故に、今後のネタバレに繋がるかも知れないので、その辺りだけは注意をヨロシクお願いします。
本編で、その儘流用するか、別のエピソードを組み込むかは未定です。
それは、死に逝く者が最期に望み見た幻想か、それとも常人の世とは、また別の次元での現実なのか…
『たいへん よく できました。』
星降る夜の上、桜のマークの枠に そう書き込まれたスタンプのデザインのシャツを、白衣の下に着た若い女性が、心からの祝福の笑顔で、導かれる様に ゆっくりと天に昇ってくる黄色いタコを、両手を広げて迎えようとしている。
「※※さん…お疲れ様でした…。
そして、ありがとう。」
うっすらと涙を浮かべ、感謝の表情を見せる女性。
「はい、※※先生…」
それに対して、黄色いタコは、やはり笑顔で応えようとする。
徐々に縮まる両者の距離。
「おお…、※※先生………………の胸!
この儘行けば…ヌルフフフフフ!!」
ピッカァッ!!!!
「にゅや!?」
「え?えぇ?」
邪念丸出しな 締まりの無い顔の黄色いタコが その身体の色をピンクに変えて、まさに今、女性の胸元(推定E)に飛び込もうとした その瞬間、何処からか放たれた強烈な眩い光が、2人に向けられ、2人の…正確に言えば、タコの天に昇ろうとする動きが止まる。
「にゅ…あと、ほんの少しだったのに…」タコが心の底から、残念そうな顔をしてる中、その場は夜の空の筈が、一瞬にして辺り一面真っ白な、光溢れる空間となった。
ゴゴゴゴゴゴゴ…
「「??」」
そんな いきなりの環境変化?に、何が起きたのか把握出来ない2人の空間(まえ)に、突如として直径約3㍍程の黒い【穴】が現れる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
その【穴】が轟々しい音と共に、全てを吸い込まんとばかりな、強大な重力を放つ。
「にゅやーーーーーーーーーーっ!?」
「※※さん!?」
先程の邪全開な発想の罰が当たったのか、その重力の前にタコが捕まり、抗う術も無く、あっさりと【穴】の中に引きずり込まれた。
「※※さん!!」
吸い込まれたタコを助けんが為と、自らも【穴】の中に身を乗り出して手を伸ばし、タコを引っ張りだそうと、女性は【穴】に近付こうとすが、しかし この【穴】は逆に女性を拒むかの如く、重力…引力とは真逆の力を発揮し、
「きゃあっ!?」
女性を弾き飛ばし、寄せ付けない。
「死神さーん?!」
「ゆ、雪村先生ぇ~っ!?」
そうして互いに名前を呼び合っている中、女性から『死神』と呼ばれたタコは【穴】の奥深くまで堕ちて行き、最後には その中の黒い空間に溶け込む様に、姿が見えなくなった。
それから【穴】が消えたのは直後の事。
同時に光に満ちた白い世界も、まるで手品の様に一瞬に、夜の星が輝く空の上、元の場所に戻る。
「…………………………………………。」
その場に1人取り残された、タコから「雪村先生」と呼ばれた女性。
常識の外の展開、状況に理解が着いて行けないと云う、唖然とした顔をしている彼女は、暫くの間、黙り込み、
「な、何なのよ、一体~っ!?」
一度 我に帰ると、ヤケクソ気味な叫び声を夜空に響き渡らせるのだった。
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「にゅや~~~~~~~~っ!?」
墜ちるタコ。
暗闇の中を只、堕ちて往くタコ。
「な、何故、飛べないんですかぁ~っ!?」
自分には飛行能力が有る筈が、それを行使出来ず、重力?に身を任せるしかない状態に不安を覚える。
「あ~、神様仏様、ゴメンナサイごめんなさいゴメンナサイごめんなさい!!
もう、雪村先生の胸に、邪な考えを持ったりしませんから!
スーパーの特売タマゴ、御1人様1パックを分身と変装を駆使して、何個も買うのもやめます!
映画の女優さんも、もう胸で差別したりしません!!
教え子や同僚の恋愛事情に触手(て)を出すのも止めますから!
それから世界中の山に捨ててある、エッチな本を拾い集めたりもしません!!
それから、え~っと…」
最後には神頼み。
自身の悪事?を告白し、懺悔し始めた。
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「にゅ?」
それから暫くの間、自然落下が続く。
漸く終点なのか、暗闇の空間の中、堕ちて往く先に、僅かな光が差し木漏れる。
タコは重力に従い、その光の中に牽かれる様に飛び込んで行った。
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「にゅる…此処は?」
困惑するタコ。
光を抜けた先の世界は、外なのか屋内なのか判らない奇妙な世界。
石と煉瓦で造られた、大小様々な建物。
遥か遠くに目を向けると、高層ビルが並ぶ街並みが。
更に その先を目を凝らして見てみると、全てを遮る壁の様な物が見える。
そして ふと真上を見上げると、天井らしき物が空を隠し蔽っている。
故に恐らく、今 自分が居る場所は、気が遠くなる程の…それこそ街1つ包む位の、巨大な建造物の中なのだろう。
「とりあえず此処が一体 何なのか、調べてみますかねぇ…」
タコは探索するが如く、当ても無く街を徘徊する事にした。
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
「ひぃやあああああああ~っ!!」
「!!?」
暫く歩いていると、進行方向正面から、年齢10歳位の、見窄らしい服を着た少女が悲鳴を上げながら、此方に走ってきた。
「露出狂にでも出会しましたか?」…と、自分の教え子の1人の顔を思い浮かべながら改めて前方を見ると、
ドドドドドドドドド…
少女の更に後ろから、爬虫類なのか哺乳類なのかが判別が出来ない異形の…巨大で不気味な生物…正しく魔物(モンスター)と呼ぶに相応しい生き物が迫ってきた。
アリクイと鰐を掛け合わせた様な頭部には、煌びやかな真紅のドレスを纏った紅い髪の女の人形(ヒトガタ)が"生えて"おり、身体自体も、巨大な紅のワンピースドレスで身を包んでいる化け物。
そんな化け物から逃げ走る途中、石畳の窪みに足を捕られ、少女は躓き転ぶ。
化け物は 少女に詰め寄ると、巨大な口を尚 大きく開き突きつけ、正に今、目の前の獲物を喰わんとした その時、
「にゅや!!」
その様子を、やや離れた位置から見ていたタコが、両手両腕に該当する触手を組み合わせ、その先端から体内に秘めたエネルギー波を放った。
エネルギーの直撃を受けた化け物は、肉体を破壊され、その身体は死体を残す事無く消滅する。
パサ…
腰を抜かしている少女の足元に、頭部の人形(ヒトガタ)が纏っていた、真紅に輝く、ワンピースドレスを残して。
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
「ヌルフフフフフ…いやいや、危なかったですねぇ~、大丈夫ですか?」
「…?????」
まずは一安心と にこやかな顔で、少女に近付くタコ。
少女は先の巨大な化け物に続いて、今度は喋る黄色いタコの出現に、最初は半ばパニックになるが、凶暴な魔物としては、余りの緊張感の無いタコの顔に、『別物』と認識したのか、徐々に落ち着きを取り戻す。
「あ、あんた、誰?」
「…私…ですか?」
嘗て自分が人間だった頃、死神と呼ばれていたタコは、この街?に辿り着いた時から確信していた。
そう…自分以外の『神』と呼ばれる者の存在を。
そしてタコは未だ、自分に『死』を赦そうとしない神を呪った。
そして、自分の様な者に、未だ『生』を与えた神に感謝した。
確かに あの時、自分は死んだ筈。
ならば何故、自分は今、こうして生きているのか?
決して幽霊なんかではない。
自分は確かに今、間違い無く生きている。
此が本当に、神と云える存在の仕業なら、何か意味が、理由が有る筈と、タコは考える。
それは一体何なのか…
だが、今は そんな事は、どうでも良い。
今は只、目の前の少女の質問に答える…それだけだ。
「ヌルフフフフフ…
私は…私の事は、『殺せんせー』とでも、呼んで下さい。」
元ネタは…単行本21巻のアレです。