暗殺聖闘士   作:挫梛道

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実は………なヤツだった、助っ人外国人。
 



衝突の時間

「Hey,これは一体、どういう事だ?

ガクシュウ?」

 

グランドのトラックヤードの内側、両端に用意された直径20㌢、長さ4㍍の丸太。

体育祭の真の〆のイベントである、本校舎選抜チームとE組による、【棒倒し】の準備が整った。

                  

しかし、その開始前、

「向こうは何故、俺達の半数程度しか居ないんダ?」

「あ~、GAKUCHIN~?

俺も それ、少し気になってるし~?」

本校舎サイドにて、E組陣営を見たリーヴ・メイプルとティッキー・パープルが、向こう側の参加人数について、浅野に問い掛けていた。 

 

「気にするな。

コレは本校舎(ボクタチ)とE組との総力戦なのに、向こうが勝手に、女子を引っ込めているだけだろう。」

「「WHAT?!」」

浅野の発言に、声をハモらせる2人。

 

ぐぃ…

「うぐっ!?」

「フ・ザ・ケ・ル・ナ!!

オマエは場合によっては、俺達に女相手に手を上げさせようとしていたのか?!」

「ぅが…」

「あゎわ…Leachin、少し落ち着こ!?

Cool down!ね?ね?」

その内容に怒りを露わにし、胸座を掴むと、その身長差を活かし浅野を高く持ち上げ締め上げ、更に問い詰めるリーヴ。

そして やはり最初はキレ気味だったが、完全に頭に血が登り、暴走したリーヴを見て、少しだけ冷静さを取り戻したティッキーが宥めに入る。

 

「ハァ…ハァ…」

そして漸く地に下ろされ、胸元を抑えながら息をする浅野に

「ん~、流石にコレは、無いわぁ~…」

冷めた、呆れかえる表情で、ティッキーが話し掛ける。

 

ざわざわざわざわざわざわざわ…

その様子を見ていた、他の棒倒しの参加生徒や、見学席の生徒や教諭達は困惑。

少なくとも直ぐ傍で、彼等の英語による やり取りを聞いていた生徒達も その全てを聴き取れる事も出来ず、何が起きたのか理解は不可能。

そして、

「何やってんだ?アイツ等?」

「ん~、仲間割れ?」

E組の面々も、遠目から見える光景に、少しだけ戸惑いの表情を見せていた。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

ガン!

「Son of a Bitch!!

やってられるか!俺は降りるぜ!!」

「俺も~♪パース!」

ポーイ…

 

「な…?」

競技中の、E組との『認識・判別』の為に(笑)、本校舎勢だけに渡されていたヘッドギアを地面に叩き付け、そして放り投げて、土壇場で出場辞退をアピールする2人。

更には

「НеУ,アンタ等は どうするんだ?

まだ、この茶番に付き合う心算かい?」

リーヴが残る留学生…浅野が喚んだ助っ人2人にも、ボイコットを呼び掛けるが、

「………?」「………………………。」

「あ~、英語、通じてないし~?」

最初から、この3人が何を話していたのか分からず、そして今も何を言われたのか解らない、韓国人とブラジル人の2人はノーリアクション。

 

「Damn it!

もう良い!行くぞ、ティック!!」

「らじゃぁ~。」

「ま、待ってくれ!」

そう言って、グランドを去ろうとする2人に、

「分かった!

此方も彼等に人数を合わせるから!」

リーヴのジャージの裾を掴んで、必死に呼び止める浅野。

パシィッ

「Do n't touch Me!」

「I will twist & crush it?」

「っ…!?」

しかし、その手を振り払い、まるで少し前迄の、本校舎の生徒達が、E組の生徒を見ているかの様な…否、それ以下の物を見るかの様な冷めた視線、低いドスの利いた声で浅野を黙らせる。

 

「オマエに勝っているヤツが居ると聞いたから、わざわざ海を越えて やって来たのだが、どうやらソイツが大したヤツでなく、オマエが大した事の無いヤツに、堕ち果てただけだったみたいだNA!」

「…だ、よね~♪」

「アサノ、俺は本当にオマエのリベンジ…捲土重来に協力する心算だったんだ…

しかし、オマエが今やろうとしているのは、恥の上塗りだ。」

「悪いね、アサノ~?

俺達、卑怯者の協力者なんかには、なりたくないし~?

時には手段選ばずも、悪いとは言わないけどさぁ、本当に、コレは無いわぁ~…」

「じゃあな、アサノ…オマエとは2度と、関わる事は無いだろう。」

「あでお~す!♪」

「ちょっと…待t…」

先程迄の親しみを込めたファーストネームや愛称でなく、その呼び方を只の名字に変えた2人は、改めてグランドを去って行った。

 

「あ…浅野…君…?」

「…大丈夫だ。確かに あの2人の離脱は計算外だったが、それでも少しの修整をするだけで、僕が考えた戦略に影響は無い。」

榊原が心配そうに話し掛けるが、焦りの表情を隠し、気丈な態度を見せる浅野。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫「Move!」

「Get out, small fry!!」

「なっ?!」「ひぇっ!?」「「おわっ!?」」

A組が控える見学席に戻った2人は、明ら様に不機嫌な顔を撒き散らし、前列の席に座ったいた数人の男子生徒を押しのけると、それぞれがパイプ椅子を2つ並べ、競技が見やすい位置を陣取り、ずでんと座り込んだ。

 

「な…?リーヴどん、ティッキーどん、一体…何が、有ったとばい?」

「Shut up dregs! Do n't speak You!!」

「I will twist & crush it You,too?」「ひぃええっ!!?」

浅野との間に一体 何が有ったのか、瀬尾が かなり訛りが入った口調の英語で訊ねるが、その拙い発音が2人の怒りに火に油を注いだらしく、鬼の形相で睨まれ、怒声を浴びせられ、その迫力に その場で腰を抜かてしまう。

 

「s…sоrrу…I'm sоrrу…

I аpоlogizё…」

そして生命の危機を感じたのか、体をガタガタと震わせ、泣き顔で謝罪する瀬尾。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「どうなってんだ、アレ?」

「…とりあえず、ラッキーと思って良いのかな?」

「ん~~~~~~~…?」

様子を窺っていたE組の面々も、何があったのか分からず、困惑の顔を浮かべている者が多い。

 

「…計算外だったのは、彼等の誇りと、自分達の恥知らず加減だろ?」

そんな中、小宇宙(コスモ)を全開させて聴覚を研ぎ澄ませ、一連の やり取りを聴いていた響が、1人小さく呟く。

 

「皆、気にするな、余所は余所だ。

向こうの事情は関係ない。

俺達は俺達の作戦で、勝ちに行くぞ!」

「「「「「「「「応っ!!」」」」」」」」                  

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「リーヴとティッキーが抜けたのは、確かに誤算だった。

しかし、まだレアオとザンジウが居る。

そして、この人数差だ。

吉良…如何に お前1人だけが優れていようが、それだけでは駄目だという事を、教えてやるよ。」

棒を支える生徒達の肩の上に、矢倉を登る様に乗った浅野が呟く。

 

 

…そう、この人数差。

E組が本気で勝ちたいなら、防御を捨てて、攻めるしかない。

そして攻めて来た その時、この鉄壁の布陣で飲み込み潰す!

 

 

 

 

「…って、言いた気な陣取りだね~?♪」

「あぁ。本当に、分かり易い お坊ちゃまだぜ(笑)。」

棒を支える要に、ブラジル人のレアオ・ミンタニア、攻撃部隊の先頭中心に韓国人のキム・ザンジウを敷いた布陣。

本来なら その後列に、カナダ人のリーヴと、アメリカ人のティッキーの部隊が並んでいたのだろうう、その陣形を見たカルマと響が、笑いながら話す。

 

「磯貝の読み、的中だな…」

「はは…吉良に少しだけ、習ったのさ。

どう攻めるかを考える前に、浅野なら、どういう戦略を組むか…ってね。

今回は あの助っ人外人参入の お陰で、逆に尚更読み易かったよ。

少なくとも最初は、コッチの小細工すら、力で跳ね返す様な、パワー全開な陣形を執いて来ると思ってた。」

「…そ、そうか…でも磯貝、吉良を習うのは、程々に しとけ。」

「「「「「「ん、んんんん。」」」」」」

「え?」「へ?」

響の戦術思考を参考にした…この発言に、やや顔を顰める、前原を始めとするE組一同。

 

「磯貝、お前だけは、ずっと真っ直(イケメン)でいるべきだ。」

「「「「「「ん、んんんん。」」」」」」

「えぇえっ!?」

「待て、どーゆー意味だ?固羅?!」

「それじゃ、僕達も…」

「だね~。当初の予定通り、と…♪」

「「「「「「「応っ!」」」」」」」

そして寺坂を中心に皆が棒を支え、浅野同様、その上に棒に背を預ける形で、磯貝が立った。

 

「無視かーーーーーーーーーーい!??」

 

バァン!

そして遂に、競技開始を告げる、ピストルの音がグランドに鳴り響いた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「おい、浅野…?」

「アイツ等…」

「!?」

E組が最初に執った戦略。

それは、一斉攻撃で来ると読んでいた、浅野の読みとは真逆の、

「E組、勝つ気があるのか?」

「攻めて来る奴、1人も居ないぞ!?」

開始の合図(ピストル)前、最初に全員で棒を支え、その上に司令塔の磯貝が立った儘から、誰1人動かずの陣形だった。

 

「通称・完全防御形態…!!

さぁ、攻めて来い、浅野!」

緊張感を崩さない顔で、彼方の浅野を挑発する様に、見据える磯貝。

 

「(誘い出す心算かい?甘い!

…攻撃部隊、計画(プラン)B!)」

スゥ…

その陣形を見た浅野が、無言で右手を前に出すと、掌を下に向けて横に小さく振る。

「……!!」

それを見たザンジウが、4人の生徒を引き連れ、E組陣地に突撃。

 

どどどど…

「あ、あのデヴ、凄ぇーっ!?」

その体格からは想像が付かない様な猛スピードで、一緒に攻めに来ている生徒を置き去り、殆ど単身で、E組が守る棒に特攻を仕掛けるザンジウ。                            

ダッ

「ちぃっ!」「させねっての!」

「お、おぃ、お前等!!?」

それを見た岡島と前原が、飛び出して止めに入るが、

「…!」

ザンジウは両腕を左右に大きく広げると、まるでダブルラリアットの様な、

ドスゥッ!

「ギャーッス!」「ドイヒーっ!?」

腕でのタックルで、2人を吹き飛ばす。

 

「げ!?」「おいをゐ?」「まぢかよ?」

うおおおおおぉぉぉおぉおおぉおおおぉ!!

『ななな、なんつーパワーだ!!

韓国相撲・シムルの学生YOKODUNA、キム・ザンジウがタックルで、E組の2人を客席迄、およそ10㍍は吹っ飛ばしたぞ!!』

見学者の歓声と、その展開に絶好調な荒木のアナウンスが、グランドに響く。

 

「かかか…こんな間近で、E組のフルボッコを拝めるなんてな。」

「惨殺劇(ショータイム)、スタートってか?」

日頃、渚に ちょっかいを掛けては響にフルボッコにされていたD組の生徒2人も、その情景に未来に起こり得る惨殺劇をイメージし、満足そうな笑みを浮かべている。

 

「僕達が油断して攻めて来るのを狙った、カウンター作戦か…拙い戦術だ。

そんなのが、僕に通用すると思っているのか、吉良!赤羽!」

クィ…

そして、浅野が親指を下に向ける、サムズダウンのポーズ。

 

「……!」「「「「ひゃっはー!!」」」」

それを確認した、ザンジウを含む先発隊の5人が、改めてダッシュ、胴タックルの姿勢で、突撃を仕掛けて来た。

 

「皆、今だ!【触手】!!」

「「「「「「応っ!!」」」」」」

ばばっ

しかし磯貝の掛け声の下、前面で防御を固めていた6人と磯貝本人が、真上に大きくジャンプして それを躱すと その儘、

どん!

「うげっ!」「あ痛!!」「………!???」

タックルの姿勢で身を低く屈めていた5人の上に落ちて来た。

 

『な、何とぉーっ!?

E組、ザンジウ達のタックルを躱したかと思えば、そこからの押さえ込み!』

そして、

ずん…

「もがっ!!」「んぎぎぎ?!」

『更には、自軍の棒を自ら半分倒し、その棒の重みで、ガッチリ固めた…だとぉ?』「ちっくしょ!動けねー!」

「退けよ、お前!」「重いんだよ!」

身動き出来ない男子生徒が、文句たらたらの中、

「ふっ…これぞE組、48の必殺陣形の1つ…」

「【触手・風林火山『山の章】』!…な~んてね!♪」

「「「「はぁあ!?」」」」「???」

悪魔の角と羽を生やした2人が、したり顔で解説?をする。

 

『こ、これはキツい!

E組まさかの掟破り、【自軍棒倒し】で5人1度に雁字搦めに捕らえたぁ!?』

「……!!」

『一番下の位置、皆の下敷きの形になっているザンジウは、特にキツそうだ!!』

アナウンスの通り、作り顔でない、苦悶の表情を浮かべるザンジウ。

如何に学生YOKODUNAでも、味方4人+敵7人の体重を跳ね返せる程のパワーは、持ち合わせてはいなかった。

                  

「これが、『チート』と『人外』との差なんだよな?

そうだろ、"準"チート君?」

「……………???」

「あ、日本語解らねーか…」

                  

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「…やかなか やってくれる!

結果、此方の攻撃部隊を、自軍の棒を支える土台役に組み込んだ事になるが…」

そう呟いた浅野は、

「両翼部隊!計画(プラン)Lだ!」

両サイドの5人編成部隊、計10人に指示。

ダダダッ…

『おっとぉ?本校舎サイド、両脇を固めていた2部隊が救援に!

この"戦"も、いよいよ本格的な様相に なってきたぞ!』

 

「それでも…此方の有利は揺るがない!」未だ、余裕と自信の笑みを、崩す事は無かった。

 

 




 
本文中の英語に対する指摘、突っ込みは勘弁して下さい(笑)。
 
≫≫≫≫≫≫次回予告!!≪≪≪≪≪≪
 
次回:暗殺聖闘士『渾戦(カオス)の時間(仮)』
乞う御期待!! コメントよろしくです。
 

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