…タグにも、きちんと表記していますから
「~~~~~~~~~~~~~♪」
何だかんだで、彼女は上機嫌だった。
本来ならば、この日は久し振りの休暇(オフ)だった。
しかし、急遽 飛び込んで来た この仕事。
事務所の社長に頭を下げられるが、
「まぁ…別に、良いけど?」
高校を中退して この業界に足を踏み入れた時から、まともに休めない事は覚悟していた彼女は、嫌な顔をせずに それを了承。
中高一貫の有名私立校の学園祭の特設ステージにて、数曲歌うだけという、その職種にプライドを持って就いた者としては やや物足りなさを感じながらも、課せられた仕事をこなした後は、せっかくだからと その儘、今度は一般来訪者として、久し振りとなる『学校の空気』を堪能していた。
そう、例え校内を歩くと言った際、エリート様は何をしても赦されると勘違いしている様な中学生(ガキ)に、肩ポンされそうになり、気分を少しだけ害したのを差し引いたとしても…
それなりに…と云うか、かなり売れている筈の顔も、顔の下半分をマスクで覆っているからか、周りの者達も、誰も彼女を『彼女』だと気付かない。
それには半分、複雑な思いを抱きながらも、この学園の雰囲気を楽しんでいた。
「…ん?アイツって…?」
そんな中、彼女は、燕尾服を着た少年…恐らくは この学校の生徒であろう少年が、やはり一般来訪者に対して自分達の出し物を推している場面に遭遇する。
髪、固めてるし、眼鏡掛けてるけど、間違い無いよな…
アイツ、此処の生徒だったのか…
既に過去、私事(プライベート)で数回程会って話しており、その知っている容姿でないにしろ、その雰囲気や目付きから、自分が知っている人物と確信した彼女は、
「お~い!キ~ラヒ~ビキ~ぃ!!」
その名前を呼んだのであった。
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
「さ…サキさんん??!」
「お~ぅ、やっぱし吉良君だったし~♪
…で、何なの、そのカッコ?
悪いけど、全然 似合ってないよ~?www」
超々・危険人物と云う悪名故に…校内の生徒に声を掛けたら、それは それで、脅えながらも山を登ってくれるだろうが、それは自身の、そして今回の場合、E組の評判を落としかねないので…外からの来校者をターゲットとし、とりあえずはと、廊下を歩いていた親子連れにメニューを見せながらの客引きをしていた響。
そんな響に、いきなり背後からフルネームで呼び掛けてきた人物。
須木奈佐木咲(スキナサキサキ)。
浅野が企画した、イベントカフェに派遣されたアイドルの1人。
昨年の7月頃に「殺気姫」の愛称デビューした彼女、実は響とは、とあるネットサイトでのサークル仲間で、そのオフ会で何度か顔を合わせ、その時に所謂フラグ等は立たずに、普通に仲良くなっていた。
それもあってか、顔を合わせた早々に、響が着用している燕尾服を容赦無く弄り倒しだした。
「じ…自覚は有るから、放っといて下さい…(T_T)」
勿論、最初は そのオフ会、まさかの人気アイドル登場に、響だけでなく、他のメンバー達も驚いたのは、言う迄もなく。
因みに このサークルには…響は単に よくある、偶々同じ名字で片付けて気付いていないが…E組の ある女子生徒の、1歳年上の従兄も加入しているのだが、それは別の物語。
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「「吉っ良ーぁっ!でかした!!」」
山の麓で送迎要員として待機していた寺坂と吉田が、響が連れてきたアイドルを見て大はしゃぎ。
「「咲さん、どーぞどーぞどーぞ!」」
浮かれ顔で、咲(…と、響が一緒に連れてきた親子)をリヤカーに乗る様に勧めるが、
「いやいや、私は歩いて行くから、大丈夫だよ~。」
「え?山道、結構キツいっすよ?」
「ふっふーん!アイドルの体力舐めんな、中学生?
たしかに仕事柄、必要以上な筋肉は付けらんないけど、体力は かなりないと、アイドルって やって行けないんだよ~!」
「「………………………。」」
そう言って、咲は響と、そして同行していた親子連れと、山を登って行くのだった。
「「「「「すっすっす…須木奈佐木咲さん!??」」」」」
「「「「「咲ちゃん!?」」」」」
「「「「殺気姫??!」」」」
そして旧校舎に辿り着けば、今度はE組の面々だけでなく、その場に来ていた客が一般来訪者、本校舎生徒問わず、こんな山の上での まさかの人気アイドル登場に どよめきたつ。
「…………!!?」
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「にゅやーー!離して下さい、烏間先生!
咲さん咲さん咲さん咲さーーーーん!!」
「国家機密が、今日みたいな日に外に出ようとするな!!」
「大丈夫です!ほら、こうやって変装をですね…」
「それは もしかして、俺の心算か…?!」
…そして舞台裏にも1人、彼女のファンが居た様だが、その立場から一般大衆の前に出る事は叶わず。
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「はいどーぞ、E組特製どんぐり漬け麺で~す!」
「ぅわ!美味しそ~!!」
矢田が持って来た漬け麺を目にして、それ迄着用していたマスクを外し、箸を割る須木奈佐木咲。
「…………………………。」
その際、一瞬だが彼女の目付きが変わったのに気付いた響は
「ちょぃちょい…片岡さん岡野さん中村ちゃん?」
「「「???」」」
近くに居た、数人の女子を手招き。
「何なの、吉良っち?」
「いや…いざって時は、全力でサキさんを止めてくれ…ってね。」
「はい?」
「知ってるだろ?あの人の悪癖。」
「「「あ…」」」
「それじゃ、頼んだぜ。」
「ぉ~ぅ…」「了解。」「…頼まれた。」
ちゅる…
陰で そんな遣り取りが行われている中、麺を口に運び、一口啜る咲。
「………?!ぅ…美味っ!!」
そして まさかの驚きの表情。
正直な話、所詮は中学生の料理…
とりあえずは友達の催す出し物だからと、一応は社交辞令な対応を見せる心算だったが、その想定外予想以上の完成度に、
ちゅる…ちゅるるる…ずずずずずずず…!!
何処ぞのラーメン系グルメマンガの如く、一心不乱に食べ始める。
そして、
「ちょ…マジに美味いんですけどっ!?
ヤッべ…マジにヤッべーーーーーー!!
テンション、上がってキタァーーーー?」
バサァ…
「「「「……!!?」」」」
そう言いながら、羽織っていたジャケットを脱ぎ捨て、更には その下に来ていたシャツも同様とばかり、その裾を捲り上げようとした時、
「「「だ、ダメぇーーーーーー!!?」」」
その先のアクションの続きは、片岡、岡野、中村の3人に、全力で阻止された。
「まさか本当に…」
「吉良っちの言う通りに なるとわ…」
「余りの美味さにイメージでなく、リアルに脱ごうとするなんて、流石はアイドル、恐るべし!」
「不破さん?」
彼女の悪癖…
実はアイドル・須木奈佐木咲は、テンションがクライマックスに達すると、上だけではあるが、着ている衣服を脱ぎ捨て ぽろりすると云う、誠に素晴らs…けしからん癖が有り、そのせいでテレビの生放送には出演出来ないと云う背景が有った。
尤も何処ぞの露出狂(笑)と違い、当人も この癖は気に病んでおり、何時も後々 楽屋にて、死ぬ程恥ずかしがって後悔しているらしいのだが…
「吉良と殺気姫が友達なの、何だか納得出来たぜ…」
「…類友。」
「ま、まさか知り合ったサークルって、『そっち系』じゃないでしょうね?」
…『そっち系』と云うのが、どちらの方向を示しているのは定かでは無いが、件のサークルの名前は【原点回帰】。
このサークル、とあるE組女子の従兄も加入しているのは、別の物語である。(2回目)
((((((((な、何て余計な真似をしてくれたんだ?!!!!…orz))))))))
そして咲と片岡達との遣り取りを見て、E組、本校舎生徒…そして来校客問わずに、その場の殆どの男衆が心の中で慟哭。
勿論、
「にゅやーー(」゙O゚L)ーーっ?!
何て余計な事を!?
例え咲さんが ぽろり全開したとしても、先生がマッハで駆け付け、触手ブラで隠したのに!」
E組担任のエロダコも、部外者の入ってこないスタッフルームで、その感情を隠す事無く、嘆き悲しんでいた。
「何言ってんだよ、殺せんせーわ…」
「アイドルが触手に襲われたって、ネタにしかならないわよ?」
「だから、国家機密が簡単に表に出るなっての…」
「い、いや!大丈夫です!
その為の、烏間先生の変s…にゅやーー?!」
その台詞を言い終わる前に、顔中に血管を浮かべた、弩怒りモード全開な烏間が、特殊素材のナイフで斬り掛かる。
「そりゃあ怒るぜ…」
「画的には、烏間先生が咲ちゃんに手ブラしてる図になるからな…」
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「いや~、悪い悪い。(≧∇≦)ゞ
…ってか、助かった。」
「全く…下手すりゃ営業中止になってたぜ…」
その場の殆どの男衆が残念そうにorzる中、自らが起こしたアクションとは云え、あられもない姿を晒すのを免れた咲が、少し照れ隠ししながら、申し訳無さそうに感謝混じりな謝罪。
やはり うら若き乙女なのか、己の柔肌を露にするのは真意では無かったらしい。
「…でも、下のステージでは、脱がなかったんですよね~?♪」
「ま、まあ…な…
一応はプロだし、何とか自重出来たんだけどな~…あは…ははは…」
「???」
この学園に於ける、E組と本校舎勢との関係を知らない咲が、カルマの問い掛けに、何かを誤魔化す様に、笑いながら答える。
いや、まさか、用意されたステージが余りにもチャちくて、イマイチ乗り切れなかった…なんて、学校の催しをディスる発言、言える訳が無いよな…
浅野のプロデュースしたイベントより、自分達の企画した催しの方がテンションが上だった…。
実は その本音は、E組の生徒達が聞けば最高に喜ぶ内容だったのを、咲は知らない。
「いや、今このガッコに来てる奴等で、時間の有る連中(タレント)呼び出すからさ、それで勘弁してよ~?」
確かにE組の催す会場で、アイドルの…否、アイドルでなくとも女性の ぽろり…破廉恥な事故が有ったと本校舎側に知られれば、直ぐに風紀委や それこそ浅野率いる生徒会が正当な理由として、此処ぞと…普段の怨みとばかりに乗り込んで、E組の出し物を中止させていただろう。
自身の恥ずかしい姿を晒すのを止めて貰った感謝の気持ちだけでなく、そちらの意味合いでも申し訳無いと思っているアイドルは、そう言いながらスマホを取り出すのだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
翌日の日曜日。
「ぅぉ~っす。」
「あ、おはよう、吉良君。」
「おは~♪」
山登りの途中、合流したのは響、渚、倉橋の3人。
「正直、どう思う?」
「ぅ~ん、咲ちゃんが最後、タレントさん呼んだりしてくれて、それに一緒に付いて来てくれた人達が、結構居たけどね~?」
「まぁ、今回は其処迄勝負に拘る必要、無いんじゃね?
最初から んな気は無かった訳だし。
殺せんせーだって、『今回は純粋に学園祭を楽しむ』を優先って言ってたろ?
浅野(おぼっちゃま)には、勝手に勝ち誇らせときゃ良ーさ。
それに何だかんだで、飲み食い無料のタレントショーには勝てないだろうよ。
余っ程な事…が無い限りはね。」
会話の話題は、今回の売り上げや、その校内ランキングだ。
「余程な事が、起きてま~す!♪」
「「「り、律ぅ?」」」
その会話の途中、渚の制服のポケットから、若い女の声。
慌てて取り出したスマホには、ウエイトレス姿の少女が微笑んでいた。
「詳しい話は、上でしますから、皆さん早く、教室に来て下さい!」
「お…応…」
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
「…って、」
「ほぇ?」
「な、何じゃあ こりゃあああああ!?」
山の中腹、律に言われた儘、少し駆け足で教室を目指す途中に響達の目に映ったのは人、人、人!!…の、大行列。
その先頭では磯貝と片岡が、テレビ局からのレポーターらしき集団の取材に応じていた。
「これって…」
「皆、ウチの開店待ち~?」
「昨日の今日で、何なんだよ?
この差わ…?」
その圧巻な光景に、面食らう響達。
「律?これって、もしかして…」
「はい♪」
律が言うには響達の予想通り、咲や、その咲に呼ばれ誘われて来たタレント達が、いずれも自身のブログ、ホームページ等でメニューを絶賛。
当然 他の一般客も、ツィート等で、学園祭…E組の出し物を紹介している者は少なくなく、その影響の可能性が高いとの事。
「…そして、この人の影響が、一番強いと思われます。」
「あ、この人って、昨日、一番最初に来た人だよ~!」
本名かは判らないが、『漆原芭有』と名乗る、響達と歳が変わらなく見える銀髪碧眼の少年が自身のホームページ上で、漬け麺だけでなく、サイドメニューも絶賛していた。
「この方はラーメン好きな人達の間では、それなりに有名な人らしく、この人の評価は、かなり信頼度が高いそうです。」
…らしい。
「とりあえず渚君も きーちゃんも走ろ!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「悪い村松!原(おかあ)さん!
これでもダッシュで来たから許せ!」
「応、良いから早く支度しろ!!」
「早く早く!」
既に調理室にて仕事を始めている割烹着姿の原と、実家の店の仕事着…正しく、THE・拉麺屋な出で立ちな村松料理長に急かされ、エプロンを纏う響達。
「今日は もうコレ、必要無ーよな?
…ってか、今日は もう絶対に着ねーぞ!!」
今日は客引きの為の燕尾服は、着る必要も着る気も無さそうだ。
「ほい、渚!」
「いや、吉良君!?
僕はプリム(※)は、要らないからね?!」
※プリム…メイドさんが よく頭に乗っけている『アレ』
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
それからは さながら、戦場と云う比喩が相応しい程の賑わいとなった。
そして それがピークに達するであろう少し前の、AM11時過ぎ…
「吉良~!」
「吉良君~♪」
「ひ~びきぃ~~~~~~~~っ!!♪」
彼女達が、やって来た。
今回登場の咲ちゃんについては、『〇だかボックス』や その関連小説を参照に。
≫≫≫≫ 次回予告(予定)!! ≪≪≪≪
「俺、ちょっと急用を思いついたわ~。」
「「「死亡フラグが立ちました?!」」」
次回:暗殺聖闘士『縁の時間(仮)』
乞う御期待!! コメントよろしくです。