暗殺聖闘士   作:挫梛道

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図書室の時間

椚ヶ丘中学校では成績が全てである!

 

そんな成績絶対主義の この学校の、1学期の総仕上げ、決戦の場が…!!

 

「「「「「期末テストです!!」」」」」

教室内、50体分身で個別指導している殺せんせーが力説する。

 

「殺せんせー、また今回も全員50位以内を目標にするんですか?」

「いえいえ、確かに皆さん、この1学期の間に基礎がガッチリ出来てきました。

この分なら、期末テストの成績はジャンプアップが期待出来ますが…」

「期待出来ますが?」

「先生、あの時は総合点ばかり気にしていました。

ですが今回は…この暗殺教室にピッタリの目標を設定しました!」

「「「「「ほほう…?」」」」」

生徒達の目が変わる。

 

「にゅやー!?」

「「「「「なっ?!」」」」」

その時、殺せんせーの顔が、大きく歪み捻りった。

 

「か、カルマ君!吉良君!イトナ君!寺坂君!!勉強中の暗殺は、いつもダメって言ってるでしょ!!」

「「「「ちっ!!」」」」

舌打ちする4人。

 

「とりあえず、その巫山戯た鉢巻き、何とかしろ!!」

因みに寺坂に付いている、3体の殺せんせーの鉢巻きは、『火影』マークである。

「死ぬ?幽体離脱する?黄泉比良坂行ってみる?んで、死ぬ?死ぬ?」

そして響に付いた殺せんせーの鉢巻きマークは、蟹座を象す『』マーク。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「さて、前にシロ…柳沢が言いましたが、先生は触手を失うと動きが落ちます。

色々と試してみた結果、触手1本失う毎に先生が失う運動能力は、約20㌫!

あ、かと言って、5本失うと0(ゼロ)になるって訳ではありませんよ?念の為。」

「つまり、逆に言うと、触手が減る毎に、その現状の8割の力しか出せなくなっていくって事だよね~?」

「その通りです。

…そこで、テストについての本題です。

前回の中間テストでは、総合点で評価しましたが、今回は皆さんの得意教科も評価対象に入れます。」

「具体的には?」

「教科毎に学年1位を取った人には…

答案の返却時、触手を1本、破壊する権利を差し上げましょう。」

「「「「「「「!!!!」」」」」」」

先程以上に、生徒達の目の色が変わった。

 

「解ったみたいですね?

総合と5教科全てで それぞれ誰かがトップを取れば、単純に6本もの触手を破壊出来ます。

当然、同一トップな人達がいたなら、その分、破壊出来る数が増えます。

…これが、暗殺教室の期末テスト!

賞金100億に近付けるかどうかは、皆さんの成績次第ですよ?」

 

「へ~?上等じゃん?」

「はっ!!殺って殺るぜ!」

 

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放課後の帰り道、山を降りる数人の男女。

「ん?奥田さん、珍しく気合い入ってんじゃん?」

下山中、カルマが奥田に話し掛ける。

「はい!理科なら大得意ですから!

理科ならトップ狙えます!」

「成る程、触手ね?」

「やっと、皆さんの役に立てるかも!」

「…だよね。」

気合い入りまくりな奥田愛美。

 

「それに、1教科限定なら上位ランカーって結構いるし、皆、かなり本気でトップ狙ってるよね?」

「全く、殺せんせーは…乗せるのが本当に上手いよね…。」

「総合は、吉良とカルマに任せて良いんだよな?」

「おいおい、他力本願だな~?

まあ、良いけどね?」

「あと、心配なのは…」

「理事長の、妨害…?」

「…ですよねー?」

 

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「E組の成績を落とす為ならば…手段選ばず何でもする…

私の事を、そう思っていませんか?」

「いいえ…でも、横の堅物が、貴方を疑った聞かないんですの。」

「…………………………。」

その頃、烏間とイリーナは理事長室を訪ねていた。

 

「別に、中間テストの時に、急な範囲変更をE組にだけ知らせなかったりとか、彼等の試験中、教室に宛てがった試験官に、明ら様な嫌がらせの妨害を指示したりとか、また今回の期末テストでも、そういうのをやらかすとか危惧してる訳ではありませんし、まっさか、E組如きに 其処迄しないと、本校舎の生徒は勝てないの?…とか思っている訳でもありませんわ~?」

明らかに思っているイリーナ。

 

「前科アリで信用無しですか…。

(嫌がらせというのは、私は本当に関係無いですけどね…。)

まあ、仕方ありませんね。

釘を刺しに御苦労ですが、御安心を。

今回は、本当に私は何もする心算はありまませんし、「今回?」ははは…手厳しい。

それに…私の学校は、生徒の自主性も育てています。

最終的に成績を決めるのは学校ではなく、あくまで生徒自身ですから…。」

「自主性…ですねぇ?」

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「何だか、含みある言い方だったわね?」

「ああ、そうだな。…だが、前回みたいな不正ギリギリな小細工は無さそうだな。」

理事長を退室し、廊下を歩きながら会話する、烏間とイリーナ。

 

「ま、今回は、成績が直接に暗殺と関係するみたいだし、私も一肌脱ごうかしら?」

「ほう…?」

「保健体育なら任せなさい!

何ならカラスマ、そこの会議室で予行演習してみる?」

そう言いながら、烏間の腕を引っ張り、会議室に連れ込もうとするイリーナだが、

ゴン!「痛ぃっ?!」

当然ながら次の瞬間には、烏間の拳骨が頭に落ちた。

「使用中の表示になっているだろうが!

…ていうか、外国語は何処に行った?

外国語は?」

「痛たた…女の頭をグーで殴るな!!」

「そんな事よりイリーナ、「そんな事で済ますな!」俺は理事長の あの台詞、『今回は…』より、『私は…』の言葉の方が気に掛かるのだが…」

「スルー!?」

…そんな やり取りをしながら、会議室を通り過ぎていく2人。

 

そして、その会議室内では、3-Aの生徒達が集結、生徒会長…そして理事長・浅野學峯の息子である、浅野学秀が先頭に立ち、自主勉強会を開いていたのだった。

 

「E組…吉良…僕等は、僕は負けない!」

 

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「…って、新藤からメールが届いた。

『やったね!死亡フラグが立ちました!www』だってよ(笑)。

こりゃ浅野のヤロー、かなり本気でE組(おれたち)を潰しに来るつもりだな?」

 

杉野のスマホに、野球部主将の新藤からメールが届く。

E組が この期末で、揃って上位狙いしてる事を杉野との普段の会話で知っていた新藤が、浅野達が勉強会を始める事を知ったので、多少のイヤミを込めた忠告をしてきたのだった。

 

「でも、会議室ってさ、そんなに簡単に一般生徒が使えたりするの?」

「そりゃーオメー、生徒会長権限か、理事長(ぱぱ)の威光を使ったかに決まってるだろーが。」

「坊やだからね~?」

「必死なんだよ、アイツ等も。」

「吉良君?」

「中間でトップを俺、カルマにも4位を持っていかれたからな。

奴等からすりゃ、E組がトップは勿論、自分達の上位に座るのが赦せないんだろ。

ついでに言えば、この前の野球の事も、まだ根に持ってるんじゃないの?

…小さなプライドさ。」

「ついでに言えば あの理事長にさ、中間テストや あの野球の後に、『ガクシュウクン、これは一体、どういう事だい?』とか、OHANASHIされてたんじゃないの~?♪」

A組が行っている、会議室での お勉強会とやらには、全然興味も驚異も全く示さないE組の面々。

 

「こっちは なんつっても、音速タコのマンツーマンだからな!

あっ、寺坂は1on3だったか?」

「やかましいわっ!!」

それは決して慢心や自惚れでなく、自身の自信なのだろう。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫「お~い、渚、茅野さん、2人は放課後空いてないかい?」

「磯貝君?」

 

授業が終わると同時に、磯貝が渚達に声を掛けてきた。

「何かあるの?」

「いや、予定無いなら、図書室で勉強会どーよ?…って思ってさ。

ウチの学校、学習書の揃いは半端じゃないからさ、普通に入っても席は一杯だろ?

しかも、E組(おれたち)は、普通には図書室には入れない。」

「…うん。」

「そ・こ・で・これだ!!」

「「おぉ!そ、それは もしかして、予約券!?」」

「ああ、期末を狙って、ずっと前から予約しといたんだ。

E組は基本、後回しにされるから、俺達にとっちゃ、プラチナチケットだぜ。」

「全部で6人か…」

「磯貝君、あたし達で、いいの?」

「ああ、構わないぜ?」

「あたし、行く!」

「僕も!」

この時点で とりあえず、磯貝、渚、茅野、奥田の4人が行く事になり、

「吉良君と千葉君は?」

渚が すぐ隣で将棋を打っている、響と千葉に声を掛けると、

「俺は…いいや。」

と、千葉。

そして、

「実は俺、中間テストの時のアレで、図書館って自由に入れるんだ。(テストの時間参照)」

そう応えたのは響。

                   

「え?そうなの?」

「まあな。でも、図書室なんかの出入りは俺個人の権利で、E組(みんな)との同行までは流石に認められなかったんだ。

ほれ、俺って、本校舎(あっち)じゃ何故か、危険物扱いされてるじゃん?

そんな俺が、ぼっちで図書室に行っても悲しいから、活用しないて黙っていた。」

「そうだったんだ…」

「ああ、だから俺は、そのチケットとは別枠で一緒するわ。

…てか磯貝、お前、何故に片岡さんを誘わない?」

「えぇ!?」

「それ、あたしも不思議に思ってた。」

「いや、実は真っ先に声を掛けたけどさ、今日は家の用事があるって言われて…」

凄く暗い顔で話す磯貝。

((な、何か、ゴメン!!))

それを見た響と茅野は心の中で、心の底から謝るのだった。

                   

結局 図書室には、先の4人に中村と神崎が加わる事になった。           

 

「じゃ、行こうか。」

「あ、先に行って、俺の椅子、キープしといてくれよ。

この一局、終わらせたら俺も行くよ。」

「分かった。時間、決まってるから成る可く早くな?」

 

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「理事長先生、期末テストに先駆け、A組成績の底上げに着手しました。

これで宜しいでしょうか?」

「浅野゙君゙、必要なのは、経過でなく結果だよ?

報告なら、結果が出た後で構わない。」

「…………………!!」

理事長室で交わされる会話は、相も変わらず、実の親子のそれではない。

 

「E組が他を上回ってはならない。

あらゆる面でね。解ってるのかい?

それは、私の理念に反する。

まあ、この前みたいな不様は晒す事はないと、期待しているからね。

あ・さ・の・く・ん・?」

「…失礼します!!」

 

浅野学秀が退室した後、1人残った理事長、浅野學峯は笑みを浮かべながら呟く。

「ふふ…今回は あちら側の先生達との事もあるし、私は本当に、何の手も出さず、お手並み拝見と行かせて貰うよ?

合格ラインは…総合1位は勿論の事、トップ50をA組が独占する事かな…。

それが君に出来るかい?浅野゙君゙?」

 

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「あ~、やっぱり勉強は環境だわ~♪」

エアコンが適度に効いた図書室で、中村莉桜が呟く。

「まあ、否定はしないけど…」

図書室で参考書を積み上げ、試験に備えて勉強している渚達。

 

「おや?E組の皆さんじゃないですか!」

「「「「「「!!!!」」」」」」

「勿体ない。

君達に、この図書室は、豚に真珠じゃないのかな?」

其処に声を掛けてきたのは、A組の荒木、榊原、小山…そして前日、中間テスト明けからの停学が解け、この日、久しぶりに登校してきた瀬尾だった。

 

「うわっ…5英傑かよ…」

明ら様に嫌~な顔をする中村。

 

「おら どけ、この雑魚!

そこ、俺達が座るから さっさと帰れ。」

瀬尾が まるで犬を追い払う様な仕草で退席を強いるが

「ここは俺達が ちゃんと予約して取った席だ。」

磯貝も退かない。

 

「ぎしししし…君達は、本当に記憶力が無いんだなあ?

絶対成績至上主義の この学校じゃ、E組はA組には逆らえないの!解る?」

気味の悪い笑い方で、小山が言うが、

「逆らえます!」

その台詞に抗うのは奥田愛美。

 

「はぁ?」

「私達、次のテストで全科目1位を狙ってるんです!

そしたら大きな顔、させませんから!」

「な…口答えすんな、このメガネが!」

「まあ小山、面白いじゃないか。

じゃ、こういうのはどうだい?」

ここで荒木が会話に入る。

 

「俺達A組と君達E組…。

5教科で より多く学年トップを取ったクラスが、負けたクラスに どんな事でも命令出来る…」

負ける気など皆無なのだろう、自信満々に言い放つ荒木。

 

「「「「「「………………」」」」」」

 

それを聞き、黙り込む磯貝達。

 

「どうした?急に黙り込んで、もしかしてビビったのか?

自信があるのは口だけか?

何か言ってみろよ、この雑魚が!」

瀬尾が嗤いながら煽る。

                   

ゴツゴツ…

「ぎししし…何なら、コッチは命賭けても構わないぜ~?」

奥田の頭を叩きながら、小山も瀬尾の台詞に便乗するが、

ガシ…

「いいぜ…その賭け、乗った!!

…ってか、きっしょい笑いしながら女子の頭、コンコン叩いてんなよ?

こ・の・ワカメガネ?」

後ろから小山の手を掴み止めると同時に、

ゴンっ!!

「ぎゃあっ?!」

そのワカメ頭に強烈強力な拳骨を撃ち込む男が1人。

 

「吉良さん?」「「「吉良君?」」」

「吉良!」「吉良っち!」

「よっ、お待ち!」

「「「「き、吉良ぁっ?!」」」」

吉良響だった。

 

ざわざわざわざわざわざわざわざわ…

超々・危険人物の いきなりの登場に、静かにすべき図書室が瞬時に ざわめき立つ。

そんな光景を見た中村が、誰に聞かれる事なく、ポツリと呟いた。

 

「死亡フラグが立ちました!!」

 

 




≫≫≫≫≫次回予告!!≪≪≪≪≪

「思い出した。そー言えば お前、野球ん時、凄く面白い事、言ってたよな?」

次回、暗殺聖闘士『フラグの時間(仮)』
乞う御期待!!

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