「オラァッ!」
「ふっ」
ドォンッ!!
俺の拳をヴァーリが鎧を纏った片腕で防ぐと、激突音と同時に衝撃波が唸る。だが俺は気にせず今度は脚で攻撃するも、それを受けたくなかったのかヴァーリは白いオーラを纏いながら高速で回避する。
ヴァーリが回避しても俺はすぐに追跡しようと赤い
「凄いな。
『
「なるほど。そう考えると思わず嫉妬してしまうよ。常日頃から聖書の神と毎回戦っているとは、兵藤一誠は果報者すぎる」
「なにゴチャゴチャ喋ってやがるんだ!?」
真剣に戦ってるってのにコイツ等は! 人を舐めんのも大概にしろよ!
ヴァーリと、ヴァーリの中にいる存在――
「っ!」
アスカロンを見たヴァーリが急に警戒するように構えるも、俺は気にせず兄貴から教わった剣術をイメージしながら斬撃を繰り出す。
俺の斬撃にヴァーリは当たりたくなかったのか、受け流そうとせず回避に専念している。
思い出せ、俺! この前の修行で聖書の神こと兄貴から教わった剣術の戦い方を! 空孫悟みたく、
「せぇい!」
「くっ!」
繰り出す連続斬撃にヴァーリは距離を取ろうと一旦後退した。
「驚いたな。まさか剣術までも使えるとは」
『まだまだ未熟だが、それでも武器を己の一部のように使いこなそうとしている。しかも
「分かっているさ、アルビオン。だが、当たらなければ意味はないさ!」
くそっ! 兄貴から剣術の修行をやってまだ数回しかやってない所為で、ヴァーリに掠りすらしねぇ! 今度の修行では本格的に習わないとな!
にしてもアイツ、
『それはつまり、ヴァーリの力が凄まじいと言う事だ。対の存在である白龍皇もまた能力を使うたびに力を削るが、所有者のスタミナが強大ならば使用できる時間も膨大だろうな』
俺が抱いていた疑問は、俺の中にいるドライグが答えた。
チッ……! って事はなにか? 俺とヴァーリの力量差は決定的なのか!? 嫌な現実だな! 兄貴から厳しい修行を受けてるってのに、それでもまだまだ届かないのかよ! いや、違うな。それ以前に俺と奴とじゃ――基本スペックが違いすぎるかもしれない。
ヴァーリの力を感じて何となく分かったんだが、アイツは人間と悪魔が混ざり合ったような極めて特殊なオーラだ。こんな奴は初めて見たぞ。
「おいヴァーリ! おまえ一体何もんだ!?」
「ん?」
俺の質問に素っ頓狂な声を出すヴァーリだったが――
「初めて会った時からずっと気になってたが、おまえから人間が持ってない筈の妙なオーラを感じるんだよ! 悪魔の魔力と入り混じった妙なオーラがな! おまえ、俺と違って純粋な人間じゃないだろ!? まさかとは思うが、もしかしておまえ人間と悪魔のハーフとかじゃねぇだろうな!?」
「ほう」
今度は感心そうな声を出した。すると、今度は笑い始める。
「よく分かったな。その通りだ」
マジかよ!? ってか、何で当たってほしくない事が当たるんだよ!
俺が内心憤ってると、アイツは構えを解いて自分の事を話そうとする。
「俺の事を教える前に、先ずは本名から名乗っておこう。俺の名は――ヴァーリ・ルシファーだ」
………は? ルシファーって確か、サーゼクスさまの……?
「俺は死んだ先代の魔王の血を引くものでね。前魔王の孫である父と人間の母との間に生まれた
「なん、だと……?」
☆
「成程、そう言う事だったのか」
地上に降りた俺――聖書の神こと兵藤隆誠はヴァーリの素性を聞いて漸く合点した。
俺もイッセーと同じく初めてヴァーリに会った時からずっと気になっていた。何故、人間と悪魔のオーラが入り混じり、更には魔王の力の一端も感じ取れるのかと。
そしてやっと解消と同時に納得した。ヴァーリが先代魔王ルシファーの血縁でありながら、半分人間である事に。道理で魔王の力を感じ取れる訳だ。
本来、
「奇跡と言うものがあるのなら、俺のことかもしれないな。聖書の神よ。これはあなたでも予想外だっただろう? 俺のような存在がいたことに」
「………」
ヴァーリが突然、地上にいる俺に声を掛けてきたがすぐに答えれなかった。アイツの言うとおり、ヴァーリのような存在は完全に予想外だ。
「そうだな。私は君の事を余り知らないが、恐らく未来永劫においても最強の白龍皇かもしれないな。その強大な魔力に飛び抜けた才能、
『っ!』
俺の言葉に、この場にいる誰もが驚愕する。上空にいるイッセーも含めて。
「イッセーは君と違って、特別な力は持ってない極普通の一般人と変わらん。
「そう。もし、
「それはどう言う意味だ?」
ヴァーリは哀れむような感じで言ってくる。
「彼が俺のように特別な存在であったら、この場で俺を倒せていたかもしれない。いかに
暗にイッセーは自分に勝てないと言ってるな。
「テメエ!」
ヴァーリの台詞に頭に来たのか、イッセーは突撃してアスカロンを振り翳そうとする。
だが――
「遅い」
「がっ!」
イッセーの斬撃を簡単に避けたヴァーリは、すぐに反撃に転じてイッセーの腹部に拳を当てた。そしてすぐに両手を組んだまま翳し、イッセーの頭部目掛けて振り下ろす。
「ごあっ!」
ダァンッ!!
ヴァーリの攻撃をモロに喰らったイッセーは落下し、受身も取れないまま地面に激突してうつ伏せに倒れる。
奴め、イッセーの力を図ろうとする為に防御と回避に専念してたな。さっきのやり取りでイッセーの実力をある程度分かって、反撃に徹したと言ったところか。
「イッセー!」
「待つんだ、リアス!」
いつの間にか地上に降りていたリアスは倒れてるイッセーに駆け寄ろうとするが、近くにいたサーゼクスに止められる。
「これで分かって頂けたか、聖書の神? どんなに彼を強くさせたところで所詮は普通の人間。例え
地味に嫌なところを突いてくるなぁ。
もしイッセーがヴァーリみたく特別な存在だったら、
だが特別な存在でもない一般人として生まれた為に、イッセーは
ドラグ・ソボール風に言うなら、ヴァーリが超エリート戦士のベジターで、イッセーが下級戦士のカロカット――空孫悟、と言うヤサイ人の戦闘シーンだ。
「ヴァーリ、さっきから好き勝手言いやがって……!」
すると、地面に激突して倒れていたイッセーが立ち上がって憤怒の表情となっていた。
「こっちも言わせて貰うがよぉ! 俺みたいな
「面白い冗談だ。努力だけでは超えられない事を先程の反撃で教えたつもりなんだが?」
「生憎、俺はバカだからな。たかが1~2発程度当てられただけじゃ分かんねぇんだよ!」
……全く、実にイッセーらしい台詞だ。
でも確かにイッセーの言うとおりでもある。どんなに才能が無かろうと、必死に努力すれば報われるのを俺は知っているからな。
とは言え、今の状況では確かにヴァーリに勝つのはかなり難しいが、決してゼロではない。
「ドライグ! 俺はあの野郎のすまし顔を絶対一発ブン殴るって決めたぞ!」
『ああ、俺も丁度頭にきていたところだ。血筋だけで決め付けようとする白龍皇に、相棒の力を見せてやれ!』
イッセーに協調するようにドライグが頷く。どうやらドライグもヴァーリの発言に相当キレかけていたようだな。
ドライグは当初イッセーを全く才能のない宿主と見ていたが、
「はぁぁぁぁあああああ~~~~~!!!!」
ドンッ!!
イッセーの全身から再び赤い
「――っ。見ろ、アルビオン。兵藤一誠の力がまた一段と上がったぞ。怒りと言う単純明快な引き金だが、これは……少しばかり甘く見すぎていたようだな」
『
「なるほど。そういう意味では俺よりも彼の方がドラゴンと相性が良いわけだ。コカビエルが負けるのも当然か」
余裕そうにイッセーを分析しているヴァーリだが――
「テメエ、なに余裕こいてんだよ」
「っ!?」
超スピードで接近したイッセーに気付かず――
ドゴッ!! バキィッ!!
「がぁっ!」
腹部にイッセーの膝蹴り+顔面にストレートパンチを貰ってしまった。それらを喰らったヴァーリはイッセーから距離を取ろうとすぐに後退する。
不意打ちとは言え、あの白龍皇に攻撃を当てた事にリアス達は驚愕を露にしている。
「くっ……!
「ヴァーリ、俺から一つ忠告しといておくぜ。テメエはよ……自分の強さに自信があり過ぎるんだ。その所為で隙だらけなんだよ」
「………それはどうも」
否定する事が出来なかったのか、ヴァーリはイッセーの忠告を素直に受け入れていた。
そして二人は構えてオーラを放出し――
ドゥンッ! ドガガガガガガガッ!!
「ハァァアアアアア~~!!」
「ウオォォォォオオ~~!!」
拳と脚を使った攻防が始まった途端、その周囲から凄まじい衝撃波と突風が吹き荒れた。
今代の赤龍帝VS白龍皇の戦いが、この駒王学園で本格的に始まろうとしている。
あと数話で完結することが出来れば良いんですが……。