「滅っ茶苦茶じゃねーか…」
「ゴミまで…酷いよ…
誰がこんな事を…」
何者かにプールが荒らされた。
その日の朝、教室に入るなりの岡島の報せで皆がE組専用プールに駆けつけてみると、コースロープは無惨にも引き千切られ、ベンチも粉々に砕かれ、更には何処からか持ち込まれたのか、ジュースの缶やペットボトル等のゴミが投げ捨てられている。
「あっ、見てよ!ビッチ先生がセクシー水着を御披露目する機会を逃して、放心状態になってるよ?!」
茅野が指差した先には、恐らくは健全な男子中学生には、不健全過ぎる位に露出度が高いであろう水着の上に、バスタオルを巻いたイリーナが、呆けた顔で立ち尽くしている。
「「畜生!!一体誰が、こんな余計な真似をしたんだ!?」」
その様を見た岡島と前原の2人が、泣きながら心の底から叫ぶ。
勿論、彼等は後から女子達に修正(物理)されるのだが、それは別の話。
「あーっ!きーちゃんもorzってるよ~!?」
そして倉橋の指先には、やはり水着を…もとい、己の鍛え絞らた肉体を披露する機会を喪い、両膝両掌を地に着け、がっくりと項垂れている響の姿があり、
((((((ちぃっ!一体 何処の何奴が、こんな余計な真似を!?万死!!))))))
その様を見た一部の女子が、心の中で叫ぶのだった。
「あーあー…こりゃたいへんだー(棒)」
「まーいんじゃね?(棒)」
「おう、プールとかめんどいしー(棒)」
「「「「「「「「!!?」」」」」」」」
にやけた顔をしての白々しい棒読み口調な寺坂、村松、吉田の言葉に反応するE組の面々。
「……………」
そんな3人を渚が見つめる。
「…んだよ渚?
何、見てんだよ。」
寺坂が笑いながら渚の前に立ち、
ぐぃ…
「まさか…俺等の仕業とか疑ってんのか?
ぐだらねーぞ、その考え…。」
胸ぐらを掴み睨みつけるが、
くい…
「痛ててて…テメー、何しやがる?!」
その腕を響が掴むと、逆に背中側に回して極めに入る。
「まさかでなく、お前等が犯人なんだろ?
こんな くだらん事しでかしたのはよ?」
「違うっつってんだろーが!!
痛ぇんだよ、離せよ!」
「…で、どーなんだ?」
寺坂を無視し、村松と吉田に顔を向けて聞いてみるが、
「「…………………」」
「沈黙は肯と取るz…うわっと?!」
「吉良君、そんな くだらない犯人探し等、やらなくてもよろしい。」
寺坂の腕を極めている、響の腕を振り解く黄色い触手。
両の触手一杯に、ノコギリ、ノミ、木槌に火バサミ等々、様々な工具を持った殺せんせーである。
しゅばっ
その道具と幾本もの触手を駆使し、あっと言う間にプールを修繕する殺せんせー。
「はい、マッハで元通り!!
いつも通り、遊んで大丈夫ですよ。」
「「「「「「はーい♪」」」」」」
「よっし、早速…」
「「「だから、此処で脱ぐな!
今から授業だ!!」」」
ガンッ!!
「ぐはぁっ!!」
響の顔面に、誰かが(多分、岡野)が投げたトカレフが直撃した。
「「「「き、吉良ーっ!?」」」」
((((((ちぃいっ!!))))))
「「「……………」」」
その平和な?やり取りを見て、複雑な顔を浮かべる寺坂達。
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
「は?寺坂の様子が変?」
昼休み、渚の机を囲み、昼食を取りながら駄弁る響達。
「…うん…元々あの3人って、勉強も暗殺も積極的じゃなかったけど、特に寺坂君が苛立ってるってゆうか…
プールを壊したのも多分、主犯は寺坂君だろうし…」
「放っとけ放っとけ…
ずっとイジメッコで通してきたアイツ的には、面白くねーんだろよ?」
「ジャイ〇ンかよ!?」
「ん~、殺して善い教室なんてさぁ…
俺は楽しまない方が、勿体ないとは思うんだけどね~?あ、美味しい♪」
「え、マジ?どれどれ♪」
「じゃ、僕も…」
「カ…カルマ、吉良、渚ぁ~!
人のオカズ、盗るなーっ!!?」
この日の杉野の弁当のメイン、豚カツは最凶コンビ+αの手により全滅した。
ガラガラ…
「やあ、皆さん。」
「殺せんせー…何?それ…?」
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「なぁ寺坂よぉ…
ちょっと考え方変えねーか?」
校舎外の林で、村松が寺坂に話し掛ける。
「お前の誘いで一緒にプール、壊したけどよ、あのタコには何の嫌がらせにもなってねー。
クラスの連中と距離置いたって俺等にゃ もう、何のメリットも無ぇーよ?」
「………………」
何かを考える顔で黙り込む寺坂。
「るせーよ、この裏切り者が…」
「はぁ!?」
「テメー、この前、あのタコの放課後ヌルヌル、受けてたろーが!!」
「あ…」
『殺せんせーの これで安心!!模試直前放課後ヌルヌル強化学習!』
E組では全国共通模試に先駆け、殺せんせーが主催した希望者参加型の特別授業が放課後に行われていた。
E組内で参加しなかったのは2人だけで、これを受講していた村松は、見事に好成績を得ていた。
「ヌルヌルなんてバックレよーって、3人で決めてたろーが!?」
村松の襟元を掴み、追求する寺坂。
「いや、お前…ヌルヌルするのとヌルヌルしないのじゃ、大違いでな…」
「ヌルヌルうるせーよ!!」
ドン!!
そう言うと寺坂は その儘、村松の体を後方の木に押し付ける。
「痛ぇな、何しやがる?!」
「るせー!
成績目当てに日和りやがって、糞が!!」
背中を押さえて睨みつける村松を無視しながら、不機嫌な顔を撒き散らし、寺坂は校舎に入る。
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「うお!?マジかよ殺せんせー?」
「ヌルフフフフフ…
この前、君が雑誌で見てたヤツです。
プール修理の祭に出た廃材で作ってみました。」
「ん?」
廊下を歩いていると聞き覚えのある声が、教室内の会話から聞こえてくる。
ガラガラ…
「はぁ…!?」
教室の扉を開けると、其処には木材を中心にして作られた、大型レーシングバイクの模型に跨がっているタコがいた。
「凄ぇよ、まるで本物じゃねーか!」
その高クォリティーな造型に感動しているのは吉田である。
「…何してんだ…おまえ…?」
「あ゙…寺坂…」
ふるふると体を震わせながら声を掛けてきた寺坂に、バツの悪そうな顔の吉田が応える。
「じ、実はよ…この前、コイツとバイクの話で盛り上がってよ…
ウチの学校、こーゆーの興味ある奴って、あんま居ねーから…」
「ヌルフフフフフ…
先生は大人な上に、漢の中の漢。
この手の趣味も、一通り齧ってます。」
レーシングスーツにフルフェイスのヘルメットで身を固めたタコが得意気に言う。
「知ってますか?
このバイクの最高速度、時速300㎞らしいですよ。
先生も一度、本物に乗ってみたいです。」
この言葉に
「アホか、その儘 跨がって飛びゃ、そっちんが速ぇだろが!」
どっ!!
この吉田の突っ込みがクラス内で大いにウケる。
その時、
バキィッ!
「 (」゚O゚L) にゅやーっ!!?」
その雰囲気を好しとしない、寺坂の蹴りがバイクを破壊した。
「はああぁ…な、何て事を…」
その残骸の一部を手に取り、号泣する殺せんせー。
ぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶー!!
「何やってんだよ寺坂!」
「謝りなさいよ!」
「大人な上に、漢の中の漢な殺せんせー、泣いてるよ!?」
教室内に起こる大ブーイング。
「全く、こりゃ非道ぇよな…」
「ん~、悪魔でも こんな非道い事、やんないと思うよ~?♪」
(((((お前達が言うか!?)))))
過去、殺せんせー作の大阪城やサグラダ・ファミリアを無慈悲に破壊した経験を持つ2人が、棚上げなのか忘れているのか、或いは自分達は別枠にしてるのか、普通な呆れ顔で言ってのける。
「五月蝿ぇんだよ、テメー等、虫か?
だったら…」
ブーイングの中、寺坂は自分の机の中から何やらスプレー缶を取り出して…
「…駆除してやるよ!!」
床に叩き突けた。
バッシュシュシュシュシュシュシュ…
「うわ、何だよ、これ?」
「殺虫剤!?」
その衝撃で缶が破れ、中から殺虫剤らしい煙が勢い良く噴き出す。
パニックになる教室内。
「何やってんだよ、お前!?
…って、何すんだよ?」
響が寺坂に向けて拳を振りかざすが、その腕は黄色い触手に絡め止められる。
殺せんせーは響に対し、困った顔で首を横に降り、その手を離すと
「寺坂君!!
君もヤンチャするってにも、限度という物がありましてね!?」
後ろを向いている寺坂を、自分に向けようと肩を掴むが、
バシッ
「俺に触るな、タコ!!」
その手を嫌そうに払い退ける。
「気持ち悪いんだよ、テメーも!
このモンスターに洗脳(あやつ)られて、仲好し子好しなE組(テメー等)もな!!」
「「「「「「「……………」」」」」」」
その発言に沈黙する教室。
「何が、そんなに嫌なんだか…」
「あ!?」
沈黙の中、響が口を開く。
「だったら殺りゃ良いじゃん?
折角 暗殺(それ)が、赦されている教室なんだぜ?」
「…んだと吉良ぁ!?
テメー、ケンカ売ってるんか?
上等だよ、大体テメーは、E組(こっち)に来た時から…」
寺坂が響に詰め寄るが、
ガシィッ
「だーかーらー、ケンカするなら、口より先に、手を出せよ?」
そう言いながら、顔面にアイアンクローをキメる響。
「…!?」
バシッ
「くっだらねーっ!!」
その手を払い退けると、寺坂は教室を出て行き、その日は戻って来なかった。
「やれやれだな…」
「協力って単語を知らないのかねぇ?」
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…E組。
ウチの教室(クラス)は大したクラスだ。
成績最下層の掃き溜めと言われながら、中間試験じゃ、本校舎側の妨害があったにも拘わらず、平均点を大きく上げた。
球技大会じゃ、暗殺を通じて培った力で、男女共に、それぞれの部活の奴等に勝っちまった。
本当に大したクラスだ。
…だから、この教室(クラス)は居心地が悪い。
はっ!
地球が大ピンチ?
暗殺の為の自分磨き?
落ち零れからの脱出?
ぶっちゃけ、そんなの どーでもいー。
その日その日を楽して適当に生きていられりゃ、それで良いんだ。
放課後の訓練も終わり、誰も居ない筈の校舎裏のE組専用プール。
その水源の上流の沢で、一斗缶に入った何かの薬剤を流し込んでいる、3つの人影。
「御苦労さん。
はい、約束の10万円。」
「…おぅ。」
「……………………。」
白頭巾に白装束の人物が、1人の男に現金を渡す。
それを その男は、もう1人の人物が無言で自分を凝視しているのを無視して、満足気に受け取る。
「ふふ…次も頼むよ、寺坂君…」
「おぅよ…。」
だから…だから俺は、こっち側のが、居心地が良いんだよ…。
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
「何しろ、あのタコは鼻が利くからねぇ…
外部の者が動けば、直ぐに察知する。
だから寺坂君?
君の様な内側の人間に頼んだのさ…
イトナの能力を、フルに活かす事が出来る舞台作りを…ね。」
「………………………………。」
白装束の人物…シロが、もう1人の人物…イトナを見ながら話す。
「寺坂君、私には、君の気持ちがよく解る心算だよ?
あのタコに苛つく余り、君はクラスで孤立を深めている。
だからこそ、私は君に声を掛けて協力を頼んだんだよ。
大丈夫。
私の計画通りに君が動いてくれたら…直ぐに あのタコを殺して、奴が来る前のE組に戻るんだ。
その上、普通の中学生では考えられない額の臨時収入も貰える…。
悪い話ではないだろ?」
「へっ……って、何だ、お前!?」
シロの言葉に、渡された金を見て、満更でもない笑みを浮かべる寺坂に、イトナが顔を近付ける。
「お前…あのキラとか云う奴より弱い。」
「はぁ!?」
「馬力も体格も、アイツより有るのにだ…
何故か解るか?」
「あ!?」
「お前の目にはビジョンが無い。
勝利への意志も手段も情熱も殺る気も、何もかもが一切無い。」
冷めた顔で言い放つイトナ。
「藁葺きの家の中で、のほほんと餌を喰う事しか考えてない豚は、豚を喰い殺すビジョンを持つ狼には絶対に勝てない…。
狼は生きろ、豚は死ね…。」
それだけ言うと、イトナは一足先に、その場を去って行く。
「相も変わらず、何なんだ、アイツわ!?
まさか、脳味噌も触手で出来てるんじゃねーだろうな!?」
「ごめん、私の躾が行き届いてなくて。」怒り心頭の寺原に、それを宥めるシロ。
その儘シロは、寺坂の機嫌を取る様に肩を持ち、
「仲良くしてくれ。
我々は戦略的パートナーだ。
クラスで浮いている、今の君なら不自然な行動も自然に出来る。
我々の作戦を実行するのに適任なんだ。」
「フン…俺も帰るぜ…」
山を降りていく寺坂を見ながら、シロは独り呟く。
「待っていろ、〇〇〇〇〇…
決着は…明日の放課後だ…!!」
〓〓〓昼休みシーン・未収録会話〓〓〓
「悪い悪い、杉野、俺の海老フライやるから勘弁してくれよ…」
「吉良君?それ、僕の海老f「お前の物は俺の物、俺のm「「ジャ〇アンか!?」」