ハイスクールD×D ~復活のG~   作:さすらいの旅人

17 / 60
第十五話

「悪い、ソーナ。お前やお前の眷族達に嫌な役割を押し付けてしまって」

 

「気にしないで下さい。これも重要な役割ですから」

 

 学園前に着いた俺はリアスたちオカルト研究部と、合流したソーナたち生徒会メンバーでコカビエル達と戦う前の話し合いをした。その結果、生徒会メンバー全員は後方支援に徹してもらう事になった。

 

 ソーナ達には学園全体に結界を張ってもらい、余程の事がない限りは外の被害を食い止めてもらうのが今回の役割だ。最初は渋い顔をしていたソーナだったが、自分達ではコカビエルとまともに戦う事が出来ないと分かっていたようで、すぐに納得してくれた。

 

「助かるわ、ソーナ」

 

「ありがとな。今度俺が何かお礼するよ」

 

「楽しみにしてます」

 

 俺からお礼がもらえると聞いたソーナはにこやかな笑みを浮かべるが、すぐに厳しい顔へと変わる。

 

「リューセーくん、私たちが外の被害を食い止めるとは言え、現状が維持されていればの話ですが」

 

「分かってる。なるべく善処するよ」

 

 コカビエルやエリー相手にそんな事を気にしてる余裕なんてないが、一応頭の片隅にだけは置いておこう。

 

 そう思ってると、突如背後からイリナを連れて行った真羅が戻ってきた。

 

「真羅、一応訊くけどイリナは?」

 

「今は会長の屋敷にある寝室で眠っています」

 

 俺の問いに真羅が答えた後、すぐに結界を張ってるソーナ達に加わる。彼女にはソーナから結界を張る役割を伝えてあるからな。

 

「ところで兄貴、木場とゼノヴィアはどうすんだ?」

 

「………放っておけ。こっちから何もしなくても、アイツ等は間もなく此処へ来る」

 

 ゼノヴィアと祐斗のオーラは此処から少し離れているが駒王学園に近づいてきてる。あともう少しで着くと言ったところだ。

 

 だが今はアイツ等を待ってる時間は無い。何しろコカビエルが学園の校庭で力を解放してるからな。

 

 コカビエルが力を解放したとなると、学園だけじゃなく、この駒王町そのものが崩壊する。それ故に祐斗達を待っていられない。

 

「私たちは出来るだけ結界を維持します。ですが……学園が傷付くのは耐え難いものです。堪えなければならないでしょうが」

 

 ソーナは学園の方を憎々しげに見つめている。恐らく学園にいるコカビエルへ向けているんだろう。

 

「ソーナ。君が学園を大事にしてる気持ちは分かるけど、そこは辛抱してくれ。相手は堕天使幹部のコカビエルだけじゃなく、最上級悪魔のエリガンまでいるんだ。悪いけど学園の事を気にしながら戦うのは無理だよ」

 

「……ええ、分かっています」

 

 ところで、とソーナは言いながらリアスへ視線を移す。

 

「リアス、相手は桁違いのバケモノが二人います。いくらリューセーくんがいるとはいえ、勝てるとは言い切れません。いまからでもおそくない、あなたのお兄さまへ連絡を」

 

「あなただって、お姉さまを呼ばなかったじゃない」 

 

「私のところは……」

 

 サーゼクスはともかく、あの魔王少女に連絡したらとんでもない事になるから、ソーナは敢えて連絡しなかったんだろうな。うん、ソーナの判断は実に正しい。

 

 あのサーゼクス以上の超シスコン姉に来られたら面倒になること間違いなしだ。アイツお得意の氷魔法で駒王町が氷漬けにされるか、もしくは駒王町が消滅させられてしまう。そんな危険な奴を此処に呼ばれてたまるか。

 

「リアスのお兄さまはあなたを愛している。サーゼクスさまなら必ず動いてくれます。だから――」

 

「サーゼクスさまには、私のほうから打診しておきましたわ」

 

「朱乃!」

 

 突然割って入った朱乃の発言にリアスが避難の声をあげる。しかし朱乃は珍しく怒った表情を浮かべていた。

 

「リアス、あなたがサーゼクスさまにご迷惑をおかけしたくないのはわかるわ。けれど相手は堕天使の幹部と指名手配犯の最上級悪魔。あなた個人で解決するレベルを超えている。――魔王さまの力を借りましょう」

 

「っ………」

 

 朱乃の正論にリアスは即座に言い返すことが出来なかった。確かに上級悪魔のリアスが解決するなんて無理な話だ。

 

 何か言いたげなリアスだったが、すぐに大きな息を吐いて静かに頷いた。

 

「ご承諾ありがとうございます、部長。サーゼクスさまの軍勢は、凡そ一時間程度で到着する予定ですわ」

 

「一時間ね……了解したわ」

 

 それと、と朱乃が言いながら俺を見る。

 

「リューセーくんにサーゼクスさまからの伝言があります」

 

「俺に?」

 

『っ!?』

 

 サーゼクスからの伝言と聞いた途端、リアスだけじゃなくこの場にいる全員が驚いていた。

 

「『冥界(こちら)のことは気にせず、遠慮なくやっても構わない』、とのことですわ」

 

「へぇ……。了解した」

 

 どうやらサーゼクスは上手くいったようだな。

 

 今回の件で悪魔のリアスが対処出来ない事を人間の俺やイッセーが解決したら、冥界の貴族悪魔共が後々絶対嫌がらせや難癖をつけてくる。

 

 リアスがまだ未熟な上級悪魔とは言え、人間の俺達が悪魔側の面子を潰す行為をすれば、人間を軽視してる貴族悪魔共は黙っちゃいない。何しろ貴族悪魔は人間以上に面子を潰されるのを嫌うからな。

 

 だからそう言った面倒事を防ぐ為、この前の電話でサーゼクスにコカビエルの件を報告した後、貴族悪魔達が今回の件で一切口出しをしないよう依頼した。当然俺からの依頼なので、サーゼクスに報酬を支払わなければならないが、それは今どうでもいいので割愛させてもらう。

 

「どういうことなの、リューセー? お兄さまに一体何の話をしてたの? あとさっきの伝言はどういう意味かしら?」

 

 予想通りと言うべきか、リアスが食いついて俺に詰問してきた。

 

「……今はそんな事を気にしてる場合じゃないだろ。時間が無いんだ。イッセー、行くぞ!」

 

「お、おう!」

 

「ああっ! こらっ! 待ちなさいリューセー!」

 

 俺がイッセーを連れて学園に入ろうとすると、少々怒り気味のリアスや朱乃と小猫、そしてアーシアが慌てながら付いてきた。

 

 

 

 

 

 

「さて。学園内に入った以上、全員、決死の覚悟を持ってもらうぞ。いいな?」

 

 新校舎の中に入ってグラウンドへ向かってる途中、俺はリアス達に最後の確認をする。

 

「元よりそのつもりよ。でも、私は死ぬつもりなんてないわ。皆で生きて帰って、この学園に通うわよ」

 

 強気な発言をするリアス。

 

「私も部長と同じですわ。死ぬ覚悟はあっても、死ぬつもりはありませんもの」

 

 リアスと同様の発言をする朱乃。

 

「……勿論です」

 

 決心が固まったようにコクンと頷く小猫。

 

「は、はい! が、がんばります!」

 

 途轍もない緊張感に襲われながらも必死に答えるアーシア。

 

「こちとら、兄貴に何度も死ぬような目に遭わされてんだ。んなもん今更だろうが」

 

 少々意地の悪い返答をしながらも、やる気充分な姿勢を見せるイッセー。

 

「結構。さて、以前のライザー戦で俺は参加しなかったが、今回は出る。尤も、俺はエリガンの相手がメインになるがな」

 

「リューセーが共に戦ってくれるのは非常に頼もしいけれど、本当に一人で大丈夫なの?」

 

「心配無用。アイツは俺が戦おうとする意思を見せれば、すぐに食いついてくる。……放課後の時に言ったろ? アイツは俺に対して熱烈な恋愛感情を抱いてるって」

 

「……そ、そういえば、そういってたわね」

 

 うんざりするように溜息を吐きながらエリーの事を言うと、リアスは急に俺を気の毒そうな目で見る。

 

 放課後の部室でエリーの事を教えていた際、俺はリアスにこれまでエリーに狙われていた事も話した。エリーが俺をダーリンと呼んだり、婚約者(フィアンセ)や未来の夫と勝手に決めてる事を。

 

 それ等を聞いたリアスはライザーの件があって他人事とは思えなかったのか、『……あなたも苦労してるのね』と物凄く同情されたよ。近くで聞いていた朱乃や小猫やアーシアにも同情的な眼差しを送られたけど。

 

「まぁとにかく、エリーが動かない限りは俺も出来るだけ動く。まぁコカビエルの相手はイッセーがメインでやってもらうが」

 

「え? 俺がアイツと?」

 

 予想外の指名だったのか、イッセーはキョトンとした顔をしながら言う。

 

「当たり前だろうが。俺がエリガンと戦う以上、コカビエルとまともに戦えるのはお前しかいない。奴と本格的な戦闘になったら、リアス達は援護射撃側に移ってもらう」

 

「……確かに今の私たちじゃコカビエルと対等に戦える力はないわ。イッセーと一緒に戦えないのが悔しいけれど」

 

「部長……」

 

 自分とコカビエルの力の差を理解したのか、リアスは悔しい表情をしながらも反論はしなかった。そんなリアスにイッセーは安心させようと思ったのか、彼女の手を取る。

 

「何言ってるんですか。部長がいてくれるだけで充分力になってますよ。俺にとって部長は勝利の女神ですからね。絶対負けませんよ」

 

「なっ!」

 

 イッセーの口説き文句が聞いたのか、リアスの顔は紅髪と同じく真っ赤になった。

 

「あらあら、うふふ。リアスってばイッセーくんに愛されてますわね」

 

「……普段はスケベなのに、こう言う台詞はサラッと言えるんですね」

 

「うう~……!」

 

 顔真っ赤なリアスを見た朱乃は笑みを浮かべ、小猫は複雑な顔をしており、アーシアは頬を膨らませて焼きもちを焼いていた。

 

「こらこらイッセー、こんな時にリアスを口説くなよ」

 

「べ、別に俺は部長を口説いてなんか……!」

 

「あっ……」

 

 俺の指摘にイッセーは掴んでるリアスの手を離し、顔を赤らめながら反論しようとする。さっきまでイッセーに手を握られたリアスは残念そうな表情をしてるが。

 

「……まあいいや。取りあえずお前には最初から全力で戦ってもらうから、今着てる赤シャツの重さを解除する」

 

 そう言いながら俺は右の人差し指で、イッセーが着てる赤シャツにトンッと触れた途端――

 

「お、一気に軽くなった!」

 

 イッセーは兎のようにピョンピョンと軽く跳んだ。

 

「あとコカビエルと戦う時は迷うことなく龍帝拳を使え」

 

「わぁってる。コカビエル相手に出し惜しみなんてしねぇよ」

 

「なら良し」

 

 俺の念押しにイッセーは真剣な顔をして頷くと、グラウンドの出入り口が見えた。

 

 さて、ここから先は駒王町の命運をかけた戦場だ。

 

 今の聖書の神(わたし)ではイッセーやアーシアや悪魔のリアスたち、そして駒王町にいる住民全てを守れない。だが駒王町の崩壊だけは必ず阻止させてもらう。たとえこの命が失おうとしても。




すいません。今回は戦闘前のブリーフィング話になっちゃいました。

次回は必ず戦闘になりますので、どうかご容赦を。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。