暗殺聖闘士   作:挫梛道

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殆どが台詞…(笑)


支配者の時間

「だーかーらー、いきなり「ぶっ殺すぞ!?ゴラ゙ァ?」ですよー?がっこーないでさつじんじけんや、さつじんはんがでるのをとめただけですよー?おれじしんもころされそうだったわけだし、どーかんがえても、せーとーぼーえーじゃないですかー?むしろ、おおごとがおきるのをとめたわけだから、ほめるべきでしょー?だーかーらー、『僕は悪くない』…みたいな?」

 

その日の放課後、響は烏間と一緒に理事長室に呼び出されていた。

理由は 全校集会の後、本校舎の生徒に暴力を振るったという件についてだ。

 

「吉良!何だ、その口の利き方は?!」

響の棒読み口調に対して、学年主任の大野が怒鳴りつけるが、

「チッ、ウッセーナ…反省してまーす。」

当人は嘗て、あまりのスーツの着崩し加減に、テレビを見ていた小学生にまで、「いや…コレは無いわぁ…」と言わせた某スノーボーダーの謝罪会見な如く、まるで堪えてない。

 

「理事長先生、彼が多少、やり過ぎだったのも事実ですが、本校舎の生徒が先にE組の生徒を脅していたのも事実です。

事情聴取なら、双方を呼ばないと、公平さに欠けます。」

烏間が響のフォローに回り、結果的には、彼の必死の説得により、厳重注意で留まり、大した咎は出なかった。

最終判断を下したのは、椚ヶ丘学園理事長の浅野學峯。

大野は もう少し厳しい処分を期待していたのだが、学園トップの決定故に、何も文句は言えなかった。

 

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「烏間先生、迷惑かけました、すいませんでした。」

「いや、元々は俺とタコも、あのやりとりは最初から見ていたんだ、直ぐに あの場に駆けつけなかった俺達の責任だ。」

理事長室を後にして、本校舎本館の廊下を歩きながら、会話する2人。

 

「そもそも あのタコが、渚君なら心配いらない、とか抜かすから…」

「渚…」

「ん?彼がどうかしたか?」

「烏間先生は気づきませんでしたか?

アイツの放った殺気を…」

「…吉良君、そういう話は、本校舎ではしない方が好いぞ?」

「あ…すいません…。」

 

 

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「じゃ、俺は今日は帰りますから。」

「ああ、気をつけてな。

あまり、彼等を待たせては悪いだろう。」

「え?」

響は本館の出入り口で烏間に帰りの挨拶をすると、

「や、吉良っち、お疲れ様~♪」

「吉良君、ど、どうだった?」

「カルマ…渚…」

そこには、カルマと渚が響を待っていた。

 

 

 

「ほいよ♪」

カルマがポイッと、紙パックのジュースを響に投げ渡す。

「お♪サンキュ…って、『ゴーヤ・オレ』?

こ、これはまた随分とマニアックなチョイスをしたな?」

「ボタン、押し間違えてさ、でも、棄てるの勿体無くね?」

そう言いながら、カルマは いつもの「いちご・オレ」をストローで啜る。

 

「後始末押し付けかよ!?」

 

 

 

 

「…まあ、アイツ等には散々脅しておいてやったからな~、「オメー等、死亡フラグ立ったぞ?卒業後か、俺が退学(クビ)になった時を楽しみにしとけ?な?」…って感じでさ(笑)」

「ははは…」

響の台詞に苦笑いしか出来ない渚。

「大野のヤローが、あのソバカスとメガネを呼ばずに、俺しか呼び出さなかったのが逆に良い方向に出たっぽいのもあるかな。烏間先生が その辺を強調して「公平さに欠ける」って、理事長を本気で説得してくれたからな、あの先生、マジ感謝だよ。」

「ん~、吉良っちは優秀だからね~、烏間先生からすりゃ、殺せんせー暗殺の『駒』が減るのを回避したかっただけかもよ?」

「それでも…だよ…

…ってかカルマ、オメー、あの集会フケてたらしいじゃねーか?」

「罰喰っても痛くも痒くもねーし♪」

「オマエわ…」

「成績良くて素行不良って、こういう時、羨ましいよ…」

「いや、今回は後悔してるよ?

何でも、怪奇現象が2回も起きたってゆーじゃない?…で、校長と生徒会の奴等が、ビックリして腰抜かしたって(笑)」

「おう、(我ながら)傑作だったぜ(笑)

直撃すれば、もっと面白かったけどな。」

「吉良君…それは流石にシャレにならないと思うよ…」

 

そんな会話をしながら、学校を去る3人。

その様子を、本館最上階の部屋からガラス越しに眺めている男がいた。

椚ヶ丘学園理事長・浅野學峯である。

「E組…ENDのE組が普通の生徒を押しのけて歩いて行く…

それは この学校では合理的ではない。

少し改善する必要がある。

これは、私にとっては「暗殺」なんかより優先事項だ…。」

響達を見る その目は、暗殺者の それと変わらない、冷酷な物だった。

 

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キュ…カチャ…カチ…カチ…

「「……………………………………」」

翌日の放課後の職員室。

烏間とイリーナは、無言で六面体(ルービックキューブ)を弄っている男を見ている。

「この六面体の色を揃えたい…

素早く一度に沢山の面、しかも、誰にでも出来る簡単な方法で…

あなた方なら どうしますか?先生方…」

 

カチャカチャカ…

「例えば、こんな風に…」

カチャカチャカチカチキュカチカチャカチキュカチャカチャカチカチャカチャカチ…

「「…!!」」

男が六面体を素早く弄ると、あっという間に赤青黄緑橙白…六面全ての色が揃った。

「誰でも この様に出来たら良いのですが、そういう訳にはいけません。

ならば、どうする…?」

 

ガララッ…

この時、職員室の扉が開き、1人(?)のタコが入ってきた。その瞬間…

 

バキッ

「答えは簡単。」

男は六面体のパーツの継ぎ目にマイナスドライバーを差し込み捻り、

「分解して組み直す…実に合理的です。」

そう言うと男…学園理事長・浅野學峯はバラバラになった六面体のパーツを改めて組み込みながら、

「初めまして、殺せんせー。」

職員室に入ってきたタコに、にこやかに挨拶した。

 

「…?」

殺せんせーは、「誰?」…な顔をして、烏間とイリーナに顔を向けると

「この学校の理事長サマですってよ?」

「俺達の『教師』としての雇い主だ。」

「どーも。この学園の理事長をやっている、浅野です。」

 

理事長と知った途端に

「にゅやっ?!こ、これはこれは、こんな山の上までっ!!」

マッハでお茶を入れ、

「それはそうと、私の給料、もうちょいプラスになりませんかねぇ?」

肩を揉み、下手になる黄色いタコ。

「いえいえ、此方こそ すいません。

いずれ、ご挨拶に行こうと思っていたのですが…」

(触)手揉みする殺せんせーに浅野は言う。

「あなたの説明は、防衛省や この烏間さんから聞いていますよ。

まぁ、私には…全て理解出来る程の学は無いのですが…」

「…………………………………。」

「なんとも悲しい生物(おかた)ですね…。

本来ならば世界を救う救世主となる筈が、

世界を滅ぼす巨悪と なり果ててしまうとは…」

「「……………………」」「…?」

「いや、ここで それをどうこう言う気はありません。

私如きが どう足掻こうが、地球の危機は救えませんし…」

学園理事長である浅野が、わざわざ山の上の旧校舎まで出向いた理由…それは、

「単刀直入に言います。ここ、E組は この儘でなくては困ります。」

「…!

…この儘と言いますと?成績も待遇も、最低辺の現状を維持しろとでも仰る?」

「…はい。」

 

 

働き蟻の法則…

どの様な集団でも、20㌫は怠け、20㌫は働き、残り60㌫は平均的になる法則…

浅野が目指すのは、5㌫の怠け者と、90㌫の働き者がいる集団。

だからこそ、95㌫の働き者の為には、E組の様な5㌫の存在が必要不可欠と語る。

E組の様には なりたくない…

E組にだけは行きたくない…

95㌫の生徒が そう強く思う事で、この理想的比率は達成する…と。

 

「なるほど…

それで、5㌫のE組は弱く惨めな存在でなくては困る…と。」

「今日、D組の担任から、「うちのクラスの生徒が、E組の生徒に暴行された。『ぶっ殺すぞ』と凄い目で睨まれ脅された」と改めて、苦情が来ました。」

「ちょっと待ってよ、それって、キラと渚の事でしょ?アレは…」

「はい、私が知っている情報と少し、食い違う部分がありましたから、D組担任と被害者だという生徒に、確認を取りました。

結果から言いますと、D組担任は、経緯は どうであれ、理事長である私に虚偽報告をしたという事で…まぁ、それなりの処分を下しましたよ。」

少し含みのある笑みを浮かべながら、浅野は語る。

「暗殺をしているのだから、多少なり攻撃的になったりも仕方ないでしょう。

それは それで構いません。

それくらいでないと、アナタを仕留めるなんて、出来ないでしょうからね…」

「何が言いたいのですか?」

烏間の質問に浅野が答える。

「問題は…成績底辺の生徒が一般生徒に逆らう事。それは私の方針では許されない。

以後、厳しく慎む様に伝えて下さい。」

ジャラ…

そう言うと浅野は、上着の内ポケットから知恵の輪を取り出すと、

「1秒以内に解いて下さい!」

…と、殺せんせーに向けて放り投げた。

「え!?いきなりっ…」

 

ガララッ

「「「失礼しまーす…」」」

その時、職員室の扉が開く。

入ってきたのは響、渚、カルマの3人。

 

「あら、アンタ達、どーしたの?」

「いや、殺せんせーに、今度の中間テストの事で話をしたかったんだけど…」

「何か今、それ処じゃないっぽいね~?」

「出直すか…」

 

響達の視線の先には、幾本もの触手が、知恵の輪の如く絡み合い、身動きが出来ない状態の黄色いタコがいた。

(((一体、何があった!?)))

 

その様を見た浅野は

「噂通り、スピードは凄いですね。

確かに此なら…どんな暗殺だって躱せそうです…でもね、殺せんせー…」

浅野は膝を着き、床に転がっている殺せんせーと視線を合わせ、

「この世の中には…スピードでは解決出来ない問題も沢山あるんですよ?」

冷めた笑みを浮かべながら言い放った。

そして立ち上がり、響達に目を向けると、

「やあ君達、中間テスト、期待してるよ!

頑張りなさい!!」

笑顔を浮かべ激励するが、その乾いた「頑張りなさい」は、少なくとも3人の内1人を暗殺者から一瞬でENDのE組に引き戻すのだった。

「渚君…顔色悪いよ?大丈夫?」「渚…」

 

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

暗殺を完全にコントロール、支配して、無敵と思われていた暗殺対象(ターゲット)…

しかし、椚ヶ丘の教師としては、絶対的支配者の前に、決して無敵ではなかった。

 

だが、このタコは、これで終わるほど、柔らかいタコではない。

その身からは、メラメラと反撃の炎が燃え上がっていた。

 

 




「しまった!」
「ど、どうしたの、吉良君?」
「あの知恵の輪状態な殺せんせーなら、殺れなかったか?」
「「あ…」」

次回、暗殺聖闘士:『分身の時間』
君の殺る気は、目覚めているか?

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