暗殺聖闘士   作:挫梛道

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分身の時間

『『『『さて、始めましょうか。』』』』

『『『『『『…何を?! 』』』』』』

教室には、28人の、否、28体に分身した殺せんせーがいた。

その28体の言葉に28人の生徒が突っ込む。

 

 

「中間テストが迫って来ました。」

「そうそう。」

「そんな訳で、この時間は…」

「ふむふむ。」

「高速強化テスト勉強を行います!」

「いやっほぅ!」

28体の分身自らが相槌を交えながら説明、それぞれが生徒の机の前に立ち、国社数理英、各生徒の苦手教科を記したハチマキを頭に巻き、マンツーマンで指導していく。

 

国語 6人

数学 9人

社会 3人

理科 4人

英語 4人

 

そして、

「何で俺だけΝДЯЦTΘなんだよ!?」

「寺坂君は特別コースです、

苦手科目が複数ありますからねぇ。」

寺坂の目の前のタコは、火影マークの鉢金を頭に装着していた。

更に、

「俺は何だよ?一度、幽体離脱してみる?

…で、そのまんま、死んでみる?」

「にゅやっ?!いや、吉良君は死角がないから、なんとなく…」

響の前の殺せんせーのハチマチは金色。

そして「」のマーク。

所謂、黄道12星座の蟹座の印である。

「こ・の・タ・コ…」

 

ΝДЯЦTΘ 1人

デ※マスク  1人

 

 

28体分身を駆使して、E組全員に指導していく殺せんせー。

28人の殺せんせーが見られる風景は、異様としか感じられず、クラスの殆ど全員が、頭から変な汗をかきながら、指導を受けていた。

 

ぐにゅんっ

「「「「「「「うわっ!?」」」」」」」

そんな時、いきなり全ての殺せんせーの顔が、Sの字に歪む。

 

「こら、カルマ君に吉良君!

急に暗殺しないで下さい!!

それ避けると残像が全部乱れるんです!」

『意外と繊細なんだな、その分身!!』

「「ちっ…」」

舌打ちする響とカルマ。

((((((てゆーか、息ピッタリだな!?))))))

E組生徒は彼等の背後に、それぞれの額に「肉」と「米」の文字が書かれた、マッスルな2人の男を見た。

 

「でも殺せんせー、こんなに分身して、体力保つの?」

「御心配なく。」

渚の疑問にも、

「1体外で、休憩させていますから。」

「それ寧ろ、疲れない!?」

問題無し?をアピールする殺せんせー。

 

 

 

 

 

…以上が、殺せんせーが椚ヶ丘学園理事長・浅野學峯と初めて顔を合わせる、約2時間前の出来事であった。

 

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そして翌日。

 

『『『『『更に頑張って殖えてみました。

さあ、授業開始です。』』』』』

教室には、約100体に分身した殺せんせーが待ち構えていた。

『『『『『『殖え過ぎだろ!! 』』』』』』

 

生徒1人に対して3~4人掛かりで指導する殺せんせー。

数の多さ故に、分身も かなり雑になり、中には完全な別キャラになっている物も。

ド〇えもんにミッキー〇ウス、更にはフ〇ーザ様が紛れ込んでいる始末である。

 

「…どーしたの、殺せんせー?

何か気合い、入り過ぎじゃない?」

「「「んん?そんな事ないですよ?」」」

茅野カエデの質問に、殺せんせーは、分身3体同時に答える。

 

 

 

 

…この世の中には…スピードで解決出来ない問題もあるんですよ?

 

前日の浅野學峯の言葉を引き摺っているのは明らかだった。

 

キーンコーンカーンコーン…

 

 

「ぜー、はぁー、ぜー、はぁー…」

授業終了のチャイムが鳴ると同時に分身を解除し、団扇で扇子で下敷きで、自らの身体を扇ぎながら体中で息をする殺せんせー。

 

 

「…流石に相当、疲れたみたいだな?」

「そりゃ「休憩中です」とか言って、無駄な分身を10体近くも作ってたら…」

「しかし殺せんせーって何故、そこまで一生懸命に先生をすんのかね~?」

 

「ヌルフフフフフ…」

生徒達の呟きに殺せんせーは答える。

「全ては君達のテストの点数を上げる為ですよ。そうすれば…

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※改行「殺せんせ~!!お陰で良い点穫れたよ~!!」

「もう殺せんせーの授業無しじゃいられないよ!殺すなんて出来ないよ!!」

…と、皆さんは私に尊敬の眼差しを向ける様になり、更に!

 

「先生!私達にも勉強を教えて」

…と、私の評判を聞いた近所の巨乳女子大生が駆けつけ、更に更に…(以下、邪な妄想が延々と続く)

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

…と、まあ、殺される危険も無くなり、先生には あらゆる面で良い事ずくめです!」

 

「「「「「………………………」」」」」

あまりにも出来過ぎな妄想を聞かされ、呆れかえるE組の面々。

そして…

「…いや、勉強の方は、それなりで いいよな?」

「…うん、なんたって暗殺すれば100億だし。」

「「「「「100億あれば、成績悪くても その後の人生、薔薇色だしさ♪」」」」」

「にゅやっ?!そ、そういう考えをしてますか、君達は!!」

 

ENDのE組にとっては、テストなんかより、暗殺の方が余程身近なチャンスと言い切る生徒達に、目を点にする殺せんせー。

 

「なるほど、よく分かりました。

今の君達には…暗殺者の資格がありませんねぇ…!!」

顔にΧ印を浮かべる殺せんせー。

 

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「どうしたんだよ、殺せんせー?」

「急に、皆に校庭に出ろって…」

 

あの発言の後、殺せんせーはE組の生徒全員、そして烏間とイリーナを校庭に呼び出した。

 

「いや、「先生」の前で、あの発言はないだろうに…」

「吉良?」

 

 

「ちょっとタコ?あたし達まで呼び出すなんて、一体どーしたのよ?」

イリーナが問い掛ける。

それに対して殺せんせーは

「イリーナ先生、プロの殺し屋として、伺いますが…貴女は いつも仕事をする時、用意するプランは1つだけですか?」

「…!!」

質問に質問で返す。

これに対するイリーナの返事は『NO』。

曰わく、本命のプラン通りに事が済むケースの方が、寧ろ少ない。

不測の事態に備え、本命の他に予備のプランを より綿密に作っておくのが暗殺の基本と言う。

 

「では、次に烏間先生に伺います。

ナイフ術を生徒に教える時…重要なのは第一撃だけですか?」

烏間もイリーナ同様、第一撃だけでなく、それが躱された時の第二撃三撃の必要性重要性を語る。

 

「せんせー、結局、何が言いたいんd「先生方の仰る様に…」

 

くるくるくるくるくるくるくるくる…

校庭の弩真ん中に移動した殺せんせーは、体をくるくると高速回転させながら語り出した。

「先生方の仰る様に、自信を持てる次の手があるからこそ、自信に満ちた暗殺者になれる。対して君達は どうでしょう?」

 

くるくるくるくるくるくるくるくる…

さらに回転速度を上げる殺せんせー。

「『俺等には暗殺があるから、それでいいや』…と考えて、本業である勉強の目標を低くしている。

それは…劣等感の原因から目を背けているだけです。」

 

くるくるくるくるくるくるくるくる…

「もし先生が この教室から逃げ去ったら?

もし他の殺し屋が先に先生を殺したら?」

 

ゴオォォ…

次第に くるくる回転している殺せんせーを中心に小さな竜巻が発生した。

そして回転しながら、殺せんせーは言い続ける。

「暗殺という拠り所を失った君達には、もはやE組の劣等感しか残らない!

そんな危うい君達に…先生から警告(アドバイス)です!!」

 

ゴオォォオオオオォォオオォォォオゥッ!!

「第二の刃を持たざる者は…

暗殺者を名乗る資格無し!!!!」

ついに それは、直径数十㍍、高さ数百㍍に及ぶ、巨大な竜巻となった。

 

ドドドドドドドドドドドドドドドッ…

「ヌルフフフフフ…

校庭を少し手入れしてみました。」

そして 竜巻は止み、校庭の真ん中…竜巻の中心部に居た、いや、竜巻の核だった殺せんせーは事も無げに言ったのだった。

「「「「「「「「!!」」」」」」」」

何という事でしょう…

殺せんせー(たくみ)の竜巻(ぎじゅつ)によって、あの荒れ果てていた凸凹だったグランドは、真っ更な平地に整えられました。

あれほど生え放題だった雑草や小石は全て取り除かれ、立派な競技用トラックまで完備されています。

 

様変わりし過ぎた校庭を見て驚く生徒達。

「先生は地球を消せる超生物。

この一帯を平らにする等 容易い事です。」

超生物は瞳を妖しく光らせ言い続ける。

「もしも君達が…自信を持てる第二の刃を示せなければ、この私を相手に値する暗殺者は この教室にはいないと見なし、校舎ごと平らにして先生は去ります。」

「…………………」

この発言には烏間も顔を曇らせる。

 

「第二の刃…何時までに?」

渚の質問に、殺せんせーは ごくごく当たり前の如く答えた。

「決まっています。明日です。

明日の中間テスト、クラス全員が50位以内を取りなさい!」

「「「「「「「はあぁ!??」」」」」」」

驚愕する生徒達。

それに構わず殺せんせーは言い続ける。

「君達の第二の刃は先生が既に育てています。

本校舎の教師如きに劣る程…先生はトロい教え方をしていません。」

「んん。それは解る。」

響が頷き同意する。

 

 

「自信を持って その刃を存分に振るってきなさい。

仕事(ミッション)を成功させ、恥じる事無く笑顔で胸を張るのです!

自分達が暗殺者(アサシン)であり…E組である事に!!」

 

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そして翌日…中間テストが始まった。

 

 




今回のボツネタ…
三面六臂のマッスルな人。
何処で使おうとしたかは想像に任せます。

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