暗殺聖闘士   作:挫梛道

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球技大会(秋)ルール概略
 
※男子:サッカー
・前後半20分ハーフの40分ゲーム
・オフサイドは無し
但し、サッカー部vsE組の試合に限り、有りとする
・時間内に決着が着かなかった場合、5vs5のPKを行う。
それでも決着が着かなかった場合、サドンデスルールでPKを続行とする
・選手交代人数の制限は無し
但し、一度ベンチに下がった選手の再起用は不可
これは、時間内に決着が着かなかった後の、PKの出場者にも引き継がれる
 
※女子:バレーボール
・1セット11点マッチで、2セット先取したチームの勝ちとする
・リベロの設定は無し
・選手交代の制限は無し
一度、ベンチに下がった選手の再起用も認可



サッカー部の時間

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「「「「「「………………。」」」」」」

 

試合終了。

その結末に、どん引きなE組男子。

 

「「「「「「「「「「「「「……………………………。」」」」」」」」」」」」」

いや、E組だけでなく、その場全ての観衆が、その結果に どん引いていた。

                  

「おいおい? あの お坊っちゃん、其処迄するか?」

                  

球技大会(秋)クラス対抗トーナメント、3年男子のサッカー決勝は、7vs3でA組がB組から勝利、A組の優勝となった。

                  

「ま、まさかの…」

「外国人部隊、再び…?」

…そうなのである。

B組2点リードの形で突入した後半戦、A組は偶々?3日前から研修留学生として来日していた、スペイン、アルゼンチン、イングランド、ドイツからの留学生を投入。

この4人による攻守の活躍で、あっさりと逆転。

その儘 追加点を重ねて往きの、結果、A組の圧勝で終わったのだった。

                  

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「浅野!お前、其処迄…其処迄して、勝ちたいのか!?」

「…当然だ。

僕達は、負ける訳には往かないんだ。

大体 お前達B組で、今のE組に勝てるのかい?

E組を勝たせない為には、僕達A組が迎え撃つのが絶対必要条件なんだよ…。」

「お前…」

試合終了後、浅野に対して外人助っ人投入に その是非を問い質す進藤だが、当の浅野は あっさりと『アリ』だと答え、グランドを去る。

 

「お前、分かって…気付いているのか?

その発言、『今のA組では、E組に勝てない』と言ってるのと同じだぞ…?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「あ~、野球部や、体育祭の件もある。

E組だからって油断せず、確実にボールを支配した試合を進めて行け。」

「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」トーナメントが終わり、一応は締めのゲーム、サッカー部vsE組のゲームが始まる前のサッカー部側ベンチでは、サッカー部顧問が選手達に指示を出していた。

 

 

何が有ったかは知らんが、今年のE組は、色々と『やる』みたいだ。

だからこそ、彼等には悪いが、今年は本当に公開処刑になるかも知れんな…。

俺は野球部や女子バスケ部の顧問みたいに、理事長からOHANASHIされるのは、勘弁だからな。

 

                  

この顧問は1年生クラスの担任を受け持っている為、今年のE組の行動力については殆ど知らない。

体育祭での活躍を見た程度なのだ。

しかし、それだけで学力は兎も角、運動能力だけは油断ならない存在なのは、充分に理解出来ていた。

 

「属、この試合、お前がグランドで指揮を執れ。」

「はい!!」

…だからこそ、サッカー部からすれば、普通なら夏に引退した3年生は外し、2年生を中心とした新生スタメン御披露目の儀式を兼ねている この秋の球技大会なのだが、その3年生もスタメンに組み込んだ、実質的に最強のメンバーで試合に挑む姿勢。

2年生の新キャプテンでなく、経験値を持っている3年生の先代キャプテンに、グランド内での指示を一任する。

                  

「…いくら運動神経が良くたって、それだけでサッカーが出来たら世話しねぇ。

赤羽と吉良…。

如何に危険人物とか言われてても、アイツ等は所詮、サッカーは素人な筈。

本当に注意しないといけないのは、前原だけだろう。

赤羽に茂部、木村に駆浮。

吉良には七志乃がマークに付け。

前原には、俺が付く。

それから大橋…お前は あの、バンダナをマークだ。」

「「「応!!」」」「は…はい!」

試合前、先代サッカー部キャプテン、属修人が、部員に それぞ指示を出す。

 

「よし、行くぞ!!」

「「「「「「「「応!!」」」」」」」」

先代キャプテンの掛け声に勢い良く答え、白地に左胸元には縦書きの黒文字で『椚ヶ丘』のロゴ、肩口に緑と黒と赤、3色のラインが入った上着に黒のパンツの、公式試合用のユニホームを纏ったサッカー部員がグランドに入場する。

そして反対サイドからは、

「行くぜ!!」

「「「「「「「「応!!」」」」」」」」

前原を先頭に、普段の超体育着…ではなく、久し振りとなる本来の学校指定のジャージの上に、オレンジのゼッケンベストを着込んだ、E組のスタメンがグランドに入った。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「前原…悪いが油断は せん…

本気で行くぞ!」

「そりゃ…どーも…」

センターサークルに整列する。E組とサッカー部の面々。

その先頭位置に立つ、属と前原が、二言三言、言葉を交わす。

 

『『『『ヨロシクお願いします!!』』』』

そして この挨拶の後、両陣営は それぞれのポジションに散らばる。

 

「おい、属…あれは…?」

「ん。少し予定変更。

七志乃が あのバンダナに。

大橋、お前は前線に上がって行け。

今日の試合、お前達2年中心に、ボールを回すぞ。」

「応!」「はい!」

 

 

※※※※※ E組先発オーダー ※※※※※

 

 FW  菅谷  赤羽  木村

 

 

 MF      前原

    杉野      吉田

        堀部

 

 

 DF  千葉  磯貝  寺坂

 

 

 GK      吉良

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

元サッカー部の前原。

俊足・木村。

危険人物コンビの響とカルマ。

そして体育祭、棒倒しでのスーパージャンプで、その存在感を見せつけたイトナ。

当初は この5人を敵方の攻撃の要、要注意人物として、個別マークを付ける予定だった。

…が、その内の1人が まさかのキーパーに位置している事から、即座に そのマークポジションの変更を指示する属。

引退した3年生が敵の主力を封じ、新キャプテンを中心とした新レギュラー達に試合を決めさせる試合運びにシフトチェンジ。

 

「頼むぜ、キャプテン。(笑)」

「はい!」

そんな遣り取りが交わされている中、

 

 

ピイーッ!

 

グランドに、試合開始のホイッスルが鳴り響いた。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「お前かよ!?」

「言った筈だ!全力で行くってな!!」

コイントスにより、ボールの権利を得たE組。

前原がドリブルで進もうとする中、早速 属がマークに張り付いた。

 

「ちぃっ!!」

元チームメイト、先代キャプテンのマークに、嫌な顔をする前原。

 

 

カルマには茂部が張っ付いて、木村には駆浮…

イトナには…ゲッ!! 七志乃かよ!?

俺等E組だぜ!?

どんだけ本気なんだよ、コイツ等?

少しは油断しやがれ!!

だったら…

 

 

「杉野!」

パシィッ

属の執拗なカットを躱しながら、巧みにボールをキープする前原。

前線を走る杉野に向け、パスを放つ。

しかし このボールは、

「あ…」「しゃあっ!!」「しまっ?!」

サッカー部のディフェンス陣にインターセプトされてしまう。

 

パシィッパシィッパシィッパシィッパシィッ!

「な?」「ぅげ!?」「速っ?!」

そして そこから始まる高速のパス回し…

予め、パスのルート、受け手蹴り手の順番が決められていたかの様な、無駄の無い組織プレーでボールをガンガンと前に進めて行くサッカー部。

 

「大橋!」

「あぁっ!」

そして最前線に位置していた、サッカー部 新キャプテン・大橋にパスが放たれる。

後方からのパスを、まるでボールの落下地点が分かっているかの様に、その位置迄 振り向く事無く走り込むと、ワンバウンドしたボールをその儘 足で受け止めてドリブル、ペナルティーエリア内に切り込む。

 

「させるかよ!」

その進撃を止めるかの如く、前に立ちはだかるのは寺坂。

 

「…!!」

シュ…

「な…?」

しかし、その正面からのプレスを、フェイントを混ぜたサイドステップで躱した大橋は、

「テャァッ!!」

バスゥッ!!

その儘、其処で強烈なシュートを放った。

 

バシィッ!

「な…?」

「「「吉良っ!!」」」

しかし、そのゴール枠右上角を狙って撃たれたボールは、キーパーである響の左のパンチングに弾かれ、テンテンと転がりながら、フィールドの外に。

サッカー部のコーナーキックとなる。

 

「ふぅ~~~~、危な!!」

「しっかり捕れよwww」

「いや、ナイスセーブだよ!」

「あぁ。俺達だったら、普通に決められてたな、今の…」

ゴールされるのを防いだが、キャッチ出来なかった響を茶化す寺坂と、それをフォローする磯貝と千葉。

サッカー練習の初日、キーパーを決めるべくな、前原を含む、E組男子で行った烏間とのPK対決。

その中で唯一、烏間の撃った殺人的シュートに反応"だけは"出来た響が、キーパーと決まったのだったが…

 

「吉良っちがキーパーで、正解だったね~♪」

「…全くだぜ!」

守備の為、ゴール前に戻るカルマと前原も、その頼もしさに改めて、感心と安心の笑みを浮かべていた。

 

 

「嘘…だろ…

絶対に決まったと思ったのに…」

そして、信じられないと云う表情を浮かべているのは、ボールを蹴った大橋。

 

パシッ!

「ぁ痛あっ!?」

そんな大橋の頭上に、手刀が落ちる。

 

「引き摺るな、切り換えろ!!」

「…キャプt(ビシィッ!)痛ぃっ?!」

そして再び落ちる手刀。

 

「今のキャプテンは、お前だろがwww」

「痛いっすよぉ、先輩~…」

それは動揺している新キャプテン(後輩)に対して、先代キャプテン(先輩)流の、少しだけ手荒いフォローだった。

 

「今のは吉良(アイツ)が見事だったとしか、言えねー。」

「背負い投げの人ですよね? あの人…」

「それよかコーナーキック、極力お前に合わせるから、きっちり決めていけ!」

「はい!」

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

ピッ…

コーナーキック。

敵味方、殆どのプレイヤーが集まったE組ペナルティーエリア内、属が高く蹴り上げたボールに合わせる様に、大橋が高くジャンプ。

ヘディングを狙うが、

「うぉらっ!!」

ガシィッ!

「なっ…!?」

同時に跳んでいた響が、そのボールを空中、両手でガッチリとキャッチ。

 

「上がれぇいっ!!」

バシィッ!

着地と同時に、大きく前方に蹴り上げ、このピンチを脱した。

 

「磯貝、あの9番、マーク頼む。

ボール奪えとは言わないから、兎に角フリーにしないでくれ。」

「了解だ。」

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「渚~!」「竹ちん~♪」

「茅野…皆…?」

E組側ベンチにて、フィールド上でプレイしている選手達を応援している、渚達に声を掛けてきたのはE組女子。

 

「え~と、今のタイミングで こっちに来たって事は…?」

「ん~、負けちゃった~。」

どうやらE組女子は、女子バレー部に、敗れた様だ。

 

「…で、でも、お互いに1セットずつ取り合って、ラストもデュース迄、縺れ込んだんだから!」

「イケメグが無双して、1年2年の女子が、『きゃーっ!!♪』だった。」

「い、言わないで…(T_T)」

「トーカも意外と?大活躍だったよね?」

「ん、自分でも驚いた。

高校になったら、本格的に始めてみようかな?」

「…で、渚?こっちは どーなん?

…って、まだ0vs0?」

「ん~、それが…」

 

バシィッ!!

「…っとぉ!」

「っらあっ!!」

この遣り取りのタイミングで、またサッカー部員のシュートがE組ゴールを脅かすが、それを響がパンチングで弾き、その こぼれ球を、寺坂が大きくクリアー。

 

「…見ての通り、吉良君の活躍で、失点は免れているって感じだよ。」

 

 

ピピーッ!

そして此処で、前半終了のホィッスルが鳴った。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「クソっ!?

先輩、何なのですか、あの人は?」

「素人とは思えないっすよ?!」

「大橋、お前達も落ち着け。」

ハーフタイムのサッカー部ベンチでは、3年は兎も角、前半、結局は得点の出来なかった新レギュラーの2年生達が苛立っていた。

 

「吉良は特別なんだよ…

勉強でも、スポーツでもな。」

「アイツは2年の終わりに、余所から転校してきたんだが、兎に角 浅野クラス…いや、それ以上にチートな奴なんだ。」

「浅野さん…ですか…」

その苛立ち…無得点の元凶の響の事を話すサッカー部員。

 

「しかし当然、あのキーパーからゴールを奪わなきゃダメなのは変わらん。

いや、大丈夫だ。

前半も、ボールの支配は殆ど お前達だったんだ。

得点出来なかった以外は、ダメ出しする要素の無い試合運びだった。

焦らずに今迄通り…いや、今迄以上に畳み掛けて行け!!」

「「「「「「「「はい!!」」」」」」」

サッカー部顧問の言葉に、気迫有る大声で応えるサッカー部員達。

 

「当然だ…。

あんな巫山戯たトーナメント表…

無意味にしてやるぜ…!!」

「属…気持ちは解るが、お前も落ち着け。

立場上、お前が一番、冷静に ならないといけないんだ。」

「…はい。」

サッカー部からすれば、やはり椚ヶ丘の生徒故な差別意識からか、E組の公開処刑の執行人となる事には、差程の抵抗は持っていなかった。

しかし、今回のプログラム…

如何にもサッカー部がE組に敗れるのが前提な、変則的トーナメントシステムに不快を感じない者は居なく。

しかも一応は偶々日程が重なったとされているが、どう考えてもE組生徒をサッカーで叩きのめす為だけに喚んだとしか思えない、留学生の存在が明らかになった事で、その感情は最高点に達していた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「吉良君の本職は空手だよね?

三角蹴りディフェンスって、でk

「出来るかっ?!」

「…じゃあ、せめて、手刀ディf

「突き指するわっ!!」

「ちぃっ…使えないヤツ!」

「何でだよ!?」

一方のE組ベンチ。

ボブカット女子と響が漫才?をしている中も、一応は真面目に作戦会議が行われていた。

 

「ねぇ~、吉良っちぃ~!『アレ』、やってみない~?♪」

「ん? 俺は構わないが、あの執拗なマークの中で、出来るのか?」

「…やるって言うなら、意地でも振り切ってみせる。」

「…決まりだな。」

「どうせA組…あの外人キーパーには通用しねーだろうし、出し惜しみする必要も無いだろが!」

「そりゃ、そーだ。」

「でも、やるからには確実に決めないといけませんね。」

「決めようが外そうが、1度見せたら、次からは間違い無く警戒されるからな。」

「吉良?」

「…分かった。

じゃ、その時は、分かり易い掛け声出すから、頼んだぜ。」

「「「「「「「「応!!」」」」」」」」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ピーッ!

後半、サッカー部のキックオフで試合が開始した。

 

「おいおい属ぁ? ボール持ってない俺にばっか、構って良いのかよ?

さっさと攻め込んだのが良いんじやね?

俺、ストーカーは…ましてや、ヤローの ストーカーは、お断りなんだが?」

「喧しいわ! この、女っ垂らしの糞チャラ男が!!」

「そ、その呼び名は止めろぉーーおっ!!」

偶然だろうが、つい最近に付けられた、不名誉な二つ名で呼ばれ、思わず絶叫する前原。

…しかし、事実だ。

 

 

 

バシィッ!!

「…っとぉ!!」

「な…ナイス、吉良…!」

そして試合は、相変わらずサッカー部が主導権を握る展開に。

前半からの話なのだが、ボールはセンターラインより先、サッカー部側には殆ど侵入する事の無い、E組劣勢の状況が続いていた。

ゴールを守るのが響でなければ、既に10点以上の点差が着いていても、不思議では無かった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「ケケケ…こりゃ、時間の問題だな。」

「フルボッコに なってないのが、気に入らないけどな。」

観客席でE組…特に個人的理由で響を快く思っていないD組の男子生徒2人が、E組のピンチを見て嬉しそうに、下卑た嗤い顔を浮かべる。

…尤も今の この時期で、E組を未だにENDの象徴と見ているのは、3年生の一部だけで、約2名が原因だが、E組全体を畏怖の対象と見る者も、決して少なくは無く。

1年2年に関しては、3年生から聞かされた噂に+(ブラス)して、先の体育祭の活躍から、羨望の対象としている者も、少なくは無かった。

本来のE組らしく、無様に大敗を喫するのを望む者も確かに多いが、ジャイアント・キリングを期待する者、或いは対野球部の結果も有ったのか、E組がサッカー部に勝つのでは?…と、普通に考えている者も少なくは無く。

そういう事情も有り、決して完全アウェイな環境でなく、僅かにサッカー部に対する声援が多い程度な状況の中、

「「負けろ!負けちまえ!!」」

…と、心底から願うD組の2人組み。

しかし、試合は未だ、両者に得点が入る事は無く。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「くっ…さっきから、邪魔ばっかり…!」

ゴール付近でのパスは通るが、磯貝の巧みなマークで、思う様にシュートを撃てない大橋。

次世代のストライカーのシュートが悉く、素人キーパーに止められていたのも、実は このイケメン委員長の目立たない仕事が大きかった。

 

「構わない磯貝!

仕掛けるから、撃たせろ!!」

「「「「「「はぁあ?!」」」」」」

この響の大声の指示に、それを聞いた選手達が敵味方問わず、驚き、或いは呆れの声を出す。

特にE組(みかた)は、

 

 

こ…この男、確かに仕掛ける時は「分かり易い掛け声出す」と言っていたがオマエ…分かり易過ぎるだろーが!

そんな弩ストレートに言って どーすんだ!?

サッカー部にもダダバレじゃねーか?

こっの、露出リア充!!

 

 

…ベンチの渚達、女子達も一緒となって、心の中で心を1つにしての総突っ込み。

 

ダダダッ…!!

「あ?」「えっ?」「何?」「しまっ…」

しかし そんな中、心中 突っ込みながらも前原、カルマ、イトナ、木村が各々に粘着するかの様に張り憑いていたマークを外すべく、一斉にダッシュ。

そして、

「な、舐めるなぁ!!!!!」

ドッガァアッ!!

響の指示通り、磯貝がマークを外した事により、フリーとなった大橋が、怒りの雄叫びと共にシュートを放つが、

ガシィッ!

「な…!?」

ゴール左下を狙った そのボールは、響の横っ飛びのキャッチで止められてしまう。

 

「きぃっえぇぇぇぇぇぇぇぇぃいやぁ!!」

バシィッ!!

そして自らに気合いを入れる様に…端から見れば、奇声とも受け取られかねない…独特の空手流の雄叫びで、大きく前方にボールを蹴り上げる響。

センターラインを大きく越え、敵陣地、ペナルティーエリア手前迄達したボール。

そのボールに誰よりも早く追い付き拾うのは、

「取りぃ!」

E組一の俊足・木村である。

自身のマーカーの一瞬の隙を突き、そのマークを振り解いた後は、誰も彼に追い付く事は出来ず。

 

「「「木村!」」」

「……!」

そして やはりマークから逃れ、ペナルティーエリアに入っている前原、カルマ、イトナ。

響の あの掛け声の中、心の中で突っ込みながらも、何だかんだで放たれるシュートは止めてくれると信用、守備は棄て、敵陣深く、斬り込んでいた。

                  

パシィッ

その中に、クロスを放る木村。

 

「…貰った。」

サッカー部守備陣との凌ぎ合いを制し、このボールをゲットしたのはイトナ。

ビシィッ!!

トラップ後、執拗なプレスの前に、体勢を崩しながらもシュートを打ち込むが、これはキーパーに弾かれ、ゴール前に浮き球となってしまう。

 

「クリアだ!早くクリアしろ!」

これを倒れ込んでいるキーパーが、上体を起き上がらせながら指示。

それに対し、サッカー部ディフェンダーと菅谷が、ボールを追い大きくジャンプ

 

「「うぉあぁあっ!!」」

パシィッ!

上空でのボールの奪い合い…空中戦は、上背で勝る菅谷が競り勝ち、ゴール目掛けて強烈なヘディングを落とした。

 

「さ・せ・る・か!!」

ビシィ!

だが、これは まだ完全に体勢を整えていないながらも、咄嗟に出したキーパーの足に阻まれる。

ゴール前で大きくバウンドするボール。

 

ダッ…

そして今度は そのボールに、頭から飛び付こうとする人影が1つ。

 

「うぅ~…ぁあっ!!」

「前…原ぁっ!!」

そして更には、そのダイビングヘッドを阻止せんと、属がスライディングから脚を延ばし、ブロックに入った。

 

ガンっ!!

前原の額と属の右足が、ボールを挟んで激突して…

  

 

ピ…ピピーーーーーーーーッ!

『ゴ…ゴォーーーーーーーーール!!

0vs0の均衡が、遂に崩れたぁーーー!

後半9分、E組10番…ぇーと…前原のヘディングシュートが、サッカー部ゴールに突き刺さったあーーーーーーー!!!!!

先取点は、E組!

前半からサッカー部の怒涛の攻撃を耐え凌いできたE組が、漸く訪れたチャンスを逃す事無く生かし、サッカー部からゴールを強奪だぁーーーっ!!』

 

うわわああああぁーーーーーーーーっ!!!!

 

E組ゴールを告げる笛の音とアナウンス、そして歓声が、グランドに響き渡った。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「ナイスヘッドだ、前原!!」

「応よ!」

「菅谷もな!」

「木村も、良いクロスだったぜ!!」

サッカー部ゴール前、互いのプレーを讃え合い、もう勝ったかの様に やんややんやな前原達。

 

 

「…ねぇ、俺は?

俺のロビングは…? orz」

「い、いや…吉良も、ナイスキックだったから!」

「アイツ等も、それは分かってるって…」

「orzるな、orzるな!!www」

その様子をE組ゴール前から遠目に見て、ぼつりと呟く男が1人。

 

 

 

「クっソが…!」

「まだ、終わってないっすよ…!!」

「行くぞ!倍返しだ!!」

「「「「「「応!!」」」」」」

そしてサッカー部。

その失点1つで諦めて試合終了してしまう程、彼等のメンタルは脆く無く、寧ろ その戦る気に、更に火を点ける事となった。

 

 

 

…しかし、

 

わーわーわーわーわーわー…

 

 

ピピーーーーーーーーーーーーーッ

『…ここでタイムアップの笛!

試合終了ーーーーーーーっ!!

サッカー部vsE組のエキシビションマッチは、1-0!

E組の勝利で、幕を降ろしましたーーーーーっ!!』                                 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「「「「「「「「「「「きゃっはぁーーーーーーーーい!!!!」」」」」」」」」」」

グランド中央で、先程の先取点奪取の時以上のテンションを見せるE組一同。

 

 

「「「「「やたーーーーーーーっ!!」」」」」

「「「「「良ぉっし!」」」」」

「「やりましたね!」」

「「「「「勝ったどーーーーーっ!!」」」」」

「ま、当然だろぅ?」

それは、ベンチも同様。

 

「やりましたぁ!」

茅野が持つスマホの画面の中で、日本代表・青のユニホーム(15)を着た少女も、喜び飛び跳ねている。

 

 

「ぁ… 」

「負…けた…のか…?」

「E組相手に…」

「俺達…が…」

「負け…た…?」

そしてサッカー部。

自分達が負けたのが、信じられない様に、全員が呆然としている。

 

 

「あっはっは…こりゃ、理事長に呼び出されて、OHANASHIかな~?

あっはっはっはっは~ぃ…はぁあ~~…」

「「「か、監督ぅ??!」」」

更にはサッカー部ベンチは、顧問が半分 壊れかけ、控え選手達も それを見て、心配そうな顔を見せる。

 

「い、いや、大丈夫だ。

お前達の試合運びはベストだった。

ただ、数多くのチャンスを活かせず、たった一度だけ訪れた、E組(てき)のチャンスを潰せなかったのは、反省材料…

今後の課題だな…」

「「「は…はい!」」」

撤回。

この監督は、大丈夫そうだ。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「前原…やられたよ…

俺達の、負けだ。」

「属…」

現実逃避から回復した属が、前原に話し掛けてきた。

 

「いーや、前原先輩!

俺、先輩に負けたって、これぽっちも思ってないすからね!

強いて言うなら、吉良さんには、完敗って、認めてやってm(パシィッ!!)あ痛ぁ!??」

「お前は黙れ。」

「ははは…負けず嫌いは良い事だよ。

頼もしい新キャプテンじゃないか?」

そして今回の試合、サッカー部の攻撃の柱となっていた、大橋も会話に加わる。

 

「…でも お前等、次、大丈夫なのかよ?

あの外人部隊…

ぶっちゃけ、俺達に負けてた方が、ダメージが少なかっt

「あ~、話している処 済まないが、サッカー部の諸君は、速やかにグランドから退散して貰えるかな?

今からA組vsE組の、リアル・ファイナルを始めるんでね?」

「「「!!????」」」

 

 




※※※※※今回のボツネタ(笑)※※※※※
 
「でぇりゃっ!」
センターラインまでドリブルで進んだ寺坂が、サッカー部ゴール前、ペナルティーエリア内へ、高々とボールを蹴り上げる。
 
「来い!イトナ!!」
同時に前原が、バレーボールのレシーブの構えをイトナに向ける。
 
コクン………ダッ!!
それに小さく頷いたイトナが、前原に向けてダッシュ。
 
「うっりゃああああっ!!!!」
そして繰り出されるのは、体育祭、棒倒しの時に見せた、スーパージャンプ。
 
「…ここだ!」
高く浮いているボールに合わせ、イトナは空中でバク転の要領で身体を捻り、
 
バシィッ!!
高角度オーバーヘッドキックを炸裂、
 
ズバァアッ!!
ピッピーーーーーーーーーーーーーーッ!! 
そのボールは見事、サッカー部側のゴールネットに突き刺さった。
 
 
………。
余りにもハイパー過ぎたので、ボツにしました。(笑)
 
 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 
属修人…スティンガー(ワンパンマン:村田版)
大橋陽司…進藤ヒカル(ヒカルの碁)
 
…を松井先生・画に修正したイメージで。 
 
≫≫≫≫ 次回予告(予定)!! ≪≪≪≪
 
次回:暗殺聖闘士『アスリートの時間(仮)』
乞う御期待!! コメントよろしくです。
 

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