「気でも違っか、鷹岡！
防衛省から金を盗み出し、我々が起用する予定だった殺し屋を奪う様に雇い、更には生徒達をウィルスで脅す、この凶行…!!」
「おいおいおい？俺は至極、まともだぜ！
これは、地球が救える計画なんだぜぇ…」
「…？」
ホテル屋上にある、ヘリポートに上った鷹岡と烏間率いるＥ組チーム。
やや怒気を含んだ烏間の問い掛けに、鷹岡は涼やかに応える。
「計画じゃな、茅野…だったか？
その小さい女…
そいつを使う予定だった。」
「え…？」「茅野を？」
「ああ、そうさ…
下の部屋、バスルームの浴槽にはな、対せんせー弾を たっぷり入れてあるんだ。
それに、その賞金首と一緒に入って貰い…
その上から、セメントで生き埋めだ!!
対せんせー弾に触れずに元に戻るなら、辺りを爆裂しなきゃあいけない。
…そう、茅野(ｶﾞｷ)ごとな!!
生徒思いの優しい優しい殺せんせーなら…そんな酷い真似はしないだろ？
大人しく溶けてくれると思った訳よ！」
（（（（（（（あ…悪魔…）））））））
その狂った発想に生徒達は、ある者は吐き気を催し、ある者は鳥肌を起てる。
「元気な奴等、全員で乗り込んで来たと分かった時は、確かに一瞬焦ったが、やる事は大して変わらん。
お前等を何人 生かすかは…」
鷹岡は、自分の後方に置いた、ウィルスのワクチンが入れてあるスーツケースに取り付けてある爆弾を指差し、更には その起爆スイッチのリモコンを見せつけ、
「俺の…機嫌次第だからなぁ…！」
再び歪ん嗤い顔を見せる。
「………………。
許されると思うのか？そんな真似が!?」
「殺せ…んせー…？！」
渚が手にしている透明の球体、その中心部の"黒い"物体が低い声を発した。
「…黙れ、モンスター。
これでも人道的な方さ。
お前等が俺にした…非･人道的な仕打ちに比べたらなぁっ!!」
「「「「「「「はあ!?」」」」」」」
鷹岡の言葉に、全くの心当たりが無い、生徒達の声が重なった。
ボリボリボリボリ！
「貴様等の 御陰で、俺の上からの評価はダダ下がりだ。
省内からの屈辱の目線、卑怯な手段で突きつけられたナイフ！
それを思い出す度、頭ん中が痒くなって、夜も眠れないんだよォ!!」
そう言って、己の傷だらけの顔を、派手に引っ掻く鷹岡。
瘡蓋が剥がれ、そこから また、血が滲み出る。
「ﾊｧ、ﾊｧ…落とした評価は、結果で返す。
受けた屈辱は、其れ以上の屈辱で返す。」
一頻り、顔を掻き回し、漸く落ち着いた鷹岡が言葉を続けた。
「特に潮田渚ぁ！吉良響ぃ!!
俺の未来を汚した お前等２人だけは、絶対に赦さん!!」
「「…!!」」
名指しされた２人が、緊張させている顔を、更に引き締める。
「成る程ね、背の低い生徒を指定してたのは、渚がターゲットだったからか…
完璧な逆恨みじゃね？」
「吉良…君…？」
そして一歩、前に進み出る響。
「そもそも(ぽんぽん…)この体格差で勝って、本気に嬉しいってか？
先ずは、俺を指名するのが普通でね？」
「う…頭、叩かないでくれる…？」
「あ、悪ぃwww」
そう言いながら響は、鷹岡の前で戦闘姿勢(ﾌｧｲﾃｨﾝｸﾞﾎﾟｰｽﾞ)を見せた。
「…ﾁｯ、てゆーか吉良ぁ？
何でテメー、此の場に居んだ？
スモッグにテメーだけは、確実にウィルス盛っとけって言っておいたんだが…
あのヤロー、誰かと間違えやがったか？」
「…………！！」
(…成～る程ね、計画の質から、渚と茅野ちゃんは意図的に外した以外は、完全に無差別ランダムと思っていたけど、俺は俺で、指定ターゲットだった訳だ。
ん？あの時 一緒のテーブルに居た岡島と前原って、もしかして、俺の巻き添え？
２人共、何かゴメン。
…んで、やっぱり一緒だった磯貝は…日頃の行いかよ!?この、イケメンヤロー!!)
「さあ…ね？偶々、俺の体ん中には、天然の抗体が有ったんじゃね？」
まさか、体内のウィルスを聖闘士の技で焼き尽くしたとは言えず、おどけた顔で誤魔化す響。
「…てゆーか それってさぁ、渚君は兎も角、吉良っちにはガチで勝てない～…って言ってんのと同意じゃな～い？」
これにカルマが言葉を続ける。
「クックク…吉良(ｺｲﾂ)の場合はな、単にボコボコにするより、自分自身は何も出来ない中で、仲間が傷付く…自分の無力さを味わわせる展開の方が、応える…そう思っただけだ。」
カルマの挑発とも受け取れる発言にも乗る事無く、自身の考え方を話す鷹岡。
「う、ん…確かに、俺的には、そっちのが地味にダメージ有るかも…」
その言葉に響は苦笑しながら呟き、
「…でも俺は今、此の場に居る。
だから…さあ、来いよ。
別にマジバトルになったとしても、俺には勝てるんだろ？
それとも やっぱ怖いのか？寺坂２号？」
改めて構える。
「何なんだ、それわっ!?吉良テメー、何、全方位に攻撃してやがるんだ？！」
そして その台詞に１号が突っ込んだ。
「(ﾎﾞｿ…)吉良君、君も、余りヤツを挑発するな。
機嫌を損ねたりして、怒りに任せてあのボタンを押されでもしたら、取り返しが付かなくなるぞ…！」
そして烏間も響の隣に移動し、耳元で挑発は控える様に注意するが、
「まだ、大丈夫ですよ、烏間先生。
この状況、あれは云わば、アイツの切り札です。
感情の儘にボタン押した瞬間、こっちが黙る必要が無くなる位、分かっている筈。
それに…」
「？」
響も何か含みを残しながらも、自分なりに分析した考えを伝える。
「ふん…まあ、良い。
チビの前に、吉良ぁ、望み通り、お前をボコボコにしてやるよ…！
おら！ヘリポートに上がれ！
１vs１で勝負だ!!」
「…へいへい。」
ワクチンが入っているであろう、爆弾の付いたスーツケースを手にした鷹岡に続き、ズボンのポケットに両手を入れた響がタラップを登り、ヘリポートに立つ。
直後 鷹岡は、そのタラップを屋上床とヘリポートの間に有った『溝』に放り棄てる。
「これで誰も、上には登って来れねえ…
受けた屈辱…倍返しにしてやる。
さっきも言ったが、俺の輝かしい未来を汚した落とし前、付けさせて貰う!!
…が、俺は心優しいからなぁ、今なら土下座で勘弁してやらん事も無いぞ？」
「んな未来、最初から お前にゃ無ーよ。
あの時に汚れたのは、お前の下半身だろ？
違うか？この、失禁男(笑)。」
「はぁ!?」
「な？」「へ？」「え？」「まﾞ？」
「「「「「…………………。」」」」」
どわぁ～っはっはっはははは!!
「き、き、き…貴っ様～っ!!?」
明らかに嘘と判る鷹岡の言葉に、更なる悪態で返す響。
そして響の この台詞に、絶対に笑ってはいけない空気の中、烏間以外、全員アウトとなる。
余程 壺だったのか、速水でさえ、目に涙を浮かべ、プークスクスに なっている。
笑えないのは顔を真っ赤にして、肩を震わせている鷹岡。
「本当に俺を怒らせたな！
もう、後が どうなっても知るか！
とりあえず、ウィルスで苦しんでいる奴等だけは、ぶっ殺してやるよ！
テメー等の軽はずみな態度、死ぬ程 後悔しやがれ!!」
「「「「「！！？」」」」」
禁忌に触れられ、完全にキレた鷹岡が、起爆リモコンを取り出した。
「止せ、鷹岡、早まるな！」
これを烏間が止める様に呼び掛けるが、
「ぎゃははは！怨むなら、テメーの口を怨むんだな！」
しかし鷹岡は、それを無視、
ｶﾁ…
ついに、起爆スイッチを押した。
「「「「「！！？」」」」」
しかし、ケースは爆発する事無く、辺り一帯を静寂が包んだ。
「な…？」
驚きの表情を浮かべているのは鷹岡。
「ば、馬鹿な!!」
ｶﾁ ｶﾁ ｶﾁ…
何度となく鷹岡はスイッチを押すが、一向に爆弾は作動しない。
「どうした？
もしかして、火薬が湿気っていたか？
それとも そのリモコン、電池を入れ忘れたとかな、イージーなミスでも やらかしてんじゃね？」
「何だと?!」
響の言葉に、鷹岡は「そんな馬鹿な…」と思いながらもリモコンの裏側の蓋を開けてみると、確かに電池は入っていない。
「そんな…バカな…」
その、まさかの表情を浮かべる鷹岡を見て響は､【何故かズボンのポケットに入っている沢山のボタン電池】を弄りながら、笑みを浮かべ、そして次の瞬間…
ドガァッ！
「うぎっ!?」
「さてと…この先は、俺のターンだ。
ハシゴはテメー自らが棄てているからな、誰も 此の場に上って来れないぞ？(笑)」
ハイキックを鷹岡の側頭部へと、ヒットさせたのだった。
「おらぁっ!!」
ﾊﾞｷｨｯ！
「ギャン!?」
響のターンは まだ終わらない。
「テメー、皆に あれだけの目に遭わせておいて、簡単に死ねると思うなよ？」
倒れている鷹岡を無理矢理に起こすと、
「これは、前原の分！」
ズシッ！
「ぶっ…」
強烈な左のリバブローを撃ち込むと、
「そして これは、岡島の分！」
ドゴッ！…
「うごご…」
続いて左の正拳を顔面に炸裂させる。
ボタボタと血を流す鼻を抑える鷹岡。
「神崎さんの分！」
「中村ちゃんの分！」
「櫻瀬さんの分！」
「倉橋ちゃんの分！」
「杉野の分！」
更には次々と、ウィルスで倒れているクラスメート達の名前を挙げながら、拳を、蹴りを繰り出していく。
「三村の分！」
「原さんの分！」
「狭間さんの分！」
「村松の分！」
途中でダウンしても、無理矢理に引き起こし、決して攻撃の手を緩める事は無い。
「怒り…怒りが、吉良君の内側に眠っていた力を、呼び覚ましたみたいね…」
「不破さん？」
「こぉおおおおおおおおぉ…」
更に響は、空手流の息吹で精神集中、力を溜める様な仕種を見せると、
(ラストは当然、この俺の分!!
迸れ！俺の小宇宙(ｺｽﾓ)!!)
心の中で叫び、
「逝って来い！黄泉比良坂!!」
ＤＯＧＧＯＯＯＯＯＯＯＨ！！
既に意識が半分飛び、フラフラな状態で立っているだけの無防備な状態の鷹岡に対し、オーバーキル過ぎるアッパーカットを炸裂させる。
グシャア！
吹き飛ばされ、ダウンする鷹岡。
「「「「おおぉっ!!」」」」
「「「吉っ良ぁっ！」」」
「「「「吉良君!!」」」」
「吉良っち～！」
「吉良っちさん!!」
その派手な一撃に、クラスメート達は感嘆の声を上げ、響を賞賛。
「へっ…！」
ﾋﾞｼｨｯ!
響は そんな彼等に、照れくさそうにサムズアップで応えるのだった。
実は屋上に上がった時には既に、ス〇ープ〇チナも真っ青な早技で、全てのリモコンの電池を抜いていた響君(笑)
≫≫≫≫≫≫次回予告!!≪≪≪≪≪≪
次回:暗殺聖闘士『衝撃の時間(仮)』
乞う御期待!!
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