暗殺聖闘士   作:挫梛道

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※※※※※※※※注意!!※※※※※※※※

しつこい様ですが、この小説の原作は、あくまでも『暗殺教室』です。
ついでに言えば、主役は聖闘士です。
 



前話の『魔力の時間』も、少しだけ加筆しています。




天使の時間

「ま…まあ、礼は言っとくわ。えーと…」

「あ、俺は吉良響。中3っす。

俺の事は皆、吉良っちとか きーちゃんとか呼んでるから、それで良いですよ。」

…そう呼んでるのは、現状では まだ極一部である。

 

「…ありがとうね、吉良君。

それから、私は遊佐、遊佐恵美よ。

あの男の元カノなんて、失礼な呼び方は止めて欲しいわ。」

「…了~解。…で、遊佐さん?」

「何?」

「前、胸元、開いてますけど…」

「え゙っ?!」

先程まで拘束されている時に、サリエルに何をされそうになったのか、恵美のブラウスは上3つのボタンが外されており、その下の薄紫色のシルクの布地が僅だが見えていた。

恵美はハッとした表情をして慌てて胸元を隠すと、今度は顔を赤くし、響を怨めしい顔で睨みつける。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

ザッ…

「さて…結局、オメーの目的は何だ?」

ガードする形で千穂の前に立ち、サリエルに詰め寄る真奥。

「くっくく…決まっているだろう?

魔王サタン抹殺と、勇者エミリアの持つ、聖剣ベターハーフの回収だよ。」

「それじゃ何で、恵美は兎も角、無関係な ちーちゃん攫ったりした?」

澄まし顔で話すサリエルに、真奥は怒声を浴びせる。

 

「ふふ…興味が湧いてねぇ…。

彼女は異世界の人間とは云え、魔王を魔王と知りながら、貴様に好意を抱くと言う稀有な存在。

魔王の存在が人間の生態に、どの様な影響を及ぼすか、是非とも、研究してみたい。

無論、身体の角から角まで…ね。」

「ひぇっ?!」

その言葉を聞き、変質者に遭った様にドン引きな顔をして、我が身を護るが如く抱き締める千穂。

 

「…本っ当に腐れ外道の下種ね!!」

「神の使いである天使とは思えねーな?」

「恵美!吉…良君?」

其処に、千穂を守る様に、真奥の左右に聖剣を携えた恵美と、そして両頬に赤紫色の紅葉を浮かべた、少し涙目の響が並び立つ。

 

「おいおい聖闘士?

君は本気で魔王の味方をする心算かい?

君は神の戦士じゃないのか?」

「お前は此方側の人間だ」…そう言いた気なサリエルに響は

「生憎、俺が仕える神は、アテナだけだ。

聖書の神々じゃねーよ。

大体テメーの趣味で、無関係な佐々木さん拉致った時点で、テメーは死刑!…だ!!」

二丁拳銃をイメージした両手の人差し指を向けて、其方側に付くのを否定。

 

「それに、お前の立ち位置からして、まおーさん消そうってだけなら、別に文句は言わないg「いや、吉良君!其処は言えよ?!言おうよっ!!」…勇者である遊佐さんの聖剣の回収…それも、あんな強引な手段てのは、一体どーゆー理由だ?」

「無視ぃ!?」

「本来ならば、聖剣ベターハーフ…それを生成する天銀は、天界の至宝。

人の手には余る物だからね…。」

「…与えておいて、やっぱり返せかよ?」「魔王と連む時点で、裏切り者と判断しても、おかしくはないだろ?」

その一片の悪びれも無い台詞に、響は不愉快な表情を隠さず表に出し、ちびっ子天使を睨む。

 

「まおーさんと遊佐さんの奇妙な関係は、此処に上がる迄に、粗方は聞いたよ。」

「「吉良君…」」「ほう…?」

「世界を席倦せんとする魔族の王と、其れを阻止せんとする、人類の希望の光!

しかし、組織としてでは無く、個人として対峙した その時、互いの立場を超えて惹かれ合う2人!」

「え?」「ちょっと待って…?」

「それでも、互いの宿命に殉じ、剣を交える2人!

嗚呼!此ぞ正しく、究極のロミオとジュリエット!!」

「「だから違うって言ってるだろ!!」」

最後には酔いしれた顔で右手は胸元へ、左手は大きく広げと、多少 芝居染みた響の口説に、またも息ピッタリで仲良く否定する2人。

 

「いい加減にしたまえ?

僕は、茶番は好きでは無いのだよ!」

ビュン…

しかし此処で、またも無視された形のサリエルの右眼から、紫色の光弾がレーザーの様に放たれる。

響は構わずに天使に特攻し、恵美は其の光弾を聖剣の力で弾く。

カインッ

「くっ…」

その瞬間、内に秘めた力が削られる様に、刀身が短く縮む聖剣。

「覇っ!!」

シュ…

そして響はサリエルに向かい、小宇宙を込めた掌打を放つが、それは間一髪で躱され、顳を掠るだけに終わってしまう。

 

ぽた…

「やるね、聖闘士!

掠るだけとは云え、この僕の顔に傷を負わせるとは…」

そう言って、顳から流れる血を手で拭ったサリエルは、

「万死に値する!」

ビュンビュンビュンビュンビュンビュンッ!

「おわっ!?」

響目掛け、再び右眼から放たれる紫の光弾…【堕天の邪眼光】を乱打するが、響は其れを悉く躱し、更には、

「聖闘士に同じ技は、以下略!!」

ボゴォッ

「うげぇ…」

懐に入り込み、ソバットを鳩尾にクリティカルさせる。

「くっそぉーっ!!」

堪まらず翼を広げ、上空へエスケープするサリエル。

 

「あははははは!僕はねぇ、月に近付けば近づく程、その力が増していくのだよ!

この巨大な満月の力を以て、聖闘士!

確実に斃してやるよ!!」

満月を背に、巨大な鎌を取り出すと、サリエルは響に向かい、急降下の突撃を仕掛ける。

 

ガシャアッ

しかし、此も紙一重で躱す響。

「「吉良君!」」

真奥と恵美が加勢に入ろうとするが、

「下がってて!」

響が其れを制止。

 

「聖闘士は基本、多対1の闘いを禁じている!!

それに遊佐さんと あの紫のビームは相性が悪いみたいだし、まおーさんは まおーさんで、既に魔力が殆ど すっからかんで役立たz「酷くない?」…兎に角2人は、佐々木さんガードしてて!」

「仕方無いわね…真奥!」

「ああ…ちーちゃん、こっち来て!」

「あ、はい…凄い…真奥さん、吉良君も、エンテ・イスラの人だったんですか?」

「いや…それは違うんだけどね…」

「?」

千穂の周りに、防護結界を張る真奥。

 

 

「少し派手に行くぜ!

アクベンス・シュナイダー!!」

ヒュンヒュン…

「うぐっ…!?」

左手の二本指から、無数の小宇宙の刃を乱舞させる響。

サリエルは その全てを躱す事は出来ず、直撃は免れるもガードの上から数発はマトモに受けてしまう。

 

「どうする、お子ちゃま店長?

今なら学校帰りに毎日、〇ンタのファミリーセット、ゴチしてくれるだけで勘弁してやるぜ?」

「な、舐めるなあっ!!

僕は大天使・サリエル様だぞ!!」

再び翼を広げると、上空高く飛び、

「知っているぞ!!

この世界には、聖衣が無い事くらい!

そんな完全に力を発揮出来ない、ましてや聖闘士と云えど、高が人間如き、僕が負ける筈がない!」

カッ…

焦り、怒り、自棄、自惚れ…反する其れ等が入り混じった表情から、今迄みたいな連打とは違う、魔力を最大限までに集中させ、破壊力を極限までに高めた堕天の邪眼光を放つ大天使。

 

響は それすら躱してしまうが、

ドッゴゴゴゴゴ…

直撃した都庁屋上の床は勿論、その下にある数フロアを完全破壊してしまう。

当然その残骸は地上まで落下し、その周辺も滅茶苦茶な壊滅状態になる。

「お前、何て事を!?

人払いの結界張ってる中だろうから、巻き添えは居ないと思うが、建物破壊って、何を考えてるんだよ!?」

「はあ?何を言ってるんだい君は?

この世界が どうなろうと、エンテ・イスラの住人である僕が、知った事か!!」

 

ぷち…

「あー、そーかよ…」

我関せずとばかり、誇らしげに言ってのけたサリエルだが、その台詞は響の前では悪手とは気付かなかった。

「目的の為なら、周囲の被害や手段選ばず…。

つまりテメー、俺等、この世界の人間からすりゃ、テロリスト以外の何者でもないって訳だ。」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

「な…此は?!」

内なる小宇宙を高める響。

 

「この時代、この世界、この地に生きる、地上の愛と平和と正義を守るアテナの聖闘士の名の下、改めて宣言するぜ!!

異世界エンテ・イスラの大天使・サリエル!

テメー…討つべき邪悪認定だ!!

蟹座(キャンサー)の響!…いざ、参る!!」

 

パサ…

「「きゃああああああああああっ!!?」」

着ていたTシャツを宙に舞わせると同時に、乙女の悲鳴が夜空に響き渡る中、目の前の敵に飛び込む響。

因みに恵美はマジに顔を紅潮させ、背をむけており、千穂は やはり顔を赤らめてはいりが、手を覆ったりする事無く、はわわ状態になりながらも、マジマジと刮目ガン見している。

 

そんな中、サリエルに小宇宙込みの正拳を仕掛けようとする響だが、

「甘いぞ、人間!」

BWOOOMB!!

「うぉっ!!」「なっ!?」「「きゃっ!?」」

サリエルの広範囲に及ぶ空間爆裂魔法による爆発で、被弾、吹き飛ばされる響達。

「けほっ!」「ゴホゴホ!」

爆発の煙で、周囲の視界が完全に遮断されてしまう。

 

そして、煙が晴れた時…

「ほほう…?」「ほぇ?」

真っ先にサリエルの目に写ったのは、真奥と恵美がガードしていた筈の、佐々木千穂だった。

 

「今がチャッアーンス!

こっちに来い、佐々木千穂!!」

人質にする気満々で、千穂に飛び掛かるサリエル。

そんなサリエルに対して千穂は、慌て臆する事無く、小さく笑みを零すと、

「…烏間先生、直伝…」

バキィッ!!

「あじゃぱーっ!!」

一度、身を屈めると、タイミングを合わせて立ち上がり様に、胸を縦に大きく揺らしながらの豪快なアッパーブローをお見舞いし、返り討ちにする。

「な、な…!?」

片膝を着き、何が起きたのか理解出来ず、唖然としたサリエルに、追撃する様に千穂が…その姿が響に変わり、立てている膝を踏み台の如く駆け上がると、

「烏間先生直伝、パート2!!」

ドゴォッ!

「ぎゃぴりーん!!」

只でさえ強烈過ぎる膝蹴りを、小宇宙と共に、顔面に撃ち込んだ。

 

「な…ど…どうして?」

「説明しよう!」

完全にパニックになっているサリエルに、響が種明かしを始める。

 

「俺が最初に撃った掌打な、掠っただけで終わったと思ったんだろうが、あれこそ、俺の裏技の1つである【幻夢拳】!!

幻覚を魅せたり記憶を操ったりの、超絶卑怯技よ!!」

「な?バ、バカな!?」

響の説明に、驚きの表情を隠せないサリエル。

技の性質云々の恐ろしさでなく、精神に働きかけると云う類の技を、人間が天使である自分に対し、十全に仕掛けていた事に対してである。

 

「人間を舐めるなよ、固羅ァ!!」

ブン…

動揺しているサリエルを狙い、続けて放った響の前蹴りは躱され、またも上空に逃げられる。

 

「クッソー!

人間なんか人間なんか人間なんか!!

月の力を もっと吸収すれば…!!」

またもや不自然な迄に、妖しく光る満月を背に、その月の力とやらを得ようとするサリエルだが、

「あー、それな、実は家を飛び出した時から気になってたんだけど…

あれって、まおーさんか遊佐さんの仕業ですか?」

響が月を指差しながら、真奥と恵美に話を振ってみると、

「いえ…私は…」

「さ~てね…どっかの天使の犬のハゲが、擬似的に作ってたんじゃね?

でも其れも、ウチの堕天使なニートを手伝わせようと誑かしたつもりが、逆に騙されていて、実は既に形だけの幻影でしたってオチだろ?」

「はい?」「なっ…!?」「え?」

 

パリィン…

その時、まるでタイミングを計っていたかの様に、満月が その光で照らす夜空と共にガラスの様に割れ、其処には何時もの7割が蒸発した月が顔を出す。

 

「なっ…コレは…?」

破壊された三日月を初めて見て、狼狽えるサリエル。

 

「あー、お前、コッチ来て情報収集とか、全然してないだろ?

この世界の月、3月から ずっと、あんなだぜ?」

「何だと…!?」

「ついでに言えば、月の恩恵受けてたと思ってたのも、実はアレ、幻夢拳の効果な♪

尤も あの月でも、多少は月の力?とやらを、マジに吸収してたか どうかは知らないけどね?」

 

ふぅ…

 

ドヤ顔で説明する響だが、一呼吸すると表情を険しく一変させ、

「大体さっきからテメー、人間人間って喚いてるが、俺達 聖闘士はアテナの下、ハーデスやポセイドン…神々と闘う事を宿命付けられてるんだ!!

貴様の様な、神の"使い"でしかない、天使"如き"に、そう簡単に屈してたまるか!!」

「な、何だとぉ!?」

「うおおおおおおおおおぉ~~~っ!!!!」

雄叫びと共に、小宇宙を極限まで燃焼、高める。

 

「迸れ、俺の小宇宙!

逝ってこい、黄泉比良坂!!」

 

そして小宇宙を変換させた燐気を拳に纏わせ、目の前の敵に突進し…

「ひぃっ!?く、来るなぁっ!?」

「積尸気ぃ…冥界波あぁーーーーっ!!!!」

カッ…!!

「うわああああああああぁ~っ!!」

蟹座の黄金聖闘士の代名詞とも云える その拳が、大天使サリエルにヒットした。

 

 





※裏設定として原作と違い(?)オルバと漆原が形だけとは云え、内通してたのを実は知っていた貞夫君(笑)。

※満月の種明かし設定は、後日、もっと説得力有るのが浮かんだら、書き直すかもです。
 

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