暗殺聖闘士   作:挫梛道

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オリキャラ登場




編入の時間②

「…まあ、色々とあって、E組に編入になった吉良です。

よろしくお願いしまーす。」

「「「「「………………………」」」」」

 

無反応、ね…と。

 

前日、元・クラスメートの2人に対する暴力沙汰で特別強化クラス・E組に編入させられた響は、担任の紹介の後、デフォルト的な挨拶をしたが、誰も何の反応を示さなかった。

威嚇するかの様に睨みつけている数人の男子生徒以外は、何か目の前に怖いモノが在るかの様に視線を逸らしていた。

少し前に、他県からの転校生が本校舎に来たのは皆が知っていた。

そんな転校生が今更、しかも前振りも無しに、成績不振が原因でE組に再編入なんて有り得ない。

考えられるのは不祥事…しかも、かなりの大事をしでかしたという事。

転校生という事が、更にイメージを勝手に凶悪化させる。

クラスの大半である大人しい生徒達は睨んでもない蛇に対し、勝手に硬直している蛙の様だった。

 

「…じゃ、じゃあ吉良君は、後の櫻瀬さんの隣の…」

 

ビックゥッ!

 

E組担任の女性教師、雪村あぐりの口から自分の名前が出た瞬間、その女生徒は肩を飛び上がらさせる程に驚いた。

確かに自分の隣の席は空席だから、彼が自分の隣に座る可能性が高いのは予想していた…それでもだ。

 

「…席に座ってね。」

「…っす。」

雪村あぐりの言葉に軽く頷くと響は指定された席に着き、隣の席に座っている女生徒…櫻瀬園美に

「よろしく。」

軽く笑いながら挨拶した。

 

「え?」

所謂ニコポ効果とは少し違うが、その笑顔は少女が想像していたキャラクターとは対極なそれであり、少なくとも彼女の、響に対する警戒心恐怖心は多少なり薄らいだ。

 

≫≫≫

「…それじゃあ吉良君、この問い、やってみて?」

「え゙っ?また俺すか?」

編入生の業(ごう)なのか、その日の1時限目の授業は響が集中的に、あぐりから問題を当てられたのであった。

そして1時限目終了後の10分間の休憩時間、数人の男女の生徒が響の席にやってきた。

 

「えーと、吉良…君?」

「吉良でいいよ。」

少し怯えて、慣れない君付けで名前を呼ぼうとする、やや長身で頭頂部に触角?の様な癖毛のある男子生徒に、響は明るく呼び捨てで良いと話す。

そして、

「あのさ、必要以上にビビるの止めてくれたら嬉しいんだけど?

確かに察しの通り、俺は暴力沙汰でE組に来た訳だけど、普段からバイオレンスバイオレンスな性格な訳じゃないんだぜ?

なあ、櫻瀬さん?」

「へ?き、急に振らないでよ!

てか、今日会ったばかりの吉良君の性格って、まだ知らないし!」

響の不意な振りに慌てる櫻瀬。

 

「おろ?もうソノちゃんと打ち解けた?」

ここでボブカットの少女が口を開けると

「着席早々、ニコポで堕とした。」

「いや、落ちてないし!」

響の台詞を必死に否定する櫻瀬。

 

「成る程、これがフラグか…!」

「違う!」

ボブカットの少女、不破優月と櫻瀬園美の漫才の如きやり取りで場が和んだのか、響の席にやってきた生徒や、最初から周りの席にいた生徒達が自然と集まり、色々と会話が弾んでいった。

 

キーンコーンカーンコーン…

 

ガラガラガラ…

「はいはい、編入生弄るの終わり、授業始めるわよー。さあ、早く席に着く!」

「「「「「「「はーい…」」」」」」」

チャイムと同時に教室の扉が開き、担任の雪村あぐりの登場と共に、響を中心としたトークタイムは一時中断した。

その後も授業が終わる度に、教室内の生徒が響の席の前に集まり、語り合っていく。

次第に響も慣れてきたのか、既に皆が普段から そうしているのか、小柄で水色の長い髪をした少年を逆に弄る仕草をとり、クラスメートからの笑いを誘ったり。

編入初日で、今の時点で教室にいる生徒達とは、約4人の男女を除けば、殆ど完全に打ち解けた感じだった。

 

▼▼▼

その日の放課後、本校舎の理事長室には、()()の゙浅野゙がいた。

 

「浅野()、昨日の件が早速、本校舎の生徒の間でも噂になっているみたいだね?

理事長の息子がパパに泣きついて、自分を殴った生徒をE組に追放したと…。」

「何が言いたいんですか?理事長先生?」

「いや、別に私が職権乱用したイメージを持たれるのは構わないよ。

今回の件も、例え彼が君に手を出してなく

ても、E組行きは免れなかったろうからね。

更に聞いた限りの話では、君は自ら、彼に自分を殴る様に言ったらしいね?

それで彼はE組行き…。

瀬尾君の件より、彼が本校舎から去って行ったのは、全て彼と君との件が原因と思っている生徒の方が多いのではないかい?」 

今居る場所が校内だからなのか、それとも普段から家庭内でも深い溝があるのか、実の親子でありながら、あくまでも教育者と生徒として会話する2人。

 

「だが、君は、それで良いのかい?

普段は何でもアリな様で、いざとなれば、理事長である父親に負んぶに抱っこというイメージを定着させる気かい?」

「吉良とは いずれ、何らかの形で決着を付けてみせます。」

「ほう…いずれ?何らか?…ねえ?

今この場で、具体的な日時や内容を言えない君に、それが出来るとは思えないよ?」

「………………………………!!!」

「それに君は、彼がE組に行った事に対して負い目を感じている…違うかい?

そんな君が、彼に何かしらで勝てるとは思えない。

それこそ、私が影で権力を乱用してサポートしない限りはね?

まあ、それなら それで、私は一向に構わないよ?

しかし その場合、例え それが表沙汰にならなくても、君は親の威光に頼らないと何も出来ない御坊っちゃんという事が、私の前で証明されるけどね?」

「…………………失礼します!!」

 

パタン…

 

浅野学秀が退室した後、理事長室に1人となった浅野學峯は呟く。

 

「君は解っているのかい?

彼が如何に強者であれ、E組である限り、彼が勝利する事は、決して赦されないのだよ、浅野()

そしてそれは、私の教育理念に反する…。

E組は、あくまでもENDでなくては駄目なのだよ。」

 

▼▼▼

翌日。

 

「…っす。」

「あ、吉良君、おはよ。」

教室に入ると、既に席など着いていた櫻瀬に軽く挨拶して隣に座る響。

そこに

「おい、吉良…ちょっといいか?」

響に声を掛けてきたのは、大柄な男子生徒と、その後ろに2人の男子生徒。

 

「えーと…誰?」

「俺は寺坂だ。よろしくな。」

「村松だぜ。」

「吉田だ。」

各々の名前を名乗る男子生徒達。

 

「1つ聞くが、オメー、浅野と瀬尾の野郎を一方的にボコってE組(ここ)に来たって、本当か?」

「え?」

「な…?」

「え?!」

 

ざわざわざわざわ…

 

寺坂の質問に櫻瀬が驚く。

響がΕ組に来た理由が暴力沙汰なのは、本人が言っていたが、昨日の質問責めの時も、敢えて誰も触れなかった話題に空気を読まず、どストレートに聞いてきた寺坂、いや、それ以上に、その寺坂の質問の中に出てきた名前に驚いた。

浅野と瀬尾…

同学年なら知らない者はいない、常に試験の成績上位者で、生徒会役員を勤めている面々。

特に浅野に至っては、理事長の嫡男としても有名過ぎる。

その2人を一方的にボコった?

いやいや、いくら何でも、それは違うだろうと思っていた先の響の応えは

「いや、浅野はボコったってか、ワンパンだし、瀬尾も一方的って訳じゃない。」

「「「「「「何ーーーー?!」」」」」」

響の周辺、寺坂とのやり取りを何気なく聞き耳を立てていた生徒達が、驚きの声を上げる。

同時に響の席に群がる生徒達。

 

「お前、アイツ等と何があったんだよ?」

「てか、浅野を殴って、よく退学(クビ)にならずに済んだよな?」

「いや…まあ、その辺りは…あまり触れないで貰えたら、凄く嬉しいが…」

「おい、待てやコラ、コイツとは俺が話してたんだ、ちょっと引っ込んでろ。」

「寺坂…」

自分を無視して、響に質問責めしてきた級友を黙らせる寺坂。

そして

「なるほど、噂は本当だった訳か…。

お前とは、なんだか仲良くなれそうな気がするぜ。」

威圧的な笑みを浮かべて右手を出す寺坂。

それに対する響の応えは

「いや…ごめん、多分、無理。」

「はあ?!」

…だった。

 

「悪いけど、多分、俺はお前等とは違う人種だから。

ケンカ云々な話題で、そういう発想が出来る連中とは、そこまで仲良くなれないと思う。」

「んだと、コラ!」

響の歯に衣を着せぬ発言にキレる寺坂に

「止せ、寺坂!」

「止めなさいよ、寺坂君!」

「寺坂、落ち着け!」

「…少しのケンカの噂だけで自分と同類と決め込み、自分達に引き入れようとするなんて、サイテー。」

周囲の生徒が止めるが、

「るっせー、〇"ス!」

最後の台詞が焼け木杭にガソリン投入なのは理解出来るが、おおよそ、女子に向かって言ってはいけない単語を言い放ち、握手の為に出した右手でそのまま殴り掛かる寺坂。

 

「「「キャー!」」」

 

ガシィ!

 

放たれた拳は、周りの誰もが、無防備だった響の顔面に直撃すると思われた瞬間、響の掌の中に収まっていた。

更に

「痛ててて、テメー、離しやがれ!」

掌で受け止めた拳を掴み、そのまま砕かんとばかりに力を込める響。

 

 

 

この前は、まさかと思って全然警戒してなかったけどな…さてと、どうする?

 

 

…等と考えながら、後ろに立っている『村松と吉田の2人にのみ感じる、殺気を込めた視線』で牽制する。

 

「「うぅ…」」

これで2人は助けにも入れず、硬直してしまう。

 

「痛いって!マジ離せよテメー!」

右手を封じてるだけで、傍目には必要以上に痛がっている寺坂を見かねたのか

「吉良君…もう、止めとこ?」

長い髪を髪止めで止めた、背の高い女生徒が、寺坂の拳を潰さんとしている響の手首に そっと手を当て、止めに入る。

 

「片岡さん…OK、分かったよ…。」

響は この女子…片岡メグの言葉に寺坂の手を放すと、先の2人の時と同様に、『対象本人にしか感じとれない殺気』を器用に放ち、

「行っていいぜ…」

…と、掌をヒラヒラさせ、『あっち行け』のゼスチャーを取り、寺坂他2名を何やら定番的な棄て台詞を吐かせて退散させた。

 

「くっくっく…だから、あたしは止めたんだけどねぇ…?」

「わっ!びっくりした?!」

直後、不意に後方から話し掛けられ、声の方向に首を回すと、何と言うか…黒いオーラが似合いそうな女生徒が何時の間にか立っていた。

 

「えーと…(何時の間に背後に…この俺が全然、気付かなかった…このコ、何者?)」

「狭間でいいわよ…ゴメンね、アイツ等バカだから、あーゆー考え方しか出来ないの。でも、あんまり悪く思わないでね、アイツ等バカなだけで、根はバカだから。」

((((((バカバカって、いくらなんでも酷過ぎるよ、狭間さん!))))))

「くす…じゃあね…」

その場にいる全員の心の声を聞いてか聞かずか、意味深な笑みを浮かべて狭間綺羅々は去っていった。

このやり取りの結果、響はクラス全員と会話をした事になる。

因みに最後に響を止めた片岡に対し、

「流石はイケメグ、あたし達の出来ない事を平然とやってのける!」

「ちょ…ちょっと!」

…と、そこに痺れて憧れた女生徒が抱きつき、それを数人の男子生徒がニヤニヤしながら見つめていたのは、別の話。

 




櫻瀬園美(さくらせ そのみ)
 
誕生日  1月23日
身長   160㎝
体重   45㎏
得意科目 歴史
苦手科目 数学
趣味、特技 子供の世話
将来の夢 保育士
座右の銘 目立たず忍ばず



備考
E組に吉良君を加えた為に、更にバランスの崩れた男女比を修正する為に設定したキャラ。
メインヒロインではありません。
今後、見せ場があるか、誰かとフラグを立てるかは一切未定。
 

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