この二人の言動に思わず頭に来た俺はパチンと指を鳴らした瞬間――
ドンドンドンドンッ!!
「「っ!?」」
四本の光の槍がゼノヴィアとイリナに襲い掛かも、それ等を見た二人は驚愕しながらも咄嗟に躱した。
そして躱されてしまった光の槍はそのまま地面へと刺さり、目的が無くなったかのように四散する。
「光の槍だと? バカな。アレは本来、天使と堕天使にしか使えない筈だ……!」
「どう言うことなの、リューセーくん? どうして光の槍を……? っ! まさかあなたは……!」
「残念ながら俺は天使でも堕天使でもない。見ての通り、只の人間だよ。まぁちょっと人間の枠から外れているがな」
こう言ったのは部室でリアスと話した時以来だな。あの時は何故か天使の力を使えると誤魔化したが。
さて、それよりも向こうは漸く真面目な雰囲気を醸し出してるようだ。さっきまでと違って、一切の油断が無くなってる。
「イリナ、ここからは本気でやるぞ」
「ええ、そうした方が良いみたいね」
構える二人は俺に対し一人前のような殺気を放ってくる。俺からしたら涼風程度にしか感じないが。
「やっとその気になってくれたか。さて、俺相手に何分もつかな?」
俺の言葉が合図となったのか、二人は一斉に俺に襲い掛かってきた。
ではここから先は