ハイスクールD×D ~復活のG~   作:さすらいの旅人

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今回はちょっと文章がグダグダになってるかもしれません。


第三十五話

「よー、赤龍帝。あの夜以来だな。これでも気配を完全に消してたつもりだったんだがなぁ」

 

「気配は消しても、その無意識に垂れ流してるオーラも消さなきゃ意味ねぇよ」

 

 俺の指摘に浴衣を着てるアザゼルが苦笑しながら近づいてくる。

 

「それにしても、また少し腕を上げたみたいだな。前に会った時から、まだそんなに時間が経ってねぇ筈なのに、お前さんの兄貴は一体どんな修行させてんだ?」

 

「その質問をアンタに答える義理はねぇよ、アザゼル」

 

「こりゃ手厳しいな」

 

 さり気なく探ろうとしてくるアザゼルに俺はすぐに突っぱねるように言い返すも、当の本人は苦笑するだけだった。

 

 アザゼルと話してる中、ゼノヴィアと小猫ちゃんと匙は構え、アーシアも空気を察して俺の後ろに隠れる。

 

「ひょ、兵藤、なにそんな悠長に話しかけてんだよ!? そいつは堕天使総督のアザゼルなんだろ!?」

 

「慌てんな、匙。大丈夫だ。向こうは殺気どころか、戦闘する気配すら出してない。ってか、もしやる気だったら俺達はもうとっくに死んでる。だから構えを解け。ゼノヴィアに小猫ちゃんも」

 

「赤龍帝の言うとおりだぞ、下級悪魔くんたち。お前らが束になったところで勝負にすらならねぇよ。下級悪魔だってそれくらい分かってる筈だ」

 

 俺が解けと言っても匙達は全然構えを解くことは無かった。それだけ堕天使の言う事は信用出来ない証拠なんだろう。

 

 ま、俺も俺で堕天使にいい思い出は無いけどな。夕麻ちゃんこと堕天使レイナーレの件で。

 

「で? 一体何しに来たんだ? アンタは堕天使の頭なんだろ? トップ会談が近いってのに、こんな所でうろついてて良いのか?」

 

「ちょっと散歩がてら見学に来てな。お前の兄と聖魔剣使いはいるか?」

 

「どっちもサーゼクスさまに呼ばれていねぇよ」

 

「おいおい。聖魔剣使いはともかく、お前の兄もサーゼクスに呼ばれてんのかよ。それはちょっとルール違反じゃねぇか?」

 

 顔を顰めながら不満気に言ってくるアザゼル。

 

 どうやらアザゼルは祐斗より兄貴の方が重要のようだ。もしかしたらサーゼクスさまが兄貴を密かに勧誘してるんじゃないかと疑問を抱いてるんだろうな。

 

「安心しろ。今度やるトップ会談の打ち合わせで呼ばれただけだ。仮に勧誘なんてされても兄貴はすぐに断る。例えどんな高待遇な持て成しをされてもな」

 

「へぇ。随分と兄を信用してるんだな。家族の絆ってやつか?」

 

「兄貴は問題児の俺と違って優等生だからな。そこは弟の俺が保証する。信じる信じないはアンタの自由だ」

 

「……赤龍帝がそこまで断言するなら、勧誘の心配はなさそうだな」

 

 アザゼルの兄貴に対する疑念が消えたかどうかは分からないが、一先ずは俺の言葉に偽りはないと思って安堵した顔をする。

 

「前から思ってたんだが、堕天使総督のアンタは随分と兄貴を警戒してるんだな。そんなに気になるのか?」

 

「当然だろ。神器(セイクリッド・ギア)も使わないで天使の力を使う人間なんて俺は聞いたこともない。コカビエルが手負いだったとは言え、幹部クラスのアイツをあっと言う間に斃した奴だぞ? 更に不可解な事に、連行してきたアイツを見た際、堕天使としての力を失ってたどころか、当時の記憶すら無くなってる始末だ。これで気にならない訳がない」

 

 アザゼルの説明に俺を除くアーシアたちが凄く驚いていた。堕天使総督にここまで言わせるとは、流石と言うか何と言うか。

 

 そう言えば数日前に兄貴が、「もうコカビエルは堕天使としての力を振るうことは出来ない」って意味不明な事を言ってたんだが漸く理解した。アレはそういう意味だったんだと。

 

 あの戦いで、兄貴が俺のドラゴン波で傷を負ってたコカビエルを光の結界で包み込んでたな。その後には大爆発が起きて、全身ズタボロ状態のコカビエルと全く被害が及んでいない兄貴が出てきた。部長達が驚いてる中、俺は俺で大して疑問は抱いてなかった。いつもの事だと思ってたし。

 

「なぁ赤龍帝、お前の兄――兵藤隆誠は一体何者なんだ?」

 

「そんなの俺が知りたいぐらいだ。そう言う事は本人に訊いてくれ。ってか、用が済んだならもう帰ってくれないか? アンタがいつまでもここにいると、ゼノヴィア達の気が休まらないからさ」

 

「…………はぁっ。分かったよ。帰れば良いんだろ、帰れば」

 

 ずっと構えているゼノヴィア達を見たのか、アザゼルは苦笑しながらやれやれと言うように嘆息する。

 

「おっと、危うく忘れるとこだった。そこで隠れてるヴァンパイア」

 

 兄貴の話題を変えるアザゼルは、木陰に隠れてるギャスパーに声をかける。

 

 いきなりギャスパーに話しかけて何をするのかと流石に俺も警戒した。けれど、俺の杞憂だった。

 

 それどころかアザゼルはギャスパーの神器(セイクリッド・ギア)の危険性を教えるどころか、対策も教えてくれた。匙が使う神器(セイクリッド・ギア)――『黒い龍脈(アプソープション・ライン)』でギャスパーのパワーを吸い取れば暴走も少なく済むと。

 

 更には匙の『黒い龍脈(アプソープション・ライン)』の性能についての説明も丁寧にしてくれた。聞いてた匙はそれの性能を全く知らなかったようで、アザゼルは呆れていたが。どうやら匙の神器(セイクリッド・ギア)は五大龍王の一匹、『黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)』ヴリトラの力を宿してるようだ。匙も匙で結構凄い神器(セイクリッド・ギア)を持ってたんだな。多分兄貴は知ってるんだろうけど。

 

 あと、ギャスパーの暴走を抑える手っ取り早い方法として、赤龍帝(おれ)の血を飲ませれば良いらしい。ヴァンパイアであるギャスパーならではの方法だが、当の本人は血を飲む事に抵抗があるみたいけど。

 

「さて、俺の用件はもう済んだ。あとは自分たちで頑張ってくれ」

 

「ちょっと待てよ、アザゼル。二つ訊きたいんだが、何でそこまで俺達に助言をするんだ? 敵対してるはずの悪魔にそんな事するなんて普通おかしいだろ」

 

 去ろうとするアザゼルに俺が理由を尋ねると――

 

「それはな、俺の趣味だ」

 

 と、アッサリ答えた。

 

 趣味、ねぇ。趣味の為に態々悪魔に接近したってか? 何とも掴めない奴だ。

 

「で? もう一つは何だ?」

 

「聞いた話なんだが、アンタは堕天使総督の肩書きの他に変わった異名があるみたいだな」

 

「はぁ? 俺に異名なんか無いぞ」

 

「そうなのか? 俺はてっきりブレイザー・シャイニング――」

 

「おい待て赤龍帝! ちょっと向こうで話そうかぁ~!?」

 

 俺が中途半端な異名を言ってる最中、急に慌て始めたアザゼルは有無を言わさず強制的に森の中へと連れて行かれてしまった。

 

 因みにゼノヴィア達は突然過ぎる展開に、俺が連れて行かれることに呆然として動く事が出来ないようだった。

 

 

 

 

 

 

「でさ、ずっと余裕綽々と話していたアザゼルが急にすげぇ怖い顔して『それを一体誰に聞いた!?』って詰問されてな。あれはマジで死ぬかと思ったぜ」

 

「そ、それは災難だったな……。……く、くく……。で、その後は?」

 

「言い出したのが兄貴だと分かったら、こう伝えてくれってよ。『トップ会談が終わった後、個人的に訊きたい事があるから絶対逃げるなよ!?』だとさ」

 

「そ、そうか……」

 

 アザゼルが来た事をイッセーから聞いた俺――兵藤隆誠は笑いを堪えるのに必死だった。

 

 あ~、やばい。アザゼルが赤面しながらイッセーに問い詰めてる顔が容易に想像出来て、笑いが……!

 

 そう言えば以前、俺がアザゼルの恥ずかしい異名を口にしてる最中に言い直したんだった。

 

 …………でも考えてみれば、ちょっと不味いかもしれない。アザゼルの恥ずかしい異名は遥か昔の戦役時に付いたもの。それをアイツが聖書の神(わたし)の正体に感づかなければいいんだが。

 

 これは最悪の事態になるのを想定した方が良いかもしれないな。今回のトップ会談で俺が聖書の神である事がバレてしまうと言う最悪な想定を。

 

「………トップ会談が始まるまでに考えとかないとな」

 

「なに急にぶつくさ言ってんだ?」

 

「いや、何でもない。それより問題はギャスパーだな」

 

「……悪い。色々と試してみたんだが」

 

 話題を変えるように俺とイッセーは――

 

『ふぇええええぇぇぇぇえええんっっ!』

 

「「……はぁっ」」

 

 ギャスパーの部屋の扉前を見て嘆息した。

 

 どうやらイッセーはアザゼルの助言を受け、それを聞いてた匙も協力していたようだ。

 

 匙の神器(セイクリッド・ギア)でギャスパーの力を吸って制御させるも、当の本人が上手くコントロール出来ずに失敗。その結果、ギャスパーはめげてしまって再び自室に閉じこもってしまった。

 

「兄貴もギャスパーと接してた時もこうなったのか?」

 

「あの時は部屋の中だったから、それなりに良かったんだが……外に出そうとすると断固拒否されてな。アイツの性格と辛い境遇があった為に、あんまり強く出れなくてな」

 

 あそこまで臆病かつ引き篭もりになっているのには当然理由がある。それは本人から聞いた。

 

 ギャスパーは名門の吸血鬼を父に持つが、母が人間で妾だった為、ハーフヴァンパイアとして生まれた。

 

 吸血鬼は悪魔以上に血統を重んじる種族だから、ギャスパーは親兄弟から差別的な扱いを受けて育った過去がある。人間界ではバケモノ扱いされ、更に時間を止める能力を持った為に、ギャスパーの居場所は無かった。

 

 その辛い境遇は嘗て聖女から魔女へと烙印を押されたアーシアと似たものだ。それ故に俺はギャスパーをどうにかしようとしても、強制的にやらせようとはしなかった。少しずつ時間をかけて治そうと。

 

 ギャスパーに神器(セイクリッド・ギア)を与えるきっかけを作った聖書の神(わたし)が悪いのか、血統ばかり重んじる愚かな事をした吸血鬼達が悪いのか……どっちもどっちだな。

 

「なぁ、もし俺がギャスパーみたいな性格だったら絶対に容赦しねぇだろ?」

 

「なに当たり前な事を言ってるんだよ」

 

「あ、やっぱり」

 

 赤龍帝である(イッセー)が軟弱な性格だったら、聖書の神(わたし)の名にかけて一から徹底的に矯正してる。

 

「まぁそれはいいとして、だ。急にギャスパーの教育係を頼んで悪かったな、イッセー。今日はもう帰って良いぞ。後は俺が何とかする」

 

「………………」

 

 俺の台詞にイッセーは何か考えてるような顔をしていたが、一先ず気にしない事にした。

 

 元々俺がギャスパーを何とかしようと思って行動したんだから、その責任は取らないとな。これ以上イッセー達に負担を掛けさせるわけにはいかない。

 

 よし。そうと決まれば行動しますか。

 

「………兄貴、ギャスパーはもう暫く俺に任せてくれ。何とかしてみる」

 

「え?」

 

 ドアを開けようとする俺だったが、突然イッセーがそう言ってきた。

 

「何故だ? これは別にお前が責任を感じる必要はないぞ。元々は俺がやってることだし」

 

「兄貴や部長に任されても失敗しました、なんてみっともない事はしたくないんだよ。ここは弟の俺に免じて、もう少し時間をくれ。折角出来た男子の後輩だから、俺が何とかするよ。部長にもそう伝えといてくれないか? 頼む。この通り」

 

「…………」

 

 両手を合わせて俺に懇願するイッセーに、俺は思わず唖然としてしまう。

 

 ……………あのイッセーがこんな事を言うなんて珍しいな。明日は光の槍でも降るか?

 

 とまぁ、そんな冗談は置いといてだ。イッセーは何だかんだ言っても面倒見がいいからな。もしかしたら本当にギャスパーを何とかするかもしれない。

 

「………分かった。リアスには俺から伝えておく。任せたぞ」

 

「おう!」

 

 一先ずギャスパーについての報告をしようと、俺は転移を使ってリアスがいる場所へと向かった。

 

 その後、イッセーがどんな方法で説得したのかは知らないが、ギャスパーはイッセーを尊敬する先輩と認識するようになったようだ。

 

 全く。俺が少しずつ時間をかけてギャスパーを何とかしようとしてたのに、それを弟のイッセーがたった数日でどうにかするとは……。どうやら聖書の神(わたし)もまだまだのようだ。

 

 だけど一つ解せない事がある。何故ギャスパーは外に出ようとする度に穴が空いた紙袋を頭に被せているのかを。

 

 外に出ようとするのはいい心がけだ。けれど、あんな紙袋を被ったままでいると変質者として通報されそうなんだが……。………まぁ、ギャスパー本人が望んでやってるなら文句は言わないようにしておこう。

 

 ついでにもう一つイッセーから聞いたんだが、祐斗も意外とスケベらしい。まぁそれは男として普通だ。これでもし祐斗が女に一切興味無いとか言ったら、俺は今後祐斗との付き合い方を考えなければいけないし。特に男同士の同性愛を好んでいる一部の女子達とか。




次回はミカエルとの出会いです。

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