ハイスクールD×D ~復活のG~   作:さすらいの旅人

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今回はフライング投稿させて頂きます。


第五十話

「今回は引き分けか。ま、イッセーにしてはよくやったな」

 

「ってリューセー! 待ちなさい!」

 

 イッセーとヴァーリが相打ちとなった事に俺はそう呟きながら、掴んでいたリアスの腕を放して直ぐに二人の所へ転移する。

 

「さて、先ずはヴァーリを――」

 

 

 ビュンッ!

 

 

 ヴァーリを拘束しようと思ったが、一つの人影が神速で入り込んでくる。その一瞬の間にヴァーリの姿が消え、少し離れた前方から人影の姿を現した。中華風の鎧を身に纏った男がヴァーリの腕を担ぎながら。

 

「やはりそう来たか」

 

「悪いが、ヴァーリは渡さないぜぃ」

 

「……美猴か。何をしに来た?」

 

 意識が戻ったヴァーリは美猴と言う男を見ながら問う。

 

「それは酷いんだぜぃ? 相方がピンチな上に捕まりそうだったから駆けつけたのによぅ? にしてもまさか、おまえともあろう者が赤龍帝と相打ちとはねぇ」

 

「違う、相打ちなんかじゃない。今回は俺の負けだ。その結果がこのザマだ」

 

 傍から見れば相打ちだったんだが、どうやらヴァーリにとっては敗北らしいな。

 

「そうかい。ま、俺っちはどっちでもいいけどねぃ。それはそうと、他の奴等が本部で騒いでいるぜぃ? 北の田舎(アース)神族と一戦交えるから戻って来いって言われたけど……先ずは治療優先だな。俺っちと一緒に帰ろうや」

 

「……そうか、すっかり忘れてたよ」

 

 そう言えばヴァーリが早々にイッセーとの決着を付けようとしてたみたいだな。しかもその理由がアース神族との一戦、か。急にスケベ爺のオーディンの顔を思い出したよ。

 

「話してるところ悪いが、そろそろコッチを見てくれないかな? 闘戦勝仏の末裔――孫悟空」

 

「お? 聖書の神が俺っちの事を知ってるとは光栄だぜぃ」

 

「知ってるのは初代孫悟空の方だがな。君から孫悟空の力を感じたから、そう呼んだだけだよ」

 

「ありゃりゃ、そっちだったか。それは残念」

 

 相手が聖書の神(わたし)と知っているにも拘らずケタケタと笑う。

 

「ま、俺っちは仏の初代と違うんだぜぃ。自由気ままに生きるのさ。改めて俺っちは美猴。よろしくな、聖書の神。あとそこで倒れてる赤龍帝にも伝えといてくれぃ」

 

 聖書の神(わたし)に気軽な挨拶をしてくるとは、随分と肝が据わってるなコイツ。天界にいた頃の自分だったら嫌悪感を示すところだが、今は面白い奴だと好感が持てるよ。

 

「と言う訳で逃げさせてもらうぜぃ」

 

「おいおい、折角来たんだ。良かったら聖書の神(わたし)が君の相手をしてあげるが?」

 

「勘弁してくれぃ。いくら戦いが好きな俺っちでも、アンタ相手にただじゃ済まない事ぐらい分かってる。だからここは逃走に専念させてもらうぜぃ」

 

 そう言いながら美猴は、棍を手元に出現させるとくるくると器用に回し、地面に突き立てた。

 

 刹那、地面に黒い闇が広がり、それは美猴とヴァーリを捉えてずぶずぶと沈ませていく。

 

 本当だったらこのまま捕まえたいところだが、こっちはこっちでイッセーの治療を専念しないといけないからな。

 

 すると、ヴァーリがコッチをみてこう言ってくる。

 

「聖書の神、兵藤一誠に伝えてくれ。『キミを侮辱した事は謝罪する。次に戦う時には一切慢心せずに全力で戦って俺が勝つ』とな。そして、あなたもいずれ俺が――」

 

 それだけ言いかけて、白龍皇は美猴と共に闇の中へと消えていった。

 

「逃がしちまって良いのか、聖書の神? アンタがその気になれば、あの二人を簡単に捕まえる事が出来たんじゃねぇのか?」

 

 二人がいなくなったのを確認したアザゼルが近づきながら問う。

 

「今はアイツ等よりも……こっちが最優先だから、な!」

 

 

 パァァァァァァッ!!

 

 

 イッセーに向かって手を向け、大きめな光弾状の『治癒の光』を放った。それを受けたイッセーの全身から眩い光が発する。

 

 そして光は段々弱まって消えていった数秒後――

 

「…………う、うう…………あれ? 俺は確か……」

 

 気絶していたイッセーが目覚めようとしていた。

 

「流石は聖書の神。重傷だった兵藤一誠を一瞬で治すとは」

 

「まだ完全に治ってはいないがな。何だったら、お前の腕も治療してやろうか? 決別したとは言え、お前は聖書の神(わたし)の息子だ。流石に再生させる事は出来ないがな」

 

「遠慮しとく。これ位は自分でやるさ。ってか、いつまでもガキ扱いすんなよ、聖書の神(おやじ)

 

 治療を拒否するアザゼルが懐かしい呼び方をする事に苦笑しながら、俺はイッセーに近づこうとする。

 

「あ、兄貴……」

 

「随分と派手にやらかしたな、イッセー。また学園が崩壊したぞ」

 

「悪い。俺、無我夢中で……って! ヴァーリの野郎はどうした!?」

 

 俺に謝るイッセーだったが、大事な事を思い出したようにすぐ立ち上がった。

 

「ああ、アイツなら――」

 

「イッセー!」

 

「え? ぶ、ぶちょわぷっ!」

 

 俺が答えようとしてる最中、リアスが走りながらコッチへ向かってきた。そしてすぐさまイッセーを自分の胸に押し付けるように抱き付こうとする。

 

 急にリアスがイッセーとイチャ付き始めたので、理由は後で話そうと決めた俺は一先ず退散しようと――

 

「おいコラ待てよ聖書の神(おやじ)、一体どこへ行くつもりだ?」

 

「アザゼル、聖書の神(ちちうえ)に馴れ馴れしく触れないで下さい」

 

「隆誠くん、いや聖書の神よ。そろそろ教えてくれないか? 死んだ筈の貴殿が何故生きていたのかを」

 

 したがアザゼルが逃がさんと言わんばかりに俺の肩に手を置くと、いつの間にか来ていたミカエルが空かさずアザゼルの手を払う。更にはサーゼクスまでもいる始末。

 

 別に説明するのが面倒で逃げるつもりじゃなかったんだが……しょうがない。コイツ等には一から説明するとしますか。でもその前に戦闘の後始末をするよう言っておかないとな。

 

 

 

 

 

 

 聖書の神(わたし)についての説明をする前、ギャスパーを通じて未だ時間停止状態となってるアーシア達を元に戻し、更には三大勢力の軍勢に戦闘後の処理をするよう言っておいた。

 

 その途中、天使達が聖書の神(わたし)の姿を見た途端――

 

『オオオォォォォォ!!』

 

『神が、神がぁぁ~~~!!!』

 

『父上ぇぇ~~~!!!』

 

『お父さまぁぁぁぁ~~~!!!』

 

 男女問わず人目も憚らず一斉に感動の大号泣をしていた。聖書の神(わたし)の事を未だに慕っている気持ちは嬉しいんだが、取り敢えず仕事はしてくれ。

 

 更には――

 

「あ、あの、その! ぞ、存じなかったとは言え、主に対する数々の暴言とご無礼、まことに申し訳ありませんでしたぁ!!」

 

「りゅ、リューセーさん、ではなくて主よ! わ、私も知らずに今まで大変失礼な事ばかりしてすみませんでした!!」

 

 ゼノヴィアと事情を簡単に説明したアーシアが即行で跪いて頭を下げていたよ。特にゼノヴィアは聖書の神(わたし)と目があった瞬間に色々な事を思い出したのか、深い絶望に襲われてると思う位に顔色が自分の髪の色以上に真っ青だったし。どこで知ったのかは知らないが、地面に思いっきり頭をぶつけながら土下座していた。

 

 挙句の果てには『死して償いをする』と言った直後にデュランダルを使って自害までしようとする始末。こればっかりは流石に聖書の神(わたし)だけじゃなく、イッセーやリアス達も必死に阻止と同時に説得して止めたがな。悪魔になったとは言え、元教会の信徒が自害なんか以ての外だ。

 

 説明する前にちょっとしたプチ騒動はあったが、ヴァーリを除いた会談に参加していた一同に聖書の神(わたし)が死んだ後の事を全て話した。

 

 端的に説明すると――

 

 ①先の大戦で聖書の神(わたし)が死ぬ前にシステムに転生するよう措置。

 

 ②宗教とは一切関係無い極普通の一般家庭の長男として転生。

 

 ③本当なら三大勢力に一切関わる事無く一般人として過ごそうと思ったが、弟のイッセーが赤龍帝である為に師となって鍛えさせる事を決意。

 

 ④聖書の神(わたし)に関わった者たちに迷惑を掛けない為、自身の存在を秘匿。但しドライグのみには聖書の神(わたし)の正体を公開済。

 

 ⑤赤龍帝(イッセー)の修行も兼ねて、学生の長期休みを利用して旅をしながら三大勢力の現状を確認。

 

 ⑥修行と日常生活を送ってる中、聖書の神(わたし)の正体を知っていたオーフィスから禍の団(カオス・ブリゲード)への何度も勧誘されたが全て拒否。

 

 ⑦オーフィスから食事を教えてもらった礼として、神の力を与えられた為に不本意だが本来の姿へ戻る事が出来たと同時に、聖書の神(わたし)能力(ちから)が制御可能。

 

 ――こんな感じだ。

 

 ①~⑦の説明を聞いた一同は様々な反応を示していた。その中でかなり驚いてたのが③と⑥だ。⑥では話題となってたテロリストのリーダーが、どうして兵藤隆誠(おれ)聖書の神(わたし)である事に気付いたのかと。

 

 オーフィスが正体を知ったのは偶然だった。聖書の神(わたし)が一人で少し暴走気味だった光の力を抑えてる最中、駒王町へ偶々やってきたオーフィスが聖書の神(わたし)の力を感じ取ったから。あの時は平静を装いながらも誤魔化そうとしたが――

 

「我、間違えてない。聖書の神の力を知ってる我は決して間違えたりしない。お前、何者?」

 

 ――と、普段から感情を表に出さないあのオーフィスが珍しく詰問してきたから止むなく教える事にした。

 

 んで、聖書の神(わたし)の正体を知った途端にオーフィスは禍の団(カオス・ブリゲード)に来て欲しいと勧誘され続けたって訳だ。

 

 勧誘と聞いた瞬間にサーゼクス達が警戒するような目となったが、⑥の理由を聞いたのを思い出して安堵の表情となる。

 

「とまあ、以上が聖書の神(わたし)のこれまでの経緯だ。何か質問はあるかな? と言っても、この状況では数回までと限らせてもらうが」

 

『…………………………』

 

 話を聞き終えた一同はすぐに言葉を出そうとしない。聖書の神(わたし)が余りにも予想外な行動をしていたから、誰もが信じられないと言うような顔をしている。

 

 まぁそれは当然だな。オーフィスの件を除いて、システムを使って転生しただけでなく、嘗て戦争で殺しあった赤龍帝を強くさせる為に聖書の神(わたし)が師となってる事は余りにも信じられないだろうし。

 

「あ~、質問したいのは山ほどあるんだが……」

 

 片手で後頭部をポリポリと掻きながら言うアザゼル。もし『何でも質問してくれ』と言ったら、戦闘後の処理とか関係無くずっと問い詰めるだろうな。

 

聖書の神(おやじ)が復活した経緯は分かった。だがそこまでやろうした理由は一体何なんだ? システム使ってまで転生するなんざ、俺達が知ってる嘗ての聖書の神(おやじ)じゃ考えられねぇ行動だ」

 

「……確かにアザゼルの言うとおりだ。嘗ての聖書の神(わたし)を知ってる者たちから見れば尚更な。ミカエルも似たような事を考えてるんだろう?」

 

「い、いえ……決してそのような事は……」

 

 苦笑しながら言うと、ミカエルは図星を突かれたかのように慌てて取り繕うとする。

 

「まぁ理由としては、そうだな……聖書の神(わたし)自身の行動に疑問を抱いたんだ」

 

「行動だと?」

 

「知ってのとおり、嘗ての聖書の神(わたし)は数多くの人間達に愛を与え続けていた。だがそれで人間達は本当に幸せになっているのか、とな。そこでだ――」

 

 アザゼルの質問を聖書の神(わたし)は説明する。

 

 いずれ地上に降りて自分の愛で幸せになっているかを確認する前に死んでしまっては元も子もないので、万が一の対策として『システム』に細工を施した。聖書の神(わたし)が死んだ時に発動する『人間への転生』と。だがソレには色々と条件があった。転生した際に起こる、システムから下された不都合な条件が。

 

 一つ、転生したら今までの能力(ちから)の大半が制限されて使えなくなる。二つ、人間の姿で能力(ちから)を使えば使うほど死が早まる。三つ、システムの使用方法に関する記憶を失う。四つ、今後システムを扱う事が出来なくなり、触れる事すら出来なくなる。

 

 それらの条件を聞いていたアザゼルが理解してる中、ミカエルは悲痛な顔をしていた。天使達からすれば聖書の神(わたし)にとって残酷とも言える条件だからな。

 

「――で、システムの条件を受け入れた聖書の神(わたし)が兵藤家の人間へ転生して本当の愛と言うものを知った。尤も、未だに全て理解した訳ではないがな」

 

 愛には様々なものがあるが、その中で最も知る事が出来たのは“家族愛”。兵藤家は特別な力を持った一族でも有名な家柄でもない極普通の一般家庭だ。加えて教会関係者でもない。

 

 最初は聖書の神(わたし)の愛を知らない不憫な者達と思ったが、それは大間違いであった。自分がどれだけ思い上がっていた存在だったのかと心底恥じた。聖書の神(わたし)の愛や加護を与えずとも、幸せになっているではないかと。

 

 そして両親以外の家族――兵藤一誠(おとうと)も幸せな時間を過ごしているとも理解する。一誠の兄となった聖書の神(わたし)自身も兵藤家で過ごしている内に今まで愛に対しての価値観を大きく変わってしまった。勿論、聖書の神(わたし)にとっては良い意味で。

 

「一方的な愛を押し付けた嘗ての自分がどれだけ傲慢な存在だったのかと思い知ったよ。今思えば、アザゼルや他の堕天使達が聖書の神(わたし)と決別するのは当然だな」

 

「……別にそれだけじゃねぇよ。あのまま聖書の神(おやじ)の所にいても、俺のやりたい事が出来ないと思ったから決別したんだ」

 

「だろうな。お前は嘗ての天使たちの中でもかなり自由奔放な息子だった」

 

 アザゼルが決別した理由を粗方分かっていた聖書の神(わたし)は、大して気にする事無く笑みを浮かべた。その反応が予想外だったのかアザゼルは呆気に取られている。

 

「つーか、マジで変わったんだな。以前の聖書の神(おやじ)だったら、俺を問答無用で処罰してもおかしくねぇんだが」

 

「今更そんな理由で処罰などしないさ。それより、他に質問する方はいるかな? そろそろイッセーに本格的な治療をしないといけないから、出来ればあと一回にして欲しいが」

 

 アザゼルの質問を全て答えた後、他に質問がないかと一同に尋ねる。すると、今度はサーゼクスが前に出ようとする。

 

「では私が問わせて頂こう。隆誠くん――聖書の神よ。貴殿はこの先どうするつもりだ? 再び天界へ戻られるのか?」

 

「まさか。正体がバレた以上は天界へ戻ろう、なんて気はないよ」

 

「そんな……!」

 

 サーゼクスの問いに答える聖書の神(わたし)にミカエルが目を見開きながらショックを受けるような声を出す。同時に聞き耳を立てていたであろう他の天使たちも含めて。

 

「神よ、どうかお考え直しを。神が天界へお戻りになるのでしたら、私はすぐにでも自身の地位を神に返上する所存です」

 

『お願いします、神よ! どうか再び我らを導いて下さい!』

 

 両膝を地に付けて深々と頭を下げるミカエルを筆頭に、天使達も倣って頭を下げて懇願する。

 

 ………はぁっ。ミカエル達がこうする事は予想してたよ。

 

「悪いが天使(むすこ)達よ、私は考えを改める気はない。それにさっき説明したとおり、聖書の神(わたし)が天界に戻ったところで嘗ての能力(ちから)を振るう事は出来ない。更にはシステムの使用法に関する記憶を失ってるどころか、触る事すら出来ない始末だ。ハッキリ言って今の聖書の神(わたし)は天界の足手纏いにしかならないよ」

 

「そんな事はありません! 聖書の神(ちちうえ)がお戻りになるだけでも、我々は心の支えとなるのです! どうか今一度お考え直しを!」

 

 普段する事のないミカエルが声を荒げてる事に悪魔側のサーゼクス達が驚くように見ている。アザゼルは口に出さずともミカエルの心情を理解してるようだ。

 

 う~む……。分かってはいたが、やはりそう簡単に引き下がってはくれそうにないな。仕方ない。ここは敢えて心を鬼にしよう。

 

「……ミカエル、お前の考えは分かった。頭を上げろ」

 

『っ!』

 

 自分の考えが分かってくれたのかと思ったのか、ミカエルは頭を上げて歓喜の顔をするも――

 

「甘ったれんな♪」

 

 

 バチィンッ!

 

 

「がっ!」

 

『え? ………ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええ!!!!????』

 

 私が額にデコピンをすると、それを見ていた天使達が一瞬呆然とするが、すぐに信じられないような絶叫をする。これにはアザゼルやサーゼクス達も予想外だったのかポカンとしながら口を開けている。




あと一~二話で完結予定となります。番外編はどうしようかと未だに考え中ですが。

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