暗殺聖闘士   作:挫梛道

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黒幕の時間

9F。

 

きゅっ

「おぉ~ぅ…大分、体が動く様になってきたな…」

…そう言いながら、廊下に立っている見張りに背後から近付き、チョークスリーパーを極め、瞬殺してる(殺ってません)のは烏間である。

 

 

はわわわ…(」゚O゚L)…

いや、顔怖い顔怖い顔怖いから!!

 

 

額に血管を浮かべ、自分の不甲斐無さに自分自身が許せないような顔で呟く烏間に、生徒達は声には出さないが、揃って心で突っ込むと同時に、「良かった!この人が味方で、本当に良かった!!」と、暫定最強人類に恐怖に顔を蒼く引き攣つらせながら、心底思う。

 

しかし烏間は、

「漸く50パーと云った処か…」

(((((((((((人外!烏間先生、マジ人外!!)))))))))))

平然と言ってのけ、更に生徒達を驚愕させる。

 

「吉良っち~、今の烏間先生だったら、吉良っちなら勝てるんじゃないの?♪」

烏間の50パー発言を聞き、何気なく響に話を振ってみるカルマ。

それに対して響は、

「応、既に頭ん中でイメージバトルやってみたんだけどな…」

「「「「ほぅ?…で、結果は?」」」」

「地面に大の字な俺の首筋に、凄く怖(よ)い笑みを浮かべてる あの人が、自分の左膝に右足を置いて、更に その上に右肘を押し当てた状態での、左脛が喰い込んでいたよ…」

「「「「「「……………。」」」」」」

…と、複雑な表情で切り返すのだった。

「吉良っち…聞いた俺が、悪かったよ…」

「…てか、50パーで既に、俺達の倍以上強ぇし…」

「1500万パワーくらい ありそうね!」

「不破さん?」

「あの人1人で侵入(はい)ったのが、良かったんじゃないの?」

尊敬を通り越し、もはや呆れる生徒達。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「皆さん、最上階部屋のパソコンカメラに侵入しました。

上の様子が観察出来ますよ。」

「!!」

律の言葉に、各々のスマホを刮目するE組の面々。

                  

「最上階エリアは1室貸切。

確認する限り残るのは、画面に映る人物、只1人です。」

「コイツが…」

「黒幕…?」

画面に映る、背中越しに、机の上に置いたディスプレイを身動き無く眺めている男を見るE組チーム。

                  

「ちょっと、テレビに映ってんの、ウィルスにやられてる皆じゃない!?」

「むぅ…あの時の電話の内容から、撮られてるのは分かっていたが…」

「ケッ…見て、楽しんでやがるのが伝わってきやがる…この変態野郎が…!!」

そして そのディスプレイに映った、倒れてる皆、それを看病している竹林と奥田の姿を確認した生徒達や烏間が、口々に呟く。

                  

「皆さん、宜しいですか?」

「殺せんせー?」

「あのボスについて、少しだけ、分かってきた事があります。」

「「「「「…!!?」」」」」

皆が、渚の手に持たれた、殺せんせーに注目する。

                  

「黒幕の人物…彼は、殺し屋では ない。

殺し屋の、正しい使い方を分かっていません。」

「おいタコ、殺し屋に『正しい』使い方とかって、あるのかよ?」

正論?で突っ込んだのは寺坂である。

「…元々、彼等は「無視かよっ!?」

そんな寺坂をスルーして、殺せんせーは話し続けた。                

「…コホン、元々 彼等は先生を殺す為に雇われた殺し屋だったのでしょうが、先生が こんな姿になり、警戒の必要が薄れたので、見張りや防衛の役に回したのでしょう。」

「私達からすれば、1人1人出会したのはラッキーだった訳ね。」

「その通りです、岡野さん。

…しかし、それは殺し屋本来の仕事ではありません。

彼等の能力は、フルに発揮すれば恐るべき物です。」

「確かに、さっきの銃撃戦も、戦術で勝った様なもんだ。」

「…ん、ん。」

「ああ、アイツ…狙った的は、1㌢足りとも外さなかったぜ…。」

殺せんせーの言葉に、千葉、速水、菅谷が同意した。

 

「カルマ君と戦った相手も然りです。

敵が廊下で見張るのでなく、例えば日常、学校の帰り道で背後から忍び寄られたら…あの握力に瞬殺されているでしょう。」

「…でっすよね~♪」

口調は何時もの如く、おどけているが、顔は その場面を頭に浮かべたのか、慎重な面持ちになるカルマ。

 

「…最初の毒ガス使いも、不破の一言が無かったら、寺坂と吉田は死んでいた。」

「「いや、殺すなよ!?」」

続くイトナの一言に、勝手に殺された2人が突っ込む。

…確かに、あの時にスモッグが使用したガスは、麻痺と気絶を目的とした物であり、殺傷効果は薄いのだが。

 

「あの、鞭使いの人も…?」

「いや渚、ありゃ雑魚だ。」

「吉良君?」

「拳銃やガス銃、素手にナイフなら兎も角、あんな持ち運び的にも目立つ得物、隠密活動なんかも難そうだし、ライフルみたいに遠距離からの攻撃なんか出来る訳でなし、使える場面なんて限られてるんじゃないの?

大体、鞭なんか使う殺し屋って、マジに居たのが驚きだぜ。マンガかよ!?」

更には自分が斃した相手を、散々にこき下ろし、斬り捨てる響。

「吉良っち~?まだ、アロハ ズタズタにされたの、根に持ってるの~?」

「当ったり前だ!!」

 

「皆、時間が無いから、お喋りは そこまでだ。

ヤツは我々が、エレベーターで来ると思ったいる筈だ。

だが、交渉期限までに動きが無ければ、流石に警戒を強めてくるだろう。

個々に役割を指示する。

先ずは磯貝君…」

「はい…!」

烏間は、各個人に この先、何をすべきかを話し出した。

 

》》》》》》》》》》》》》》》》》》》

最上階へ上がる階段を、静かに、且つスピーディーに進むE組チーム。

 

烏間は当初、最上階へはカードキーが必要な為、窓からの侵入を考えていた。

しかし、先程倒した見張りの男から、そのカードキーを入手。

これは、首謀者の人物が、階段ルートの侵入者を、大して警戒していなかった証拠だった。

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

最上階の部屋の前、カードキーをドアに設置されているセキュリティーに通して解錠し、遂にラストフロアとでも呼ぶべき室内に侵入するE組の面々。

 

その部屋は広さはあるが、遮蔽物が多く、今の この生徒達なら、最大限に気配を消せば、かなり近くまで忍び寄る事も可能。

烏間のハンドサインに頷き、生徒達は動き始めた。

 

それは『ナンバ』と呼ばれる歩法。

左右の手と足を一緒に前に出す事で、胴を捻ったり軸がぶれる無駄を無くす事で、衣擦れや靴の音を抑えられる歩法であった。

 

「ヌルフフフ…どおりで最近、背後から忍び寄るのが上手くなってきた訳です。」

烏間の指導もあってだろうが、嘗ては忍者も使っていたと云われる歩法を習得した生徒達に感心する殺せんせー。

 

そして烏間を先頭としたE組チームは、遂に首謀者に対して急襲するに足りる距離まで、あと僅かな間合い迄近付いた。

 

首謀者の男は相変わらず、デスクに置かれたディスプレーに映る、ウィルスに侵され苦しんでいる生徒達の画像を一心不乱に観ている様だった。

 

「あれが、ワクチンか…」

デスクの脇に置かれた、爆弾の様な物が張り付けられたスーツケース。

皆が あの中に、ウィルスのワクチンが入っていると予想する。

良く見れば、デスクの上には起爆リモコンの様な物も確認出来る。

 

「へぇ…?」

それ等を他の皆以上に、興味深く響が見つめる。

「………………………………………。」

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

先ずは可能な限り接近、取り押さえる事が出来たら、それがベスト。

だが、遠い距離で気付かれた場合、烏間が首謀者の腕を狙撃。

それと同時に、全員で一斉に襲い掛かり拘束する。

これが、烏間の立てた計画。

 

 

さあ、焦ったマヌケ顔を見せて貰うぜ!!

 

 

苦しんでる皆の前で謝らせてやるんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

       必ず!!!!

 

 

 

 

 

それぞれが思う中、首謀者に近付き、正に今、取り押さえようとした その時、

「痒い…」

不意の首謀者の呟きに、スタンガンを手にしていた寺坂が、徒手の構えを取っていた片岡が、殺ボールを鈍器にしようとしていた響が…皆の動きが止まった。

拳銃を身構えていた烏間も然りである。

 

ボリボリ…

「思い出すと、痒くなるんだ…。」

顔を掻きながら、男は喋る。

 

「でも、そのせいかな?

何時も傷口が空気に触れてるから…感覚が鋭敏になってるんだよぉ…」

バサァッ

「「「「「「「「!!?」」」」」」」」

そう言うと男は、無数の起爆スイッチ付いたリモコンを放り投げた。

驚愕の顔を見せるE組の面々。

 

「言っただろ?

元々、マッハ20の怪物を殺る予定だったんだぜ?

リモコンだって、超スピードで奪われない様、予備も用意するさ…

うっかり倒れてしまっても、押せる位にはなぁ…」

それは、聞いた事がある声だった。

だが、以前よりも それは遥かに邪気を孕んでいる声だった。

 

「…連絡が着かなくなったのは、殺し屋の他に、身内にも居た。

防衛省の機密予算…暗殺に使う筈の金を ごっそりと抜き、俺の同僚が姿を消した。

…一体、何の心算だ?」

緊張した顔の烏間が問い詰め、

「鷹岡ぁっ!!」

首謀者の名前を呼んだ。

                  

カタ…

すると首謀者の男は ゆっくりと椅子を回転させ、振り返る。

その男は、確かに以前、E組に体育教諭としてやって来た、防衛省の鷹岡明だった。                  

「悪い子達だ。

恩師に会いに来るのに裏口からとはな…

父ちゃん、そんな風に教えた覚えは無いぞ?」                

顔中には、恐らくは自らが付けたのであろう、無数の引っ掻き傷。

完全に正気を失ったかの様な、殺意に満ちた眼。

「仕方無い。今から、補習の時間だ。」

その狂気に満ち溢れた顔で、鷹岡は そう言い放つのだった。

 

「とりあえず、屋上へ行くか…

歓迎の用意がしてあるんだ。」

椅子から立つと、起爆リモコンの1つを拾い、

「拒否権は無いぞォ?

何しろ お前等のクラスは今…

俺の慈悲で生かされてるんだからなぁ?」

「「「「「「「…………!!」」」」」」」

ボタンを押す仕草を見せながら、歪んだ嗤い顔で話す鷹岡に、一同は従う他になかった。

 

 





原作と違い、寺坂はウィルスには感染していません。

≫≫≫≫≫≫次回予告!!≪≪≪≪≪≪
 
次回:暗殺聖闘士『鷹岡の時間(仮)』
乞う御期待!!
 

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