暗殺聖闘士   作:挫梛道

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プールの時間

みーん みーん みーん…

「暑゙っぢ~…」

夏!! 季節は夏真っ盛りである!!

そんな中、天然冷暖房完備の旧校舎、E組の面々は

「地獄だぜ…

今日日、エアコンの無い教室ってよ…」

ON・OFFが利かない暖房が効いた教室内で、最っ高に だれきっていた。

そんな生徒達に担任教師は

「皆さん、だらしない!

温暖湿潤気候の この国で、暑が夏いのは当然の事ですよ!!」

「「「「「「「「「お前が言うな!

後、面白くないわ!!」」」」」」」」」

このタコ、どろどろに溶けてんじゃね?…と云う位に一番だらけていた上、余りにも下らな過ぎる台詞を放った為、総突っ込みを受けていた。

 

「因みに先生、授業が終わったらオーストラリアに避難します。」

「「「「「「「「汚ぇ!!」」」」」」」」

 

「ねぇ律さん、あなたは体内にエアコンとか、装備されてn…キャあーーーーぁっ!!」

奥田愛美が自身の後ろの席の自律思考固定砲台…律に冷房機能は付いてないのかと聞こうと、顔を後ろに向けた時、

「き、き、吉良さん、何で脱いでるんですかーっ!?」

「ん~、暑いから?」

必然的に その隣に座っている、上半身真ッパな響も視界に入り、まるで夜道で露出狂の変質者にでも出くわした、乙女の様な悲鳴を上げたのだった。

そして その奥田の叫びで、教室の皆が響に注目する。

「お前、一番後ろで目立たないからって、ズリいぞ!」

「櫻瀬さんも止めなさいよ!」

「えぇ~、だってぇ…」

隣の席で、響の鍛え絞られた肉体に目をキラキラと輝かせている櫻瀬園美は、所謂『脱ぎ吉良』肯定推進派だった。

((((特等席、代われし!))))

そして、『隠れ』を含む、他の肯定派女子が心の中で呟く。

 

その後、響は岡野と片岡に銃を突き付けられ、渋々とカッターを着込む。

「「「「「「ちぃっ!!」」」」」」

 

因みに律には、本体冷却機能は備わっているが、屋内用のクーラーやヒーターは完備されてないとか。

 

「にゅる…

皆さん、一応今、授業中なんですが…」

 

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「でも、今日からプール開きよね?」

「んん!体育の時間が待ち遠しいよ~♪」

「きーちゃんも楽しみだよね?

誰に責められる事無く服、脱げるから♪」

「応よ!…って、何を言わせる!?」

 

授業の間の休み時間、今日から学校のプールが授業で解禁される事を話していたが…

「いや…そのプールが、E組(おれら)にゃ地獄らしいぜ?」

「何か知ってるのか、木村?」

「うむ!」

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『E組名物:プール・デスマーチ』

 

プールは本校舎エリアにしかない故、E組の生徒は授業の為に炎天下の中、1㌔の山道を下山して入りに行く必要がある。

その時点で大半の者は体力の殆どを喪い、その上で水泳の授業をこなさないとならない。

そして、プール疲れした後の帰りの山道で途中力尽き、カラスの餌になる事も珍しくないと云う…。

その登下山の際に見られる行列の様は、正に死に繋がる地獄への行進と云っても決して過言ではないのである!!

 

椚ヶ丘学園史誌:【E組、その業故の苦難】より抜粋

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「…てな訳さ。」

「「「「い、嫌過ぎる…。」」」」

木村の説明で、orzとなる響達。

 

「皆さん、大変そうですね~?」

律も会話に加わる。

「ん~、そうなのよね…って、律!

あんた何で、水着なのよ?」

「夏だから…ですか?」

大型液晶ディスプレイの中の美少女は、常夏の島の海岸を背景に水着を…

しかも、学校指定のスクール水着ではなく、オレンジ色のビキニを着用していた。

誰の設定(しゅみ)かは知らないが、その矢田以上イリーナ未満な身体でのビキニは、その場にいる、男子全ての身を屈ませるには充分な破壊力だった。

「何故、水着を着てる?」の質問にも、このAI少女は きょとんとした顔で画面上に数個の?(クエスチョンマーク)のエフェクトを浮かべ、質問の意義が解らない感じだった。

「勿論、授業中は制服に着替えますよ♪」

 

「…てゆーか律~、あんたの胸、何だか大きくなってない?」

岡野が訪ねる。

確かに、殺せんせーから魔改造を施された初日に比べると、現状の水着姿となって、皆が初めて気付いたのだが、明らかにバストのサイズが増している。

「はい、改良された日から毎日1㍉ずつ、大きくしていました!只今成長期です♪」

胸を持ち上げながら、笑顔で答える律。

つまり転向後、バージョンアップした日から数えると、約5㌢程度アップしている計算になる。

「「「うぷっ…!?」」」

これで岡島を始め、数人の男子が鼻を押さえて教室を飛び出す。

 

「とりあえずイリーナ先生よりも、1㌢大きくなったら、ストップさせようと思っています♪」

((((((あ…あざとい!!)))))) 

「「こら、律~!その羨まけしからん駄肉、少し分けろ~!!」」

「う~、あたしも~!!」

「きゃっ!?中村さん岡野さん茅野さん?」

そんな律の本体タッチパネルに、中村、岡野、茅野の3人が ふざけ半分に責め入ってきた。

「「「うりうりうりうり~♪」」」

「きゃっ…ふ…3人共、や、止め…ん…」

「ちょ…3人共、止めなさいよ~(笑)」

磯貝の両目を後ろから両手で覆ってる片岡が、苦笑しながら一応、口先だけだが止めに入る。

 

「きゃん…本当に、ら、らめぇ~…」

ぽろり…

「「「「「「あ…」」」」」」「えっ?」

「「「おぉっ?」」」「??」

 

「「「「「「「「………」」」」」」」」

 

「い…いやあぁぁぁぁぁ~あっ!!?」

中村、岡野、茅野の責めの前に、胸を両手で覆い隠しながら しゃがみ込んだ涙目少女の、絹を引き裂いた様な悲鳴が教室に木霊した。

                  

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

ジャキジャキジャキジャキ!!

響、渚、前原、木村が、床に正座してる前で、律本体、左右の側面パネルが開き、計4門のガトリング砲が姿を現す。

正座した儘、ホールドアップする4人。

その4人に、無双シリーズ・本多忠勝風の甲冑を着込んだ律が、夜叉の如くな形相で質問してきた。

「さあ、選んで下さい…。

①この場で、血塗れの肉塊(ミンチ)になる

②今すぐ、先程の光景を記憶から削除する

 

どちらが好いですか?」

「「「「に…②でお願いします。」」」」

4人はDOGEZAしながら即答するのだった。   

 m(_ _)m m(_ _)m m(_ _)m

「「「いや、律、マジにゴメン!」」」

あの後、茅野、岡野、中村は律に散々平謝りして、なんとか許して貰う。

「まさか『本当に』着ている仕様とは、思わなかったのよ~!」

「てか、ぽろり機能とか、そのタッチパネル、芸が細か過ぎ!」

「うぅ…もう、ビキニは着ません…。」

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「櫻瀬…さん…?」

「……………………………」

因みに律の ぽろりを直に見た響、渚、前原、木村の4人は、昼過ぎまで女子に口を聞いて貰えなかった。

更に前原は別途、岡野に修正(物理)される。

「何故!?」

 

そして、

「何で俺は、あの時 教室を飛び出していたんだ~!?」

事を知り、泣くほど悔しがった岡島が、やはり女子達に修正されるのだった。

 

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5時限目。

「…そんな訳だから、殺せんせー、本校舎まで運んでくれよ~。」

木村からデスマーチの話を聞いた響達は、既に自らの足でプールに向かう気概は失せていた。

 

「んもー、しょうがないなぁ、きら太君は…」

そんな響のお願いに、【某・猫を自称する青い狸】の様な配色に体の色を変えた、やれやれな表情の殺せんせー。

 

「…しかし、何でもかんでも先生のスピードを当てにするもんじゃ、ありません!!

いくらマッハ20でも、出来ない事は沢山あるんですから!」

「「「「「「ですよねー…」」」」」」

机に うなだれながら応える生徒達。

パタン…

「まあ、皆さんの気持ちも分かります。」

教卓の上で開いていた、物理の教科書を閉じると、

「仕方ありません。

皆さん、水着に着替えて下さい。」

「「「「「「「「???」」」」」」」」

「裏山に小さな沢があるますよね?

少し、涼みましょう。」

                  

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

裏山の沢。

…と言っても、本当に足首まであるかないかの深さの、水掛け遊びが出来る程度の囁かな物である。

                  

その沢を目指し、水着に着替えた生徒達の先頭を歩く殺せんせー。

「さて、皆さん…さっき先生は言いましたよね?

マッハ20でも出来ない事は沢山ある…と。

その1つとして、君達をプールに連れて行く事がありました。

残念ですが、それには1日掛かりました。」

「1日って…そんな大袈裟な…」

笑いながら磯貝が話す。

「本校舎なんて、歩いて20分あれば…」

これに菅谷が続く。

「てゆーか、何で過去形なの~?♪」

カルマの問い掛けに殺せんせーは立ち止まり、振り返ると目を光らせた。

「にゅる?

誰が何時、本校舎に行く…と?」

そう言うタコの後ろの茂みの奥からは水が流れる音と、水の反射する光が見えたのだった。

                  

「「「「「「「「!!?」」」」」」」」

光に向かってダッシュする生徒達。

そして、

「「「「「「こ、これは!?」」」」」」

「ヌルフフフフフ…

何しろ小さな沢でしたので、水を溜めるのに20時間掛かりました。」

                  

                  

何という事でしょう。

あの小さな沢を塞き止めた事により、其処には立派なプールが在りました。

日光の差し込み具合等も考慮した、景観選びから間取り迄、自然を活かした緻密な設計。

25㍍の競泳コースは4本設置され、自由に遊泳出来るスペースもバッチリ確保。

プールサイドにはビーチベンチも置かれています。

更にシーズンオフには水を抜けば元通り。

水位を調整する事によって、魚を飼い、その生態観察も出来てしまいます。

殺匠(たくみ)の技術により、その沢は たった一晩で、立派なプールに、その姿を変えたのでした。

 

 

「ま、まぢですか…?」

「凄ぃ…」

「ヌルフフフフフ…

製作に1日、移動に1分…

後は1秒あれば、飛び込めますよ。」

 

生徒達は その興奮を隠せず、羽織っていたジャージを脱いで水着姿となると…

『『『『『『ひゃっはっー!! 』』』』』』

ザッボォォン…!!

我先にとプールに飛び込んでいった。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

ザバン…

「「「うぅおっりゃぁあああっ!!」」」

「負けない!」

早速4つの競泳コースで響、磯貝、前原、そして片岡が競い合い、

 

「渚…あんた、本当に男だったの…ね…」

「改めて!??」

「…まあ、仕方ない。」

中村が真実を目の当たりにし、

 

「楽しいけど、やっぱし少し憂鬱だな…

泳ぐの苦手だし、水着は身体のラインが はっきり出ちゃうし…」

「心配するな茅野。

その体をレアだジャスティスだと言ってる人間も少なくn(ゴンッ!!)ぐらぶろっ!?」

プールサイドで自身の身体のコンプレックスに少し凹み気味な茅野を、盗撮カメラで獲物(ターゲット)を探しながらフォローする岡島の顔面に、ビーチボールが直撃する。

 

そして、他の面々も それぞれが楽しんでいた、そんな中…

 

ピーッピッピ!!

響き渡る笛の音。

 

「木村君!プールサイドを走っちゃいけません!転んだら危ないですよ!!」

「あ…す、すんません…。」

監視椅子から生徒達を見守っている殺せんせーである。

 

ピーッピ!!

「原さんに中村さん!潜水は ほどほどに!

長く潜られると、先生、溺れたかと心配してしまいます!!」

「「はーい…」」

 

ピピピ!

「岡島君のカメラ没収!」

ピッピ!

「狭間さんも、こんな所にまで来て、本なんか読んでないで泳ぎなさい!」

ピー!

「律さん、改造スクール水着の着用は校則違反ですよ!!」

 

ピピピピピピピピピーッ!!

「吉良君!間違っても、下を脱いでは駄目ですからね!!」

「脱がねーよっ!!」

((((((ちぃっ!!))))))

 

                   

ピピピ!ピッ!ピピー!ピーッピ!ピー!

事有る毎に鳴る、殺監視員の笛。

「「「「「「「小煩ぇ…」」」」」」」

興醒めする生徒達。

                   

「いるよねー、自分が作ったフィールドの中だと、王様気分になっちゃう人って…」

「おぅ…有り難いのに、有り難みが薄れるよな…岡島は仕方ないにしても…」

 

「ヌルフフフフフ…

皆さんにはマナーを守り、整然と遊んで欲しい物です。」

厳し過ぎるマナー指導による生徒達の大顰蹙なぞ、何処吹く風な殺監視員。

 

「堅い事、言わないでよ、殺せんせー!」

「水掛けちゃえ!!」

「「それっ!!」」

バシャッ

そんな堅物殺監視員に向け、倉橋と櫻瀬が水を手で掬い掛けると、

「いやんっ!?」

「「「「「「「……………」」」」」」」

オーバーに体をガードし、乙女な悲鳴を上げる殺監視員。

 

ニョキ…バサッ…x2

その様子を見て、悪魔の角と羽根と尻尾を生やした2人の少年。

邪(さわやか)な笑みを浮かべ、静かに監視椅子に近付くと、

ゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさ…

 

「きゃあっ!?吉良君、カルマ君?

だ、ダメ、揺らさないで、水に落ちる!」

「「「「「「「……………!!」」」」」」

思いっきり、揺さぶったのだった。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「はぁ…はぁ…」

しかしながら、殺監視員はプールに落ちる事なく、辛くも地面に回避する。

 

そんな殺監視員に響が近付き、

「殺せんせー、もしかして…?」

話し掛けてみると、

♪ピュ~~~~♪

「…い、いや、別に今日は、泳ぐ気分じゃないだけだしー?

水中だと、触手が ふやけて動けなくなるとか、そんなん無いしー?」

誤魔化すかの様に口笛を吹くが、勝手に自爆するのだった。

 

「吉良っち、渚君、これって…」

「ああ…」

「かなり、使える…かも…?」

殺せんせーは泳げない…

クラスの大半が、それが かなり有効な暗殺につかえる弱点だと直感したのだった。

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

「しかし、水中戦となると…」

「やっぱしイケメグ?」

放課後の教室、数人の生徒達が、『殺せんせーは泳げない』という弱点について話してる過程で、その有力アタッカーとして片岡メグの名前が挙がった。

 

「ん。元・水泳部のエースだし?」

「さっきのレース、磯貝君、吉良君、前原君を抑えての1位は、痺れて憧れた!!」

「「「悪かったな!!」」」

「任されたわ…って言いたいけど…」

「ああ、片岡さんにだけ任せるのも、男子的にはアレだよね~♪」

「ヌルフフフフフ…」

「「「「「わっ、吃驚した!?」」」」」

皆が話している中、何処から現れたのか、いきなり殺せんせーが姿を見せる。

                  

「ふむ…放課後も作戦会議とは感心です。

そんな感心な君達に、ボーナス情報を教えましょう。

察しの通り、先生は泳げません。

先生の身体は水を吸収し易い体質で、全身に水を含むと、身体が膨張し、殆ど身動きが取れなくなるでしょう。

弱点としては、最大級の1つですね。」

「………………………(1つ…ね。)」

「しかし、先生は それさえ大して警戒してはいません。

落ちない自信はありますし、如何に水中でも、片岡さん1人くらいなら、どうにか出来る自信があります。」

「「「「…………………」」」」

「あはは…だったら皆で、フクロにするだけだよ?♪」

「その通りですカルマ君。

ですから…皆さんも自力を信じ、皆さんで泳ぎを鍛えて下さい。

その為に、あのプールを作ったんです。」

「「「「「「「…はいっ!!」」」」」」」

「よし、茅野ちゃんは特別(スペシャル)特訓フルコースだな。」

「えぇ~っ!?」

こうして…夏のE組に、専用プールがオープンした。

 

しかし翌日、そのプールは何者かによって、無惨に荒らされていた。

 

 




魚魚、魚キングの話は飛ばします。

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