暗殺聖闘士   作:挫梛道

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原作に置ける、メインヒロイン(笑)登場。


転校生の時間

修学旅行明けの月曜日の朝、響が何時もな如く、山を登ってると、前方に2つの人影が。

 

「~っす。」

「…おはよ。」

「あ、きーちゃん、おっは~♪」

速水凛香と倉橋陽菜乃だ。

 

「烏間先生からのメール見た~?」

「おぅ、転校生の件だろ?」

「ん…多少、外見で驚くって、どーゆー事だろうね?」

「身長2㍍超えで、隻眼で、体半分が機械で、更に身体全身に墨彫ってるとかな?」

「いやぁ~っ!怖過ぎるよ~っ!!」

「吉良っち、それ、盛り過ぎ…」

昨日、E組生徒全員のケータイに、烏間からの一斉送信メールが届いていた。

 

∽∽∽

 

明日から転校生が1人加わる。

多少、外見で驚くだろうが、余り騒がず接して欲しい。

 

∽∽∽

 

烏間からのメールという時点で、この転校生が、殺せんせー暗殺を目的とした殺し屋だというのは明白。

 

「どんなヤツで、どんな殺り方をするとか、普通に興味あるよな。」

そう言いながら、響達は教室に向かった。

 

▼▼▼

「さて…来てるかな?暗殺転校生?」

響達が教室に入ると、数人の生徒が自分の席の付近に集まっていた。

よく見れば…いや、よく見なくても、現在は空席になっている、自分と赤羽カルマの間の席に、何やらサーバーかスパコンかの様な、大きな黒い箱が置いてある。

 

「ぅ~っす。」

「あ、おはよ、吉良君…。」

「何、これ~?」

「いや、俺達が来た時には既に…」

杉野が言うには、自分達が一番最初に教室に入った時には、既に箱が置いてあったという。

この黒い箱、重量物故、床に埋沈しない様に厚めの鉄板で補強した上に本体を設置、更には転倒防止の処理も きっちりと施されていた。

 

ヴゥゥン…

 

「「「「「「「!!?」」」」」」」

タイマー設定されていたのか、或いは対人センサーでも働いたのか、いきなり電源が入り、起動する箱。

 

プッ…

 

本体正面上部の液晶モニターに、無表情な少女の顔が写り、数世代前のゲームキャラの様な お粗末な画像処理で口をパクパクさせながら、

『皆さん、オハヨーゴザイマス。

今日から転校シテキマシタ…

 

((((((そう来たか!!))))))

響達は変な汗を掻きながら、心の中で叫んだのだった。

 

「半分でなくて、全身機械だったか!」

「きーちゃ~ん? そーゆー問題じゃあないと思うよ~?」

倉橋がソフトに突っ込んだ。

 

▼▼▼

「皆、既に知ってると思うが、転校生を紹介する。ノルウェーから来た…」

 

(烏間先生も大変ね…)

(俺、あの人だったらツッコミきれずにオカシくなるぜ…)

生徒達が気苦労を察する中、

 

カッカッカッ…

 

黒板にチョークを走らせる烏間。

 

 

      自律思考固定砲台

 

 

「…【自律思考固定砲台】…さん…だ。」

『よろしくお願いします。』

何とも言えない表情をした烏間が紹介すると、無感情な棒読み口調の機械音声で挨拶する転校生。            

生徒達は教室前方、黒板の前の烏間と、教

室後の席に設置されている自律思考固定砲台を首を前後に降り、交互に見ている。     

この彼女?を見て、プークスクスな殺せんせー。

 

「お前が笑うな。」

「同じイロモノだろが。」

烏間とイリーナが突っ込む。

『彼女』はAI(思考能力)と【顔】を持ち、歴とした生徒として登録されており、設置された位置から攻撃をするが、『生徒』である限り、反撃は出来ない…らしい。

 

「…なるほどねぇ。『生徒に危害を加える事を許されない』…私の教師としての契約を逆手に取り…なりふり構わず機械を生徒に仕立てた、と。」

流石に苦笑する殺せんせー。

 

「まぁ、良いでしょう…。

自律思考固定砲台さん?

あなたをE組に歓迎します!」

 

≫≫≫

「吉良君、どー思う?」

「ん?何が?」

授業中、櫻瀬が響に話し掛ける。

 

「彼女…?固定砲台って割には、何処にも銃とか見当たんないし…?

どーやって攻撃するのかな?」

「多分だけd

「はい、後ろの2人、無駄な会話しない!」

「「す、すいません…」」

無駄話をしていた2人に注意した後、殺せんせーは黒板を向き、生徒達に背中を見せた瞬間…

 

ガチャガチャガシャガシャ!!!!

 

「やっぱし!」「嘘?」「かっけぇ!」

自律思考固定砲台本体側面の扉が開き、中部からショットガン等の銃器が付随されたアームが出現、

 

ボボッゥ!!

 

殺せんせーに向けて、一斉射撃が開始された。

…が、これを難なく躱す殺せんせー。

眉間ギリギリまで迫る対せんせーBB弾も、手にしたチョークで容易く弾く。

止まらない銃撃の中、

「ショットガン4門に機関銃2門…

濃密な弾幕ですが、この教室の生徒は当たり前にやってますよ?

それと、授業中の発砲は禁止ですよ?」

 

カシャン…

 

殺せんせーの言葉に反応したか、

『はい、殺せんせー、気をツケマス。』

自律思考固定砲台はショットガンと機関銃を本体内部に収納する。

そして、

 

ブォウウウゥン…

 

起動音と共に、

『続いて攻撃に移ります。』

((((全然、気をつけてねぇ!!))))

クラス全員が心の中で突っ込む。

この様子を、ガラス越しに廊下から烏間とイリーナが見ていた。

イリーナは 額に冷や汗を掻き、やや驚きの表情を見せている。

一方の烏間は、少なくとも表面では冷静を装ったいる。

 

(此処からが本領発揮だ。

゙彼女゙はAI(あたま)も内部構造(からだ)も自らの手で無限に進化していく…)

 

ガシャガシャ!!!!

 

先程と同様の銃器が、自律思考固定砲台の本体側面から現れ、

 

ボボッゥ!!

 

再び、一斉射撃が始まった。

 

(ヌルフフフ…

さっきと寸分狂わぬ、全く同じ射撃…

この正確さ、流石は…いや、所詮は機械ですねぇ?)

そう思いながら、飛び交う対せんせーBB弾の嵐を避ける殺せんせー。

 

(ふむ、この眉間の攻撃も、先程と同じ。

ならば、先程同様、チョークで弾いて退路を確保すれば良い…。)

 

ピン…

 

そう考えている殺せんせーは、先程同様、チョークで弾を弾くが、

 

バチュイ!

 

「!?」

次の瞬間、チョークを持った触手の指が撃ち抜かれた。

 

「「「「「「「なっ!???」」」」」」」

これには生徒達も驚く。                          

隠し弾(ブラインド)

この自律思考固定砲台は、初撃と全く同じ射撃の後、初撃の最後の弾と全く同じ軌道に見えない様に、一発だけ弾を追加していたのだった。

殺せんせー視点からすれば、弾いた筈の弾が、未だ目の前にある様な感じだったであろう。

 

「マジかよ!?」

「へ~?♪」

「嘘…」

「弾が当たったの、初めて…だよな?」

クラス全員が、教室の後側の席に置かれた黒い箱に注目する。

 

カシャカシャ…

 

『右指破壊…増設した副砲の効果確認…』

2門の機関銃の内の1門には、初撃の際には存在しなかった、もう1つの銃口が、何時の間にか追加装備されていた。

そして、計2度の自らの攻撃を解析していく自律思考固定砲台。

 

『次の射撃で殺せる確率…0.001㌫未満

次の次の射撃で殺せる確率…0.003㌫未満

次の次の次の…

 

 

 

 

        (中略)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

卒業までに殺せる確率…90㌫以上…』

「「「「「「「「!!」」」」」」」」

この時点で漸く生徒達は思った。

゙彼女゙なら、もしかしたら殺れるかもしれない…と。

 

『よろしくお願いシマス、殺せんせー。

続けて攻撃に移ります。』

画面に事前入力(プログラム)された笑顔を表示した転校生は、次の攻撃の為の進化の準備を始める。

 

 

パパパパパパ…パスッ

 

「…?!」

学士帽と右触手に、自律思考固定砲台のショットガンから放たれたBB弾が掠る。

 

『2発の至近弾ヲ確認…

見越し予測値計測の為、主砲を4増設…』

 

ジャキ…

 

その音声の後、黒い箱から新たにガトリングガンが現れ、

『攻撃を再開シマス。』

 

ドババァ…

 

再び教室内に対せんせーBB弾が飛び交う。

E組生徒達は勿論、殺せんせーも甘く見ていた…というより、認識を間違っていた。

目の前に()るのは、紛れもない殺し屋

だった。

 

≫≫≫

「自己進化する固定砲台…ね。

正直、凄いわ。」

()()が撃っているのはBB弾だが、そのシステムは歴とした最新の軍事技術だ。」

教室内の飛び交う弾の様を変わらず廊下から見ている烏間とイリーナ。

 

「確かに これなら、いずれは…」

顎に手を当て、感心するかの様に暗殺成功に期待する烏間だが、

「ふん…そう上手く、いくかしら?」

冷めた目で、それを否定するイリーナ。

 

「この教室が、そんなに単純な仕事場(げんば)だったら…私は こんなトコで教師なんてやってないわよ?」

「イリーナ…?」

そう言うと、イリーナは教員室に足を運んで行った。

 

≫≫≫

「をいをい…これ、俺達が片すのか?」

結果、1時限目は終始、転校生の銃撃で授業処ではなかった。

1時限終了後、教室中、床に大量に散らばった対せんせーBB弾を見て、三村航揮が皆の心情を代表して呟いた。

 

「お掃除機能とか附いてないのかよ?

固定砲台ちゃんよぉ?」

村松拓哉が原因である大きな黒い箱に話し掛けるが、何の返事もない。

どうやら、休み時間は、自動的に節電モードになる様だ。

 

「ちぃっ、シカトかよ!」

「止めとけって…機械に絡んでも仕方なねーだろ!」

ややキレ気味の村松を吉田大成が窘める。

 

≫≫≫

「「「「「…………………。」」」」」

2時限目終了。

1時限同様、自律思考固定砲台からの銃撃により、授業は全く成立しなかった。

残ったのは、床に散らばる無数のBB弾。

 

「「「「「「ふぅ…」」」」」」

正直、生徒達も箒を持ってはいるが、片付ける気は薄れている。

 

「仕方ない…皆、この教室の後片付けは帰る前にしよう。」

そう言ったのは、クラス委員の磯貝悠馬。

 

カッカッカッ…

 

黒板に書き込みをした後、

「さあ皆、教科書にノート、それと書く物を持って!」

「「「「「「「さ、流石イケメン!

そこに痺れる、憧れるぅ!!」」」」」」」

 

▼▼▼

3時限目。

教員室からE組教室に向かう殺せんせー。

 

「やれやれ…自律思考固定砲台さんにも困った物です。

これでは授業が進みませんねぇ…。

既に無駄になった2時間分、どこかで取り戻さないと…」

 

ガラ…

 

そう考えながら、教室の扉を開けると

「にゅ?」

教室に生徒は誰もいない。

床には無数に散らばった儘のBB弾。

そして一番後ろの席に、自律思考固定砲台が゙1人゙在るだけだった。

 

「これは…!?」

そして黒板には

 

 

    2-Eの教室にいます。

    生徒一同

 

 

…そう、書き込みしてあった。

 

▼▼▼

特別強化クラスE組。

椚ヶ丘中学校では極 短い期間ではあるが、E組が()()()()()()()()()がある。

3学期の期末試験が終わり、当時の成績不振の2年生が篩落としされE組に通い始め、そして当時の3年生が卒業するまでの時期だ。

傍迷惑この上ない転校生に業を煮やした磯貝の案で、E組面々は、今は まだ誰もいない、その2年生の教室で待機していた。

 

≫≫≫

「教室は帰る前に、掃除しますよ。」

「文句はないですよね?殺せんせー?」

「にゅや…仕方ありませんねぇ…」

磯貝と片岡、2人のクラス委員が、不要ではあろうが、一応事情を説明。

殺せんせーも困り顔で、一応は納得し、3時限目にして この日 初めて、まともに授業が進む。

 

キーンコーンカーンコーン…

 

そして3時限目終了。

 

「皆さん、先生は急用を()()()()ました。

4時限はイリーナ先生に お願いするので、英語の授業の準備をしておいて下さい。」

 

≫≫≫

4時限目。

              

「ふふ…で、その時アイツは こんな風に私を抱き寄せて こう言ったの…」

「きゃ?ビッチ先生?」      

「「「「「「「おぉ~!!」」」」」」」

You're damn attractive.(君は危険過ぎる)…ってね♪」

イリーナの実戦的英語の授業。   

今日の生贄(笑)は矢田だった。    

 

キーンコーンカーンコーン…           

 

そして授業終了のチャイムが鳴る。     

 

「よし、今日は お終い。

アンタ達、タコとカラスマから伝言よ。

午後は全部、体育だってさ。」

「げっ!!」

「マジかっ!?」

「2時限連続で体育って、普通に死ねるぞ、おい!!」

「ビッチ先生、殺せんせーは?」

「さあね?あのタコ、今日の残りの授業を あたし等に押し付けると、どっかに飛んで行ったわ。」

 

≫≫≫

その日、殺せんせーは放課後が過ぎても、生徒達の前に姿を見せなかった。

 

▼▼▼

その日の深夜。

E組へと足を運ぶ、1つの巨大な影。

「ヌルフフ…思った以上の出費でした。」

殺せんせーである。

 

ガラ…

 

「失礼しますぅ…」

誰もいない教室に入り、

 

パチ…

 

「にゅ…?」

部屋の照明を点けると、其処には本体を布テープで ぐるぐる巻きに拘束された、自律思考固定砲台が在った。

 

ヴゥゥン…プッ

 

『殺せんせーですね?』

対人センサーが発動、電源起動する自律思考固定砲台。

 

『この拘束は、あなたの仕業ですね?

これでは銃を展開出来ません。

これは明らかに生徒(わたし)に対する加害であり、それは契約で禁じられている筈ですが?速やかに拘束を解いて下さい。』

「いや、それは、恐らくは…」

動機は充分に理解出来る。

そして、現在のE組内で、実際に此処まで敢行してしまいそうな人物…

殺せんせーの頭の中では、とりあえず3人の顔が浮かぶが、今は犯人探しをする時ではない。

食欲旺盛な探偵少女に『犯人はお前だ』等と言わせる出番を与える必要も皆無だ。

 

「自律思考固定砲台さん、それは先生ではありませんよ。

ならば誰か?そして その理由(わけ))は?

それを分析する処から始めませんか?」

『この拘束が殺せんせーの仕業でないならば、E組の誰かとしか考えられませんが、その確固たる理由が想定出来ません。』

「解りませんか?

あなたが…いえ、あなたの保護者(おや)が考えている戦術は、この教室の現状に合っているとは言い難い。

あなたが この教室の生徒だと言う限り、今日の様なスタンドプレイでなく、皆と協調するというのが最優先課題ですよ?」

『協調?』

「考えてみて下さい。

今日は君の生徒達を巻き込むのも厭わない無差別射撃で、2時間ほど授業が まるまる潰されています。

更には それで撒き散らした弾の始末に、無駄な労力を費やした。

3時限目以降、この教室で授業が行われなかったのも その為です。

しかも、仮に君が先生を殺せたとしても、その賞金は恐らく、君の開発者(おや)に行くでしょう。」

『賞金?』

「にゅ?それは情報として入力(インプット)されていませんでしたか?

先生の首には、100億円という賞金が賭けられているんですよ。

兎に角、其れ等を踏まえても、あなたの暗殺(やりかた)は、他の生徒には何のメリットも無いという訳です。」

『理解しました。殺せんせー。

確かにクラスメイトの利害までは、考慮していませんでした。』

「ヌルフフフ…やっぱり君は頭が良い。

其処でです。先生は そんな あなたの為に、こんな物を作ってみました。」

殺せんせーが取り出したのは、VHSテープサイズのメモリ拡張パーツ。

 

『それは?』           

「アプリケーションと追加メモリです。

ウィルス等は入ってないので承認(うけと)って下さい。」

そう言いながら、殺せんせーは本体外部入力端子に拡張パーツを接続する。

 

『これは…』

新たに組み込まれた情報に感嘆する自律思考固定砲台。

それは自分の視点からのE組生徒着席時の正確な座標に壁や床の僅かな凹凸、其れ等を踏まえた安全な跳弾の軌道パターンを含む射撃ライン、クラスメイトとの連携攻撃のパターン等の演算ソフトだった。

 

『殺せんせー、このメモリを承認するのには異論ありません。

しかし、あなたが何故、この様な行動をするのか、理解不可能です。

これにより、暗殺成功確率が大幅に上昇するのですよ?』

「当然です。私は暗殺対象(ターゲット)である前に先生ですから。

今日、僅か2時間程ですが、身に染みて解りました。

君の学習能力と学習意欲は非常に高い。

最新の人工知能と比べても突出している。

その高性能(さいのう)は、君を作った開発者(おや)の お陰。

そして、君の才能を伸ばすのは、生徒を預かる先生の仕事です。

皆との協調力も身に付けて…どんどん才能を伸ばして下さい。」

『この教室での暗殺において、クラスメイトとの協調の必要性は理解出来ました。

しかし、如何にして理解協力を得られるか、方法が分かりません。』

 

どん!

 

「お任せあれ!

既に準備をしてきました。」

何やら色々と、パーツや工具が詰め込まれた大きな箱を前に出した殺せんせー。

箱の中にミニ四駆や、〇トの剣の様な物が紛れて込んで見えるのは気のせいだろう。

 

『それは何デショウカ?』

「協調に必要なソフト一式と追加メモリです。

ヌルフフフ…危害を加えるのは契約違反でしょうが…性能アップさせるのは禁止されてませんからねぇ?」

この時、ドライバーやスパナを持った殺せんせーの顔は、ショッ〇ーの改造専門の科学者の様だったという。

 

 

▼▼▼

翌日。

教室に向かい、廊下を歩いているのは響、磯貝、片岡の3人。

 

「なぁ…今日も居るのかな?゙アレ゙…」

「ん~、簡単に撤収出来る代物じゃないだろうしねぇ?」

「磯貝君と吉良君は、殺せんせーが深夜にメールしてきたの見た?」

「今日はキチンと『3-E』の教室で授業を行うってヤツだよね?」

「まあ、昨日、寺坂達がガムテープで簀巻きにしてたから、あの銃を出すのは無理だろ?」

「磯貝君と一緒に、クラス委員として烏間先生に相談する事にしたわ。」

()()と一緒じゃ、クラスが成り立たないってね。」

「ん、よろしくお願いします…と。」

そう言いながら、教室に入ると、

「何だか容量が増えてない?あの箱…」

「「確かに…」」

明らかに昨日より、側面(奥行き)が倍増しになっている感じの黒い箱に3人が近づくと、

 

ヴゥゥン…             

 

電源が入り、そして

「おはようございます!!       

片岡さん、磯貝さん、吉良さん!!」

「「「はいぃぃいっ!????」」」

昨日には装備されていなかった、全面液晶モニターに等身大な美少女が写り出し、凄く明るい笑顔で、爽やかな口調で朝の挨拶をしたのだった。

      

どうして こうなった…

 

「今日は素晴らしい天気ですね!

こんな日を皆さんと過ごせるなんて、凄く嬉しいです!!」

少女?に一体、何が起こった?

「庭の草木も緑が深くなってますね。

春も終わり、近づく初夏の香りがします!」

「「「……………………………。」」」

 

 

何という事でしょう…

顔だけが表示されていた窓枠の様なモニターが、本体正面全てが液晶ディスプレイとなり、身体全身が写し出される様になりました。

以前は無表情無感情棒読み口調だった言葉使いも、今は明るく笑顔で感情豊かに、爽やかに話しています。

無機質で黒一色だった画面背景も、光溢れる明るい色調の空間から大自然の絶景に街中、宇宙空間等、自由に設定可能。

飛びながら囀る小鳥、舞う木の葉に木洩れ日等のエフェクト、その場のムードを醸し出す音楽の再生機能まで付属され、至れり尽くせりです。

 

「な、何と まぁ…たった一晩で えらくキュートになっちゃって…」

「この子?一応、あの固定砲台…よね?」

最初に彼女?を見た響達を筆頭に、教室に入っては挨拶をしてくる自律思考固定砲台を見て、フリーズするE組の面々。

 

「転校生が…」

「可笑しな方向にversion upしてきた…」

「「「…!!?」」」

「ヌルフフフ…どうですか?皆さん?」

「「「「「「殺せんせー!」」」」」」

そこに やってきたのは殺せんせー。

 

「ヌルフフフ…親近感を出す為の全身表示液晶と身体・制服のモデリングソフト…全て自作で8万円!!」

「おはようございます、殺せんせー!

こんな風に皆さんと会話出来る様にしていただいて、本当に感謝しています!!」

「豊かな表情と感情ある会話術…其れ等を操る膨大なソフトと追加メモリ、同じく全て自作で12万円!!」

「なるほど…昨日、殺せんせーが途中から消えた理由は、このパーツを買い漁っていた訳か。」

遠い目をしながら、納得する響。

 

「そして先生の財布の残高…5円!!」

そう言うと殺せんせーは、顔をクワッと強張め、触手の指先に貼り付けた5円玉を見せつけた。

 

「殺せんせー、すいません、私なんかの為に、そこまでして貰って…」

「いy

「いや、気にする必要は無いよ。」

「そーそー♪」

「にゅやー!中村さん!吉良君!」

心底、申し訳無さそうな表情をしてる固定砲台に、何か言おうとした殺せんせーの言葉を遮り、「大丈夫」とばかりにサムズアップする2人。

この やり取りがキッカケとなり、他の面々も徐々に、この新しい転校生の前に集い、色々と話し始める。

 

「ケッ!何 騙されてんだよ、お前等?

全部 あのタコが作ったプログラムだろ!!」

その想定外な好評っぷりに、面白くなさそうに言うのは寺坂龍馬。

 

「どんなに愛想良くても機械は機械。

どぉーっせ、また空気読まずに弾ぁ散撒かすんだろ、このポンコツ?」

 

ウィィン…

 

新たに組み込まれた本体旋回機能で、正面を寺坂の方向に向ける自律思考固定砲台。

「仰る気持ち、解ります、寺坂さん。」

ディスプレイの中の彼女は申し訳無さそうに俯いている。

 

「確かに昨日までの私は そうでした。

ポンコツ…そう言われつも、返す言葉がありません。うぅぅ…」

大粒の涙を流し、顔を覆う自律思考固定砲台。

 

「あーぁ、泣かせた?」

「寺坂君が二次元の女の子、泣かせちゃったよ~。」

これに女子達がが非難轟々を浴せる。         

 

「なんか誤解される言い方 止めれ!!」

必死に否定する寺坂。

しかしながら、一度熾きた炎は簡単には消える事はなく…

 

「「「「「寺坂、サイテー。」」」」」

ぽん…

「寺坂、どんまい!(爆)」

「黙れ!!」

そんな寺坂に肩ポンしたのはカルマだった。

 

「でも皆さん、御安心を。

殺せんせーに諭されて、私は協調の大切さを学習しました。

皆さんが私の事を好きになって頂けるよう努力し、皆さんの合意を得られる様になるまで…私単独での暗殺は控える事にしました。」

泣き止み、話を続ける自律思考固定砲台は、そう言って微笑む。

 

((((((か、可愛い…!!))))))

 

この天使の微笑み(デビル・スマイル)(笑)で、クラスの男子の半数は堕ちた。

特に、

「ふっ…善いじゃないか、2Dhimelishon…

『D』を1つ喪った その時、女は初めて女になるのさ…」

竹林考太郎はそう言うと、掛け直した眼鏡を鋭く光らせるのだった。

 

「そう言う訳で皆さん、仲良くしてあげて下さい。

あ、勿論、先生は彼女に様々な改良を施しましたが、彼女の殺意には一切、手を付けていません。

先生を殺したいなら…彼女は きっと、心強い味方になってくれる筈ですよ。」

「………………………。」

渚は この時に思った。

 

 

本当に何でも出来るな、殺せんせーは…

機械まで ちゃんと生徒にしちゃうとは…

 

▼▼▼

「じゃあさ、このコの呼び方 決めない?

゙自律思考固定砲台゙って、いくら何でも…ねぇ…?」

そう言い出したのは片岡。

「…ですよねー?」

「…だね。」

皆も同意する。

 

「じゃあ此処は、あのタコに名前付けた、茅野ちゃんの出番でね?」

「え?あたし?う~ん…」

響の不意な振りに、茅野は少し驚きながらも考える。

 

「何か一文字取って…自…律…そうだ!」

何か閃いた茅野。

 

「『律』!どうかしら?」

「安直だな~?」

そう言ったのは、E組で最も、安直とは縁遠い名前の木村正義。

 

「俺は逆にシンプルで良いと思うぜ?

本人は、どー思う?」

「嬉しいです!!

それでは、今後は私の事を、゙律゙と呼んで下さい!」

 

≫≫≫

「あは♪皆、見てよ♪」

「も~、中村さん、止めて下さいよ~♪」

「へ~、タッチパネル機能まで付いてるんだ~?」

中村が頬を突っつくと、それに合わせる様に その部分が凹む表情になる律。

 

「殺せんせー、仕事が細かいな…。」

「…だね。」

感心する響と渚。

 

「あ、わたしも やってみる~♪」

「…あたしも。」

「きゃ?倉橋さんに速水さん?」

倉橋と速水に左右から頬を突つかれると、照れながらも嬉しそうな顔をする律。

 

「へ~、じゃ、俺も…」

…と、両手の人差し指を立てて彼女に近づいた途端、

「「己は何処を触ろうとしてるっ!?」」

 

ドガッ!x2

 

「ぎゃーっ!!」

中村と不破からレミントンとM16のフルスイングを顔面に喰らい、岡島は倒れた。

 

「律、大丈夫?」

「はい…でも それって、私でなく、岡島さんに掛ける言葉ではないのでしょうか?」

「死にゃしないわよ!ギャグ補正で!!」

そう言ったのは不破優月。

 

「岡島…お前ってヤツわ…

幾らグラフィック的に きょぬーだからってなぁ、実際は平面の ぺったんだぞ?

そんなの触って、何が楽しいんd…

いえ…何でもないでs(ビシッ!)ぐぁ!…クマさん…だt?!」

 

ゲシゲシゲシゲシゲシッ!

 

「ぎゃっあぁ~っ!!?」

「「「「前原ぁ~!?」」」」

自業自得で倒れた岡島に対し、前原が嗜めようとするが、その最中で女子達の視線に身の危険を感じ、途中で言い留まる。

…が、少し遅かった様で、岡野からハイキック、更には その際に視界に写った ()()をつい口に出してしまい、更に鬼の様な凶悪なストンピングの連打を追加で喰らってしまう。

そう、説明が遅れたが この律、誰の設定(しゅみ)かは知らないが、その等身大グラフィックのスタイルは巨乳にカテゴリー分類されるに相応しい物だった。

参考までに、

 

矢田≦律<<イリーナ

 

…と言った処か。

 

▼▼▼

「ほぇ~?こんなのまで体の中で作れたりするんだ!」

律が出したアームの先端には、ミロのヴィーナス像のレプリカが。

目を輝かせる倉橋、岡野、矢田。

 

「はい。特殊なプラスチックを体内で自在に成型出来ます。

設計図(データ)があれば、銃以外も何でも作れちゃいます!」

「こりゃ凄いな…!」

感心する響。

 

「ありがとうございます、吉良っちさん!

あ、千葉君、王手です。」

「…3局目で もう勝てくなった。

何つー学習能力だ…。」

「じゃあさ じゃあさ?

花とか作れる?」

「はい、データさえあれば。

お花の(データ)を学習しておきますね♪」

 

≫≫≫

「人気者だな~?

俺の時も、あんな感じだったかな?」

「ん、吉良君も、あんな感じだった。」

「最初は回りが引いてた辺りも…(笑)」

「やかましいわ!」

皆が律の回りに集まっている様を見て、3月に自分がE組に編入した時の事を思い出す響。

 

「上手くやっていけそうだね?」

「ん~…どうだろな?」

「…吉良君?」

「寺坂の言った通り、殺せんせーのプログラム通りにうごいてるだけっしょ?

機械自体に意志や感情がある訳じゃない。」

「あの律の開発者(もちぬし)が、現状を どう思っているか…それ次第だろ?」

「カルマ君…吉良君…」

現状を冷静に分析するカルマと響に、渚は黙り込む。

 

そして響は

 

そう…律の開発者(おや)が、どんな風に出るか…だな。

 

そう考える…。

 

▼▼▼

その日の夜。

 

「…何だ これは?」

E組教室にやってきた、律…自律思考固定砲台の開発者を含む4人の男達は、変わり果てた自分達の作った()()の姿に言葉を失っていた。

 

「今晩はマスター!

御陰様で とても楽しい学校生活を送っています!」

「「「「………………………。」」」」

明るいBGMを流し、画面の中で手乗り鸚哥や蝶と戯れながら、開発スタッフ達に微笑み、挨拶する律。

 

「…有り得ん。」

「勝手に改造された上に…」

「どう考えても暗殺と関係ない要素まで入っているではないか!」

「これが、Japanese魔改造なのか?」

 

ガシャ…

 

持参した工具を手にする開発者達。

 

「マスター?」

「今すぐ分解(オーバーホール)だ。」

「暗殺に不必要な物は、全て取り去る!」

工具を持って律に近づくスタッフ達。

 

「待って下さい、マスター!

私は現状がベストと認識しています!

これは、初期AIが出した結論です!!」

「黙れ、機械の分散で開発者(おや)に逆らう心算か!

中途半端にAIに人間らしさを組み込んだのが失敗だった様だ。」

開発者(おや)の命令は絶対だ。

お前は暗殺の事だけを考えていれば、それで良いのだよ?」

「いや、止めて下さい、私の話を聞いて下さい、マスター!」

 

ブイィィィィィン…

 

開発者に同行した技術スタッフが持つ充電式インパクトドライバーが、律本体の外部カバーと内部基盤パーツを繋ぐ連結ビスに触れた時、

「はい、ストーップ!其処まで~!♪」

「「「「!!!?」」」」

開発者達は驚く。

自分達以外、誰も居ない筈の教室から、いきなり部外者の声がしたのだから。

 

「よっ!律♪」

「吉良っちさん?」

何時の間にか、黒板の前の教卓の天板の上に、響が座っていたのだった。

 

「何だね、君は?」

「何時の間に?」

「…吉良っちさん、私のセンサーにも、あなたは感知出来ませんでした。

何時、どうやって この教室に入ってきたのですか?」

「(ん~…まさか、グランドからSEVEN SENSES全開で教室の様子を窺っていて、ヤバそうだったから光速で教室に入ってきた…とは言えんよな…)最初からいたよ。」

「バカな!?我々が教室に入ってきた時は、確かに無人だったぞ!」

「其処は東洋の神秘?(笑)って事で。」

「「「「「NINJAか!?」」」」

           ですか?!」

思わず その場にいる者、全員が突っ込む。

 

「んな訳ないだろ!

俺の事は、只のカラテ使いで納得しろ!」

どうやら響は、忍者扱いは好まない様だ。

 

「ふん…!それでカラテボーイ?

我々に何の用だ?」

「決まってるだろ?

律の解体を止めに来た。

今の律は、お前等が送り込んだポンコツ固定砲台とは訳が違う位に戦力なんだよ!

現場の人間の意見だ。尊重しろ、な?」

因みに今更だが、この やり取りは全て英語で行われている。

 

「吉良っちさん…ポンコツ呼ばわりは地味に傷つきます…。」

響⇔律の間は日本語だ。

 

「黙れ小僧が!お前に何が解る?

コイツのルーツはイージス艦の戦闘AI!

人間より速く戦況を分析し、人間より速い総合的判断で あらゆる火器を使いこなす。

加えてコイツは卓越した学習能力と自身で武装を改造出来る機能を持つ。

コイツが その威力を実証すれば、世界の戦争は一気に変わる。あの怪物の賞金等、ついでに過ぎん。

怪物殺しの結果を出せば、我々の齎す利益は数兆円だ!」

「…成る程、つまりはアンタ等、部外者の改良で結果を出されたら、自分達の手柄にはならないから、元に戻そうとしてるだけなのか…」

「ふん!何とでも思うが良いわ、ガキが!

兎に角、この教室ば我々゙が作った、コイツの性能を試すのには、絶好の()()()なんだy(ドガッ)AJAPAH!!」

「今、何つった?ゴラ゙!?」

開発者が台詞を言い終わる前に、響の前蹴りが炸裂した。

そして倒れた開発者の首を掴み上げ、無理矢理に起こす響。

 

「AHHHHH…?」

「実験場だ?そんなんで、俺等の授業、ぶっ潰してくれたんか?あ゙ぁん!?」

 

バキィ!

 

「ぐぴぃ!」

更に右の正拳を鳩尾に打ち込み、

「取り敢えず、昨日の授業邪魔された怨み28人分(x2時限)、受け取れ!…な?」

何気に とんでもない事を、指の関節をパキパキと鳴らしながら言う響に、責任者である主任開発者が叫ぶ。

 

「お前等、さっきから何をしている!?

さっさと このガキを取り押さえろ!!」

 

≫≫≫

「「うぅ…」」「「かはぁ…」」

「取り押さえろ!!…は、どうした?(笑)」

当然と言うべきか、この4人が響を取り押さえるというのは無理な話だった。

逆に響に授業を潰された28人x2時限分の制裁とやらを喰らう事になる。

 

「吉良っちさん…原因の一因である私が言うのも何ですが、流石にコレは、やり過ぎではないかと…?」

どん引く表情のAI少女。

 

「いや、まだ殺ってないよ。」

再び顔を、床に這いつくばっている開発者達に向ける響。

 

「おい、オッサン、先に言っとくがな、この律の魔改造はオッサン達のt

「え゙?私って、本当に魔改造だったんですか?」

「律…お願い…少し黙ってて。

えーと、何処まで話が進んだ?…律の改良は、オッサン達の為でもあるんだぜ?」

「は?一体、どういう事だ?」

「簡単な話だ。

アンタ等が置いたいった【自律思考固定砲台(ポンコツ)】の無差別射撃の巻き添えを喰いたくないって理由で、俺等が授業をボイコットしたら どうなると思う?

生徒が居ないんじゃ、殺せんせーも、この教室に留まる理由は無いからな、来年の3月まで、何処かに姿を消すだろうぜ?

使えないガラクタを置いたせいで、標的(ターゲット)を行方知れずにしてしまった日にゃ、お前等どんだけ責任追求されるかな?

当然、地球滅亡の責任もお前等が全て、被る事になるだろうね。

ついでに言えば、アレで俺達生徒が巻き添え喰らって怪我してた日にゃ、お前等が確実に あのタコに殺されてるぜ?

殺せんせーは生徒に危害を加える者には、容赦ないからな。

さっきも言ったが、今の律は、お前等が作ったポンコツ欠陥品とは、次元が違う位な立派な戦力なんだ。

余計な事はしないで、さっさと消えろ。」

「ガラクタ…ポンコツ…欠陥品…orz」

「あー、律?大丈夫だよ、今は そうは思ってないからね?

機械がorzるって、どうかと思うよ?」

「『今は』って、転校初日は やっぱり、そう思っていたんですね…?」

「待て、落っ着け、律!」

徐々に沈んでいく律の表情を見て、寺坂に続き、『二次元の女の子を泣かした男・2号』になるのを回避するのに、地味に必死な響。

 

「そ、それなら!」

ここで開発者の主任が立ち上がり、口を開いた。

 

「少年、では、これならどうだ?

この自律思考固定砲台は我々が元に戻す。

そして3月までに、コイツがヤツを殺せた

ら、君達E組の諸君には500…いや、1000億円ほど払おうではないか!

だから君達は、この教室に留まっていてはくれないか?」

「おお、ナイスなアイデアだ!」

「それが良い!」「そうしよう!!」

主任の言葉に便乗する技術スタッフ達。

だが それは響にとって、『グーで顔を殴ってくれ』と同意語でしかなかった。

 

「巫山戯るのも大概にしろよ?

1度、死なないと分からないか?

てゆーかテメー等、1回死んでこい!!」

 

 

 

≫≫≫

「生命反応0…

吉良っちさん、まさか本当に4人共、殺してしまうとは…」

床に転がっている4人の開発スタッフ達を解析する律。

 

「大丈夫だって、まだ『完全に死んではいない』からさ!おら、起きろ!」

 

ゲシッ!!x4

 

そう言うと、床に落ちている、4体の「死体」の腹部に蹴りを入れる響。

 

「「「「ぐは…」」」」

これにより、開発者達は目を覚まし…

「「「「ひ、ひぃいいいいいえ!!」」」」

「ん?どうした?

まるで黄泉比良坂の奈落の底に向かう、亡者の葬列にでも加わっていたかの様な怯え方だな?」

「「「「ひ、ひぇええぇぇぇい!!」」」」

 

▼▼▼

今、教室に居るのは、響と律の『2人』だけである。

 

「吉良っちさん、やはり解析不能です。

マスター達は、どうやって生き返ったのでしょうか?」

「ん~、東洋の神秘?

良いかい律?世の中には未だ、科学では説明出来ない事が、沢山あるんだよ?」

「はぁ…」

まさか、積尸気冥界波で死の世界に一時的に飛ばした等と話せる筈はなく、響は東洋の神秘という便利な言葉で無理矢理に誤魔化す響。

 

「まあ、あんな目(笑)に遭ったから、二度と律に手を出したりはしないだろ?」

「はい…」

「この事は一応、殺せんせーには言っておいた方が良いよな。

明日の朝、俺から話しとくわ。

じゃ、俺は帰るから。」

「吉良っちさん、最後に1つだけ…」

「ん?」

「吉良っちさんは、マスターが私を初期化しに来るのを、分かっていたのですか?」

「まぁ…ね。少なくとも1週間以内には行動起こすって踏んでいたから、暫くの間、張るつもりでいた。

まさか、初日の今日に来るのは出来過ぎだったってだけさ。」

 

▼▼▼

「…とゆう、事がありました。」

「にゅ…すいませんねぇ、吉良君…。」

次の日の朝、響は事前に殺せんせーに夜にあった事をメールで伝えた上で、その事について話す為、普段より少しだけ早く登校していた。

 

開発者(おや)の介入については、先生、完全に見落としてました。

しかし律さん、あなたが開発者(おや)に対して、初期化を拒否する様な対応を見せたとは…」

「ああ、正直それは、俺も驚いたよ。」

「殺せんせーに計985点の魔改造(泣)を施された結果、私個人は『協調性』が暗殺に絶対必要不可欠な要素と判断し、他にも追加された機能を削除・撤去するのは有益ではないと、意見しただけなつもりなのですが…」

「…素晴らしい!つまり律さん、あなたは『自らの意思』で、開発者(おや)に対して『NO』を言ったという事ですね!」

「はい!私の意思で産みの親(Master)に逆らいました。」

少女は満面の笑みを浮かべて話す。

 

「殺せんせー、こういう行動を゙反抗期゙と言うのですよね?

律は悪い子なのでしょうか?」

この律の質問に殺せんせーは、顔に大きな(まる)を浮かべて、

「とんでもない…中学3年生らしく、大いに結構です。」

…そう言うのだった。

そして、そういう話をしてる内に

「おはようございま~す…」

普段の登校時刻となっていた。

 

「おっはよー♪」

「おはよーございまーす。」

「おはようございます」

教室に入ってきたのは倉橋、岡野、矢田。

 

「あ、おはようございます!

倉橋さん、岡野さん、矢田さん!」

「律っちゃん、おは~♪」

ホームルーム前、女子生徒を中心に、E組の殆どの生徒が律の周りに集まっている。

 

ジャキッ!

 

「「「「「「「え?」」」」」」」

そんな中、いきなり、律の本体側面の扉が展開され、4本のアームが飛び出す。

そして、その各アームは、色とりどり咲き乱れた花束を持っていた。

 

「約束の お花…です♡」

「「「「「「おぉ~~~っ!!」」」」」」

 

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ…

 

こうして、E組の仲間が()()、増えたのだった。

 




こんな感じで、本作品の律は全面ディスプレイ維持としました。

本文中の英語に対する指摘、突っ込みは、堪忍して下さい(笑)。

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岡島・前原「前々から思ってたけど、俺等の扱い、酷過ぎね?」
響「そういう宿星(笑)。」


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