「
「は……はい。それが神のお望みとあらば……」
前も言ったように、
ミカエル達には悪いが、ここは敢えて心を鬼にして突き放す事にした。
流石に少しばかり言い過ぎたと思った
「まぁ、天界には絶対戻らないって訳じゃない。時々戻って、お前達の相談ぐらいは乗る。その時には何でも打ち明けてくれ。但し、相談内容によっては却下するからな」
『っ! はい!』
限定的に天界へ戻る事を告げると、さっきまで
「ああ、それとミカエル。ちょっと立て」
「は、はい……」
ミカエルは恐る恐ると言った感じで立ち上がる。
突然の名指しに少し緊張してるが、
「か、神よ、いきなり何を……!?」
「さっきは痛い思いをさせてしまって悪かったな。それと……色々問題はあれど、
「っ!
感動と言わんばかりに再び涙を流し始めるミカエルは人目を気にせず
「と言う訳でアザゼル、
「いいや、ねぇよ。寧ろそうしてくれた方がありがてぇ。何かあったら遠慮なく頼らせてもらうぜ、
アザゼルは
因みに
「アザゼル、神を利用しようなどと思ったその時は私や他の天使たちが黙っていませんからね? 覚悟しておいて下さい」
「チッ。わーったよ。ったく、
「あなたは以前から
良からぬ事を察知したミカエルがすぐに釘を刺そうとする事に、アザゼルが鬱陶しそうな顔をする。
「ってか、
「それを言うなら、会談の時に
穏やかそうに言ってるが、二人からは視線だけでバチバチと火花を散らしていた。
どうやらこの二人は今でも仲が悪いようだ。と言うより、こんな所でみっともない喧嘩はしないでくれ。
取りあえずコイツ等のやり取りは見なかった事にしようと思った俺は、次にサーゼクスとセラフォルーへと視線を向ける。
「サーゼクスとセラフォルー、お二人から異論はあるかな?」
「私もアザゼルやミカエル殿と同じだ。何の異論もない」
「私もよ。今後もよろしくね、聖書の神くん☆」
魔王達も賛成のようで何よりだ。
「感謝する。あと俺の呼び方は前と同じでいい。寧ろ人間の呼び名の方が良いからな」
「ではそうさせてもらおう、隆誠くん」
「改めて宜しくね、リューセーくん☆」
二人は揃って俺を名前で呼んでくれる。やっぱガチガチ思考の旧魔王共なんかより現魔王達の方が好きだ。このノリが実に良い。
「感謝する。ところで同志サーゼクスよ、今度また語り合いませんか? ……妹談議を」
「っ! 是非ともそうしようじゃないか。今度はリーアたんの可愛いところを余すところ無く語らせてもらうよ」
「ちょっと何それ!? そんな重要なイベントは私も混ざりたい! 可愛いソーたんの魅力を伝えるのがお姉さまである私の役目なんだから!」
ガシッと力強く握手する俺とサーゼクスを見たセラフォルーも妹談議に参加する気満々のようだ。
だが――
「お兄さま! リューセーに何をやろうとしてるんですか!?」
「お姉さま! どさくさに紛れて何をなさるおつもりですか!?」
「サーゼクスさまにセラフォルーさま、三大勢力の前でのお戯れは大概になさって下さい」
真っ赤な顔をしてコッチに来るリアスとソーナ、そしてグレイフィアによって阻止される事となってしまった。あらら、これは残念。
グレイフィアと言う抑止力がある為か、魔王二人は彼女の凄みに気圧されて怒られている。更には妹談議は絶対するなとリアスとソーナも釘を刺す。あの二人は一回言われたからって諦めたりはしないがな。
元凶ともいえる俺はそっと抜け出すように、今度はイッセー達の方へと近寄る。
「イッセー、怪我の方は?」
「大丈夫だけど……ってか兄貴、アレ放置して良いのか? 下手したら和平が無かった事になるんじゃねえ?」
三大勢力のトップ達がそれぞれ言い争いをしてるのを指すイッセー。
「あんな事で和平が取り消しになんかならないさ。そうじゃなかったら此処は今頃また戦場になってるよ」
「元はと言えば兄貴が元凶だろうが」
呆れながら呟くイッセーだが、すると何かを思い出したかのように尋ねようとする。
「それはそうと兄貴、ヴァーリの奴はどうなったんだ?」
「ああ、アイツからお前に伝言があってな」
ヴァーリからの伝言をそのまま伝えると――
「……あの野郎、ふざけやがって……! 俺が負けたってのに、勝手に自分の負けにしてんじゃねぇよ……! 次に会ったら絶対にブチのめしてやる!」
「怒るところはそこかよ」
イッセーは自分が勝利したと思ってないようだ。確かに気絶してる最中にヴァーリが自分から負けだと決め付けたら納得しないだろう。イッセーは勝負に関して厳しいからな。
「確認するけど兄貴。天界には戻らないのは聞いてたけど、俺の修行は今まで通りって事で良いのか?」
「当たり前だ。と言うか、今度からの修行は更に難易度を上げるからな。今までの修行内容だと、ヴァーリに勝てないって事は充分理解しただろ?」
「……まぁな」
「出来れば
「ちぇっ。どうにかして
少し不満気な表情をするイッセーだったが、一先ず納得してくれた。
すると、イッセーが付けていたアザゼル作成のリングが崩れ去る。
「あ、リングが……」
「力を使い過ぎて崩壊したようだな。後でアザゼルに礼を言っておけよ、イッセー。もしリングが無かったらヴァーリに対抗出来なかったんだからな」
「おう、後で言っとく。にしてもあのリング、まだないのかな? もしもの時にまた使いたいんだが」
「止めとけ。あのリングは俺が見た限り、精製するにはかなりの時間が掛かると思うし、簡単に量産は出来ない筈だ。仮に量産出来ても俺が使用する事は認めん。アレは使い続けたらお前が
「あ、やっぱり」
俺がリングの使用を認めないと聞いたイッセーは残念そうに嘆息する。
尤も、
「それと、今後も父さんと母さんには黙ってるのか?」
「そうするつもりだ。実は俺が人間に転生した神様でした、なんて言ってすぐに信じられると思うか?」
「だよなぁ。俺も兄貴の正体を知った時は信じられなかったし」
「それに加えて、俺は父さん達を巻き込ませたくない。父さんと母さんは俺たち兄弟を育ててくれた大切な家族だ。お前もそう思ってるだろ?」
「まぁな。んじゃ、今まで通り黙ってますか。松田や元浜達も同様に」
「あ、あの、主よ……」
イッセーと話してる中、アーシアが恐る恐ると声をかけてきた。
「えっと、私は主に――」
「ストップだアーシア。俺の正体が分かったからと言って態度を改めないでくれ。今まで通り『リューセーさん』で良いから」
「で、ですが……主に対してそんな恐れ多いことを私は――」
「アーシア、君が
「わ、私が主の妹? ……はうぅ」
「っておいアーシア!? しっかりしろ!」
まぁ確かに、今まで祈りを捧げていた相手から家族になったと聞いて倒れるのは無理ないかもしれない。
「はぁっ。ま、アーシアには後ほど俺に対しての認識を戻させるとしよう。もうついでに……ゼノヴィア、君はいつまでそうしてる気だ? 俺はもう気にしてないと言った筈だぞ」
「主よ、私は、私は……!」
今度は未だに跪き、頭を垂れてるゼノヴィアをどうにかしようと思った俺は近づこうとした。
あ、そうだ。悪魔になったゼノヴィアが祈りを捧げても、ダメージ無しに出来るようミカエルに頼んでおかないとな。
三大勢力のそれぞれが口論するも、取り敢えず和平は結ばれる事となる。
天界代表天使長ミカエル、堕天使中枢組織『
以降、三大勢力の争いは禁止事項とされ、協調体制へ――。更には人間代表の俺(+イッセーとアーシアとその他)は三大勢力の協力者になる。いざと言う時の助っ人として。
因みに、この和平協定は駒王学園から名を採って「駒王協定」と称される事になった。
次回で最終話になる予定です。