ハイスクールD×D ~復活のG~   作:さすらいの旅人

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第五十一話

聖書の神(わたし)は今後も人間の兵藤隆誠として駒王町にいる。分かったな?」

 

「は……はい。それが神のお望みとあらば……」

 

 天使(こども)達にちょっと長~い説教を終えると、ミカエル達は漸く引き下がってくれた。

 

 前も言ったように、聖書の神(わたし)はもう天界のトップに戻るつもりは毛頭無い。もし戻ってしまえば最後、天使たち全ては以前のように何でも聖書の神(わたし)に縋ってしまう。聖書の神(わたし)の死を乗り越えて天使達が今の今まで頑張ってきた努力が無駄になるからな。

 

 ミカエル達には悪いが、ここは敢えて心を鬼にして突き放す事にした。聖書の神(わたし)が本気で怒ってる事を理解したのか、ミカエル達はすっかり(しょ)()ている。

 

 流石に少しばかり言い過ぎたと思った聖書の神(わたし)は――

 

「まぁ、天界には絶対戻らないって訳じゃない。時々戻って、お前達の相談ぐらいは乗る。その時には何でも打ち明けてくれ。但し、相談内容によっては却下するからな」

 

『っ! はい!』

 

 限定的に天界へ戻る事を告げると、さっきまで(しょ)()ていたミカエル達は元気を取り戻したかのように返事した。ま、人間で言えば実家へ帰省みたいなもんだ。親と子が逆転してるけどな。

 

「ああ、それとミカエル。ちょっと立て」

 

「は、はい……」

 

 ミカエルは恐る恐ると言った感じで立ち上がる。

 

 突然の名指しに少し緊張してるが、聖書の神(わたし)は気にせず優しく抱きしめる。

 

「か、神よ、いきなり何を……!?」

 

 聖書の神(ちちおや)の抱擁に戸惑うミカエル。

 

「さっきは痛い思いをさせてしまって悪かったな。それと……色々問題はあれど、聖書の神(わたし)がいなくなった後もお前が天使(こども)達を纏めて上げてるのを見て、父親として鼻が高いよ」

 

「っ! 聖書の神(ちちうえ)……私にそのような勿体無いお言葉など……!」

 

 感動と言わんばかりに再び涙を流し始めるミカエルは人目を気にせず聖書の神(わたし)を抱きしめ返す。この光景を見てる一同は様々な反応をしている。悪魔側は呆然、天使側(+アーシアとゼノヴィア)は感動、堕天使側は苦笑していた。

 

 

 

 

 

「と言う訳でアザゼル、聖書の神(わたし)の立場は兵藤隆誠(おれ)の時に会談で話したとおり『三大勢力の協力者』である事に変わりはない。何か異論はあるか?」

 

「いいや、ねぇよ。寧ろそうしてくれた方がありがてぇ。何かあったら遠慮なく頼らせてもらうぜ、聖書の神(おやじ)

 

 アザゼルは聖書の神(わたし)の立場に反対しないどころか大賛成のようだ。しかもなんか良い事を思いついたような悪い笑みを浮かべている。こう言うところは幼少の頃から変わってないな。

 

 因みに聖書の神(わたし)はもう人間の兵藤隆誠に戻っている。自分の力がある程度落ち着いたので、今は完全に制御出来るようになって人間へと戻る事が出来たからだ。聖書の神(わたし)から兵藤隆誠(おれ)になった時、ミカエルや天使達が寂しそうな表情をしていたが。

 

「アザゼル、神を利用しようなどと思ったその時は私や他の天使たちが黙っていませんからね? 覚悟しておいて下さい」

 

「チッ。わーったよ。ったく、聖書の神(おやじ)が戻った途端にコレかよ」

 

「あなたは以前から聖書の神(ちちうえ)を困らせていました前科がありますから。私が見張るのは当然です」

 

 良からぬ事を察知したミカエルがすぐに釘を刺そうとする事に、アザゼルが鬱陶しそうな顔をする。

 

「ってか、聖書の神(おやじ)に説教された上に、いい歳して泣いていたのはどこの天使長様だったかな?」

 

「それを言うなら、会談の時に聖書の神(ちちうえ)から痛い所を突かれて反論出来なかったのはどこの堕天使総督でしたか?」

 

 穏やかそうに言ってるが、二人からは視線だけでバチバチと火花を散らしていた。

 

 どうやらこの二人は今でも仲が悪いようだ。と言うより、こんな所でみっともない喧嘩はしないでくれ。

 

 取りあえずコイツ等のやり取りは見なかった事にしようと思った俺は、次にサーゼクスとセラフォルーへと視線を向ける。

 

「サーゼクスとセラフォルー、お二人から異論はあるかな?」

 

「私もアザゼルやミカエル殿と同じだ。何の異論もない」

 

「私もよ。今後もよろしくね、聖書の神くん☆」

 

 魔王達も賛成のようで何よりだ。

 

「感謝する。あと俺の呼び方は前と同じでいい。寧ろ人間の呼び名の方が良いからな」

 

「ではそうさせてもらおう、隆誠くん」

 

「改めて宜しくね、リューセーくん☆」

 

 二人は揃って俺を名前で呼んでくれる。やっぱガチガチ思考の旧魔王共なんかより現魔王達の方が好きだ。このノリが実に良い。

 

「感謝する。ところで同志サーゼクスよ、今度また語り合いませんか? ……妹談議を」

 

「っ! 是非ともそうしようじゃないか。今度はリーアたんの可愛いところを余すところ無く語らせてもらうよ」

 

「ちょっと何それ!? そんな重要なイベントは私も混ざりたい! 可愛いソーたんの魅力を伝えるのがお姉さまである私の役目なんだから!」

 

 ガシッと力強く握手する俺とサーゼクスを見たセラフォルーも妹談議に参加する気満々のようだ。

 

 だが――

 

「お兄さま! リューセーに何をやろうとしてるんですか!?」

 

「お姉さま! どさくさに紛れて何をなさるおつもりですか!?」

 

「サーゼクスさまにセラフォルーさま、三大勢力の前でのお戯れは大概になさって下さい」

 

 真っ赤な顔をしてコッチに来るリアスとソーナ、そしてグレイフィアによって阻止される事となってしまった。あらら、これは残念。

 

 グレイフィアと言う抑止力がある為か、魔王二人は彼女の凄みに気圧されて怒られている。更には妹談議は絶対するなとリアスとソーナも釘を刺す。あの二人は一回言われたからって諦めたりはしないがな。

 

 元凶ともいえる俺はそっと抜け出すように、今度はイッセー達の方へと近寄る。

 

「イッセー、怪我の方は?」

 

「大丈夫だけど……ってか兄貴、アレ放置して良いのか? 下手したら和平が無かった事になるんじゃねえ?」

 

 三大勢力のトップ達がそれぞれ言い争いをしてるのを指すイッセー。

 

「あんな事で和平が取り消しになんかならないさ。そうじゃなかったら此処は今頃また戦場になってるよ」

 

「元はと言えば兄貴が元凶だろうが」

 

 呆れながら呟くイッセーだが、すると何かを思い出したかのように尋ねようとする。

 

「それはそうと兄貴、ヴァーリの奴はどうなったんだ?」

 

「ああ、アイツからお前に伝言があってな」

 

 ヴァーリからの伝言をそのまま伝えると――

 

「……あの野郎、ふざけやがって……! 俺が負けたってのに、勝手に自分の負けにしてんじゃねぇよ……! 次に会ったら絶対にブチのめしてやる!」

 

「怒るところはそこかよ」

 

 イッセーは自分が勝利したと思ってないようだ。確かに気絶してる最中にヴァーリが自分から負けだと決め付けたら納得しないだろう。イッセーは勝負に関して厳しいからな。

 

「確認するけど兄貴。天界には戻らないのは聞いてたけど、俺の修行は今まで通りって事で良いのか?」

 

「当たり前だ。と言うか、今度からの修行は更に難易度を上げるからな。今までの修行内容だと、ヴァーリに勝てないって事は充分理解しただろ?」

 

「……まぁな」

 

「出来れば禁手(バランス・ブレイカー)に至って欲しいが、残念だが今のイッセーじゃまだ無理だ。取り敢えず20倍龍帝拳まで制御出来る事を目標とする。そうすれば禁手(バランス・ブレイカー)となったヴァーリにも対抗する事が出来るからな」

 

「ちぇっ。どうにかして禁手(バランス・ブレイカー)を使えるようにしたいんだがなぁ……まぁ良いか」

 

 少し不満気な表情をするイッセーだったが、一先ず納得してくれた。

 

 すると、イッセーが付けていたアザゼル作成のリングが崩れ去る。

 

「あ、リングが……」

 

「力を使い過ぎて崩壊したようだな。後でアザゼルに礼を言っておけよ、イッセー。もしリングが無かったらヴァーリに対抗出来なかったんだからな」

 

「おう、後で言っとく。にしてもあのリング、まだないのかな? もしもの時にまた使いたいんだが」

 

「止めとけ。あのリングは俺が見た限り、精製するにはかなりの時間が掛かると思うし、簡単に量産は出来ない筈だ。仮に量産出来ても俺が使用する事は認めん。アレは使い続けたらお前が禁手(バランス・ブレイカー)になれなくなる恐れがある。リングがなくても禁手(バランス・ブレイカー)に至るまでの手は尽くすから安心しろ」

 

「あ、やっぱり」

 

 俺がリングの使用を認めないと聞いたイッセーは残念そうに嘆息する。

 

 尤も、禁手(バランス・ブレイカー)に至るには劇的な変化が必要だ。いくら聖書の神(わたし)でも禁手(バランス・ブレイカー)にさせるなんて無理だが心配はない。イッセーなら何れ至るだろうと確信はしてるからな。

 

「それと、今後も父さんと母さんには黙ってるのか?」

 

「そうするつもりだ。実は俺が人間に転生した神様でした、なんて言ってすぐに信じられると思うか?」

 

「だよなぁ。俺も兄貴の正体を知った時は信じられなかったし」

 

「それに加えて、俺は父さん達を巻き込ませたくない。父さんと母さんは俺たち兄弟を育ててくれた大切な家族だ。お前もそう思ってるだろ?」

 

「まぁな。んじゃ、今まで通り黙ってますか。松田や元浜達も同様に」

 

「あ、あの、主よ……」

 

 イッセーと話してる中、アーシアが恐る恐ると声をかけてきた。

 

「えっと、私は主に――」

 

「ストップだアーシア。俺の正体が分かったからと言って態度を改めないでくれ。今まで通り『リューセーさん』で良いから」

 

「で、ですが……主に対してそんな恐れ多いことを私は――」

 

「アーシア、君が聖書の神(わたし)を敬い、祈りを捧げているのは痛いほど分かっている。だが今の俺は兵藤隆誠でもあるんだ。だからせめて俺がこの姿になってる時は普通にリューセーとして接して欲しい。俺としても君を大事な妹として見てるからね」

 

「わ、私が主の妹? ……はうぅ」

 

「っておいアーシア!? しっかりしろ!」

 

 聖書の神(わたし)の妹と聞いた瞬間にアーシアは処理が追いつけなくなってしまったのか、数秒後に気絶してしまった。アーシアが倒れた直後にイッセーがすぐにキャッチする。ナイスだ。

 

 まぁ確かに、今まで祈りを捧げていた相手から家族になったと聞いて倒れるのは無理ないかもしれない。

 

「はぁっ。ま、アーシアには後ほど俺に対しての認識を戻させるとしよう。もうついでに……ゼノヴィア、君はいつまでそうしてる気だ? 俺はもう気にしてないと言った筈だぞ」

 

「主よ、私は、私は……!」

 

 今度は未だに跪き、頭を垂れてるゼノヴィアをどうにかしようと思った俺は近づこうとした。

 

 あ、そうだ。悪魔になったゼノヴィアが祈りを捧げても、ダメージ無しに出来るようミカエルに頼んでおかないとな。聖書の神(わたし)に祈りを捧げてダメージを受けてるのを何度も見たから、これは如何にかしないと思ってたところだし。

 

 三大勢力のそれぞれが口論するも、取り敢えず和平は結ばれる事となる。

 

 

 

 天界代表天使長ミカエル、堕天使中枢組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』総督アザゼル、冥界代表魔王サーゼクス・ルシファー、そして人間代表の兵藤隆誠(聖書の神)、三大勢力と人間の各代表のもと、和平協定が調印された。

 

 以降、三大勢力の争いは禁止事項とされ、協調体制へ――。更には人間代表の俺(+イッセーとアーシアとその他)は三大勢力の協力者になる。いざと言う時の助っ人として。

 

 因みに、この和平協定は駒王学園から名を採って「駒王協定」と称される事になった。 




次回で最終話になる予定です。

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