暗殺聖闘士   作:挫梛道

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念の為…吉良響は蟹座の黄金聖闘士です。 



逃走の時間

「吉良…だったか!?

き、貴様、何時の間に…?」

 

片膝を着き脇腹を押さえ、その頭巾の下は恐らく、苦痛に歪めた表情であろうシロ。

余裕が無くなったのか、人を小馬鹿にした様な、何時もの穏やかな口調でなく、自分を"君"付けでなく呼び捨てにするシロに対して響は

「簡単さ。皆がイトナ目掛けてダイブしてた時、俺だけ逆サイドから お前の方に回り込んでいた。

…それに、お前が気付かなかっただけの話だよ、バ~カ!」

凸(`∀´) びしっ!

御機嫌な犬が尻尾を振るが如く、背中に生えた羽根をパタパタ羽ばたかせながら、邪悪な笑みを浮かべた少年は中指を立て、所謂〇uckinポーズで挑発。

 

「イトナぁ!!コイツを今直ぐ殺れ!」

これが本性なのか、ヒステリックな感情丸出しな怒声で、イトナに響への攻撃を命令するシロ。

 

「うゎがぁっ!!」

それを聞いたイトナは大量の水を浴びた事により、ぶくぶくに膨れ上がった触手を響に向けるが、

「させませんよ!」

バチッ!

正面に回り込んだ殺せんせーが、やはり肥大化した触手で それを弾く。

 

「せいやぁ!!」

ビシッ バシッ ドスッ!

「…ごっ!?」

同じタイミングで響がシロに拗ねを狙った下段蹴りから顔面への上段蹴り、そして右の脇腹目掛け、左正拳を放ち、

「チェストオォッ!!」

ズゴォッ!!

トドメとばかりに右の正拳を鳩尾に突き刺した。

 

「…かはっ!?」

打たれた腹を押さえ、両膝を着くシロ。

 

「意外とタフだな?だが、終わりだ…」

本人は気絶させる心算だったのだろうか、未だに苦しんではいるが、意識を保っているシロに少しだけ驚きながらも、最期通告を言い渡す。

 

 

あの白装束、何処ぞのRPG宜しく防御力高いってヤツ?

 

 

そう思いながらも、

「行くぜ!烏間先生直伝!!(嘘&笑)…」

改めてトドメの一撃を放とうとした時、

「舐めるな、ガキがぁ!!」

ピスッ

響に向けられた白装束の右袖の中から、数本のダーツが飛び出した。

トス…ポト…

しかし そのダーツは、羽織ったいたジャージの上から響の胸元にヒットはするが、身体に突き刺さる事なく地面に落ちる。

 

「ふぅ…ビビらせやがって…」

響は その落ちたダーツの一本を拾うと

びよよよよん…

その先端を指先で弾き撓らせる。

「人間(オレ)に対せんせーダーツなんか、意味ないだろが?…マジにテンパってる?」

特殊素材製のダーツを投げ捨て、呆れた表情な響。

 

「イイトォナアァッ!!」

「うぅがあぁっ!」

殆ど冷静さを失ったシロの再度の呼び掛けに、イトナは響を狙って触手を動かそうとするが、肥大した触手のスピードは、既に常人がギリギリ見切れるかどうかの域まで激減していた。

「ヌルフ!」

パシィッ

それを難なく裁く殺せんせーの触手。

「クソがぁ!」

しかし、それでも尚、触手を動かそうとするイトナ。

それを見た生徒達は、瞬時にアイコンタクトで意思疎通。

「「「「殺せんせー、ゴメン!!」」」」

ブヮッシャアァーン!!

「にゅやーっ!?」「うぐっ!!」

殺せんせー共々、イトナに大量の水を浴びせたのだった。

 

「にゅる…皆さん、非道いですぅ…」

「いや~、…なんか、ゴメン。」

触手に留まらず、頭も倍程度の大きさに迄膨らんだ殺せんせーに、近くに立っていた菅谷が代表して謝る。

そして、

バシャ…

「う…がぁあ…!!」

そして、元の何倍にも膨れ上がった触手の重さに頭が支えきれなくなったのか、イトナが うつ伏せに倒れ込んだ。

それでも必死に触手を操ろうとするが、触手自体が自重を持て余しているのか、或いはイトナの精神力が至っていないのか、その触手は少しガタガタと動く程度までに能力が落ちている。

 

「…………ちぃっ!この役立たずがっ!!」

そう言うとシロは懐からソフトボール程度の球体を取り出すと、地面に叩きつける。

BON!!

「な…煙玉!?ケホッ!」

瞬く間に周囲に立ち込める、濃く深い白い煙。

「殺せんせー、そして吉良君及び、E組の諸君。

今回は本当に潮時の様だから、これで失礼させて貰うよ。

それとイトナ、キミでは そのモンスターを殺せない事は分かった。

そんな役立たずを何時までも飼う程、我々も裕福ではないのでね、キミは もう自由だ、好きに生きなさい。

尤も、私のメンテ無しでは あと何日、まともに生きられるか、怪しいがね?」

「!!?」

煙の中、この場を回避出来る事から余裕を取り戻したのか、何時もの丁寧な口調からの台詞を言い終えると同時に、シロは姿を消す。

 

タタッ…!

「逃がすかよ!!」

しかし、響は直ぐに煙を掻き分け、

「「「「吉良!」」」

「きーちゃん!?」

「吉良さん?」

「「「「「吉良君?」」」」

「「「吉良っち!」」」

クラスメート達が自身を呼ぶ中、その場からシロを追って去って行った。

 

「あ~ぁ、行っちゃったよ~?♪」

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫「…で、どうする?コイツ?」

 

「うがぁあ…」

E組の面々は響を見送った後、未だに水の中にに倒れ込んだ儘、取り残されたイトナを見ている。

 

「この儘、此処に放置って訳にも いかないよね?」

「あいつ、数日保たないみたいな事、言ってたよな?」

「嫌なヤツには違いないけどよ…」

「結局はコイツも、シロに利用されてたみたいなモンだよな?」

「そう考えてみたら…」

「ケッ!…知るかよ!!」

「殺せんせー、何とかならないの?」

「ヌル…そうですねぇ…」

 

水場から上がり、触手も ある程度、回復した殺せんせーはイトナを見ながら、

「イトナ君の触手は あくまで、後天的に移植された物です。

先生の技術で、細胞を切り離せなくもないですが、その前にイトn「うぐぁあっ!!」

「「「「「「「「!!?」」」」」」」」

殺せんせーが話している途中、イトナが苦しむ様に叫び声を上げる。

そして突如、頭から生えた数本の触手の内の1本が どす黒く変色する。

 

「何故だ、何故、勝てない…!?」

殺せんせーを睨みつけたイトナは、その1本の黒い触手を天高く掲げる。

「これは…ま、マズい!

皆さん下がってください!!」

殺せんせーが生徒達に叫ぶと同時に急降下する黒い触手。

 

ズシャアァッ!!

「ヌル?!」

「「「「「「「え?!」」」」」」」

「「「「「「な…?」」」」」」

しかし、この『憤怒』を意味する黒い触手が襲ったのは、『兄』でも『クラスメート』でもなく、

「自分の触手を…斬った…!?」

変色した以外の白い触手。

イトナは1本の黒い触手だけを残し、それ以外、自身の『力』の象徴な筈の触手全てを自ら斬り落としたのだった。

「うごあぁあ…」

黒い触手を支えに、立ち上がるイトナ。

一時的に力を1本の触手に集中させ、そうする事で邪魔な重りでしかない、他の触手を捨てる事で身軽さを得たかの様だ。

 

「ッ…!!」

そして憎悪に満ちた顔を殺せんせーに向けると

「うっがぁああああぁぁあぁぁあぁっ!!」

ドヒュッ…

断末魔とも受け取れる様な雄叫びを上げながら、西の空に向かい飛び去って行った。

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

一方その頃…

 

「ハア、ハア…」

山道を走りながら降りるシロ。

 

 

どうしてこうなった…?

何故、この俺が こんなにも無様に逃げなければならない?

俺の策略はプッワァーフェクツッ!!

…だった筈。

なのに、何故だ?

そうだ、イトナだ。

あの役立たずが俺の作戦を十全に こなしてさえいれば、今頃は あのモンスターを始末していた筈。

そして寺坂…アイツも あの程度の事でキレて、邪魔しやがって…

あれさえ無ければ…

いや、何よりも…あの吉良というガキ…!

アイツさえ居なければ…!!

 

 

あくまでも他人(ひと)のせい。

自身の考えた作戦の穴を認めたくないのか、本当に気付いていないのか、そう思いながらシロは逃げる様に山を下る。

 

シュタ…

「はい、ケードロ終了の時間だ。」

「!!?」

そんなシロの前に、突然、頭上真上から降り立つ響。

 

「貴様…どうやって!!」

「ふぅ…あの煙ん中、どっちの道に逃げたか捜すの、苦労したぜ(結局は小宇宙に頼っちまった)。

あっ、上から現れたんは、只のフリーランニングだ、気にするな。

間違っても忍者じゃねーぞ?」

「ヒイィ!!」

怯え声のシロが響に右掌を翳す。

「また、ゴムダーツか?

そんなの効かねーって…!!」

ばんっ!

シロの右袖の中から、硝煙が登る。

 

「テメェ…マジチャカかよ…!!」

瞬時に過去の、幾千の戦いの中で得られた『勘』で何かを察し、反射的に右掌の正面から身体を避け、大事に至らずに済んだが、まさかの実銃の使用に この時、響の頭の中で何かが弾ける。

 

「うらぁ!!」

バキィッ!

頭巾越しに顔面に正拳を放つ響。

そのパワーでシロが被っている頭巾が吹き飛び、その素顔が露わとなる。

頭巾に隠されていた素顔…その左目が義眼となっている男が睨みながら、再び右袖に仕込まれた銃口を響に向けようとするが、響は それより速く距離を詰めると その右腕をがっしり掴み、

「遅い!」

ボキィッ!!

「ぎゃああああ!?」

何の躊躇も無く、その腕をへし折る。

「どうせ、殺せんせーの事情で まともに警察には突き出せないんだ…。

大量殺人未遂の爆破テロの犯人として、別に この場で殺っても問題無いよな?」

「ヒイィぃいいイィいいっ!?」

本物の、本気の殺気を身体全体から撒き散らし始めた響に対し、それを肌で感じたシロが余りの恐怖に顔を歪め、その場にへたれ込む。

 

腰を抜かし、後退りするシロを無理矢理に引き起こすと、響は その眼を冷たく、且つ鋭く光らせ、

「テメェは赦さねえよ…さあ、逝ってこい黄泉比良坂(よもつひらさか)!!」

バサァッ…

そう言うと、羽織っていたジャージを天高く脱ぎ捨て、

「今度こそ行くぜ!

烏間先生直伝!!カッコ嘘!(笑)」

ドガァッ!!

「うぎゃああぁっ!!」

中国某所の大瀑布を逆流させるが如きの強烈なアッパーカットを顎を砕くと共に、強制的幽体離脱の付加効果を添えて炸裂させるのだった。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫「ふぅ…この儘、死なしておいても善いんだけど…」

ドガッ

「うげゃあああぁあっ!?」

響が倒れているシロの脇腹に、サッカーボールキックを放つと、苦痛の悲鳴と共に息を吹き返す。

因みにだが、先程からの数度の脇腹責めで実は、柳沢の肋骨は既に数本折れている。

「お~う、目が覚めたか?

マジに死んだかと思って心配してたぜ!」

自分で冥界送りにしたのを惚けた口調で誤魔化す様に、シロの顔を覗き込む響。

今回は「まるで、黄泉比良坂の亡者の葬列にでも…」の台詞を言う気は無い様だ。

 

「ヒイィぃい!く、来るな!!」

そんな響に腰砕け状態の儘、歯をガチガチと震わせながら、恐怖に脅える表情を見せるシロ。

それでも懐に手を伸ばし、

BON!!

「ケホッ!またかよ!!」

またも煙玉を炸裂させたシロは、響が怯んだ その隙に立ち上がると、再び下山し走り始める。

 

「なんちゅうスピードだ…

もしかして あれが、普段は封印されている70㌫ってヤツか?」

火事場のクソ力…とでも云うべきなのか、その逃げ足は、響を驚かせる程の速さ。

響も小宇宙全開すれば、簡単に捕まえる事は可能だが、敢えて それはしない。

先程のアッパーに上乗せして放った冥界波にしても、本当に殺す気は無く、直ぐに現世に引き戻す心算故に放ったに過ぎない。

無闇矢鱈に聖闘士としての力を、この程度の小物如きに頻繁に使うべきではないと響は考えている。

 

そして再び始まる鬼ごっこ。

「待てやぁ!柳沢!」

「…っ!!」

響の呼び声に一瞬、シロの動きが止まる。

「…ビンゴですか?」

 

柳沢…以前、殺せんせーから聞いていた、殺せんせーを『造った』科学者の名前。

 

地球救済云々を超越した、殺せんせーに対する狂気染みた憎悪。

そして触手人間(イトナ)を連れて来た事からも、=(イコール)、シロであると当たりを付けてみて名前を呼んでみたが、その反応で それは確信へと変わる。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

 

 

もう少しで麓…本校舎だ…。

あの中に入れば、E組生徒である奴は、手出しは出来ない筈!

 

 

山の麓が近くなり、そう云う風に考えるシロ…否、柳沢。

尤も響は、E組生徒でも例外的に本校舎に自由に出入りが出来る事を、柳沢は知らない。

だが、響も やはり、本校舎に逃げられる前に捕まえたい考えである。

超々・危険人物として本校舎の生徒から認識されている響としては、柳沢の様な怪しい格好の人物と、本校舎で立ち回る様な目立ち過ぎる行動は避けたい処だ。

                  

兎に角、麓を抜けたら自分の勝ちと信じて疑わない柳沢の前方に、山道の逃走を阻む様に立ち塞がる人影。

「なんだ、アイツは…?」

「へ?ビッチ先生…?」

それは、イリーナであった。

自分に向かって、山道を駆け降りてくる柳沢と響に対し、妖しい視線で見つめるイリーナ。

その姿を確認した柳沢が、逃げ足を更に加速する。

 

 

あの女を抑えて人質にすれば、確実に逃げられる…

 

 

…とでも思ったのか、イリーナを目掛け、一直線に走るのだが、

ビィィン…

「!!?」

突如、柳沢は宙に浮く。

 

「ビッチ先生!」

「ハァーィ♪ヒビキ!」

逆さ吊り宙吊り状態となった柳沢をスルーして、イリーナに駆け寄る響。

 

「成る程…何だか姿が見えないと思っていたら、こんな仕込みしてたのか…」

 

ワイヤートラップ。

イリーナが仕掛けた罠に、柳沢は足を捕らえ、その儘、木の枝に逆さ吊りになっている。

『女』である自分を餌に、寄せられて来た賊を、見事に捕らえた形である。

 

「ふふ…生徒(ガキ)達は、あのタコが何とかしてくれるって、信じてたからね。

だったら私は、まずはカラスマに連絡した後は、賊の逃亡を防ぐ準備を…ってね。」

「さ、流石はプロですか?その辺りは…

それで、烏間先生は?」

「既にスズメ達と一緒に、此方に向かっているわ。」

「…だったらコイツは…

そうだビッチ先生、まだワイヤーって余ってる?

宙吊りの儘、手足、縛っておこう。」

「OK、それと、口も塞いどかないとね♪」

「へ?もしかして、ディープキスで?」

ガン!!「痛いっ!?」

「んな訳ねーだろ!!

あたしだって選り好みくらい するわよ!!

とりあえずヒ~ビキ?あんたの その生意気な口、塞ぐ必要がありそうね!」

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓その頃、イトナが去った後の殺せんせーとE組生徒は…

「イトナが少し、気になるけど…」

「とりあえずは、一安心て感じ?」

「ヌルフ…」

安堵と不安を混ぜ合わせた様な複雑な表情をしていた。

それでも、殺せんせー以外は安堵の度合いが多い。

 

そんな中、

「そー言えば寺坂君?」

「あん?」

原が寺坂に話し掛ける。

 

「さっき私の事、散々言ってたよね?

太ましいだとか、ヘヴィーだとか?」

殺気を込めた笑顔で寺坂に迫る原。

「い、いや、あれはだな、状況を客観的に分析してな…って、ちょっと待て、太ましいは俺じゃない、吉良だ!!

あのヤロー、まだ戻ってないのか?」

「問答無用!!」

その余りの迫力に焦り顔で後退しながら、響を捜す寺坂。

 

「あぁ~あ、寺坂って、本っ当に無神経だよね~?

そんなんだから、あんな奴等の掌でコロコロ転がされんだよ♪」

その様子を見て、岩場の上からカルマが煽る様に笑う。

 

「はぁ?!うるせーぞカルマ!!

テメーも1人だけ、高い場所から見てんじゃねーよ!!」

「え?何々~?上司に向かって何なの?

その口の利き方~?」

「だ・れ・が・上司だ!?

あんな触手を生身で受けさせるなんざ、そんなイカレたブラック上司、何処の世界に居るんだバカヤロー!!」

「ん~、此処に居るし~♪」

「ドヤ顔してんじゃねーっ!!」

「「「「「「「……………」」」」」」」

そのやり取りを呆れ顔で見るE組の面々。

 

「大体テメーはサボり魔の癖に、いっつも美味しい場面だけは きっちり持って行きやがって!!」

この寺坂の怒りの不満爆発発言に

「あー、それ、実は私も思ってた。」

「え…?」

「…寺坂、よく言った。」

「この機会に たっぷりと泥水、飲ませようかね?」

「え?えぇ?」

片岡、速水、そして中村が便乗。

 

「村松!」

「おぅよ!!」

ガシ…

寺坂と村松が岩場に登り、カルマを捕まえると、

「「せーのっ!!」」

ざっぱーん!!

水面目掛け、2人掛かりのブレーンバスターを仕掛ける。

「はぁ!?何すんだよ、上司に向かって!」

制服が水浸しになったしまったカルマが文句を言うが、

「だから、誰が上司だ!!

おい皆、このカルマ、殺っちまうぞ!!」

「「「「「お~ぅ!!」」」」」

「え?ちょ…待っ…!?」

そんなカルマに寺坂が、前原が、中村が…皆が水を掛けたり水中に引きずり込んだりの大乱闘(笑)が始まった。

それを一歩退き、暖かい視線で見ているのは渚、茅野、そして殺せんせーである。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫「うぎゃーっ!!」

「ねえ茅野ちゃん?何で岡島はカルマに、OLAP(正調パロ・スペシャル)やられてんの?」

「色々あったのよ…」

「?」

少し ぐったりした顔の響が、凄く御機嫌顔のイリーナと一緒に戻ってきた時、何故かカルマが岡島に、プロレス技を仕掛けていた。

 

「じゃ、寺坂が原(おかあ)さんにポカポカ殴られてんのは?」

「それは…巻き添えが嫌なら、聞かない方が良いよ…」

渚が目を逸らしながら応える。

「??」

                  

「…ってゆーか、何だか寺坂、皆に馴染んでね?」

皆と水の中で笑いながら じゃれ合い、巫山戯合ってる寺坂を見て渚に尋ねると、

「「まあ、それも色々と…ね。」」

「ふ~ん?」

渚と茅野が、少しだけ嬉しそうに言う。

それを聞いた響も、何気に納得したかの様に口元を緩めた。

                  

「ヌルフフフフ…

寺坂君は正直、高い所に立って計画を錬るのには向いていません。

彼の長所は現場でこそ活かされます。」

「殺せんせー?」

わだかまりが溶けた寺坂達を微笑ましく見ていた響達に、殺せんせーが話し掛ける。

「体力と行動力で自身も、そして現場の皆も輝かせる。

実行部隊として、成長が とても楽しみな暗殺者(アサシン)です。」

「ま、その辺りは俺とカルマに任せろよ。

飛びっきりな作戦考えて、実行させてやるからよ♪」

「はは…なるべく…ソフトなヤツね…」

殺せんせーの寺坂評を聞き、凄く嬉しそうな顔で応える響に、渚は少しだけ引いた顔で、お願いするのだった。

 

 

ばっさーーーん!!

「「うわっ!?」」

そんな渚と響に大量の水が降り掛かる。

掛けてきたのは当然、カルマ、寺坂を始めとしたE組の面々。

因みに茅野は、響を盾にするが如く回り込んで、難を逃れていた。

前原や木村が笑いながら挑発的ポーズで、水辺に誘っている。

 

「あ・の・ヤ・ロ!!(笑)」

そんな彼等の中に、響は笑いながら飛び込んで行くのだった。

「「「「「きゃあーっ!!()」」」」」

羽織っていたジャージを脱ぎ捨てて。

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓改行あれから柳沢は、駆け付けきた烏間達により、改めて拘束された後、何処かに連れ去られて行った。

 

その日の夜の教員室。

皆が帰った後、響が殺せんせーに話していた。

                   

「…確かに結果オーライで、俺を含めて、皆と寺坂との溝は無くなったけどさ…」

「にゅ…」

「最初から皆が寺坂の作戦をシカトしてれば、今回の事態は起こらなかったぜ?」

「………………。」

「結果、皆が無事だったから良かったけどさ、自分が あの時、あんなにも必死に作戦んに参加すべきだって、訴えかけた結果がアレだってゆー自覚ってあるの?

せんせーが皆を纏めたいってのは解るけどさ、今回のは流石に無いと思うぜ?」

「すいません、返す言葉もありません。」

「まあ、殺せんせーも堪えてるみたいだから、必要以上には言わないけどさ…甘さは自身だけでなく、周囲も滅ぼす事だってあるってのを覚えておいた方が良いぜ?

じゃ、俺も今日は帰るよ。」

「はい…気をつけて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰も居なくなった教員室。

その部屋の窓から三日月を見上げながら、1人呟く殺せんせー。

「吉良君、それでも先生は、皆を救いたいのですよ…。

そう、イトナ君を含めて皆です…。」

 

 

 




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