ハイスクールD×D ~復活のG~   作:さすらいの旅人

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第四十五話

「ったく、本当にとんでもねぇ奴だな。もしカテレアが見てたらどうなってたか」

 

 隆誠がラディガンに無数の光の槍と光の剣で追撃し、巨大な爆発を発生させたのを見ていたアザゼルはそう呟く。

 

 アザゼルが呟いたカテレアはもう既にいない。彼女は人口神器(セイクリッド・ギア)禁手化(バランス・ブレイク)したアザゼルによって既に倒され消滅されていたから。

 

 倒した代償と言うべきか、アザゼルの左腕が無くなっている。理由はカテレアが死ぬ寸前にアザゼルを道連れにしようと、触手と化した腕をアザゼルの左腕に巻きつき、自爆式の術式を施そうとしていた。それを防ぐ為にアザゼルは何の迷いもなく左腕を切り落とした後、カテレアを光の槍で貫いて塵と化し消滅。

 

 片腕を失った事に何の未練もないアザゼルは、禁手化(バランス・ブレイク)が解除されて宝玉に戻った事に舌打ちをしていた。アザゼルにとっては自分の腕より、人口神器(セイクリッド・ギア)の方が大事だったんだろう。もう少し改良しようと思った矢先、隆誠の追撃を見た瞬間、人口神器(セイクリッド・ギア)の事はもう後回しとなっていた。

 

 因みに隆誠の追撃に驚いていたのはアザゼルだけでなく、地上にいるサーゼクス達も言葉を失っていた。特にミカエルは隆誠が放った光の槍と光の剣を見て何を思ったのか、ずっと隆誠を注視している。

 

「ん? ヴァーリ……?」

 

 魔術師の相手をしてるヴァーリが、そのまま隆誠がいる方へと向かっていくのを視界に入ったアザゼル。

 

「まさかアイツ……!」

 

 隆誠へ接近する事に嫌な予感がしたアザゼルはすぐに駆けつけようとした。

 

 

 

 

 

 

「兵藤隆誠、よくも……!」

 

「大分効いたらしいな。随分と体力が落ちてるじゃないか」

 

 爆発による大量の粉塵と煙の中からボロボロ状態となってるラディガンが浮遊しながら現れた。俺の追撃がかなり効いたのか、身体の殆どは傷だらけで、黒い翼も本当に飛べるのかと疑問を抱くほどのボロボロだ。

 

 予想外の攻撃を受けた所為か、ラディガンは端整な顔を歪ませ歯軋りしていた。

 

「どうやらアンタの敗北が近いようだな」

 

「敗北、だと? ふざけるな! 私の力は人間風情の貴様などに負けはしない!」

 

「その驕りがアンタの敗因なんだよ。ラディガン、アンタはエリーから俺の力の事を訊かなかったのか? 俺が撃つ光の攻撃には気をつけろって」

 

「……何を言うかと思えば、貴様の光など所詮は天使や堕天使の真似事――」

 

「だったら、そのボロボロになった羽を魔力で治してみろよ。出来るものなら、な」

 

 真似事と言ってくるラディガンに、俺は自慢の羽を治すよう促した。

 

「ふざけた事を……この程度の傷など……っ!」

 

 奴は俺の言葉を挑発と思ったのか、自身の魔力を使って傷を治療しようとする。だが奴の羽は一向に治る気配がなかった。

 

「ば、バカな! 何故元に戻らない……!?」

 

「悪魔にとって光は猛毒だが、俺のはちょっと特別性でな。一度喰らったら治療出来ないどころか、徐々に悪魔(おまえ)達の体を蝕んでいくんだよ。まぁ時間を掛ければ治す事は出来るが」

 

 聖書の神(わたし)の光は他の天使や堕天使と違い、悪魔を滅する事に特化している。例えば並みの下級悪魔が聖書の神(わたし)の光を受ければ、凄まじい激痛と同時に徐々に全身を蝕まれながら死に至る。

 

 因みにエリーは俺と戦う際、俺が放つ光の攻撃は必ずと言っていいほど回避に専念しようとする。それでも受ける時は防御結界で必要最低限のダメージで済ませていたが。

 

「これはまだエリーに教えてないが……俺は人間でありながら聖書の神の力と記憶を受け継いでいるから、この力を使う事が出来るんだ!」

 

「っ!?」

 

 聖書の神(わたし)の名を告げた途端、ラディガンは驚愕を露にする。そりゃそうだ。いきなり聖書の神(わたし)が出るなんて予想もしないだろう。

 

「せ、聖書の神だと? 何をふざけた事を……。例えそれが本当であったとしても、脆弱な人間である貴様が扱えるわけがなかろう! そして変身し、真の力を発揮できる私に敵う訳がない!」

 

 口ではそう言っても、ラディガンからは少しばかり焦りが出始めていた。俺の台詞が冗談だとしても、悪魔にとって聖書の神(わたし)は最悪な単語だからな。

 

「貴様のような下等生物(にんげん)に、これ以上私のエリーを近づかせてなるものかぁぁーーー!!!」

 

 全身から魔力を発しながら猛スピードで俺に接近してくる。

 

「人間は無限の可能性を持つ種族だ! 舐めるなぁぁーー!!」

 

 

 ドガガガガガガガガガッ!!

 

 

 接近してきたラディガンに対抗するように咆哮しながら、腕と脚を使った攻防を凄まじい速度で繰り広げる。

 

 

 ドンッ! バキッ! ドガッ! ガスッ!

 

 

「ぐっ!」

 

「ゴッ!」

 

 互いに一歩も譲らず、自分の身体を気にしないように攻撃を繰り広げる俺とラディガン。

 

 この攻防で周囲に凄まじい衝撃や突風が吹き荒れるも、俺達は気にしない。今はただ目の前のコイツを倒すだけしか考えていないから。

 

 加えて今の俺の両拳には聖書の神(わたし)の光を纏わせてる。純血種の悪魔であるコイツにとっては最悪な攻撃だ。

 

「っ!」

 

 すると、光を纏った俺の拳がラディガンの右肩に攻撃すると、奴は動きが一瞬止まって顔を歪ませた。

 

「おらおらおらおらぁぁーーー!!」

 

「ごあっ!」

 

 その隙を突くように俺は空かさず拳の連続攻撃をラディガンの当て続け――

 

「はぁぁぁあああっ!!」

 

 

 ズムッ!!

 

 

「あ…………あぐ………」

 

 渾身の力を込めた右拳をラディガンの腹部を貫いた。それによりラディガンは血を吐きながらも抵抗するように、腹部に突き刺さってる俺の腕を抜こうと掴んでいた。

 

 だが奴はさっきの追撃を受けただけでなく、俺の光の拳を何度も喰らい続けた事によってかなり弱っているので無駄な抵抗だった。

 

「これで――」

 

「ま、待つのです、兵藤隆誠……。わ、私はカテレアに命令されただけで……ど、どうかここはお見逃しを……!」

 

 死にかけとなってるラディガンが命乞いをしてきた事に、俺はとても不愉快な気分になった。同時にコイツに対する評価もガタ落ちだ。

 

「呆れた奴だ。さっきまで俺を殺そうとしておいて、勝手な事を抜かすな!」

 

「がっ……! で、ですが、愛しい妹のエリーが……! わ、私が死ねば、あの子は……」

 

 ここでエリーの名前を出したところで俺は見逃す気はない。いくら大事な家族がいるとは言え、勝手な言いがかりをつけた挙句、何の話し合いもせずに殺そうとした悪魔(てき)聖書の神(わたし)は許す事など出来ない。

 

「そ、そうだ……。確か貴方は、私と同じく妹を愛する同志でしたね……。妹の愛し方を私がお教え――」

 

「“終末の光”よ」

 

 

 カッ!

 

 

「が、ぐ、ぐ、ご……がぁぁぁぁ~~~~!!!!」

 

 ラディガンの口から非常に不愉快な台詞を聞いた瞬間、俺は奴の体内に終末の光を大量に注ぎ込んだ。

 

 その結果、奴の身体は崩壊して聞くに堪えない悲鳴をあげながら消滅していった。

 

「生憎だが、外道なアンタと違って大事な妹分(アーシア)を穢す気はない。聖書の神(わたし)はあの子を守ると誓ったんでね。アンタの歪んだ愛なんか真っ平御免だ」

 

 そう吐き捨てた俺はラディガンの血で汚れた片手を、ズボンのポケットに入ってるハンカチで拭き取る。

 

 そんな中、ラディガンが死んだのを確認したイッセー達がコッチへ向かってきた。

 

 俺はすぐにイッセー達の方へ視線を向けると――

 

「兄貴、後ろだ!!」

 

「っ!」

 

 

 ガッ!

 

 

 イッセーが発言した直後、すぐに気付いた俺は背後から仕掛けてきた攻撃を振り向かないまま片腕で防いだ。

 

 防いだ俺はすぐに後ろを振り向くと、そこには白龍皇のヴァーリがいる。言うまでもなく、コイツが俺に攻撃をした張本人だ。

 

「………どういうつもりだ、白龍皇?」

 

 俺が睨むように目を細め、更に声を低くして問う。だがヴァーリは大して気にしてないのか笑みを浮かべている。

 

「まさかとは思うが、今すぐこの場で俺と戦いたいとか抜かすんじゃないだろうな?」

 

「そうだ、と言ったらあなたはどうする?」

 

 ……コイツ、本気のようだな。

 

「ヴァーリ! テメェ、兄貴に何してやがる!?」

 

 すると、闘気(オーラ)を纏ったイッセーが加勢するように猛スピードで駆けつけながら、そのままヴァーリへ攻撃しようとする。

 

 だがヴァーリはすぐに俺から離れ、イッセーの攻撃を簡単に躱して距離を取った。

 

「念の為に訊くけど、大丈夫か?」

 

「当たり前だ。俺があの程度の攻撃で参るわけないだろうが」

 

「まぁ、そりゃそうだな」

 

 問題ないと言い返す俺に、イッセーは苦笑しながらもすぐにヴァーリの方へと視線を移す。

 

「で? 何で兄貴はヴァーリに狙われたんだ?」

 

「知るか。寧ろコッチが知りたい位だ。けれど、奴がこのタイミングで仕掛けてきたと言う事は――」

 

「おいおい、この状況下で反旗か、ヴァーリ」

 

 俺が言ってる最中に、片腕を失ったアザゼルがコッチに駆けつけながらヴァーリに話しかけた。さっきまで感じていたカテレアの魔力が突如消えたのは、コイツが倒したんだろうな。

 

 因みにアザゼルの他にリアス達、魔術師達を粗方倒した祐斗とゼノヴィア、そして戦いを見守っていたサーゼクス達も駆けつけていた。

 

 アザゼル達が来たにも拘らず、ヴァーリは不利な様子を見せないどころか大して気にしてない感じだ。どこにあんな余裕があるのやら。

 

「悪いな、アザゼル。コッチの方が面白そうなんでね」

 

 ヴァーリの台詞から察するに、どうやら奴が裏切り者のようだ。

 

「そうかよ。なぁヴァーリ、二つほど訊きたいんだが」

 

 アザゼルはヴァーリの裏切りを予想していたのか、再度尋ねようとする。

 

「ウチの副総督のシェムハザが、三大勢力の危険分子を集めている集団の存在を察知していた。禍の団(カオス・ブリゲード)、と言ったか?」

 

 禍の団(カオス・ブリゲード)だと? って事はヴァーリの奴、あの組織に入ったのか?

 

「で、その纏め役が『無限の竜神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィス。まさか『白い龍(バニシング・ドラゴン)』がオーフィスに降るとはな」

 

「それは違う。確かに俺はオーフィスと組んだ。だが俺もアイツも覇権だの世界だのに興味はない。俺は兵藤隆誠を含めた強い奴と戦うため。そしてオーフィスはある目的の為、そこにいる兵藤隆誠の力を借りようと勧誘しているだけだ」

 

「オーフィスが兵藤隆誠を?」

 

 ………あ、やばい。何か段々嫌な予感がしてきた。

 

 ヴァーリの台詞の中に聞き捨てならないのがあったのか、アザゼルは再度尋ねようとする。

 

「どう言う事だ? 何故お前達が揃ってコイツを気に掛けている? お前は別として、オーフィスから見たらコイツは取るに足らない存在の筈だ」

 

 アザゼルの言うとおり、俺の力ではオーフィスの相手にならない。それだけ力の差は歴然としている証拠だ。当然、俺はそれを理解してるから何も言い返さない。

 

「兵藤隆誠。あなたは会談の時に、『自分は聖書の神の力と記憶を受け継いだ』と言っていたな」

 

「……何が言いたい?」

 

 ヴァーリがあんな事を訊いてくるって事は――

 

「作り話なんかせず、そろそろ正体を明かしたらどうだ?」

 

 ………マジでやばいぞ。コイツ、俺の事を知ってやがる! オーフィスの奴、ヴァーリに聖書の神(わたし)の事を話したな!

 

「何を訳の分からない事を……」

 

「オーフィスから聞いているぞ、兵藤隆誠……いや、人間へと転生した『聖書の神』と呼ぶべきか?」

 

「っ!?」

 

 ヴァーリが聖書の神(わたし)の名を口にした途端――

 

『…………………は?』

 

 この場にいる一同が言葉を失うように俺を見ていた。




やっと神バレ展開に持っていくことが出来ました。

と言っても、かなり無理矢理感がある神バレですが。

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