暗殺聖闘士   作:挫梛道

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球技大会の後の話です。


球技大会…それからの時間

球技大会は無事に?終わった。

その日の放課後、教室の後ろ側の隅で、拳銃を持った少女達に囲まれて、正座している男が3人。

 

「…さて、どうして、こーゆー状況になったかは、理解してるわよね?」

片岡メグが、問い詰める。

「「「いえ…全然…。」」」

 

どうして こうなった…?

 

響はマジに考えている。

隣で一緒に正座している、チャラ男とエロ坊主は どーせまた、女子に対して何かやらかしたのだろうと、想像は難しくない。

が、少なくとも自分は女子を敵に回すような言動には、全く心当たりがない心算である。

 

「ふ~ん、じゃ、コレを聞いても、同じ事が言えるかしら?…律!」

「はい!」

 

律本体のメモリに記録された、会話が再生される。

 

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

「なあ律、今度のバスケの試合、録画保存とか出来ないか?

矢田と獅子雄と鷹村の胸をメインに。」

 

「律、女子バスケの試合、矢田と熊耳と潘騨のバストを中心に画像記録とか、撮れないかな?」

 

「律、今度の女子の試合だけど、録画とか出来ないかい?

反省会とか、色々と活用出来るだろ?」

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

「「「………………………………。」」」

証拠映像を突き付きられ、固まる男子達。

 

「「律ー!!何でバラすかーっ!!」」

「え?駄目だったんですか?」

1700㍉x800㍉の液晶ディスプレイの中の少女は、画面全体に大小様々色採り、無数の『?(クエスチョンマーク)』を浮かべ、人差し指を顎に当てて首を傾げ、きょとんとした顔で、逆に質問してくる。

 

どうでも良い話だが、1人だけ名指しされなかった女子バスケ部員が哀れに感じるのは、気のせいだろう。

 

「…成る程、あの~片岡さん?

俺はコイツ等と違って、純粋に反省会やら試合観戦な意味合いで、映像記録を頼んだだけなんだけど?」

「ふ~ん?律、どーなの?」

「はい、吉良っちさんは確かに、特に誰かを…とか、体の何処を重点的に…とかは言ってませんでした。」

「ん~、そうね、吉良君は無罪かな?」

「まぁ、勘弁してやるか?」

「…許してやらない事もない。」

「よし、吉良っちは解放してやろう。」

「何?冤罪なのに、その言い方?」

結局、響に限っては、他意は無かったとされ、その場から解放された。

 

「「吉良ー!!この裏切り者ー!!」」

残されたチャラ男とエロ坊主が、文句を浴びせるが、

「いや、お前等は自業自得だろ?

寧ろ、俺が お前等の とばっちり受けた感あるし?」

「「うぅ…」」

そう言うと、微妙に痺れた足で教室の扉の前まで行き、

ガラ…

扉を開けると、残された男達に振り返り、

「何よりも俺、彼女いるし♪(笑)」

一言、言い残し、烏間指導の放課後訓練に合流すべく、教室を去って行った。

 

「「ちっくしょー!!リア充、爆裂しろ!!」」

ジャキ…

「「「言いたい事は、言い終わった?」」」

「「ひぇええぇ~っ!!」」

その後、この2人には女子達による、煩悩退散の為の矯正が施された。

 

因みに後日、律が記録していた女子バスケの試合をクラスの生徒殆ど全員で見た際、何人かの男子が「おっぱいパねぇー!!」とか言ってしまい、その日の放課後、また女子達に正座させられ、改めて矯正されられる事になるのだが、その中に響が ちゃっかりと入っていたのは、また別の話である。   

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響が女子のOHANASHIから解放された後、前原と岡島が〆られていた頃の本校舎・理事長室。

 

「やはり、私が指揮を執った方が善いのではなかったのかい、浅野『君』?」

其処には理事長・浅野學峯に呼び出された、3-Aの実質上トップにして生徒会長、そして理事長の息子である浅野学秀が居た。

ツカツカツカ…

「まぁ、あの試合を認めた私にも落ち度があると言えば、あるかも知れないけどね…

ま・さ・か、1回コールドになるとは思ってもみなかったよ?」

「……………………っ!!」

玉座と言っても良いような、高級な役員用チェアを立ち、呼び出した生徒の目の前に立つと身を低く屈め、下から獲物を狙う爬虫類の様な目で冷たく言い放つ理事長。

「…申し訳…ありません…。」

「E組が本校舎の生徒に…しかもトップであるA組に圧勝…。

これで彼等は更なる自信を付け、本校舎の生徒達も、徐々にだが彼等への認識を変えていく。

それだけなら まだ良いが、END(終わり)の象徴であるE組に対して劣等感を感じ、それはイコール、自身の自信…別に洒落てはいないよ?

自信を失う事に繋がりかねない。

絶対に在ってはならない事だ。

さ・て…この失態は、如何にして清算する心算かい?あ・さ・の・『君』?」

その光景、会話は教育者と生徒ではなく、ましてや親子の其れでもない。

まるで、悪の組織の首領と、策を練った挙げ句に策に溺れ、主役(ヒーロー)を打ち損じた敵幹部の様である。

 

「…次の期末テストで結果を出します。

A組全員で、E組よりも…正直、吉良や赤羽に対抗出来るののは自分だけでしょうが、僕が2人を押し退けた上で総合で、A組がE組よりも上位に立ちます。」

「君に出来るのかい?

…と言うより、総合云々な勝って当たり前な話でなく、今、君が名を挙げた2人に、何人の生徒が上に立てるかが重要だと思うけどね?

極端な話、E組の最低順位の生徒より、皆が上位に着くなんて、当然な話だ。

逆に、E組の最低順位者より下の人間がA組に居たりしたら、それは問題だよね?

それこそ、A組最低順位の生徒より上に、E組の生徒が何人居る事になるか…

其処じゃないかい?

せめて、件の2人以外は、全員が全員を抑え付けて欲しいよね。」

「僕が、皆を底上げしてみせます。」

「ふふ…期待してるよ、浅野『君』。

今回は君の御手並み拝見の為、私は余計な介入は敢えて、しないでおくとするよ。」

「介入…?…今回?」

浅野学秀が過敏に反応するが、

「おっと、口が滑ったか。

でも、君が知る必要は無い事だよ。

もう、退って良いよ、浅野『君』。

期末テスト、期待してるよ…。」

「…………………………!!」

再び、恐らくは特注で作られた高級な役員用デスクに着いた理事長・浅野學峯は冷たく応えるのだった。

 

「…失礼します!!」

浅野学秀は理事長室を退室する。

そして、

「お待たせしましたね、高東先生…」

「…………………………は、はい…」

理事長は浅野学秀と一緒に呼び出していた、女子バスケ部の顧問教諭とのOHANASHIを始めるのだった。             

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「ん?速水さん…?」

それは、放課後の特訓が終わり、下山している時の事。

倉橋、矢田と一緒に歩いている速水、そして その少し後ろを渚、カルマ、杉野と歩いていた響が ある事に気づき、言った台詞。

「速水さん、髪型変えてる?」

響の此の台詞に、

「あっ!!」

「本当だ~♪」

「気付かなかった…」

すぐ後ろを歩いていて、今頃、気付いたのかと、女子2人に突っ込まれる男子4人。

昨日までは、軽くウェーブの掛かっていた髪を下ろしていた速水凜香が、その髪を二つ括りに結っていた。

曰わく、〇〇ー〇と被るのが、何となく嫌だとか。

本人が聞いたら、「どーゆー意味だ!!」と、額から血管剥き出しで、目を飛び出して突っ込んでしまいそうな理由である。

 

「皆、鈍過ぎるよ~!」

「普通、直ぐに気付かない?」

倉橋、矢田の指摘に

「いや…だって、なぁ…」

「ごめ~ん、ぶっちゃけ、女子の髪とかって、あんま興味が…だよねぇ?」

「「ん、ん。」」

言い訳する男子4人。

 

「…千葉は朝、直ぐに気付いて声掛けてくれた…。」

「「「「「「……………。」」」」」」

少し、顔を赤くしての速水の言葉に無言になる男女6人。

 

「…だ、だよね、ふ、普通は直ぐに声掛けたり、するよね…」

「さ、流石は千葉君…やっさしー…」

恐らく本人は無自覚だろうが、さり気な惚気に、ぎこちない口調でフォローする2人の女子。

そして速水を除く6人は思った。

 

((((((麓まで降りたら、とりあえず自販機でゴーヤ・オレだ!))))))

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓改行下山し、パックジュース、ゴーヤ・オレを飲みながら野球グラウンドの傍を通る渚と杉野。

其処には、まだ練習している野球部員達が居た。

時刻的に、正規の練習は終了している筈だが、殆どの部員が居残りの自主練をしている様だ。

 

ズバァン!!

「ナイスボール、キャプテン!」

そして主将の進藤は、投手として投球練習をしていた。

 

「ん?杉野ぉ~!」

その進藤が、杉野に気づき、声を掛ける。

「お…おぅ…」

それに対して、やや気まずく応える杉野。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「試合は すまなかったな…

破茶滅茶な野球、やっちまって…」

「気にするな…それを言うなら、俺等の あの守備も同じだろ?」

フェンス越し、互いに何時と変わらぬ態度で話す2人。

                  

「…でも、何故だ?

何故、彼処までして勝ちに行った?

結果を出して、俺達より強いと言いたかったのか?」

真剣な表情の進藤の問い掛けに、杉野は少し困った顔で、

「ん~、渚は、俺の変化球の練習に、何時も付き合ってくれた。

カルマや吉良の反射神経…皆のバントの上達ぶりとか、凄かったろ?

吉良のバッティングも。」

「杉野…?」

「でもさ、結果出さなきゃ、上手く其れが伝わらない。

何より、E組(ウチ)は負けず嫌いばっかで、負け前提で試合に臨む様な奴は、男子も女子も居なくてさ…(一部除いて)

まあ、何が言いたいかってと要するに…」

其処まで言うと、杉野は照れくさい顔で、

「ちょっとだけ、自慢したかったんだ。

昔のチームメイトに、今の俺のクラスメートの事をな。」

笑いながら話すのだった。

「ふぅ…それだけの為かよ…。

まぁ、確かに大した奴等だったよ。」

そんな杉野に、少しだけ、呆れるように笑いながら進藤は応えた。

 

「…でも、分かってるさ、野球選手としては、お前のが俺より全然強ぇ。

これで、俺が お前に勝ったなんて、これぽっちも思ってねーよ。」

 

「ふっ…」

それを聞いたら進藤は、顔を引き締めながらも不敵に笑い、

「杉野、高校で決着だ!」

「応よ!!」

2人はフェンス越しに拳を合わせ、約束しあうのだった。

そして、練習に戻る進藤の後ろ姿を見ながら、杉野は小さく呟く。

 

「高校までに、地球が在ればな…」

 

 


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