ハイスクールD×D ~復活のG~   作:さすらいの旅人

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第二十話

「くそっ。やっぱり今の俺じゃそう簡単に勝てねぇか」

 

 全力(フルパワー)でやっても攻撃が全く通じねぇ。それどころかコカビエルは全然本気じゃないのに、パワーもスピードも俺より上だ。

 

「さっさと奥の手を使ったらどうだ? まさかさっきの余興で力を使い果たしたわけではあるまい」

 

 コカビエルは体勢を整えた俺を追撃しないどころか、さっきから奥の手を使え使えと催促してくる。

 

「……一応聞きたいんだが、お前は何で俺に奥の手があるのを知ってるように言ってくるんだ?」

 

「エリガンから聞いてるんでな。尤も、あの女はそれを見る前に撤退したそうだが」

 

 やっぱりエリーから聞いてやがったか。確か教会でエリーと戦う前、兄貴が『アレの二倍を使え』って言ってたから、多分それが俺の奥の手だと思ったんだろうな。まぁ正解だけど。

 

「……分かったよ! 見せてやるさ」

 

 と言うか、今の俺じゃ奥の手――龍帝拳を使わなきゃコカビエルには勝てない。

 

 俺の返答を聞いたコカビエルは笑みを浮かべ、腕を組みながらそのまま待っていた。どうやら攻撃する気は無いらしい。

 

 その油断が命取りにならなきゃいいな、コカビエル!

 

「はぁぁぁぁ……!」

 

 

 ブゥゥゥゥンッ!!

 

 

『っ!』

 

 力を溜める体勢を取った俺は龍帝拳を使おうとすると、俺の全身が赤く染まり始める。

 

 俺の変貌にコカビエルだけじゃなく、部長達も驚いていた。

 

龍帝拳(りゅうていけん)!」

 

Dragonicfighter(ドラゴニックファイター) mode(モード) explosion(エクスプロージョン)!』

 

 俺が奥の手を口にした途端、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の水晶が光を放ちながら発動する。

 

 龍帝拳は全力(フルパワー)となった俺の力を更に高める事が出来る俺の最大の奥の手。今の俺じゃ二倍までしか使えないが、それでも爆発的に上昇させる事が出来る。だが龍帝拳はコントロールが難しくて、下手に使い過ぎると自分の身体を壊してしまう恐れがある。

 

 これは本来、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』に付いてる能力ではなく、兄貴とドライグがカスタマイズして使えるようになった物だ。あと龍帝拳の他にも何か追加させてるみたいだが、それはまだ分からない。兄貴曰く、『いずれ分かるよ』だそうだが。

 

 そして龍帝拳を使って力が溜まった俺は跳躍し――

 

「はあっ!!」

 

「!!」

 

 

 バゴッ!!

 

 

 コカビエルに気合砲を当てようと左手を正面に向けて思いっきり伸ばす。だがコカビエルは即座に羽を展開して飛ぶと、気合砲はそのまま地面に激突した事によってクレーターが出来上がる。

 

 アレを簡単に避けられるのを予測済みの俺は、即座に猛スピードでコカビエルに接近する。

 

「っ! 速い!」

 

「おらぁっ!」

 

 

 バキィッ!

 

 

 俺のパンチがコカビエルの頬に当たり、すぐに次の攻撃として連続ジャブを浴びさせる。

 

「せいっ!」

 

 防御せずに攻撃を受けているだけのコカビエルに俺はキックで蹴りあげた。

 

 反撃をさせない為、更に追撃しようとする俺は闘気(オーラ)を纏った状態で飛んで猛スピードで接近――

 

 

 フッ!

 

 

「何っ!?」

 

 ――しようとしたが、突然コカビエルの姿が見失った。

 

「バカめっ!」

 

「ごっ!」

 

 すると横からコカビエルが現れ、そのまま俺に蹴りを喰らわせた。

 

「ぐっ!」

 

 蹴りを受けた俺は空中でバク転して、宙に浮いたまま体勢を立て直そうとする。

 

 そんな、俺の龍帝拳が……。コカビエルに全く通じてねぇ……!

 

「くっくっく。今のは本気で驚いたぞ、小僧。まさかお前にあんな奥の手があったとはな」

 

 驚いてる俺を余所にコカビエルは狂気の笑みを浮かべながら言ってくる。

 

 俺の攻撃を受けてもダメージを全然受けていないな。俺の取っておきだってのに……。

 

 流石は堕天使の幹部だ。俺が今まで戦った相手とは桁違いだ。ったく。この前戦ったライザーが可愛く見えるぜ。可愛いつっても別の意味でだけど。

 

 …………しかしまぁ、なんつーか……。いますげぇヤバイ状況だってのに、何でか分からねぇが凄くワクワクしてくる。強い奴と戦うのが大好きなドラグ・ソボールの空孫悟みたいに。

 

 何か俺、空孫悟の心情が分かってきたような気がする。これを兄貴に教えたら――

 

『ほう。だったら空孫悟をもっと理解する為に修行の難易度を更に上げる必要があるな』

 

 ってな事を言われそうだ。ただでさえ今も難易度が高い修行やらされてるってのに、これ以上やられたら身が持たねぇよ。尤も、それくらいやらねぇと、この先の強い相手と戦う事が出来ないのも事実だけど。

 

「何を笑っている? そんな顔をするというのは、諦めて開き直ったか? それとも更に力を上昇させる余裕でもあるのか?」

 

 どうやら俺は無意識に笑っていたようで、コカビエルは若干呆れたように言ってくる。

 

「………………」

 

「……ふっ。何も言い返さないのは前者のようだな。だが小僧、お前は凄いぞ。人間でありながらこの俺を本気で驚かせたんだ。その褒美として見せてやろう。俺の全力を」

 

 コカビエルの野郎、俺が龍帝拳を使ってもまだ本気じゃなかったのかよ。クソッたれが……!

 

「へっ、だったら見せてみろよ」

 

「くっくっく、その笑いもたちまち消えることになるぞ!」

 

 

 ドンッ!!

 

 

 コカビエルの全身から凄まじいオーラが溢れるように放出した。そのオーラの量は途轍もなく、嵐のように吹き荒れた。

 

 俺の全力(フルパワー)とは比べ物にならないほどの暴風が吹き荒れてやがる!

 

 だがそれはすぐに消えてなくなった。コカビエルからオーラが消えた途端、さっきまでの暴風が嘘のように静まり返っている。

 

 コカビエルが力の解放に不発したか思われるだろうが、それは全然違う。目の前にいるコカビエルからは発しているオーラが無くても、圧倒的な威圧感とオーラがバリバリと感じる。

 

 これは……マジでやべぇ!

 

「終わりだ……小僧!!」

 

 

 ギュンッ!!

 

 

「っ!!」

 

 さっきまでとは比べ物にならないほどのスピードで接近してくるコカビエルは、対応しきれない俺の顔面を殴ってきた。

 

「くっ……ごっ!」

 

 攻撃をされた俺は吹っ飛ばされ、何とか体勢を整えようとするが、また一瞬で接近されたコカビエルに腹部に肘打ちを喰らわされる。

 

 今度は地面に激突しそうになるも、間一髪で両足で着地した。すぐにコカビエルの姿を確認する為に上を――

 

「バカめ! 後ろだ!!」

 

「がっ!」

 

 見ようとしたが、コカビエルは既に俺の背後を取って蹴り飛ばしてきた。

 

 また吹っ飛ばされる俺は次に駒王学園新校舎の壁に激突しそうだったので、それを回避する為に跳躍して空中で急停止をする。

 

 今度は視界に頼らず相手のオーラで探そうとすると、コカビエルは既に俺の更に上空にいた。しかもいつの間にか光の槍を構えてる状態で。

 

「そらっ!」

 

「っ! やべぇ!」

 

 コカビエルは空かさず俺に向けて光の槍を投擲してきた。

 

「龍帝拳二倍!」

 

Dragonicfighter(ドラゴニックファイター) LevelⅡ(レベル2)! 』

 

 眼前に迫ってくる光の槍を龍帝拳で躱す為に上へ飛んで避難した。光の槍はそのまま地面に当たり爆発するが、コカビエルは躱した俺を見て笑みを浮かべていた。しかも更にもう一本の光の槍を俺に向かって投げている。

 

「ぐっ!!」

 

 第二撃の光の槍から回避するも、完全に躱せず胸の辺りに掠ってしまった。身体の直撃は何とか避けれたが、制服の上着とワイシャツが前半分無くなっている。

 

「ふっふっふ。よ~しいいぞ、よく避けた」

 

 俺が躱せると分かっていたのか、コカビエルはそんな事を言ってきた。

 

 あの野郎、完全に俺で遊んでやがる。避けれると分かっていながらも光の槍を投げやがったな。

 

「……くそっ!」

 

 舌打ちをしながら地上に降りると、コカビエルも同じ事をする。

 

 何て野郎だ。龍帝拳二倍が全く通じてない。堕天使幹部がここまですげぇなんて予想外だ。

 

「くっくっくっく……。今のは避けやすくしてやったんだ。折角俺が全力を出してやってるんだから楽に死なれては困る。もう少し楽しませてもらうぞ」

 

「……………」

 

 ………くそったれ。今のままじゃ打つ手がないな。

 

 

 

 

 

 

 一誠とコカビエルの凄まじい戦いを繰り広げている中、リアス達は見ている事しか出来なかった。

 

「そんな……イッセーでも歯が立たないなんて……!」

 

「これは、不味いですわ」

 

 リアスと朱乃は桁違いの戦いだと理解しつつ、一誠が余りにも不利だと言う状況だと認識している。

 

「このままだと、イッセーくんが……!」

 

「……確実に、殺されます」

 

「そんな……!」

 

 祐斗と小猫が未来を予測した台詞に、アーシアは目を見開きながら一誠を見る。

 

 一誠は未だに諦めた顔をしてない。だが、コカビエルの圧倒的な力の前に一誠が殺されてしまうのは誰もが分かっていた。

 

 そんな中――

 

「リアス・グレモリーと眷属たち、兵藤一誠を援護するぞ」

 

『っ!』

 

 デュランダルを持ち構えているゼノヴィアの台詞にリアス達は驚愕する。

 

「え、援護って……ゼノヴィア、あなた正気なの?」

 

「勿論だ。それに我々は兵藤隆誠に言われただろう。兵藤一誠が不利になったら援護しろと」

 

 隆誠から念話で伝えられた事を口にするゼノヴィア。それを聞いたリアス達は思い出すも、すぐに頷く事が出来ない様子。

 

 桁違いな戦いを繰り広げている一誠とコカビエルに、リアス達は下手に手を出す事が出来なかった。自分達が割って入っても足手纏いになってしまうと理解しているから。

 

「けれど、あの状況で私たちが援護したとしても……」

 

「死ぬだろうな」

 

「それが分かっていながら……!」

 

 無駄死になるのを分かってるのを悟ってるゼノヴィアに憤慨するリアスだったが――

 

「だが、何もしないまま死ぬより遥かにマシだ。せめてコカビエルに一矢を報いなければ、兵藤隆誠に申し訳がたたない」

 

「っ……」

 

 すぐにハッと思い出したような顔をした。

 

 確かにゼノヴィアの言うとおり、何もしないまま死ぬのは嫌だ。更にはコカビエルが一誠に殺されるのも嫌だ。

 

 人間の兵藤兄弟に頼り、悪魔の自分達が何もせず黙って見守ることは出来ない。何より愛しい一誠が必死で戦っているのに、自分だけ何もせずに見守っているリアスは己を恥じた。

 

「………朱乃、祐斗、小猫、ゼノヴィア、コカビエルが油断してるところを狙うわ。いつでも動けるようにして。アーシア、あなたは下がってて」

 

「「「はい、部長」」」

 

「了解だ」

 

「は、はい……」

 

 それぞれに指示を出すリアスに頷く朱乃達。

 

 リアスと朱乃は魔力を高め、祐斗とゼノヴィアは己の剣を持ち構え、小猫は即座にダッシュ出来る体勢を取る。アーシアはリアス達の邪魔にならないよう、その場から離れる。

 

 各々が準備を進めている中、空中にいた上着が半分無くなってる一誠、そしてコカビエルが揃って地上に降り立つ。

 

 

 

 

 

 

 くそっ。こうなったら龍帝拳の出力を上げるしかねぇな。ちと危険だが三倍でいくか。今の俺でも三倍は可能だ。コントロールさえ誤らなければ何とか使える筈。

 

「だが誇っていいぞ、小僧。全力となった俺相手にまだ生きて――」

 

 

「はぁぁぁぁぁ~~!!!」

 

 

「「っ!」」

 

 コカビエルが油断してるところを狙って龍帝拳を三倍にしようと思ったが、突然部長が叫ぶような声を上げていた。

 

 俺だけじゃなくコカビエルも視線を向けると、そこには『滅びの力』を凝縮している部長がいた。

 

「フハハハハハ! 何をするかと思って見れば、その力の波動は最上級悪魔の魔力に近いじゃないか! おまえも兄に負けず劣らずの才に恵まれているようだな、リアス・グレモリー!」

 

 最初は鬱陶しそうな感じのコカビエルだったが、部長の凄まじい魔力を見た途端に笑っていた。狂喜に彩られた表情だ。

 

 部長の両手から、凝縮した最大級の魔力の塊が今か今かと爆発しそうになってる。ライザーの時に使ったあの技か!

 

「消し飛びなさい、コカビエル! 『滅びの爆裂弾(ルイン・ザ・バーストボム)』!!」

 

「やべぇ!」

 

 あの技の危険性を知ってる俺は即座に離れようとする。

 

 

 ゴォォォォォオオオオオンッッ!!

 

 

 途轍もない振動が周囲に撒き散らし、強大な一撃がコカビエルに向かっていく。しかしコカビエルは逃げようとはせず、両手を前に突き出して迎え撃とうとしていた。

 

「おもしろい! これは予想外におもしろいぞ、魔王の妹! サーゼクスの妹!」

 

 コカビエルの両手にはオーラの源である光が集まっていく。いくらコカビエルでも全力を出した部長の『滅びの力』を素手だけで受け止められる訳がない。

 

 

 ドウゥウゥゥゥゥンッッ!

 

 

 部長が放った大技をコカビエルは真正面から受けている。その表情は余裕がありながらも、一切手を抜いていない。

 

「ぬぅぅぅぅううううううんッッ!!」

 

 凝縮された部長の魔力弾は爆発しないどころか、押さえ込まれていた。

 

 いや違うか。あれは相殺していると言った方が正しい。

 

 だが流石のコカビエルも無傷ではなかった。身に纏っている黒いローブが無くなっていき、魔力を受け止めているてからも血が噴出している。

 

 そして凝縮の魔力弾は形を失い、徐々に消えようとしていた。部長も全ての魔力を使い果たしたのか、肩で激しく息をしている。あの状態じゃもう二発目は無理だ。

 

「雷よ!」

 

 部長の魔力弾を受けていたコカビエルに、今度は朱乃さんが雷の魔力を放とうとしている。

 

「下らんっ!」

 

 けれど、朱乃さんの雷はコカビエルの十枚の翼で防がれる。

 

「俺の邪魔をするか、バラキエルの力を宿すものよ!」

 

「っ! 私を、あの者と一緒にするなッ!」

 

 コカビエルの台詞に朱乃さんは目を見開き激昂して、今度は両手から雷の鞭を繰り出すも、全てコカビエルの翼で薙ぎ払われた。

 

 やっぱり朱乃さんは堕天使の娘だったんだな。しかも堕天使幹部――バラキエルの。

 

 朱乃さんからは堕天使の力もある事は知っていたが、バラキエルの娘であることは分からなかった。多分兄貴の事だから気づいてるだろうが。

 

「悪魔に堕ちるとはな! ハハハ! 随分と愉快な眷族を持っているな、リアス・グレモリー! 聖剣計画の成れの果てにバラキエルの娘! おまえも兄に負けず劣らずのゲテモノ好きのようだ!」

 

「おいテメェ! 誰がゲテモノ好きだぁ! 部長達に対しての暴言は俺が許さねぇぞ!」

 

 コカビエルの発言に頭に来た俺が叫ぶと、コカビエルは俺を見て挑戦的な物言いをする。

 

「ならば俺を倒すことだなッ! 『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』! 赤龍帝! 兵藤一誠! 尤もおまえ程度じゃ俺に勝てないことは理解してるだろうが、それでも最後まで足掻いてみせろ!」

 

「上等だぁ!」

 

 挑発に乗った俺は龍帝拳を三倍まで上げようとすると――

 

「私も加勢するぞ、兵藤一誠!」

 

「イッセーくん、加勢するよ!」

 

「ぜ、ゼノヴィア!? 祐斗!?」

 

 突然ゼノヴィアと祐斗が割って入るように、コカビエルに向かって斬りかかろうとしていた。

 

「今度はおまえたちか」

 

「「はあぁぁぁっ!」」

 

 二人の乱入にコカビエルは大して慌てず、両手から光の剣を造りだして迎え撃つ。

 

「ほう? 聖剣と聖魔剣の同時攻撃か。だがっ!」

 

「がっ!」

 

 コカビエルは攻撃を防ぎながらも、聖剣使いのゼノヴィアの腹部に蹴りをいれて吹っ飛ばした。

 

「所詮は使い手次第だ、娘! おまえ程度じゃまだまだデュランダルは使いこなせん! 先代の使い手はおまえと違って常軌を逸していたぞ!」

 

「くっ! 何の!」

 

 ゼノヴィアは体勢と立て直し、再びコカビエルに斬りかかろうとするもまた防がれた。

 

「やはりつまらんな。おまえたちでは、あの小僧の代わりにもならん」

 

「ぐっ!」

 

「舐めるな!」

 

 鍔迫り合いをするも、祐斗とゼノヴィアはコカビエルに押されていた。

 

 そんな中、コカビエルの後方から拳に魔力を纏った小猫ちゃんが攻撃しようとするが――

 

「甘いわ!」

 

 黒い翼が鋭い刃物と化し、小猫ちゃんの体は容赦なく斬り刻まれる。祐斗とゼノヴィアは切り刻まれなかったが、小猫ちゃんと同じく吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

 アーシアを除く俺に加勢した部長たち全員はコカビエルの余りにも圧倒的な力の前になす術もなかった。

 

 ただ一人、余裕の顔をしているコカビエルは苦笑する。

 

「俺に挑んだ度胸だけは褒めてやろう。しかし、仕えるべき主を亡くしてまで、おまえたち神の信者と悪魔はよく戦う」

 

 コカビエルの言動に、部長達は怪訝そうな表情をする。

 

「……それはどういうこと?」

 

「コカビエル! 主を亡くしたとはどういう意味だ!?」

 

 部長が尋ねると、今度はゼノヴィアが激昂して問おうとする。

 

「おっと、口が滑った」

 

 その問いにコカビエルはうっかりしたかのように言葉を濁す。

 

「答えろ! コカビエル!!」

 

「……フフフフフ、フハハハハハハハ!!」

 

 だがゼノヴィアは再度声を荒げて問うと、コカビエルは途端に大笑いをした。

 

「ハハハハハハハハ! そうだな! そうだった! 戦争を起こそうというのに、今更隠す必要なんてなかったな!」

 

 何だ? 何故か分かんねぇが、コカビエルがとんでもない事を言おうとするこの不吉な予感は。特にアーシアやゼノヴィアに対して。

 

「先の三つ巴の戦争で、四大魔王と共に神も死んだのさ!」

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ……! ふ、ふ……ふふふふふ……。やっぱりダーリンは凄いわぁ」

 

「ったく、少し見ない間にしぶとくなりやがって……!」

 

 空中で戦っている俺――兵藤隆誠は、あともう少しで倒せると言った感じでエリーにダメージを与えていた。当然俺も俺で傷を負っているが。

 

 この女、本当に以前と違って強くなっている。あと数年鍛錬したら、そのうち魔王クラスに到達しそうだ。まぁ、それでもまだ魔王クラスのグレイフィアには及ばないが。

 

 エリーを倒したら、すぐにコカビエルと戦ってるイッセーの下へ駆けつけないと。何故なら俺は戦ってる最中に龍帝拳を使ってるイッセーがコカビエルに押されているのを見ていたんでな。

 

 今のイッセーが龍帝拳を使っても通じなければ、コカビエルに勝てる勝率は物凄く低い。龍帝拳の出力を上げれば勝てない事もないが、それはそれで危険だ。だから早く俺が加勢しないと。

 

「ちょっとダーリン、今は地上(した)より目の前の私に集中してよぉ。そんなにイッセーくんのことが気になるの?」

 

「当たり前だ」

 

 大事な家族であるイッセーを気にするのは当然だ。アイツを死なせる訳にはいかない。

 

「でも、そのイッセーくんも結構やるわね。あのコカビエルを本気にさせるなんて。龍帝拳って言ったかしら? アレが奥の手みたいね」

 

 どうやらコイツもコイツでコカビエルと戦ってるイッセーを見ていたか。

 

「だけどコカビエルを倒すにはまだまだ力不足のようね」

 

「くっ……」

 

 エリーと俺は揃って地上(した)にいるイッセー達とコカビエルに視線を移すと――

 

 

「先の三つ巴の戦争で四大魔王と共に神も死んだのさ!」

 

 

「…………は?」

 

 コカビエルがとんでもない発言をした為に俺は固まってしまった。

 

「あらあら、コカビエルったら余計な事を。これじゃあ私が妄想爺さんを口封じした意味が無いじゃない」

 

「……あ、あの野郎!!」

 

「ちょ、ちょっとダーリン!? まだ私との戦いは――」

 

 引き止めようとするエリーを無視する俺は戦いを中断し、即座に地上へと向かった。


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