ハイスクールD×D ~復活のG~   作:さすらいの旅人

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第二十七話

 リアスから首脳会談をやると聞いて数日。三大勢力は色々と準備があるのか、この数日何の音沙汰も無い為に平穏な日常を過ごしていた。

 

 今日は土曜日で休みだが、やる事がある為にオカ研部員の俺とイッセーとアーシア、そして部長のリアスと一緒に登校している。途中でゼノヴィアとも合流し、五人で仲良く登校していた。

 

 因みに悪魔となったゼノヴィアは兵藤家の近くにあるマンションで一人暮らしをしている。最初は俺の家に住まわせて欲しいと言って少し焦ったよ。今はもうリアスとアーシアが兵藤家にホームステイしているからな。

 

 これ以上の入居者は流石に無理なので、ゼノヴィアはリアス経由で悪魔の息がかかったマンションに住む事となった訳だ。俺が無理と言った時、ゼノヴィアは残念そうな顔をしていたけど。

 

 さて、オカ研の俺達が何故学校にいるのかと言うと――

 

「うわ、すっげぇ(こけ)だらけ……」

 

「うふふ、去年使ったきりですもの」

 

「ほったらかし状態にも程があるだろ……」

 

 プール開きを行う前の掃除をする為だった。

 

 最初は何故俺達がやるんだとリアスに尋ねると、コカビエルの一件もあって今回はオカ研が担当する事になったそうだ。

 

 それを聞いた俺とイッセーは生徒会に対して凄く申し訳ない気持ちになった。学園を崩壊させた原因は俺たち兄弟なので、その後は一切文句を言わずに納得したよ。

 

 けど納得したとは言え、この惨状は余りにも酷すぎだ。プールの水はほったらかしによって腐敗し、壁部分には大量の苔がへばり付いている。掃除するにも一苦労だ。

 

「リューセー、文句は受け付けないわよ。昨日も言ったけど、ここを掃除したらオカルト研究部が先にプール開きしていいって言われてるんだから」

 

「へいへい、分かってるって」

 

 リアスがプールで自慢の水着をイッセーに披露したいのもよく分かってるよ。などと言ったらどんな反応をするだろうか。

 

「よっしゃ! プール掃除頑張るぜ! ぐふふ……」

 

 イッセーはイッセーで何やら卑猥な事を考えてるのか、顔がにやけていた。多分リアスや朱乃の水着姿を考えてるんだろう。

 

「……イッセーさん、エッチなことを考えてますね?」

 

 アーシアが涙目でイッセーの頬を引っ張った。それでもイッセーはにやけ顔を止めてはいないが。

 

「あ、あーひあ、俺は別に……ぐっ!!」

 

『っ!』

 

 頬を引っ張られてたイッセーが突然苦しむような声を出した。突然の事に俺達はすぐにイッセーを見る。

 

「す、すみませんイッセーさん!」

 

 イッセーの異変に頬を引っ張ってたアーシアがすぐに止めて謝ろうとする。

 

「違う、違うんだアーシア……。原因はこれだ」

 

 アーシアの所為じゃないと言いながら、イッセーは自身の左腕を見せる。その腕は中途半端とも言えるドラゴンの腕だった。

 

「あらら、またか」

 

 原因が分かった俺はすぐにイッセーの左腕に触れて、光のオーラを送り込もうとする。ドラゴンとなりかけているイッセーの左腕は徐々に元の人間のものへと戻っていく。それを見たイッセーやリアス達も安堵の息を吐いた。

 

「悪い兄貴、また迷惑かけちまって」

 

「これぐらい気にすんな」

 

 イッセーはコカビエルと戦ってた時、四倍龍帝拳を使おうと対価としてドライグに腕を差し出した。その為、イッセーの左腕は人間からドラゴンの物へと変貌している。

 

 その腕では日常生活に支障をきたすので、ドラゴンの力を散らそうと俺が能力を使って人間の腕に戻していた。けれど、あくまで一時的に散らしているだけに過ぎないので、俺はある方法を考えた。

 

 それは定期的に直接イッセーの体から吸い取るやり方。流石に兄の俺がやると色々問題だらけの為、リアスと朱乃にやってもらうよう頼んだ。当然二人は即行でOKしてくれた。と言うよりリアスと朱乃は自分から志願してたけど。

 

 上級悪魔のリアスと、リアスの眷族である『女王(クイーン)』の朱乃なら問題無く吸い取る事が出来る。因みに吸い取る方法は、ドラゴンの腕となってるイッセーの指から気を吸いだすこと。傍から見たら卑猥な光景だったが。

 

 ともあれ、その行為のお蔭でイッセーの腕は常に人間の腕に戻っている訳だ。俺としては非常に大助かりだよ。

 

 だがここ最近、イッセーの腕は突然ドラゴンの腕に変貌する回数が増えていた。原因は分かる。恐らく堕天使総督のアザゼルと会ったからだと思う。と言うか、イッセーがアザゼルに会った以降からイッセーの腕が変貌する回数が増えてる。

 

 最強クラスの力を持ったアザゼルと会ってしまえば、ドラゴンと化したイッセーの腕が反応するのは当然とも言えるだろう。ドラゴンは力を呼ぶ存在だからな。

 

 しかし流石に今のままでプール掃除をさせると、またイッセーの腕がドラゴンになってしまう恐れがある。そうならないよう、今回はいつもより早めに手を打っておくとしよう。

 

 確か今度の担当は朱乃だったな。

 

「朱乃、悪いが掃除する前にイッセーのドラゴンの気を吸い出してくれないか?」

 

「うふふ、イッセーくんの為でしたら、喜んでやらせて頂きますわ♪」

 

 俺が頼むと朱乃は嬉しそうな顔をしながら受け入れてくれた。

 

「……朱乃、随分と嬉しそうね」

 

「あらあら、別にそんなつもりはございませんわ。これは人命救助ですもの」

 

「……とてもそうには見えないわよ」

 

『…………………』

 

 何やらリアスと朱乃から不穏な空気を醸し出していたので、俺達は声を掛けずに準備をしようと一旦更衣室へと向かった。

 

 ……はぁ、女と言うのは本当に恐いな。特に男絡みの事となると。

 

 

 

 

 

 

 さて、イッセーの処置とプール掃除がやっと終わって何よりだ。

 

 しかしプール掃除はともかく、問題はイッセーの処置だったな。

 

 掃除中にリアスがイッセーと朱乃がいる更衣室をチラチラと見てて、結局心配になって見に行った後は凄く不機嫌な顔してたよ。朱乃は一体何やらかしたんだか。

 

 それはそうと、オカ研の俺達は掃除が終わった後に水着に着替え、プールで泳ごうとしている。

 

 因みに女性陣の水着はリアスと朱乃がビキニ、アーシアと小猫はスク水だ。ゼノヴィアはまだ着替えてるのか、まだ此処へ来てないからどんな水着かは分からない。

 

 リアス達の水着姿にイッセーは言うまでもなく大興奮していた。特にリアスと朱乃の姿を見て。アーシアと小猫に対しては優しい兄のような感じで見ていたが。

 

 そして今――

 

「はい小猫。いち、に、いち、に」

 

 俺は小猫の手を持って、彼女のバタ足練習に付き合っている。

 

 何でも小猫は泳げないらしく、リアスから俺に泳ぎの練習相手になって欲しいと頼まれた。

 

 当の本人は「ぷはー」と時折息継ぎをしては、一生懸命にバタバタと足を動かしている。頑張っているな。

 

 あと他に――

 

「いち、に、いち、に。よし、その調子だぞアーシア」

 

「はい!」

 

 イッセーはアーシアの泳ぎ練習に付き合っている。

 

 理由はアーシアも小猫と同様に泳げなく、イッセーがレクチャーしていた。

 

 兄弟揃って女の子に泳ぎの練習相手をしてるとはな。これでもし小猫やアーシア狙いの男子が見たら、嫉妬に狂って殺されること間違いないだろう。例えそうなっても返り討ちにしてやるけど。

 

「ぷはー。……リューセー先輩、付き合わせてしまってゴメンなさい」

 

「気にしない気にしない。後輩の泳ぎの練習に付き合うのは先輩の務めだからね」

 

 イッセーの指導に比べれば全然大した事はない。寧ろこっちの方が楽しい。

 

 もし練習相手が向こうで悠々と泳いでいる祐斗だったら………一部の女子達は変な方向で誤解するだろうな。

 

「っと、端についたぞ」

 

 二十五メートルをバタ足で泳ぎきった小猫は勢い余って、俺にぶつかってしまった。それにより、小猫が俺に抱きついているような体勢になってしまったが。

 

「ほら小猫、ちゃんと前を見ないとダメだぞ。けどまぁ、ちゃんと泳ぎきったから良しとしよう」

 

「……リューセー先輩って、本当にイッセー先輩のお兄さんなんですか? 同じ兄弟なのに、全然違います」

 

「ははは。それはよく言われてるよ」

 

 クラスの連中からも『あれが本当に兵藤の弟なのか?』って何度も疑われたよ。イッセーは俺と違って真逆の行動をしていたからな。

 

 学園で俺は『模範生の兄』で、イッセーは『問題児の弟』と言う呼称だし。

 

「でも残念ながら俺とイッセーは正真正銘の兄弟だ。兄の俺は毎回愚弟の行動に頭を悩ましてるが、それでも大事な家族である事に変わりはないよ」

 

 そう言いながら俺は小猫の頭を撫でる。っと、いかんいかん。これはセクハラになるかな?

 

「すまなかったな、小猫。いきなり頭を撫でちゃって」

 

「……いえ、気にしてませんから」

 

 小猫は怒らないどころか、少し気持ち良さそうな表情をしていた。

 

 う~む、やはり小猫ってアーシアとは違う可愛さがあるな。何と言うか、娘にしたい感じだ。

 

「そっか。じゃあ気を取り直して、今度は補助無しで二十五メートル泳いでみな。慌てずゆっくりと泳ぐんだよ。もし泳ぎきったらご褒美として、アップルパイを作ってあげるよ」

 

「……頑張ります」

 

 コクンと頷く小猫は凄いやる気な感じだ。自分が大好きなデザートが賞品となれば、今まで以上にやる気が出るのは分かっていたからな。

 

「っとと! 大丈夫かアーシア!?」

 

「は、はいぃ、大丈夫です……イッセーさんに抱き付いちゃいました……」

 

 あっちはあっちで桃色空間丸出しだし。

 

 あれは泳ぎの練習と言うより、カップルがイチャ付いてるような光景にしか見えないんだが。

 

 もしあの光景を松田と元浜が見たら羅刹のように怒り狂って、何が何でもイッセーを殺しにいくだろうな。

 

 

 

 

 

 

「チキショ~~~!! また負けたぁ~~!!」

 

「はははははっ! 俺に勝とうだなんて百年早いぞイッセー!」

 

 小猫とアーシアの泳ぎ練習を終えた俺とイッセーは競泳をしていた。結果は言うまでもなく俺の勝ち。弟と言えど、勝負をする以上は負けられん。

 

 因みに小猫とアーシアは練習でコースを何週もしてしまった為に疲れて、今は二人揃ってプールサイドで休憩中だ。

 

 プールでの運動は陸上以上に体力を使う。運動があまり得意じゃないアーシアだけじゃなく、泳ぎに慣れてない小猫が休憩するのは無理もない。

 

 ついでに俺とイッセーが競泳をする理由は、ただ単にそれをやりたかっただけ。折角プールに来たんだから思いっきり泳がないとな。

 

 まぁ俺とイッセーが途轍もない速度で泳いでいた事に、リアス達は唖然としていたけど。

 

「おい兄貴、もう一回だ!」

 

「おう良いぞ。俺はいつでも受けて……ん?」

 

「これって部長の使い魔か?」

 

 再勝負を受けようとする俺だったが、突然赤いコウモリがイッセーの元へ飛来していた。それはイッセーの言うとおり、リアスの使い魔だった。

 

 イッセーもリアスの使い魔に気付き、視線を感じたのかリアスの方へと顔を向けていた。俺も見てみると、そこには手に小瓶を持っているリアスがいた。イッセーに向かって微笑みながら手招きしている。あと口元が静かに動いていた。『いらっしゃい』と。

 

「……悪い兄貴! 部長が呼んでるから勝負は預けるぜ!」

 

「はいはい」

 

 誘惑に負けたイッセーは即行でリアスのもとへ駆け寄った。あんだけ素早く動けるんなら、さっきの競泳でも出せば良かったと思うんだが……まあ良いか。

 

 丁度良い。ここいらで俺も休憩するとしよう。ついでにトイレにも行きたいし。

 

 そう思った俺はプールから上がり、そのままトイレへと向かって用を足そうとする。

 

 数分後、再びプールへ戻ろうとすると――

 

 

 バゴッ! バチバチッ!

 

 

「だいたい、朱乃は男が嫌いだったはずでしょう! どうしてよりによって私のイッセーに興味を注ぐのよ!」

 

「そういうリアスも前まで男なんて興味ない、全部一緒に見えるって言ってたわ!」

 

「イッセーは特別なの! 私だけのイッセーなの!」

 

「私だってイッセーくんは特別な男の子よ! やっとそう思える男の子に出会えたのだから、ちょっとぐらい良いじゃない!」

 

 …………何だこの光景は? 俺が少し目を離してる間に何があった?

 

 胸丸出しのリアスと朱乃が、全身に魔力を展開させながら睨みあってる。加えて共に魔力弾を放ってプールが戦場化してるし。

 

 因みにイッセーはいない。闘気(オーラ)を辿ってみると、イッセーはプールの用具室にいた。

 

 何でリアスと朱乃が喧嘩をしているのかをイッセーに聞く為、俺は気付かれないように用具室へと向かう。決して二人の喧嘩に巻き込まれたくないからじゃない。

 

 そして用具室に入って奥へ向かうと――

 

「イッセー、私を抱いてくれ。子作りの過程をちゃんとしてくれれば好きにしてくれてかまわない」

 

「ちょっ! ま、待ってくれゼノヴィア! いくら俺でもそんな事言われたら……!」

 

 ………こっちもこっちで妙な展開になってるし。

 

 胸丸出しにしてるゼノヴィアがイッセーを押し倒して子作りしようと迫ってるし。

 

 リアスと朱乃だけじゃなく、コイツ等も問題行動を起こしてるのかよ……。

 

「……おいお前等、こんな所で何やってんだよ」

 

「げっ! あ、兄貴!?」

 

「あ、隆誠先輩」

 

 俺の存在に気付いたイッセーとゼノヴィアは対照的な反応をする。

 

「ち、違うんだ兄貴! これはゼノヴィアが勝手に……!」

 

 おいコラ。言ってる事は本当だろうが、その台詞は浮気がばれた彼女に見苦しい言い訳をしてるようにしか聞こえないぞ。

 

 俺がイッセーの台詞に呆れてると、ゼノヴィアは俺を見ながらとんでもない発言をしようとする。

 

「丁度良かった。隆誠先輩、よかったら三人で子作りをしないか? イッセーの他に、隆誠先輩の子供も欲しいと思ってたところだ」

 

「…………は?」

 

 この子は一体何言ってんの? 子作りってのは普通男女が二人きりでするものであって、決して三人でやる行為じゃないぞ。

 

「おいおいゼノヴィアさん! 兄貴の子供も欲しいって本気で言ってるの!?」

 

「無論だ。ドラゴンの気を宿したイッセーの子供と、天使の力を持った隆誠先輩の子供。二人の力を受け継いだ子供を私は育てたいと思っている」

 

 …………俺もう頭痛くなってきた。やっぱりゼノヴィアを教会へ送り返した方が良いんじゃないかと思い始めてきたよ。

 

 ってか悪魔がイッセーの子供だけじゃなく、聖書の神(わたし)の子供を欲しがるって……もし教会連中が知ったらどんな反応をするんだろうか。特にゼノヴィアの家族とか。

 

「とにかくだゼノヴィア。子作り云々はどうでも良いから早く胸を隠せ。こんな所をリアス達に見られたら――」

 

「イッセーとリューセー? これはどういうことかしら?」

 

 いつのまにか用具室にいたリアスが笑みを引き攣らせたまま立ち尽くしていた。しかも全身が赤い魔力で覆われてるし。

 

「あらあら。ズルいわ、ゼノヴィアちゃんったら。リューセーくんはともかく、イッセーくんの貞操は私がもらう予定ですのに」

 

 おい朱乃。笑ってるけど、何か恐いオーラが漂ってるぞ?

 

「イッセーさん、酷いです! 私だって言ってくれたら……! それにリューセーさんも酷いです!」

 

 ガ~ン! 妹分のアーシアにまで誤解された上に罵倒された! 地味にショックだ!

 

「……油断も隙もない。それとリューセー先輩、見損ないました」

 

 ちょっと小猫さん! 俺は何もしてませんよ!?

 

「どうした二人とも? さあ、早く子供を作ろう」

 

「っ! ば、バカ、ゼノヴィア! この状況を分かってんのか!?」

 

「ゼノヴィアぁぁ~! お前、少しは空気を読めぇ!」

 

『子供!?』

 

 ゼノヴィアのトンデモ発言にイッセーと俺が慌ててる中、女性陣の顔色が変わった。

 

 俺は一瞬、ゼノヴィアを教会に返そうかと本気で思ったよ。

 

 誰だか知らんがゼノヴィアの家族! 一体コイツにどう言う教育させてんだよ!? いくら聖書の神(わたし)でもこればっかりは文句言いたいぞ!




またまた恐ろしい事をしてしまったゼノヴィアでした。

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