ハイスクールD×D ~復活のG~   作:さすらいの旅人

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第四十一話

「アザゼル様。先程の制御の腕輪をギャスパーだけじゃなく、イッセーに差し上げた理由をお聞きしても良いですか?」

 

 イッセーとリアスが転移した後、俺はアザゼルの真意を尋ねる。

 

 さっきアザゼルがイッセーに渡した腕輪は力を制御するだけじゃなく、対価の代わりになってくれる代物。そんな便利なアイテムをイッセーに渡すには、何か裏があるんじゃないかと俺は勘繰っていた。

 

「大した理由はねぇよ。万が一に為に渡しただけだ。安心しな、アレぐらいで貸しを作るなんてことはしねぇからよ」

 

 アザゼルは苦笑しながらも裏は無いと言ってくる。

 

 嘘を吐いてないのは分かるが、それでもつい疑ってしまう。聖書の神(わたし)の息子の中で、アザゼルはかなりの曲者だし。

 

 けれど、あの腕輪は正直ありがたい。イッセーが使う龍帝拳は、出力を上げれば上げるほど身体に掛かる負担が大きくなる。

 

 俺としては腕輪無しでこなしてもらいたいが、今の状況ではそうも言ってられない。アザゼルの言うとおり、万が一の事が起きたら後々後悔する事になってしまう。

 

「……一先ずは感謝します」

 

「なに、気にすんな。まぁその代わりといっちゃなんだが、この騒動が終わった後、後でゆっくり話を聞かせてくれ。ついでにおまえさんとは個人的に色々と聞きたい事があるからな」

 

 ……ったく、食えない奴だ。イッセーの事を考えただけじゃなく、俺と話をする為の確約も含まれていたか。

 

 ま、仕方ないか。イッセーが腕輪を受け取ってしまった以上、こっちとしてもそれなりの態度を示さないと。

 

「分かりました。では後で必ず」

 

「おう、出来ればお前さんとは個人的な会談を――」

 

「アザゼル、この状況でそう言うことをするのは止めてもらえませんか?」

 

「全く。貴殿は本当に油断も隙もないな」

 

 アザゼルが確認を取ろうとしてると、少し怖い笑みを浮かべてるミカエルが割って入った。更にはサーゼクスも若干顔を顰めながらアザゼルを睨んでいる。

 

「まぁまぁお二人とも、そう目くじらを立てないで下さい。アザゼル様がこう言うのはちょっとした理由が――」

 

 

 カッ!

 

 

 ミカエルとサーゼクスを宥めようとする俺だったが、突如魔法陣が現れた。

 

 あの魔法陣は確かレヴィアタンの筈だ。現魔王のレヴィアタンであるセラフォルーはこの場にいる。そう考えると、アレは旧魔王のレヴィアタンの魔法陣か。

 

 魔法陣から現れたのは、一人の女性。胸元が大きく開いており、深いスリットの入ったドレスに身を包んでいる。更には女性の従者なのか、全身を外套で覆った悪魔と思わしき者もいる。

 

「ごきげんよう、現魔王サーゼクス殿、セラフォルー殿」

 

 不敵な物言いで、女性はサーゼクスとセラフォルーに挨拶をする。

 

「あ、貴女がどうして此処に!?」

 

「先代レヴィアタンの血を引く者、カテレア・レヴィアタン……!」

 

 女性の登場にセラフォルーが驚き、サーゼクスが彼女の名を言う。

 

 やはりあの女は旧魔王のカテレア・レヴィアタンだったか。まさか此処で現れるとは。

 

 確か先の戦争で聖書の神(わたし)と同じく旧四大魔王が滅び、悪魔側は新しい魔王を立てようとした時に、旧魔王の連中が徹底抗戦をと最後まで唱えていたな。ソレを唱えていたのがあの女を含めた旧魔王の血を引く連中だ。

 

 当然、戦力が疲弊していた戦後の悪魔達は、旧魔王の連中を冥界の隅に追いやったそうだ。まぁぶっちゃけ、旧魔王の血を引く者達は後先考えない傍迷惑な連中と言える。種の存続が危ういのに何考えてるんだと、悪魔側の状況を調べた聖書の神(わたし)は物凄く呆れたよ。

 

 そこから先、種の存続を旨に新政権が樹立して、今の現四大魔王がいる。俺としては今の魔王達の方が好感持てるよ。特に我が同志であるサーゼクスとか。

 

 カテレアはサーゼクスとセラフォルーに挨拶をした後、手に持ってる杖を掲げようとする。

 

「世界の破壊と混沌を」

 

『っ!』

 

 そう言った直後、カテレアが掲げてる杖の先から魔力が玉の形となる。会議室を覆うほどの凄まじい爆発を起こして。

 

 

 

 

 

「三大勢力のトップが共同で防御結界……ふふっ。なんと見苦しい!」

 

 奴が起こした爆発を回避する為に、サーゼクスたち三大勢力のトップは合同で俺達を守る為に強固な結界を張っていた。

 

 俺は俺で爆発の瞬間、グレイフィアとセラフォルーと一緒に時間停止となっているアーシア達を即座に回収していた。間一髪だったよ。

 

 それを見ていたカテレアは優越感に浸るような嘲笑をしている。背後に控えてる悪魔の男は未だに黙っているままだが。

 

「どう言うつもりだ、カテレア?」

 

「そちらが行ってる会談の、正に逆の考えに至っただけです。神と魔王がいないのならば、この世界を変革すべきだと」

 

 その変革の為に俺達を始末するか。傍迷惑極まりないぞ。

 

「カテレアちゃん、止めて! どうしてこんなことを……!?」

 

 セラフォルーが説得しようとするが、カテレアは彼女を見た途端に憎々しげな睨みを見せる。

 

「セラフォルー、私から『レヴィアタン』の座を奪っておいて、よくもぬけぬけと!」

 

「っ! わ、私は……」

 

 気圧されたのか、セラフォルーが少々気弱な表情をするも、カテレアは気にせずに続けようとする。

 

 サーゼクス達は球状となってる結界を維持したまま、俺達を運ぶようにグラウンドへ移動させていた。カテレアと従者もそのまま追うようにグラウンドへ着地する。

 

「安心なさい。今日、この場で貴女を殺して、私が魔王レヴィアタンを名乗ります」

 

 旧魔王とは言え、サーゼクス達を前にしてよくもまぁ、あそこまで強気な台詞を言えるもんだ。セラフォルーを殺せる秘策でもあるんだろうか。

 

 俺がカテレアの台詞に内心呆れてると、アザゼルが呆れるように嘆息していた。

 

「やれやれ。悪魔共のとんだクーデターに巻き込まれたかと思ってたが」

 

「貴女の狙いは、この世界その物というわけですね?」

 

 ミカエルの問いにカテレアはすぐに頷いた。

 

「ええ、ミカエル。神と魔王の死を取り繕うだけの世界など必要ありません。この腐敗した世界を私たちの手で再構築し、変革するのです」

 

「――アホらし」

 

 旧魔王共の目的を聞いた俺は思わず呟いてしまった。

 

 それを聞き逃さなかったのか、カテレアは不快そうな表情で俺を睨んでくる。

 

「そこの人間、今何と言いました?」

 

「おや、聞こえてしまいましたか。これは失礼。貴女が余りにも下らない事を言ってたもんで、つい本音を漏らしてしまいました」

 

「下らない、ですって?」

 

「ええ、下らないです。それも余りに陳腐で酷すぎます。そんなんだから、貴女たち旧魔王は同じ悪魔達から冥界の隅に追いやられるんですよ。もうついでに言わせて頂きますが、貴女の台詞、一番最初に死ぬ敵役ですよ?」

 

「下等生物の分際で私たちを愚弄するか!?」

 

「ぷっ! ハハハハハハッ! 言うじゃねぇか、兵藤隆誠!」

 

 俺の台詞にカテレアが激昂してる中、突然アザゼルが腹を抱えながら大笑いする。それを見たカテレアは更に激怒する。

 

「アザゼル! あなたまで!」

 

「いやぁ、悪い悪い。だけどコイツの言うとおりだぜ、カテレア。おまえらのやる事は傍迷惑だ。レヴィアタンの末裔が聞いて呆れる」

 

「……いいでしょう! その下等生物と一緒にまとめて殺してあげましょう!」

 

 我慢の限界を超えたカテレアは、全身から魔力のオーラを迸らせる。

 

 だが――

 

「レヴィアタン様、あの人間は私にお任せ下さい。私が此処へ来たのは、レヴィアタン様も御存知の筈です」

 

「っ!」

 

 カテレアの背後でずっと黙っていた従者が割って入るように進言した。声からして男だ。

 

 突然の進言にカテレアは睨むも、従者を見て何か思い出したのか、諦めるように嘆息する。

 

「…………良いでしょう。ですが、決して殺さないように。あの下等生物は私自らの手で止めを刺しますので」

 

「畏まりました」

 

 従者が頷くと、すぐに俺を見てきた。まるで俺を目の仇のように。

 

「やっとお会いできましたね、兵藤隆誠。この時を待ち望んでいましたよ」

 

「は?」

 

 突然俺に話しかけてくる従者に、俺は思わず首を傾げた。

 

 ………と言うか、アイツ誰? 俺、あの悪魔とは全くの初対面なんですけど。

 

「何だ、兵藤隆誠の知り合いか?」

 

「いえ、全く」

 

 アザゼルの問いに知らないと首を横に振った。それを見た従者は苦笑する。

 

「でしょうね。ですが、私はあなたのことを知っています。殺したいほどに」

 

「俺はアンタの事なんか全く知りませんけどね」

 

 さっきから必死に思い出そうとしてるんだけど、あの男と会ったエピソードが全く無い。本当に誰なの?

 

「何か訳ありみたいだな。まあいい。カテレアは俺がやるから、おまえさんはアッチを頼んだぞ」

 

「えっ? ちょっと、それは――」

 

 俺が待ったを掛けようとするが、アザゼルは気にせず薄暗いオーラを放ちながらサーゼクスとミカエルに確認しようとする。

 

「サーゼクス、ミカエル、カテレアは俺がやる。手を出すんじゃねぇぞ?」

 

「…………カテレア、降るつもりはないのだな?」

 

 サーゼクスが最後通告をするも、カテレアは首を横に振った。

 

「ええ、サーゼクス。あなたは良き魔王でしたが、残念ながら最高の魔王ではない」

 

「そうか。残念だ」

 

 サーゼクスの言葉が引き金になったように、アザゼルとカテレアは即座に上空へと飛んだ。

 

「旧魔王レヴィアタンの末裔。『終末の怪物』の一匹。相手としては悪くない。ハルマゲドンとしゃれこもうか?」

 

「堕天使の総督如きが!」

 

 上空で二人から凄まじいまでのオーラが吹き荒れ、アザゼルとカテレアによる光の魔の攻防戦を繰り広げ始めた。

 

 祐斗達が驚いている中、俺は上空の戦いは気にせずに目の前の従者を見る。

 

「で? アンタは一体何者なんだ? 俺と戦うんだったら、先ずはその外套(マント)を取ってくれないか?」

 

「無論、そのつもりです。あなたを殺すために此処へ来たのですから」

 

 そう言って従者は羽織っている外套を勢いよく取り払う。そして外套が無くなると、従者は法衣らしき物を身に纏った男性悪魔だった。しかもかなり端整な顔立ちをした銀髪の悪魔。

 

 ………あれ? 何かあの悪魔、全くの初対面だけど何処かで見た事あるような気が。

 

「っ! 君はまさか!」

 

 従者を見たサーゼクスが驚いたように声を発する。

 

「サーゼクス様、あの悪魔を知ってるんですか?」

 

「……知ってるも何も、彼は――」

 

「自己紹介をしましょう。私はラディガン・アルスランド。我が最愛の妹――エリガン・アルスランドの兄です」

 

 ………おいおい、よりにもよってエリーのお兄さんかよ。ってか、アイツに兄がいたなんて初めて知ったぞ!

 

 あ~~、この先の事を考えると何か面倒な展開になりそうな気がする。


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