ハイスクールD×D ~復活のG~   作:さすらいの旅人

50 / 60
今回はフライング投稿にする事にしました。


第四十七話

「オラァッ!」

 

「ふっ」

 

 

 ドォンッ!!

 

 

 俺の拳をヴァーリが鎧を纏った片腕で防ぐと、激突音と同時に衝撃波が唸る。だが俺は気にせず今度は脚で攻撃するも、それを受けたくなかったのかヴァーリは白いオーラを纏いながら高速で回避する。

 

 ヴァーリが回避しても俺はすぐに追跡しようと赤い闘気(オーラ)を纏って高速飛行を行う。追いついたと同時に攻撃を繰り出し、ヴァーリも反撃をする。

 

「凄いな。禁手(バランス・ブレイカー)でもないのに、これ程の力とは」

 

神器(セイクリッド・ギア)の力だけでなく、兵藤一誠自身の力もかなり秘めている。どうやら聖書の神に相当鍛えられたようだな』

 

「なるほど。そう考えると思わず嫉妬してしまうよ。常日頃から聖書の神と毎回戦っているとは、兵藤一誠は果報者すぎる」

 

「なにゴチャゴチャ喋ってやがるんだ!?」

 

 真剣に戦ってるってのにコイツ等は! 人を舐めんのも大概にしろよ!

 

 ヴァーリと、ヴァーリの中にいる存在――白龍皇(アルビオン)の会話を聞いて頭に来た俺は、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)と同化させているアスカロンを出した。

 

「っ!」

 

 アスカロンを見たヴァーリが急に警戒するように構えるも、俺は気にせず兄貴から教わった剣術をイメージしながら斬撃を繰り出す。

 

 俺の斬撃にヴァーリは当たりたくなかったのか、受け流そうとせず回避に専念している。龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の力を帯びてるアスカロンには、流石の白龍皇でも受けたくないようだ。

 

 思い出せ、俺! この前の修行で聖書の神こと兄貴から教わった剣術の戦い方を! 空孫悟みたく、武器(アスカロン)を自分の一部だと思って戦えと!

 

「せぇい!」

 

「くっ!」

 

 繰り出す連続斬撃にヴァーリは距離を取ろうと一旦後退した。

 

「驚いたな。まさか剣術までも使えるとは」

 

『まだまだ未熟だが、それでも武器を己の一部のように使いこなそうとしている。しかも龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の力を帯びたアスカロンときた。気をつけろよ、ヴァーリ。アレを一太刀浴びれば大きなダメージへ否めなく、忽ちこちらが不利になる』

 

「分かっているさ、アルビオン。だが、当たらなければ意味はないさ!」

 

 くそっ! 兄貴から剣術の修行をやってまだ数回しかやってない所為で、ヴァーリに掠りすらしねぇ! 今度の修行では本格的に習わないとな!

 

 にしてもアイツ、禁手(バランス・ブレイカー)になってそれなりに時間が経ってるってのに、未だに余裕なんだな。禁手(バランス・ブレイカー)は維持するだけでも体力やオーラとか魔力を消費するって兄貴から聞いたんだが。

 

『それはつまり、ヴァーリの力が凄まじいと言う事だ。対の存在である白龍皇もまた能力を使うたびに力を削るが、所有者のスタミナが強大ならば使用できる時間も膨大だろうな』

 

 俺が抱いていた疑問は、俺の中にいるドライグが答えた。

 

 チッ……! って事はなにか? 俺とヴァーリの力量差は決定的なのか!? 嫌な現実だな! 兄貴から厳しい修行を受けてるってのに、それでもまだまだ届かないのかよ! いや、違うな。それ以前に俺と奴とじゃ――基本スペックが違いすぎるかもしれない。

 

 ヴァーリの力を感じて何となく分かったんだが、アイツは人間と悪魔が混ざり合ったような極めて特殊なオーラだ。こんな奴は初めて見たぞ。

 

「おいヴァーリ! おまえ一体何もんだ!?」

 

「ん?」

 

 俺の質問に素っ頓狂な声を出すヴァーリだったが――

 

「初めて会った時からずっと気になってたが、おまえから人間が持ってない筈の妙なオーラを感じるんだよ! 悪魔の魔力と入り混じった妙なオーラがな! おまえ、俺と違って純粋な人間じゃないだろ!? まさかとは思うが、もしかしておまえ人間と悪魔のハーフとかじゃねぇだろうな!?」

 

「ほう」

 

 今度は感心そうな声を出した。すると、今度は笑い始める。

 

「よく分かったな。その通りだ」

 

 マジかよ!? ってか、何で当たってほしくない事が当たるんだよ!

 

 俺が内心憤ってると、アイツは構えを解いて自分の事を話そうとする。

 

「俺の事を教える前に、先ずは本名から名乗っておこう。俺の名は――ヴァーリ・ルシファーだ」

 

 ………は? ルシファーって確か、サーゼクスさまの……?

 

「俺は死んだ先代の魔王の血を引くものでね。前魔王の孫である父と人間の母との間に生まれた混血児(ハーフ)なんだ」

 

「なん、だと……?」

 

 

 

 

 

 

「成程、そう言う事だったのか」

 

 地上に降りた俺――聖書の神こと兵藤隆誠はヴァーリの素性を聞いて漸く合点した。

 

 俺もイッセーと同じく初めてヴァーリに会った時からずっと気になっていた。何故、人間と悪魔のオーラが入り混じり、更には魔王の力の一端も感じ取れるのかと。

 

 そしてやっと解消と同時に納得した。ヴァーリが先代魔王ルシファーの血縁でありながら、半分人間である事に。道理で魔王の力を感じ取れる訳だ。

 

 本来、神器(セイクリッド・ギア)は人間だけにしか宿らない者だが、半分人間の血を引いてるヴァーリには宿す事が出来る。しかしそれは偶然にも、『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の神器(セイクリッド・ギア)と来た。恐ろしいほどの偶然、いや奇跡と言うべきか。

 

「奇跡と言うものがあるのなら、俺のことかもしれないな。聖書の神よ。これはあなたでも予想外だっただろう? 俺のような存在がいたことに」

 

「………」

 

 ヴァーリが突然、地上にいる俺に声を掛けてきたがすぐに答えれなかった。アイツの言うとおり、ヴァーリのような存在は完全に予想外だ。

 

「そうだな。私は君の事を余り知らないが、恐らく未来永劫においても最強の白龍皇かもしれないな。その強大な魔力に飛び抜けた才能、赤龍帝(イッセー)とは大違いだ」

 

『っ!』

 

 俺の言葉に、この場にいる誰もが驚愕する。上空にいるイッセーも含めて。

 

「イッセーは君と違って、特別な力は持ってない極普通の一般人と変わらん。聖書の神(わたし)が彼の家族として人間に転生し、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が宿っていなければな」

 

「そう。もし、聖書の神(あなた)との関わりや赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)がなければ、兵藤一誠は今ごろ極普通の男子高校生として過ごしていた。何とも残酷な運命だ」

 

「それはどう言う意味だ?」

 

 ヴァーリは哀れむような感じで言ってくる。

 

「彼が俺のように特別な存在であったら、この場で俺を倒せていたかもしれない。いかに聖書の神(あなた)に鍛えられ強くなったとはいえ、こうも才能(スペック)に差があり過ぎては勝敗が目に見えてる」

 

 暗にイッセーは自分に勝てないと言ってるな。

 

「テメエ!」

 

 ヴァーリの台詞に頭に来たのか、イッセーは突撃してアスカロンを振り翳そうとする。

 

 だが――

 

「遅い」

 

「がっ!」

 

 イッセーの斬撃を簡単に避けたヴァーリは、すぐに反撃に転じてイッセーの腹部に拳を当てた。そしてすぐに両手を組んだまま翳し、イッセーの頭部目掛けて振り下ろす。

 

「ごあっ!」

 

 

 ダァンッ!!

 

 

 ヴァーリの攻撃をモロに喰らったイッセーは落下し、受身も取れないまま地面に激突してうつ伏せに倒れる。

 

 奴め、イッセーの力を図ろうとする為に防御と回避に専念してたな。さっきのやり取りでイッセーの実力をある程度分かって、反撃に徹したと言ったところか。

 

「イッセー!」

 

「待つんだ、リアス!」

 

 いつの間にか地上に降りていたリアスは倒れてるイッセーに駆け寄ろうとするが、近くにいたサーゼクスに止められる。

 

「これで分かって頂けたか、聖書の神? どんなに彼を強くさせたところで所詮は普通の人間。例え禁手(バランス・ブレイカー)に至ったところで、俺と彼では圧倒的な差がありすぎる」

 

 地味に嫌なところを突いてくるなぁ。

 

 もしイッセーがヴァーリみたく特別な存在だったら、()っくに禁手(バランス・ブレイカー)に至って、今頃はヴァーリを倒せていただろう。

 

 だが特別な存在でもない一般人として生まれた為に、イッセーは禁手(バランス・ブレイカー)に至る領域に達してないばかりか、ヴァーリとの実力差が未だに大き過ぎて倒す事が出来ない。

 

 ドラグ・ソボール風に言うなら、ヴァーリが超エリート戦士のベジターで、イッセーが下級戦士のカロカット――空孫悟、と言うヤサイ人の戦闘シーンだ。

 

「ヴァーリ、さっきから好き勝手言いやがって……!」

 

 すると、地面に激突して倒れていたイッセーが立ち上がって憤怒の表情となっていた。

 

「こっちも言わせて貰うがよぉ! 俺みたいな一般人(おちこぼれ)だって必死に努力すりゃ、そのうちテメエみたいな特別な存在(エリート)を超えるかもしれねぇぞ!?」

 

「面白い冗談だ。努力だけでは超えられない事を先程の反撃で教えたつもりなんだが?」

 

「生憎、俺はバカだからな。たかが1~2発程度当てられただけじゃ分かんねぇんだよ!」

 

 ……全く、実にイッセーらしい台詞だ。

 

 でも確かにイッセーの言うとおりでもある。どんなに才能が無かろうと、必死に努力すれば報われるのを俺は知っているからな。

 

 とは言え、今の状況では確かにヴァーリに勝つのはかなり難しいが、決してゼロではない。

 

「ドライグ! 俺はあの野郎のすまし顔を絶対一発ブン殴るって決めたぞ!」

 

『ああ、俺も丁度頭にきていたところだ。血筋だけで決め付けようとする白龍皇に、相棒の力を見せてやれ!』

 

 イッセーに協調するようにドライグが頷く。どうやらドライグもヴァーリの発言に相当キレかけていたようだな。

 

 ドライグは当初イッセーを全く才能のない宿主と見ていたが、聖書の神(わたし)が課した修行を必死に頑張り続けるイッセーを見て、今までの宿主達とは違う絆が生まれていた。勿論、良い意味の方で。

 

「はぁぁぁぁあああああ~~~~~!!!!」

 

 

 ドンッ!!

 

 

 イッセーの全身から再び赤い闘気(オーラ)が吹き荒れる。ついさっきまで解放していた闘気(オーラ)とは桁違いだ。ヴァーリが上から目線で血筋を持ちかけられた上に『自分には勝てない』と言われて、相当頭に来たんだろうな。

 

「――っ。見ろ、アルビオン。兵藤一誠の力がまた一段と上がったぞ。怒りと言う単純明快な引き金だが、これは……少しばかり甘く見すぎていたようだな」

 

神器(セイクリッド・ギア)は単純で強い想いほど力の糧とする。兵藤一誠の怒りは純粋なほど、おまえに向けられているのさ。やつみたく真っ直ぐな者ほど、ドラゴンの力を引き出せる心理の一つだ』

 

「なるほど。そういう意味では俺よりも彼の方がドラゴンと相性が良いわけだ。コカビエルが負けるのも当然か」

 

 余裕そうにイッセーを分析しているヴァーリだが――

 

「テメエ、なに余裕こいてんだよ」

 

「っ!?」

 

 超スピードで接近したイッセーに気付かず――

 

 

 ドゴッ!! バキィッ!! 

 

 

「がぁっ!」

 

 腹部にイッセーの膝蹴り+顔面にストレートパンチを貰ってしまった。それらを喰らったヴァーリはイッセーから距離を取ろうとすぐに後退する。

 

 不意打ちとは言え、あの白龍皇に攻撃を当てた事にリアス達は驚愕を露にしている。

 

「くっ……! 闘気(オーラ)だけじゃなく、スピードとパワーも上がっていたのか……!」

 

「ヴァーリ、俺から一つ忠告しといておくぜ。テメエはよ……自分の強さに自信があり過ぎるんだ。その所為で隙だらけなんだよ」

 

「………それはどうも」

 

 否定する事が出来なかったのか、ヴァーリはイッセーの忠告を素直に受け入れていた。

 

 そして二人は構えてオーラを放出し――

 

 

 ドゥンッ! ドガガガガガガガッ!!

 

 

「ハァァアアアアア~~!!」

 

「ウオォォォォオオ~~!!」

 

 拳と脚を使った攻防が始まった途端、その周囲から凄まじい衝撃波と突風が吹き荒れた。

 

 今代の赤龍帝VS白龍皇の戦いが、この駒王学園で本格的に始まろうとしている。




あと数話で完結することが出来れば良いんですが……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。