暗殺聖闘士   作:挫梛道

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夏休み
吉良家の時間


ダムダムダム…

「吉良っち、やるぅ!」

「そりゃ…どーも!!」

「2人とも、頑張れ~♪」

夏休み初日…その日の午前中、校庭のバスケットゴール下では、矢田が応援する中、、響とカルマのコート半分を使った1on1が繰り広げられていた。

 

負けた方が、矢田と一緒にアイスクリームを奢るという罰ゲームの下、かなりマジに争う2人。

響のスティール狙いをフェイントで躱したカルマが、ジャンプシュートを決める。

「ちぃっ…」

「よっし!次、吉良っちを抑えたら俺の勝ちだね~♪」

「…るせー!早くボール、寄越しやがれ!」

 

ダム…スタート地点で一度、ボールを突いた響は

「正直…この手だけは使いたくなかったのだが…」

目の前で構えるカルマ、そして その先にあるゴールを見据えると、精神を…そして小宇宙を集中させ、

「…シュッ!」

「あぁっ!?」「ズルい!!」

その場で超ロングショットを放ち、

パス…

「うっしゃあ!!」

そのボールは見事にゴールを撃ち抜いた。

 

「いや、今のは無しっしょー!?」

「少しだけ卑怯だと思うよ~?」

クレームを付ける2人に、

「いや、ラストなんだから、想定しない方が悪い!」

お前は〇ッチーか…

不意撃ちのロングショットは兎も角、中学生相手に小宇宙を使っての精神集中は どう考えても卑怯だとは思うが…

当然、小宇宙の燃焼は この2人が それに気付く事もなく、だったら もう1回、正真正銘のラストとばかりにカルマのターンでゲームが再開され、

「シュッ!」

カルマは先の響の様に、スタート地点から、奇襲の超ロングショットを放つが、そのボールは空しくもゴールに届かず手前に落ち、その零れ球を響がフォローする事で、改めてゲームセットとなった。

 

「うし!カ~ルマ?約束通り、帰りに矢田さんと俺にアイスな。」

 

ところで何故、夏休みの初日から、響とカルマが学校で1on1なんかしていたかと言うと…

                                      ≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「矢田さん、赤羽さん…吉良さん…作業、終わりました…。」

「よし、確認な。」

例の協定書に基づく、A組生徒による花壇の手入れの見張り…もとい、立ち会い役である。

それで、作業が終わるまでの暇つぶしとばかりに、響が用具倉庫からボールを持ち出して来たのが始まりである。

                   

予め磯貝宛てにメールで送られてきた、夏休みのA組のシフトに合わせ、5英傑が出張る日には、響やカルマ、磯貝に寺坂等、その二つ名に萎縮しない面子を その日の立ち会い役に割り当てていた。

想像して欲しい。

仮に、瀬尾や小山辺りが来る日に、立ち会いが渚と奥田のペアだったりしたら…

後日、響により物理的に地獄を見せられ、更には一時的に地獄(よもつひらさか)を視せられる事など お構い無く、まともに作業をする訳…と言うか、それこそ渚達に作業押し付けたりするパターンは容易に頭に浮かぶだろう。

想像して欲しい。

仮に、榊原が出る日に、神崎を立ち会いのシフトに割り当てたりしたら…

まあ…作業そっちのけになるなんて、説明不要であろう。            尤も その時には後日、響の矯正(物理)が間違い無く炸裂するだろうが…       

そういう訳で基本的には、浅野が出る日には、その唯一の上位者ポジションである響が出る様に割り当てられていた。

尤も浅野に関しては、出向いたからには例え不満顔全開だろうが、きちんと作業だけはするだろうと、ある意味、響は信頼していたのだが。

更にはカルマも、

「それなら俺も出てる方が、嫌がらせになるっしょ~?♪」

…と、普段なら、花壇の手入れなんて絶対にやらない様なサボリ魔が、積極的に協力する運びとなっていた。

参考までにA組には、その日にE組の誰が立ち会うか等は、一切教えていない。

ついでに言えば、榊原の出番の日には、見張りは男子だけのシフトで組んである。

 

気になるのは、A組生徒に旧校舎を徘徊する黄色いタコを見られる危険性だが、そのタコは沖縄旅行当日の朝まで、

「先生、日本の夏は暑いから、エベレストに避難します。」

…らしい。

また、その際に

「「「「「「「汚ねぇ!!」」」」」」」

…と、当然の如く、生徒達から大ブーイングが起きたのは、別の話。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「ん~、ま、良いだろ…。

浅野と…ゴメン、名前知らない君、今日は帰っていいぜ。」

「おっ疲れさ~ん♪」

「…では、失礼します…。」

「……………。」

 

夏休み初日の当番、モブ生徒と浅野の2人が、響達に作業終了の報告をして、下山して行った。

因みに浅野は旧校舎に顔を出し、作業終了させて下山するまで、終始無言だった。

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓改行「2人は明日、何か予定ある?」

「「え?」」

帰り道、コンビニで買ったアイスを食べながら、カルマと矢野に質問する響。

「何かあるの?」

矢田が質問を質問で返すと、

「俺ん家で数人、宿題、一緒にやろうぜって話になっててよ…」

響は説明する。

 

「いや~、俺は遠慮しとくよ。」

…と、カルマ。

 

「…誰か女子は来るの?」

「片岡さんと速水さん。」

「てゆー事は、男子は磯貝君と千葉君と…」

響の口から出た名前に、矢田が何かを察した様に、2人の名前を出し、

「それと、三村と木村な。」

更に響が補足した。

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

「此処が吉良の家だよ。」

「「「う…わぁ~…」」」

翌日の朝9:00頃。

既に何度か お邪魔した事のある磯貝の案内で、吉良家に到着した片岡、速水、矢田の女子3人。

所謂、豪邸とまでは往かないが、その一般住宅<<吉良家<<豪邸…な、住居を見て、言葉を失ってしまう。

分かり易く?例えると…一般住宅⇒茅野、吉良家⇒矢田、豪邸⇒イリーナと置き換えてみたら、ある程度はイメージ出来るだろうか…

家と彼女達の何を置き換えるかは、まあ、察して下さいと言う事で。

 

「はは…やっぱり最初は驚くよね?」

                   

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「よっ、磯貝、案内ご苦労さん。

待ってたぜ。さあ、上がって上がって。」

「「「「お邪魔します~。」」」」

玄関で響が出迎えて、リビングまで案内すると、

「「おっ、来たか。」」

「やあ。」

既に木村、三村、千葉が、テーブルの上にノートと参考書を広げ、宿題に取り組んでいた。 

「…に、しても、凄い家ね~?」

「吉良君ん家って、結構お金持ち?」

まあ、私立校に通うくらいだから、それなりに裕福な家庭ではあるだろう。

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

実は この家は、かなりな訳有りな格安物件だったりした。

昨年末、父親の転勤が決まった時点で、響は両親、そして兄との4人で椚ヶ丘市に新居を探しに来ており、その時に見つけたのが、現在の住まいである。

案内として同行した不動産屋曰わく、曰く付きの(洒落てる訳ではない)事故物件故の格安値段だとか。

何でも、以前住んでいた家族5人が無理心中を行い、その後は『出る』とか出ないとかの噂で入居者が次々と現れては去って行きが繰り返され、現在に至ったとか。

 

そして この時も、響の母親である、霊感体質の吉良詩織が(…時期的に腹の中に響が宿った頃と重なるが、それ迄は欠片も無かった霊感が急に覚醒)、この家を見た瞬間に「5人居るし!」と直感し、家族に この物件は止めておこうと言おうとした時に、

 

 

はぇ?急に気配が完璧に消えた?何故?

 

 

…となり、結局は「うん、大丈夫。居ない居ない。」と言ってしまう。

そして響を含む家族全員が この頃には既に、彼女の霊感に関しては ある程度の信用信頼が有ったので、その一言で この住まいの購入が決まったのだった。

勿論その裏には、やはり その、『家に憑(す)んでいる5人』の存在に気づいた誰かさんが、即座に無理矢理に成仏させたという経緯が在ったのだが、その事を当人以外は誰も知らないというのは、また別の話。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

AM11:30頃。

「さて…もう直ぐ昼飯だけど、どうする?

昨日、大勢来るって言ったら、母さんから昼飯代って、とりあえず諭吉さん貰ってるけど、ラーメンかピザか頼む?」

「じゃ、ラーm「「「ピザ!」」」

「OK、じゃ、適当に選んでよ。」

そう言って、木村の声を遮った女子ズに、メニューが載ったピザ屋の広告を渡す響。

 

「「………………………。」」

「ま、仕方無いだろ?」

「レディーファーストだよ。」

そんな響に、ジト目で何か言いた気な木村と三村に、何かを諭す様に話すのは、千葉と磯貝である。

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

「ん?沢山来てるな?」

「こんにちは~。」

「あ、煌兄、おかえりー…と、香純さん、いらっしゃい~。」

PM2:00頃、リビングに顔を出してきたのは、高校生位で目つきが悪い…もとい、鋭い面構えの眼鏡を掛けた男と、やはり高校生位の1人の少女。

吉良家の長男、つまり響の兄の吉良煌介と、その彼女、水沢香純であった。

 

「「「「「「どうも…お邪魔してます。」」」」」

「皆で宿題か…。ま、頑張れや。」

そう言って、彼女と一緒に、2階の自室に行こうとする煌介だが、

「あ~、響、ちょっとちょっと…」

「?」

途中、響をリビングの外に手招きする。

 

「お前も中学生だし…てか、晴華ちゃんとかいるし、解ってると思うが…

死にたくないなら、少なくとも1時間は2階、登るなよ?」

そう言って、凄んだ顔で、響の顔の前に掌を差し出すと、グシャッと何かを握り潰す様なポーズを見せる煌介。

「ら…らじゃ…でも煌兄、俺と晴華、煌兄と香純さんとは違って、ソコまで至ってないかr…あ゙ーっ、ギブギブ!!」

廊下で顔を赤くした香純の横、煌介のアイアンクローが響に炸裂した。

その後、煌介と香純は2階へ、響はリビングに戻っていく。

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「何だか吉良の兄ちゃん、凄く怖そうなんですけど…」

「おう、少なくとも空手ルール(小宇宙無し)じゃ、瞬殺される自信があるぜ。」

涙目で頭を抑えながら、響は応える。

「ノールールだったら?」

「瞬殺という表現すら生温い、刹那で潰されるぜ。」

「「「「「「お兄さんに殺せんせー、殺って貰おうよ!!」」」」」」

「国家機密!!」

 

 

そういう やり取りの中、響達は予定していた所まで、宿題を終わらせる。

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

そして、夕方の椚ヶ丘駅。

響はバッグに数日分の着替えを詰め、某県(じもと)に向かうのだった。

 

 




キャラのビジュアルは
 
吉良煌介…四宮小次郎
     (食戟のソーマ)
吉良詩織…野上冴子
     (Angel Heart)
水沢香純…エリカ・ブランデッリ
     (カンピオーネ!)
 
…を松井先生風にアレンジした画をイメージしてください。
 

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