ハイスクールD×D ~復活のG~   作:さすらいの旅人

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今回はちょっとグダグダかもしれません。


第四十話

 ガタッ!

 

 

「あ、あなたが……神の力と、記憶を……!? ならばあの時の槍は……!」

 

 俺が発言した事によって誰もが驚いている中、ミカエルが慌てるように突然立ち上がる。普段から冷静沈着であるミカエルは無作法な行為は一切しないが、聖書の神(わたし)の名が出たらああなるのは無理もない。

 

 そんなミカエルの心情を察していたのかは知らないが、アザゼルはすぐに窘めようとする。

 

「落ち着け、ミカエル。神の名前が出た途端に取り乱すな。天使のトップがそんな事したら部下に示しがつかねぇだろ?」

 

「………失礼しました」

 

 アザゼルの台詞で一先ず落ち着いたミカエルは一同に謝りながら、再び席に着こうとする。さっきの行為を反省しているのか、何か言いたげな顔をしながらも黙していた。

 

 因みに悪魔側にいるゼノヴィアは何を考えてるのか、徐々に顔を青褪めていた。まぁ、大体の想像は付くが今は放置するとしよう。他にも後ろに控えてるアーシアからも何やらオーラに乱れが生じてるようだが、こっちも放置させてもらう。

 

「まさかここで神の名を出すとはな。どう言うことだ、兵藤隆誠? 何故ここで死んだ筈の神の名が出てくる?」

 

「隆誠くん、出来れば詳しく説明してもらいたいんだが」

 

 アザゼルだけでなくサーゼクスも問い質そうとしている。二人の行動は当然と言ってもいい。今回のトップ会談は『神の不在』を前提として進めているのに、それがいきなり聖書の神(わたし)の名が出たので、問い詰められずにはいられない。

 

 無論、こうなる事を予め想定していた。だからトップ会談が始まる前に嘘を混ぜた真実(つくりばなし)を考えておいたので、俺はそれを言おうとする。

 

「勿論ですよ。実は――ん?」

 

 俺が説明しようとする中、周囲の時間が突然止まった。いや、周囲と言うより学園全体と言った方が正しいか。

 

「あ、兄貴! これってギャスパーの時間停止じゃ……!」

 

「そのようだ」

 

 学園全体の時間が停止してる中、俺以外にも動ける者が何人かいた。

 

 ドラゴンの力で相殺したイッセーとヴァーリ。上位の力を持ったサーゼクス、セラフォルー、グレイフィア、ミカエルにアザゼル。そしてリアスと祐斗とゼノヴィアだ。

 

 祐斗とゼノヴィアは咄嗟に、それぞれの武器を出して時間停止の力を防いでいた。聖魔剣と聖剣の力によって相殺するために。因みにリアスは祐斗が時間停止から守ろうと手を掴んだ為に回避出来ていた。ナイスな判断だぞ、祐斗。

 

 かなりの人数が動けているが、動けない者も当然いる。アーシアと朱乃、ソーナと真羅だ。

 

「ほう。おまえさんが時間停止を受けても全く問題無いとはな……。どうやら神の力を受け継いだってのは強ち嘘じゃなさそうだ」

 

 感心するように言ってくるアザゼルに、俺は顔を顰める。

 

「そんな事を言ってる場合じゃないですよ、アザゼル様。今は――」

 

 

 ドォォォンッッ!

 

 

 外から突然の爆発音がした。更には新校舎も微妙に揺れている。

 

 俺達はすぐにガラス窓へ近づいてみると、駒王学園の上空に魔法陣が展開されていた。しかもそこからローブを着込んだ複数の魔術師が次々に現れてくる。人数はざっと百人以上いるだろう。

 

 そして魔術師達は学園に向かって魔力弾を放ってくる。それらによって学園のあらゆる所が爆発し、更には壊されていく。ソーナが見たら激昂しそうだ。

 

「魔術師共め、テロ行為とはやってくれる」

 

「全くよ。魔女っ子の私を差し置いて失礼な!」

 

 俺の台詞に同調するようにセラフォルーが魔術師を見ながら憤慨していた。

 

 どうでもいいことだがセラフォルー、お前のやってることが魔術師に対して失礼な事をしてるんだからな。多分言ったところで無駄だろうが。

 

「しかし、この力は……?」

 

 俺と同じく窓を見ていたミカエルが不可解そうに言う。

 

「恐らくですが、ギャスパーを強制的に禁手(バランス・ブレイカー)状態にしたんでしょうね。更に魔術師達が時間停止状態の空間でああも自由に動いているって事は、ギャスパーは奴等に捕まっていると思います」

 

「だろうな。ま、奴らのことだ。本当なら俺たちトップ陣も停めるつもりだったんだろうが、ハーフヴァンパイアの出力不足ってところか」

 

 いくらギャスパーの潜在能力が高くても、それに見合う力をギャスパー自身が出さなければ意味がない。魔術師達はそれを全く考慮してないのが証拠だ。

 

 ギャスパーが敵に利用されてると分かったリアスは、全身から紅いオーラを迸らせていた。

 

「私の可愛い眷族がテロリストに利用されるなんて……ッ! これほどの侮辱はないわっ!」

 

 リアス、取りあえず落ち着こうな。気持ちは分かるが、怒ったって事態は何も変わらないぞ。

 

 そんな中、外でトップ陣が警護で連れてきた天使、堕天使、悪魔達は時間停止したまま、魔術師達の魔術によって強制転移されている。

 

「この結界で転移魔術を使えるって事は、誰かがゲートを繋げていますね。逆にこっちの転移は封じられて使えませんし」

 

 動けないアーシア達を安全な場所へ移動させる為に転移術を使おうとしても、それが一切反応しない。

 

 アザゼルは俺の分析を感心そうに見ながらも同調するように嘆息する。

 

「ったく。こりゃ、やられたな」

 

「ええ。会談中に襲撃するタイミングといい、リアス・グレモリーの眷族を逆利用する戦術といい――」

 

「向こうがコッチの内情に詳しいって事は……案外、ここに裏切り者がいたりして」

 

 ミカエルの台詞を続けるように俺が言うと、『裏切り者』と言う単語を聞いた一同の顔が揃って強張った。

 

「隆誠くんの言うことに一理あるかもしれないが、とにかくこのままじっとしている訳にもいくまい。ギャスパーくんの力がこれ以上増大すれば、我らとて停められてしまうだろう」

 

 だろうな。元々神器(セイクリッド・ギア)の耐性が付いてる聖書の神(わたし)ならまだしも、いくら上位の力を持ってるトップ陣でもずっと防げられるものではない。

 

「取り敢えず魔術師達を倒す前に、先ずは旧校舎に捕まってるギャスパー、そして小猫の救出を最優先しましょう。それをどうにかしない限り、奴等の猛攻は止まりませんし」

 

「同感だ。ハーフヴァンパイアの小僧を何とかしねぇと、危なっかしくて反撃も出来やしねぇ」

 

 俺の提案にアザゼルが賛同し、サーゼクス達も同感だと言う様に頷いていた。

 

 しかし、此処から旧校舎へ向かうにしても、転移を封じられている状態じゃ少々時間を要する。向こうの事だからこっちがギャスパー達を救出しに行くことを見越して、迎撃措置を施していると思う。

 

 そう考えてると――

 

「お兄さま、私が行きます。旧校舎に未使用の『戦車(ルーク)』の駒を保管してありますので、それを使えば」

 

「『戦車(ルーク)』? なるほど、『キャスリング』か」

 

 ――ああ、その手があったか。

 

 キャスリングとは、『(キング)』と『戦車(ルーク)』の位置を入れ替えるチェスの特殊なルールだ。レーティングゲームに置き換えると、謂わば入れ替え転移だ。

 

 ゲートを通じなければ転移は使えないが、駒同士の入れ替え転移なら問題無く使える。リアスの提案は見事と言ってもいい。

 

 サーゼクスはリアスの名案を受け入れるが、少しばかり不安な表情をする。

 

「だが、リアス一人を送り込むのは……」

 

「ギャスパーは私の眷族です。私が責任を持って奪い返します」

 

 意思を曲げる事無く行こうとするリアスだが、それでもサーゼクスは首を縦に振ろうとしない。

 

「サーゼクスさまの魔力をお借りできれば、もう一方なら転移は可能かと」

 

「リアスと誰かか……」

 

 グレイフィアからの助言に、サーゼクスは誰と行かせようかと考えていたが――

 

「でしたらサーゼクスさま、俺も行きます!」

 

 突然イッセーが手をあげて進言した。

 

 まさか俺が言う前に先に言うとはな。イッセーにしてはやるじゃないか。

 

「俺が責任を持って部長をお守りしますので、どうか!」

 

「……君に任せよう。良いかな、隆誠くん?」

 

「全然構いません。寧ろ俺から頼むところでした」

 

 熱意が届いたのか、サーゼクスはイッセーをリアスの護衛として行かせることにした。

 

「そんなことをしなくても、テロリストごとハーフヴァンパイアを吹き飛ばせば簡単じゃないか? なんなら、俺がやってもいいぞ?」

 

「っ! テメェ!」

 

 場の空気をぶち壊すような発言をしたヴァーリにイッセーが激昂する。

 

 この発言に俺も少しばかり頭に来たので――

 

「白龍皇。そんなバカな事を仕出かしたら、俺は君を敵として処理させてもらうぞ」

 

「ふっ。それはそれで案外面白い――」

 

「おいおい、ちったぁ空気読めよヴァーリ。和平を結ぼうって時にコイツ等を敵に回すような発言はするな」

 

 俺と戦えるのを嬉しく思っていたヴァーリだったが、アザゼルが阻止するように割って入った。

 

「生憎、じっとしているのは性に合わないんでね」

 

「だったら外にいる敵を撹乱してくれ。白龍皇が出れば、奴らも少しは乱れるはずだ」

 

「……了解」

 

 アザゼルの指示にヴァーリは少し物足りなさそうな顔をしながらも、背中から蒼い光の両翼を展開する。

 

「――禁手化(バランス・ブレイク)

 

Vanishing(バニシング) Dragon(ドラゴン) Barance(バランス) Breaker(ブレイカー)!!!!!』

 

 機械的な音声の後、ヴァーリの体を真っ白なオーラが覆われる。その光が止んで、奴の体は白い輝きを放つ全身鎧(プレート・アーマー)に包まれていた。

 

 あの姿を見るのは二度目だな。あんな簡単に禁手化(バランス・ブレイク)出来るとは、奴の力はそれだけ脅威と言う証拠だ。

 

 ヴァーリは俺とイッセーを一瞥した後、会議室の窓を開き、すぐに空へ飛び出していった。

 

 その刹那、外で猛烈な爆発と爆風が起きた。それは言うまでもなく、魔術師の群れが禁手(バランス・ブレイカー)となってるヴァーリに蹂躙されているからだ。

 

 正に一騎当千と言うべきか。尤も、あの程度の魔術師共なら今のイッセーでも充分に倒せるが。

 

「強ぇ……! あの野郎、ああも簡単に禁手(バランス・ブレイカー)になれるのかよ……!」

 

 ヴァーリの実力に只管驚愕するイッセーに、俺は少しフォローする事にした。

 

「うん、確かに強いな。だがイッセー、決してお前の勝てない相手じゃない。後数年修行すれば、あそこまでの領域にいける。勿論、修行の難易度を更に上げなければならないがな。大丈夫、お前ならやれるさ。俺の弟だからな」

 

「何の根拠でそんなこと言うんだよ……」

 

 俺のフォローが大して効いてないのか、イッセーに呆れたような感じで嘆息された。

 

「おいおい、兄の言葉が信じられないのか? まぁそんな事よりも、早くギャスパーの救出に行ってくれ」

 

「お、おう……」

 

「ああ、ちょっと待ちな」

 

 ギャスパーの救出に行こうとするイッセーだったが、突然アザゼルが引き止めてアイテムを渡していた。

 

 そしてイッセーはリアスと一緒に、サーゼクスからの魔力を借りて『キャスリング』を行おうとする。

 

「イッセーくん、リアスを頼んだぞ」

 

「はい!」

 

 サーゼクスからの激励に、イッセーが力強い返事をする。

 

 その直後、魔法陣の上に立っているリアスとイッセーは転移して姿を消すと、代わりに『戦車(ルーク)』の駒が現れた。それはつまり『キャスリング』は成功したと言う意味だ。


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