ハイスクールD×D ~復活のG~   作:さすらいの旅人

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今回はオリジナル話となっています。


第十二話

 夜八時の教会。

 

 リアスとアーシアに知られないように来た俺とイッセーは、合流した祐斗達と共に変装をする。ついでに小猫はシスターに変装する為に別の部屋で着替えている。

 

「悪魔が神父の格好なんて……」

 

 神父服を着た匙が複雑そうな顔でそう言う。確かにそんな格好をしたら、どこの悪魔だって匙と同じ事を言うだろう。

 

「抵抗はあると思うけど」

 

「目的の為なら、何でもするさ」

 

 イリナの台詞に祐斗は全く気にしてないように神父服の上着を着る。

 

(イッセー、もしもの時は)

 

(わぁってるって。木場が暴走したら俺が止めりゃいいんだろ)

 

 神父服に着替えた俺は小声で言うと、イッセーは頷きながら返答する。

 

 そして男子の俺達が神父服に着替え終えると、別部屋でシスター服に着替えた小猫が聖堂にやってきた。

 

「全員着替え終えたな。尤も、流石にこんな大人数で動いてたら怪しまれるから、ここは分断して動くとしよう。君達もそれで良いよね?」

 

「ああ、私もそう考えていた」

 

「私もよ」

 

 俺の案にゼノヴィアとイリナは文句を言う事なく賛成して頷く。

 

「よし、じゃあ二手に分かれるとしよう。俺は君たち教会側と同行するから、イッセーは祐斗達と一緒に行ってくれ」

 

 俺がそう指示すると早速と言うべきか、ゼノヴィアが待ったをかけようとする。

 

「何故私たちと一緒なんだ? 貴様が悪魔(そちら)側なら、彼らと一緒に行った方が良いんじゃないか?」

 

「それじゃ俺たちと同行する意味が無いだろう」

 

 異端者の俺と同行したくないのは理解出来るが、それくらいは我慢して欲しい。

 

 あんまり言いたくないんだが、この二人だけでコカビエルやエリーと遭遇したらアッサリ負けるからな。

 

 いくらこの二人が聖剣使いでも、コカビエル達と互角に戦えるほどの実力はまだない。たとえ奥の手を使ったとしても。

 

 取り敢えず不満そうなゼノヴィアを無理矢理納得させ、俺と教会組は町の西側、イッセーと悪魔組は東側へ行く事となった。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「で、トウジおじさんは元気なのか?」

 

「そりゃもう。て言うか、パパが元気じゃなかったらパパじゃないわよ」

 

「それもそうか」

 

 教会で分断した俺、イリナ、ゼノヴィアは駒王町西側を探索している。最初は警戒しながら歩いていたが、向こうが中々尻尾を見せてくれないので、久しぶりに会ったイリナと世間話をする事にした。ゼノヴィアは話に参加してないが。

 

 世間話をしながらも、俺は常に周囲を警戒してるからすぐに対応出来る。と言うか、世間話でもしないとゼノヴィアがギスギスした雰囲気をずっと醸し出すからな。それでもゼノヴィアは俺を警戒するようにジッと見ているけど。

 

「兵藤隆誠」

 

「なんだい?」

 

 ゼノヴィアが突然呼んでくるので、俺はすぐに彼女の方へと視線を向ける。

 

「何故貴様が悪魔に従っている?」

 

「いきなりな質問だな。どうしてそんな事を訊くんだい?」

 

「悪魔を滅する力を持っておきながら、何故リアス・グレモリーたち悪魔側に下っているのかが疑問でね」

 

「別に俺はリアスの配下じゃない。お互いに利害が一致した協力関係だよ」

 

 向こうが裏切るような事をしない限り、俺はリアスを裏切るような事はしない。尤も、リアスが弟のイッセーに夢中になってる時点で、向こうはそんな気なんか更々無いだろうが。

 

「悪魔と協力関係って……。私はてっきり、リューセーくんやイッセーくんが悪魔に魂を売って奴隷になったかと思ってたわ」

 

「失礼な。俺やイッセーはそこまで堕ちちゃいない」

 

 イリナの台詞をリアスが聞いてたら絶対にキレるだろうな。アイツは相手を奴隷にするような外道な事は嫌ってるし。

 

 そんなこんなで話していると、ふと妙な気配がした。ゼノヴィアとイリナは気付いてないが、俺が向けた視線の先には廃工場がある。

 

「? どうしたの、リューセーくん。あの工場をジッと見てるけど」

 

「何かあるのか?」

 

「………………」

 

「ちょ! リューセーくんってば!」

 

 二人の問いに俺は答えず、工場の方へと足を運んで中に入ろうとする。工場の中は埃塗れの素材や機材が散乱していた。

 

「もう、何でこんな所に入るの?」

 

「見た感じ、ここには何も無さそうだが?」

 

 辺りを見ながら言うゼノヴィアとイリナだが、俺は気にせずこう言う。

 

「………姿を現したらどうだ? 折角お前の誘いに乗ってやったんだからさ」

 

「フフフ。来てくれてありがとう、ダーリン♪」

 

「「っ!」」

 

 突然聞こえる女性の声に、ゼノヴィアとイリナは即座に警戒する。

 

 すると、奥から昨日会った銀髪の美女――エリーが現れた。

 

「リューセーくん、あの人は誰?」

 

「あの女、何故か分からんが危険なにおいがするな」

 

「気をつけろよ。アイツが食事の時に言ったエリーと言う女だ」

 

 両隣にいるゼノヴィアとイリナに言うと、途端にエリーが不機嫌そうな顔をする。

 

「何でダーリンが教会の小娘共と一緒にいるの? 私という女がいながら浮気するなんて……!」

 

「う、浮気!? ちょっとリューセーくん、それってどういうこと!?」

 

「あの女の戯言を真に受けるな、イリナ。あと俺はアイツと恋愛関係なんて一切無い」

 

 敵の言葉を簡単に信じるなっての。女と言うのは浮気と言う単語に敏感なんだろうか。

 

「んもう、ダーリンったら相変わらずつれないわね」

 

「お前の話に乗る気なんて元から無い。それで、何故お前が此処にいる? 確かお前はあのフリードとか言う少年神父と一緒に神父狩りをしてたんじゃないのか?」

 

 俺の問いにエリーは急に笑みを浮かべる。

 

「神父狩りはもう飽きたから、フリード君に任せてるわ。と言うか、教会って人手不足かおバカなの? ザコ数人程度を送り込んでコカビエルを倒そうだなんて、お目出度いにも程があるわよ」

 

「「何だと(ですって)!?」」

 

 エリーの台詞にゼノヴィアとイリナが激昂してキッと睨みながら聖剣を持ち構えた。その反応にエリーが面白そうに見る。

 

「あら怒ったかしら? ゴメンなさいね。あなたたちは真剣なんでしょうけど、私から見たら滑稽にしか思えなくて」

 

「「っ!」」

 

「止せ二人とも」

 

 クスクスと相手をバカにするエリーを攻撃しようとする二人に俺が即座に止めた。

 

「あんな見え見えな挑発に乗ろうとするな。もしあのまま突撃したら君達は死んでたぞ」

 

「何?」

 

「リューセーくん、それどういうこと?」

 

「こう言う事だ」

 

 俺がパチンと指を鳴らして二本の光の槍を創生し、前方数メートル先の地面に向けて飛ばして刺さった瞬間――

 

 

 ドガァァァアンッッッ!!

 

 

「「なっ!」」

 

 爆発したのを目の当たりにしたゼノヴィアとイリナは絶句した。

 

「あらら、バレちゃったわね」

 

「やはり起爆用の魔法陣を仕掛けていたか。お前が何もせず俺達を待ち構えてる訳がない」

 

「失礼ね。ダーリン一人だけで来てたら、こんな見え透いた罠なんか作らないわよ」

 

「どうだか」

 

 対象を動けなくする罠を発動させて、そのまま強制的に俺の精気を貪りつくすと思うがな。

 

 そんな中、イリナから携帯らしき着信音が聞こえる。

 

「え? あ、ご、ごめんリューセーくん! 私ったら……!」

 

「気にしてないから早くでてくれ」

 

 別行動をする前、イリナは自分の携帯連絡先をイッセー達に教えていた。恐らくイッセー達の誰かがイリナの携帯に連絡したんだろう。

 

 俺が早く応答するよう催促すると、イリナはすぐに携帯を取り出して電話にでた。

 

「もしもし? あ、塔城さん。ゴメンなさい。今私たち敵と遭遇して……ええ!? そっちはエクスカリバーを持ってるフリードと木場くんが交戦中!?」

 

「フリードだと!?」 

 

 突然驚くイリナにゼノヴィアは聖剣を持ち構えながらも、向こうの状況を聞いてすぐに驚く。

 

 向こうは向こうでフリードと遭遇したか。祐斗が少年神父と戦ってるみたいだが、聖剣を破壊する事に気を取られすぎて負けなければ良いんだけど。ま、そうならないようイッセーを祐斗の監視役にさせてるから大丈夫だろう。

 

「あらあら。フリード君はフリード君で頑張ってるみたいね」

 

 話を聞いていたエリーは仕掛ける様子を見せずに、イリナの話を聞きながらクスクスと笑っている。

 

 エリーからイッセー達がフリードと交戦してるのに焦る様子が一切見受けられないな。フリードに対して仲間意識が余りないのか、それとも……。

 

 どちらにせよ、この女は俺一人で対処する事にしよう。いくらこっちが三人とは言え、アイツの事だから俺との戦いを楽しむ前にイリナとゼノヴィアを先に始末すると思う。二人には悪いがイッセー達の方へと向かってもらうとするか。

 

「ゼノヴィア、イリナ。君達はイッセー達と合流しろ。この女は俺が相手をする」

 

「何?」

 

「ちょっとリューセーくん。いきなり何言ってるの? ここは三人で戦ったほうが……」

 

「いや、あの女との相手は俺一人でやった方が良い。君達の目的は聖剣の回収だろ? だったら聖剣を持ってる少年神父の方へ行け」

 

 それにエリーの奴、俺が二人と話してる事に不機嫌な顔をしてる。サキュバスのエリーから見たら俺が教会側の女と仲良くお喋りしてるように見えて、二人を殺したい衝動に駆られてる筈だ。アイツは自己中な上に、非常に不愉快だが俺に対する独占欲が激しいからな。

 

「ねぇダーリン、そんな小娘たちと仲良くお喋りするくらいなら……早く私の相手をしてくれないかしらぁ!」

 

『っ!』

 

 痺れを切らしたエリーが両手を開いたまま俺達に真っ直ぐ向けると、掌から無数の魔力弾を撃って来た。

 

 俺は二人を守ろうと前に出て即座に光の防御壁を展開する。その直後にエリーの魔力弾が当たるも、何事も無かったかのように霧散していく。

 

「な、何だあの魔力は? とても人間とは思えないものだったぞ……」

 

「魔術師とは比べ物にならない魔力だったわ。あの人、一体何者なの?」

 

「今は奴の事は気にしなくて良いから、君達は早くイッセー達の所へ行くんだ! 早く!」

 

 俺が少し語気を荒げて言うと、二人は気圧された様に廃工場から出ようとする。

 

「よ、よく分からんがここは任せたぞ、兵藤隆誠!」

 

「もうっ! リューセーくんってば意外と強引なんだから! フリードを倒したらすぐ加勢しに行くからね!」

 

 そう言って二人が廃工場から去ると、この場には俺とエリーの二人だけとなった。

 

「さて、勝手ながら二人を向こうに行かせたが」

 

「私は全然構わないわよ。ダーリンと二人きりになれるなら、いくらでも待ってあげるから」

 

「よく言う。俺が彼女達に指示しなかったら、二人を真っ先に殺すつもりだったんだろう? もう一つの(トラップ)を使ってな!」

 

 そう言った俺は再び光の槍を創生し、今度は斜め後方にある壁に刺した瞬間――

 

 

 パキィィンッッ!!

 

 

 魔法陣が浮かび、硝子が割れるように消えていった。

 

「あらら、暗殺式魔法陣の(トラップ)も見破ってたのね」

 

「当たり前だ。お前の考えてる事なんかお見通しだよ」

 

 一つ目の(トラップ)を看破し、もう(トラップ)は無いだろうと思い込ませる一種の搦め手だ。もしゼノヴィア達だけでエリーと対峙してたら、アイツが施した罠であっさりと殺されるところだった。

 

 エリーは戦闘(バトル)好きだが、搦め手を好んで使う策士でもある。特に自分の手を汚す必要が無いと判断する弱者相手には。

 

「念の為に言っておくが、俺相手に(トラップ)は通用しないぞ」

 

「フフフフ。(トラップ)はさっきダーリンが破壊したので最後よ。それにダーリン相手にそんな無粋な真似はしないわ。それじゃあ邪魔者がいなくなった事だし――」

 

 エリーは姿を人間から夢魔(サキュバス)へと変貌する。妖艶な姿となった事に美しさが一段と増し、そこら辺の男であれば一瞬で魅了されるほどだ。

 

「ここからは、ダーリンと楽しい時間を過ごさせてもらうわ。勿論ダーリンが良かったら夜伽の相手もOKだけど?」

 

「んなもんお断りだ」

 

 一般の男子だったら先ず間違いなく食いつく誘いを、俺は躊躇無く断る。

 

 夢魔(サキュバス)は男に激しい快楽を与える代償として精気を根こそぎ吸い尽くす存在。エリーのようなずば抜けた美しい夢魔(サキュバス)相手であれば、一瞬でミイラになって干乾びてしまう。

 

「んもう、本当につれないんだから。でもダーリンのそう言う所が好きなのよねぇ、私♪」

 

「お前に好かれても嬉しくねぇよ!」

 

 そう言って俺は一瞬でエリーの懐に入って拳で攻撃すると――

 

 

 ダァァンッ!!

 

 

「酷いじゃなぁい。躊躇いも無く私の顔に当てようとするなんて」

 

 エリーは難なく俺の拳を片手で受け止めた。

 

「今度は昨日みたく避けるつもりはないんだな」

 

 俺は拳を受け止められた事に驚く事なく話しかけると、エリーは深い笑みを浮かべる。

 

「フフフ。昨日は昨日よ。それにダーリンからの激しいアプローチはちゃんと受け止めないとね!」

 

「っ!」

 

 エリーは空いてる片手を使おうと、至近距離で俺の顔目掛けて魔力弾を当てようとする。咄嗟に顔を横にずらすと、エリーの手から放たれる魔力弾が通り抜けて壁に激突して爆発した。

 

「このっ!」

 

「おっと!」

 

 お返しと言わんばかりに、俺はもう片方の拳をエリーに攻撃するも即座に後方へ回避した。

 

「どうした? 俺からのアプローチは受け止めるんじゃないのか?」

 

「ウフフ。そう慌てないで。お楽しみはこ・れ・か・ら♪」

 

「………あっそ」

 

 にしてもコイツ、前に会った時より腕を上げたような気がする。俺もイッセーと同じく鍛錬して以前より少しは強くなったんだが……。

 

「私も私でダーリンと同じく鍛錬してるのよ。以前ダーリンに敗北したあの時、充分身に染みたからね」

 

 やっぱりそうだったか。ってか人の心を読まないで欲しいんだが。

 

「……まぁ良い。コカビエルを始末する前に、お前から滅させてもらうぞ。覚悟するんだな、エリー。ここからは本気でやらせてもらう」

 

「あらあら、私は堕天使(コカビエル)を倒す前の前座かしら? あんな後先考えないおバカさんなんか無視して、ずっと私の相手をしてもらいたいわね」

 

「んなもん知るか!」

 

 

 ドゥンッ!!

 

 

 俺はイッセーのように身体中から光のオーラを発すると、エリーは何やら悦楽にひたるような顔をする。

 

「ああ……相変わらず何て素敵なオーラなの。触れただけで消滅されそう……そう考えるだけで、ゾクゾクしちゃう……!」

 

「……………」

 

 顔を赤らめながら自分を抱きしめるように身体を震わすエリー。俺が本気を出すときには必ず変態的な行動をするんだよな。

 

「やっぱり私、ダーリンが欲しい。ダーリンの全てが欲しい……!」

 

「生憎だが、この身はお前になんかやらん。そして何より俺は……お前みたいな女は好かん!!」

 

「っ!」

 

 そう言って俺は片手から光弾を放つも、難なく躱すエリー。

 

「アハハハッ! 教会の時にも同じ事を言ったわねダーリン!」

 

「よく憶えてることで!」

 

 躱したエリーの次の行動は俺の真似のつもりか、一瞬で俺の懐に入って攻撃を仕掛けようとする。

 

 ここから俺とエリーの戦いが本格的に始まり、廃工場は徐々に無くなろうとしていく。




次回は一誠サイドの話となります。

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