暗殺聖闘士   作:挫梛道

70 / 105

後書きにある次回予告のサブタイトルは あくまでも予定であって、決定ではありませんので…




大人の時間

「なぁ~、俺って、どうやって降りたら良い訳?」

鷹岡を完全に下した響が、ヘリポートの上から、皆に呼び掛ける。

 

ヘリポート昇降の為の梯子階段は、鷹岡が戦闘前にヘリポート下部、拾いようの無い、手の届かない位置に放り棄てている。

『普通』に考えたら、降りようの無い状況だ。

 

「ぴょーんって、飛び降りたら~?♪」

「吉良君なら、簡単でしょ~?」

「出来るかっ!!」

…勿論、実は響からすれば、普通に出来たりはするが、そんな常識外れな身体能力を披露する訳にはいかない。

因みに ここで言う常識とは、E組の面々が今迄に目の当たりにした、烏間や その他の殺し屋の身体能力が、基準である。

 

結局は、ロープを使い、タラップを引き上げる事に。

 

「おら、引っ張るぞ。」

寺坂が中心となって、この梯子階段を引き上げてる時、

「さて、今の内に…」

響は あの戦いの後、大の字になり、ピクリとも動かない鷹岡の傍に立つと、

「ぉぅらっ!!」

ゲシィッ!

「ぐはわぁっ!?」

その脇腹に、思いきり蹴りを入れる。

 

「よう、目覚めの気分は どーよ?」

「ひぃいいぃっ!!?」

ガグガクガグガクガグガクガグガク…

 

目を覚ましたと同時に、何かを思い出したかの様に、鷹岡は怯えた表情で、身体を奮わせる。

それは まるで、

「どうした?地獄の亡者の葬列にでも、加わった夢でも視たか?」

「ひぃいいいぃえゎっ!!」

正しく、そんな顔。

 

そんな鷹岡に響は、

「いやだなあ?人の顔を見て、そんなに怖がったりしないで下さいよぉ?

タ・カ・オ・カ・セ・ン・セ・イ・?」

優しく爽やかに微笑みかけるが、

「うわぁあ!?く、来るなぁっ!!」

ズサササ…

腰が抜けて立ち上がれないのか、鷹岡は仰向けから上体を起こしただけの形で、目の前の少年から、逃げる様に後退り。

 

 

 

一応トドメ、刺しとくか…

 

 

 

そんな鷹岡を見て、頭の中で呟いた響は、何時かの時の様に、本物の殺気を全開放しながら、ヘリポート隅迄追い詰める。

そして、完全に戦意を失っている男に顔を近づけると、先程迄の にこやかな表情を一瞬に修羅の如く一変させて睨み付け、

「仮に、此の場に立ったのが俺でなく渚だったとしても、お前じゃ勝てなかったよ…

それから…次は…リアルに…殺す!!」

「~~~~!!?」

 

この怒気、そして小宇宙(コスモ)を帯びた殺気を真正面から当てられた鷹岡は、また何時かの時の様にズボンを派手に濡らし、再び意識を失ってしまう。

                  

「吉良っち~、お疲れ~♪」

「やったな、吉良!」

「何だかんだで、圧勝だったね!」

「応よ!」

パシパシパシパシパシパシパシパシッ!!

再び設置された階段を渡り、下に降りたと同時に、響は出迎えてくれたクラスメート達とハイタッチ。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「爆弾は取り除いたぞ。」

「「「おぉ、流石はイトナ!」」」

「…こんなの、誰でも出来る。

寺坂以外ならな。」

「あ゙ぁ!?」

「おい、止めろって!(笑)」

ワクチンの入ったケースに取り付けられた爆弾をイトナが外し、それに対する皆の賞賛を照れ隠す様に毒舌を放ち、普段の やり取りを展開させていた。                         

「皆、お疲れだったな。」

そんな彼等に、労いの言葉を掛ける烏間。

 

「既にヘリを呼んであるから、君達は待機していてくれ。

ワクチンも無事に入力は出来たが、念の為だ、あの毒使いの男を連れて行く。」

「ふん、薬なんざ、必要無ぇよ…」

「「「「「「「!!?」」」」」」」

続く烏間の言葉に、何者かが、それを否定するかの発言をしてきた。

声の方向に一同が振り向くと、其処に居たのは、ガストロ、グリップ、スモッグ…

ホテル最上階を目指す際の、鷹岡の刺客として立ちはだかった、殺し屋達だった。

 

「ガキ共ォ…この儘、無事に生きて帰れるとでも、思っていたってか?」

「「「「……!!」」」」

ガストロの台詞に身構える生徒達。

 

「お前達の雇い主は、既に倒れた。

俺達が戦う理由は、もう無い筈だ。」

そんな生徒達より、一歩前に出た烏間が、殺し屋達に語り掛ける。

 

「俺も充分、回復した。

この生徒達も、充分に強い。

互いに無駄な被害が出る様な事は、止めにしないか?」

「ん~、良~よぉ~!♪」

「…??!」

自身の提案に、あっさりと了承する殺し屋に、逆に警戒をする烏間だが、

「俺達の契約には『ボスの敵討ち』は含まれてないぬ…で候。」

「…そうか。」

グリップの言葉を聞き、納得な顔をして肩の力を抜く。

 

「それと、お前達の お友達に盛った薬だがな…」

「「「「!!」」」」

 

スモッグが言うには…

 

鷹岡は最初から、取引に応じる事無く、生徒達の前で、ワクチンを爆破させる心算だった。

しかも、設定した交渉期限は60分。

ならば、わざわざ『殺す』ウィルスじゃなくとも、取引は出来る…

密かに自分達3人だけで話し合い、E組メンバーが沖縄入りした時には既に、この様な結論に達していた。

 

宿泊先で倒れている生徒達が侵されているウィルスは、実は鷹岡指定の殺人ウィルスではなく、改良した食中毒菌で、あと数時間は猛威を振るうが、その後は急速に活性を失い、無毒化する…と。

 

「くっくっ…お前達に薬は必要無いってな、そーゆー意味さ。

俺は多種多様な毒を持っているからな。

今回も、お前達が命の危険を感じるにゃ、充分過ぎただろ?」

「うん…でも、それって…」

「あん?」

してやったりな、ドヤ顔のスモッグに、問い掛けたのは岡野。

 

「私達からすればラッキーな事だけど、鷹岡(アイツ)の命令に、背いた事にならない?

一応は お金、貰ってるのに、そんな事しても良いの?」

「…だな。

その辺り、プロとして、どーよ?」

「あーほー。

プロが何でも、金で動くと思っていたら、大間違いだ。」

「ぁ…」「ほぅ…?」

その岡野と響の質問に対して、口を開いたのはガストロだった。

 

「当然、依頼人の意に沿うように、最善は尽くす…が、今回は さっきも言った通り、ボスはハナから お前達との約束を守る心算は無く、皆殺しな予定だった。

例え、素人の域を抜けているにしても、所詮はカタギなガキを、大量殺害した実行犯となるか、それとも命令違反がバレる事で、プロとしての評価を落とすか…

どちらが俺等の今後にリスクが高いか、冷静に秤に掛けただけさね。」

「「「「…………………。」」」」

この言葉に、少し思う所が有りながらも、生徒達は一応の納得をする。                        

「ま、そんな訳だ。

残念ながら、お前達、誰も死なねえよ。」

ポイッ…

そう言いながら、スモッグは、何やら錠剤の入ったガラスの小瓶を響に投げ渡す。

 

「これは…」

「俺様特性の栄養剤だよ。

あっちのホテルに戻ったら、寝込んでる連中に飲ませて、ゆっくり休ませてやりな。

明日の朝には、倒れる前より元気になる事、請け合いだぜ?」

「「「「「「「「何なの?その万全のアフターサービス?」」」」」」」」

「殺す家業ってな、逆に、活かす家業に精通してる奴も少なくないんだよ。」

「うぬ。俺も一応、整体師の国家資格を持っているぬ…で候。」

「「「「「「「嘘っ!?」」」」」」」

ババババババババ…

そう言っている内に、烏間の呼んだ大型ヘリが到着する。

 

「…悪いが、信用するかは生徒達が回復したのを確認してからだ。

事情も聞かねばならないし、暫くは拘束させて貰うぞ。」

「…ま、しゃーねーってか?

でも来週には、次の仕事が入ってるから、なるべく手短にな。」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ヘリポートに着いた2台のヘリコプター。

その内の1台は、鷹岡や その直属な部下達、響と戦った殺し屋・蜴(カメレオン)が拘束されて運び込まれた。

 

「あら、あの鞭男は向こう側ですか?」

「ああ、あの男は俺達みたいな、ロヴロ氏仲介で防衛省からの依頼をボスが横から かっ攫っていったのとは別ルートで、個別に呼ひ込んだ殺し屋だからな。

防衛省御用達の暗殺者でないから、普通に犯罪者な扱いなんだろうよ。」

「それで あの時には、一緒じゃなかったんだ?」

「一応はな、上に登る際にガムテープぐるぐる巻きだったのを助けてやろうと思ったんだけどなぁ…」

「うむ。余りにも偉そうな命令口調で、「早く解け!」とか言ってきたから、ムカついてスルーしてきたぬ…で候。」

そして もう1台には、E組関係者やガストロ達が乗り込み、飛び立って行った。

 

こうしてE組による、大規模潜入ミッションは、ホテル関係者の誰1人気付く事無く、完了(コンプリート)したのだった。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「あ~、疲れたわね~!」

「あはは…ビッチ先生も、お疲れ様。」

「あの最初の陽動が無かったら、本当に何も出来なかったわよね?」

因みにイリーナは、鷹岡から奪った専用ICキーを使って、普通にロビー迄エレベーターで降りてきた磯貝と片岡に連れられ、これまた普通にエレベーターで、最上階で皆と合流していた。

 

「まさか黒幕が、あのタカオカだったとはね~?

それに、スモッグにグリップにガストロ?

アンタ達、あの連中相手に よく、全員生きていられたモンだわ?」

「やっぱり殺し屋の世界じゃ、有名なの?

あの3人?」

「そりゃあ、もう…って、その3人、さっきから何やってんの?

ヒビキも一緒みたいだけど…?」

「あ~、あれは…」

 

 

「秘薬欲しいな~?秘薬欲しいな~?

誰か恵んでくれたら、凄く嬉しいな~?」

「断る。」

「やなこった。」

「やらぬ…で候。」

「あ゙ーっ!?殺られたーーーーーっ!!」

                  

…どうやら、モン〇ンプレイ中の様だ。

                  

「ね~、おじさんぬぅ?」

「ぬ?」

その、モン〇ンプレイ中のグリップ達に、カルマ、千葉、速水が話し掛ける。

 

「あの屋上の時、俺達は てっきり、リベンジを仕掛けてくるかと思ったけど…」

「…私達の事、殺したい程恨んでるんじゃないの?」

「「「くっくっく…」」」

「「「???」」」

速水達の問いに、3人の殺し屋は、揃って笑みを零した。

 

「殺したいのは やまやまだが、俺は生憎、私怨で人を殺した事は無いぬ…で候。」

「同じく…だな。」

「そーゆーのはな、3流が する事なんだぜ、お嬢ちゃん。」

「ぷぷぷ…お、お嬢ちゃん…www」

ジャキ…

「吉良…っち…?」

「すいません、何でも無いです…。」

片や壺、片や禁忌だったか、銃口を向ける速水に、響はホールドアップ。

 

「ふっ…だから俺達は、誰かが お前達を殺る依頼が来る日を待っておくさ…。」

「せいぜい、狙われる位の大物に なるぬ…で候。」

「ま、そーゆーこった、ガキ共。

本気で殺しに来て欲しいなら、本気で偉くなりな!

そん時ゃ…プロの殺し屋の本気(フルコース)を味わわせてやるさ…くっくっく…!」

「「「「……………………。」」」」

「…何なのよ?

この、勝ったのに勝った気がしない感?」

「言い回し、ずる過ぎ…

まるで俺等が あやされてたみたいな感じで纏めてるし…」

「くっく…勉強になったろ?

これが、プロの年季…大人の強かさってヤツさ…。」 

「「「「……………………。」」」」

 

こんな会話の中、ヘリはホテル傍の浜辺に降り立ち、E組の面々は、倒れているクラスメートに、一連の出来事を話し、もう心配無い事を伝える。

ある者は安堵の溜め息を零し、ある者は歓喜の雄叫びを上げ、ある者は只、嬉し気に微笑み、そして ある者…約2名は、その嬉しさの余り、傍に居た女生徒に抱きつこうとして、カウンターの蹴りや鈍器(ライフル)の一撃を貰うのだった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆そして、次の日の朝。

 

「本当に大丈夫なのかよ?」

「応よ!本当に あの薬が効いたのか、全く平気だぜ!」

「寧ろ、岡野の蹴りのが、まだダメージ残ってる位だぜ!!」

「もう、暗殺も終わってるし、今日は朝から晩まで…それこそ倒れる迄、遊んでやるんだい!!」

「「水着の ちゃんねーが、俺達を呼んでいる!!」」

「ビーチな、殺せんせーにトドメ刺す設備の工事で、立ち入り禁止だぞ?」

「「「な、何だってーーーっ!?」」」

「あははは…」

 

朝食が済んだ後、早速 遊ぶ算段な響達。

しかし、自分達が宿泊しているビーチは、完全防御形態の殺せんせーを確実(ダメモト)に始末するべくな、巨大なコンクリートの柩を建造中。

関係者以外、立ち入り禁止となっていた。

それを知り、此の世の終わりな如く、orzる前原と岡島…と茅野。

 

「ヌルフフフフ…何だか、先生のせいで、ゴメンナサイねぇ…。」

「「「「全くだよ!!」」」」

渚が手に持っている殺ボールは、右半分は真剣に申し訳無さそうに、左半分は嬉しそうに謝罪…真顔と緑&黄の縞模様のハーフ&ハーフな顔になっていた。

 

「何だよ!?そのニヤけた顔わ!!」

「誠意が無い!」

ブーイング全開な生徒達。                        

「いや、どうせ先生は、もう直ぐ烏間先生に連れられて、コンクリートに埋められるから、遊べないしー?

それで、君達も遊べないのは ざまーみろなんて、少ししか、思ってないしー?」

「「「「「「はぁ゙!??」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「にゅやーーーーーーーーーー!?

ゴメンナサイ、すいませんでした!

先生が悪かったです!

少し、話し合いましょう!

皆さん、カムバーーーーーーーーック!!」

…この後 殺ボールは、烏間が引き取りに来る迄、自身の恥ずかしいスマホ画像の前に固定され、大量のウミウシを貼り付けられた上で、放置されるのだった。

 

 




ラストのオチ、最初は
「おーい、皆、サッカーやろうぜ!」
…だったのですが、よく考えたら、固くて蹴れませんよね…(笑)

≫≫≫≫≫≫次回予告!!≪≪≪≪≪≪
 
次回:暗殺聖闘士『〇神の時間(仮)』
乞う御期待!!
コメントよろしくです。
 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。